教員採用試験の共通化(共同実施)はいつから?|2027年度実施の選考から予定・51自治体と日程

教員採用試験の共通化はいつから?2027年度実施の選考から予定

教員採用試験の共通化(共同実施)は、2027年度(令和9年度)に実施する選考から、51自治体の協議会が作る共通問題を1次試験に使う予定です。2024年に起きたのは共同実施ではなく、1次試験の早期化でした。何が決まり、何が未定かを整理します。

新川紗世 Re-Career代表

この記事の著者

新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役

公立中学校で11年、私立高校で1年、あわせて12年、英語教員として勤務。教員時代に病休を経験し退職。その後、教員専門のキャリア支援会社を設立。著書『「やめたいかも」と一度でも思ったら読む 教員の転職思考法』。スタッフ全員が元教員のキャリア支援会社を率い、自身も延べ1,000名以上のキャリア支援に携わる。

📋 目次

  1. 教員採用試験の共同実施(共通化)とは|いつから・何が決まっているか
  2. 共通化に参加する51自治体|どこで始まるのか
  3. すでに変わったこと|1次試験の早期化・複数日程・地域枠
  4. 共通問題配付方式で何が変わるか|出題方針・日程・まだ決まっていないこと
  5. 受験者が気をつけたいこと3つ|併願・独自問題・情報の時点
  6. 過去25年で何が起きたのか|採用倍率の推移と受験者の減少
  7. 志望自治体選びの参考|倍率と採用枠の見方
  8. 社会人特別選考の見方|転身を狙う人向けポイント
  9. 社会人・現職教員・講師経験者が使える特別の選考
  10. 2次試験は自治体ごとに違う|面接・模擬授業・論文の確かめ方
  11. 受験戦略を考える上での3つのアドバイス
  12. よくある質問(FAQ)
  13. 合格後に知っておきたい|配属・初任給・初年度の研修
  14. まとめ|共同実施は2027年度実施の選考から。いまは日程の確認がいちばん大事
  15. 合わせて読みたい|Re-Careerの3大ガイド

「教員採用試験が共通化されるって聞いたけど、いつから?自分の受ける県は関係ある?」

ネット上には「2024年度から共同実施が始まった」という説明も見かけます。ただ、文部科学省の資料を読むと、共通問題を使う1次試験はまだ始まっていません。2024年に大きく動いたのは、1次試験の実施時期を早める「早期化」のほうでした。

結論からお伝えすると、共同実施(共通問題配付方式)は2027年度実施の選考から始める方向で準備が進んでいる段階です。いま受験を考えている人にとって大事なのは、「どの自治体が、いつ1次試験をするか」を実施要項で確かめることです。

この記事では、共同実施の仕組み、参加予定の自治体、すでに変わったこと、まだ決まっていないこと、社会人・現職教員・講師経験者の選考まで、公立中学校で11年、私立高校で1年、あわせて12年教員をしていた私が、文部科学省と自治体の公表資料をもとに整理します。

この記事でわかること

・共同実施(共通化)がいつから、どんな形で始まる予定か
・協議会に参画している51自治体と、一覧に入っていない自治体
・2024年から変わった1次試験の日程(早期化・複数日程・地域枠)
・併願・独自問題など、受験者が気をつけたいこと
・社会人・現職教員・講師経験者が使える特別の選考

教員採用試験の共同実施(共通化)とは|いつから・何が決まっているか

教員採用試験のイメージ(本とりんご)

教員採用試験の共同実施とは、複数の都道府県・政令市が、1次試験の筆記問題を共同で作り、それぞれの試験で使う仕組みです。文部科学省の資料「教員採用選考に係る第一次選考の共同実施について」(2026年4月30日)では、51自治体で作る協議会が、令和9年度(2027年度)から「共通問題配付方式」で実施することに向けて、引き続き協議中とされています。

その後、2026年7月29日に協議会が「出題方針」を公表し、令和10年度採用の選考(令和9年度=2027年度実施)からの開始に向けて準備を進めていると示しました。つまり2026年9月の時点で、共通問題を使った1次試験はまだ行われていません。文部科学省の2026年4月の資料も、現在の1次試験は各都道府県・政令市の教育委員会がそれぞれ独自に実施していると書いています。

時点をつけて整理すると

時期 何が起きたか・決まったか いまの状態
2023年5月 文部科学省が、翌年(2024年)実施の1次試験を「6月16日」を一つの目安(標準日)に前倒しするよう検討を求めた。あわせて、1次試験の全国共同実施の実現可能性について調査・検討を進める必要があるとした(方向性の提示) 目安の提示
2024年1月〜 文部科学省が11の教育委員会と検討会議を開き、まず「共通問題配付方式」での共同実施をめざすことに(2025年8月の資料) 検討
2024年 1次試験の早期化。6月までに1次試験を行った自治体が16から40に 実施済み
2025年7月 51自治体で協議会が発足 発足
2026年4月 3日程での実施、試験の範囲、各自治体の改編は自由などを協議会で合意。協議は継続 合意・協議中
2026年7月 協議会が出題方針(問題の構成と難易度の目安)を公表 公表済み
2027年度実施の選考 共通問題を使った1次試験を始める予定 予定
それ以降 令和10年度実施に向けた論点を協議会で議論中。「統一試験方式」は最終的にめざす形とされているが、時期は示されていない 未定

共同実施には2つの方式がある

文部科学省の資料では、共同実施のやり方として2つの方式が示されています。

・統一試験方式:第三者機関が作問から試験の運営までをまとめて行う。自治体独自の問題の追加・改変はできない。1次試験の出願と2次試験の出願を分けることで、他の自治体との併願ができる
・共通問題配付方式:第三者機関が作った問題を使い、試験の運営はこれまでどおり各教育委員会が行う。共通問題をもとに、自治体独自の問題の追加・改変ができる。問題の大部分が共通になるので、1次試験の実施日をそろえる必要がある

2027年度実施の選考から始める予定なのは、共通問題配付方式のほうです。「統一試験方式」は、共同実施の理念にかなう形として最終的にめざしつつ、まずは共通問題配付方式から、という順番になっています。

背景:教員不足と、民間の就職活動の早期化

共同実施や早期化が議論されてきた背景には、教員不足と、採用倍率の低下があります。文部科学省の「令和7年度『教師不足』に関する実態調査」では、2025年5月1日時点の教員不足は全国で3,827人。採用試験の倍率も下がり続けていて(2025年度採用の小学校は2.0倍)、自治体は「いかに早く・優秀な人材を確保するか」を競っています。

過去最高だった2000年度(平成12年度)採用の12.5倍と比べると、小学校の採用倍率は2025年度(令和7年度)採用で2.0倍まで、8割以上下がりました。中学校・高校でも倍率は下がり続けています。受験者にとっては合格しやすくなった一方、自治体にとっては「人材の質確保」が新しい課題になっています。

もう1つの背景が、民間企業の就職活動の早期化です。文部科学省の2023年5月の資料は、教員採用試験が「4〜5月に出願、7月に1次試験、8月に2次試験、9〜10月に合格発表」という日程で、少なくとも20年以上大きく変わっていないこと、一方で民間企業の選考開始日(6月1日)までに就職活動を事実上終えている学生が増えていることを挙げています。

文部科学省は、共同実施の効果として、複数の自治体が作問に関わることによる試験内容の質の向上、1次試験の作問の負担が減ることで2次試験で人物重視の丁寧な選考ができること、作業や経費の合理化を挙げています(2026年4月の資料)。

共通化に参加する51自治体|どこで始まるのか

校舎のイメージ

「共通化はどこの県で?」という疑問には、文部科学省の資料に載っている一覧で答えられます。2026年4月時点で協議会に参画しているのは、37道府県・13政令市と大阪府豊能地区の、あわせて51自治体です(文部科学省 2026年4月30日の資料)。

協議会に参画している51自治体(2026年4月時点)

道府県(37):北海道、青森県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、奈良県、和歌山県、島根県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県

政令市など(14):札幌市、仙台市、新潟市、静岡市、浜松市、名古屋市、京都市、大阪市、堺市、神戸市、北九州市、福岡市、熊本市、大阪府豊能地区

反対に、この一覧に名前がないのは、岩手県・群馬県・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・兵庫県・鳥取県・岡山県・広島県の10都県と、さいたま市・千葉市・横浜市・川崎市・相模原市・岡山市・広島市の7市です(2026年4月時点の一覧による)。

私が公立中学校で11年勤めた静岡県も、一覧に入っています。

「協議会に入っている=同じ試験」ではない

協議会に参画していても、どの試験でどう共通問題を使うかは、自治体ごとに案内されます。協議会の出題方針は、試験問題を各自治体が独自に改編して使う場合があること、自治体によっては一般教養試験や教職教養試験を実施しない場合もあることを示し、受験する自治体の募集要項などを必ず確認するよう呼びかけています。また、2025年8月の文部科学省の資料は、協議会への参加数は、最終的な共同実施への参加数と異なる可能性があるとしていました。

すでに案内を出している自治体の例

参画している自治体の中には、2027年度実施の選考について、すでに案内を出しているところがあります。

・静岡市:2027年度に実施する選考で、協議会が作った共通問題を使って1次選考(筆記)を行う。筆記は2027年5月8日(土)、予備日は6月12日(土)。選考の詳しい要項は2027年1月下旬ごろ公表予定
・堺市:2027年度に実施する選考から、共通問題による筆答試験を行う。筆答試験は令和9年(2027年)6月12日(土)
・大阪市:2027年度に実施する選考から、1次選考の教養・専門の筆答テストに協議会が作った問題を使う

同じ協議会の自治体でも、使う日が違うことがわかります。自分が受けたい自治体の案内を、1つずつ確かめるのが確実です。

すでに変わったこと|1次試験の早期化・複数日程・地域枠

資料と日程を見比べる手元

2024年に実際に起きたのは、共同実施ではなく1次試験の早期化です。ここは、すでに決まって実施されたことです。

文部科学省が「6月16日」を目安に示した(2023年5月)

文部科学省は2023年5月31日の「公立学校教員採用選考試験の早期化・複数回実施等について」で、各教育委員会に、翌年(2024年)実施の1次選考の日程を6月16日を一つの目安(標準日)として、できるだけ前倒しするよう検討を求めました。最終合格発表の前倒しや、複数回の実施も検討するよう求めています。あくまで「目安」で、日程を決めるのは各教育委員会です。

6月までに1次試験をした自治体は16から40に

文部科学省の集計(令和7年度(令和6年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況等のポイント)で、1次試験の実施時期を比べると次のとおりです(68自治体が対象)。

実施した年(採用年度) 5月以前 6月第1〜2週 6月第3週 6月第4〜5週 7月以降
2023年(2024年度採用)※ 0 1 3 12 52
2024年(2025年度採用) 6 3 29 2 28
2025年(2026年度採用)※ 10 1 27 2 28

※2023年・2025年に実施した選考の値は、文部科学省調べとして同じ資料に掲載。出典:文部科学省 同ポイント 図1

2024年に実施された選考では、6月第3週に1次試験をした自治体が前年の3から29に増え、6月までに実施した自治体は16から40になりました。7月以降に実施した自治体は52から28に減っています。「40の自治体が6月16日にそろえて実施した」わけではありません。

複数日程・県外会場は増え、地域枠は横ばい

同じ集計では、日程以外の工夫も数えられています(2024年に実施された選考の数。カッコ内は前回の調査=2022年に実施された2023年度採用の選考の数)。

・複数日程で選考を行った自治体:30(20)。春〜夏の選考に加えて、秋〜冬などに特別の選考を行うなど、日程を複線化している県市
・地域枠を設けた選考を行った自治体:14(14)。指定された地域で一定期間勤務できることを条件にした選考など
・自分の都道府県の外でも試験を行った自治体:29(24)

2026年に実施された選考の全国集計は、この記事の時点では確認できていません。志望先の最新の日程は、各自治体の実施要項で確かめてください。

共通問題配付方式で何が変わるか|出題方針・日程・まだ決まっていないこと

計画を立てるノート

ここからは、2027年度実施の選考から始める予定の「共通問題配付方式」の中身です。合意・公表されたことと、まだ決まっていないことを分けて書きます。

決まっていること(2026年4月の合意・7月の出題方針)

文部科学省の2026年4月30日の資料によると、協議会は2026年4月時点で次の内容に合意しています。

・5月8日(土)、6月12日(土)、7月10日(土)の3日程で実施し、別に予備日も設ける
・教養試験(一般教養+教職教養)と教科専門試験の問題を作る
・中学・高校の教科専門試験は、基本的に高校レベルの専門性を確かめられる共通問題を使い、一部の教科は共通問題+選択問題にする
・各自治体が、試験問題と試験時間を含む時程を改編するのは自由。ただし教養試験・教科専門試験それぞれの「コアタイム」は外さない

2026年7月29日に協議会が公表した出題方針では、問題の構成と難易度の目安が示されました。

・一般教養:人文・社会・自然分野(時事問題を含む)5問程度、数的推理・資料解釈・判断推理5問程度。地方公務員採用試験(上級)の教養試験と同様の難易度を想定
・教職教養:30問程度。教員資格認定試験の「教科及び教職に関する科目(Ⅰ)」と同様の難易度を想定
・教科専門:小学校、中学・高校共通の国語・英語・保健体育などは各25問程度。数学・理科・社会・工業は共通問題+選択問題。文部科学省の委託事業で作ったモデル問題と同様の難易度を想定

私は英語の教員でしたが、英語は「中学・高校共通」で25問程度の区分になっています。中学と高校で共通の問題になる予定なので、中学校志望の人も高校の内容まで見ておくと安心です。

まだ決まっていないこと

・どの自治体が、3日程のどの日に実施するか(静岡市・堺市のように、自治体ごとに順に案内している段階)
・各自治体が共通問題をどこまで改編するか、一般教養・教職教養を課すかどうか
・2次試験の中身(これまでどおり各自治体が決める)
・令和10年度(2028年度)実施以降の進め方と、「統一試験方式」へ移るかどうか・いつ移るか

決まっていないことを「こうなる」と決めつけて準備するのは危険です。受験する自治体の実施要項が出たら、そこに書かれていることを優先してください。

受験者が気をつけたいこと3つ|併願・独自問題・情報の時点

注意点を整理する時間

共同実施がまだ始まっていない今だからこそ、誤解しやすい点があります。受験の計画を立てる前に確かめておきましょう。

① 併願できるかは「日程しだい」

いまの1次試験は、自治体ごとに日程が決まっています。日程が重ならなければ併願できますし、重なれば受けられません。2024年の早期化で、6月第3週に1次試験をする自治体は3から29に増えました。志望先どうしの日程が重なっていないか、以前より注意して見る必要があります。

共通問題配付方式が始まったあとも、「1自治体しか受けられない」と決まっているわけではありません。文部科学省の資料では、同じ統一日に試験をする自治体どうしの併願は難しいとしたうえで、統一日を複数用意して、日程の重ならない自治体を併願できるようにすることが想定されています。協議会に参画していない自治体との併願は、その自治体の試験日しだいです。

「複数の自治体を併願できるのはありがたいけど、選び方がわからなくなった。情報集めの負担は逆に増えた感じ。」
——23歳・教員志望大学4年・女性

② 共通問題でも「同じ試験」ではない

共通問題配付方式では、自治体が問題を追加・改変できます。一般教養や教職教養を実施しない自治体もありえます。そして2次試験(面接・模擬授業・論文・実技など)は、これまでどおり自治体ごとに独自です。「共通問題になるから対策は1つで済む」と考えず、志望先の出題の形を確かめてください。

また、「同じ校種でも自治体によって倍率が違う」「政令市は独自色が強い」など、自治体ごとの違いは共同実施が始まっても残ります。志望先研究は手を抜けません。

③ 「いつ時点の情報か」を確かめる

協議会の参画自治体の一覧は2026年4月時点のもので、出題方針は2026年7月時点のものです。この分野は毎年のように情報が更新されます。ネットの記事(この記事も含めて)より、受験する年の実施要項が正です。記事を読むときは、何年の何月時点の話なのかを必ず見てください。

過去25年で何が起きたのか|採用倍率の推移と受験者の減少

採用倍率の推移をデータで見る

共同実施や早期化が検討されてきた背景として、教員採用試験の倍率がどう推移してきたかを見てみましょう。

小学校教員採用試験倍率の推移

・2000年度(平成12年度):12.5倍(過去最高。採用者数がもっとも少なかった年)
・2005年度(平成17年度):4.5倍
・2010年度(平成22年度):4.4倍
・2015年度(平成27年度):3.9倍
・2020年度(令和2年度):2.7倍
・2024年度(令和6年度):2.2倍
・2025年度(令和7年度):2.0倍(過去最低)

年度は採用年度です(試験はその前年に実施)。出典:文部科学省「令和7年度(令和6年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況等」参考資料1 第7表

25年で8割以上の低下です。文部科学省は、平成12年度以降の倍率の低下について、大量退職に伴う採用者数の増加と、それに伴う既卒の受験者数の減少によるところが大きいと分析しています(同調査のポイント)。

中学校・高校採用試験倍率も低下傾向

2025年度(令和7年度)採用では中学校3.6倍、高校3.8倍で、どちらも過去最低です。小学校よりは高い水準ですが、長期トレンドでは低下傾向。特別支援学校は全国で2.0倍でした。教科別・自治体別の倍率は、同じ資料の表で確かめられます。

受験者数の減少

同じ調査では、2025年度採用の小学校の受験者数は34,434人で、前年度から2,025人減りました(うち新卒572人減、既卒1,453人減)。文部科学省は、臨時的任用教員や非常勤講師を続けながら再チャレンジしてきた層が正規採用されて、既卒の受験者が減ってきていることなどを理由に挙げています。

一方、中学校・高校では、中長期的に新卒の受験者数が減っているとされています(中学校は平成27年度の18,348人から令和7年度は15,389人、高校は10,539人から6,586人)。文部科学省は、民間企業や他の職種の公務員との人材獲得競争の中で、新規学卒者の確保に努める必要があるとしています。ただし中学校は、令和3年度以降、回復の傾向も見られるとしています(同ポイント)。

志望自治体選びの参考|倍率と採用枠の見方

自治体の情報を比べて話し合う

1次試験の日程は自治体ごとに違うので、志望先は「倍率」「日程」「勤務地」をあわせて考えることになります。代表的な指標の見方を紹介します。

自治体ごとの倍率は、文部科学省の県市別の表で確かめる

小学校の倍率は自治体によって差があり、「都市部は高く、地方は低い」とは一概に言えません。たとえば2025年度(令和7年度)採用の小学校は、神奈川県が2.2倍、宮崎県が1.2倍でした。東京都や大阪府のように、小学校と中学校などの試験区分を一部まとめて選考している自治体は、まとめた区分の倍率が示されています。志望先の倍率は、文部科学省の県市別の表(参考資料1 第2表)で確かめてください。

倍率の低い自治体を選ぶときのトレードオフ

倍率が低い自治体は合格の可能性が高い一方、勤務地はその自治体の中に限られます。「教員になりたい」という思いと、住みたい地域・異動の範囲をあわせて考えてください。

政令市は、都道府県と別に選考するところと合同のところがある

文部科学省の集計の対象は、都道府県・政令市の教育委員会などあわせて68です。政令市には、都道府県とは別に採用選考を行うところと、千葉県・千葉市のように合同で行うところがあります。同じ地域でも、県と政令市で日程・区分が違うことがあるので、志望先の実施要項は別々に確かめましょう。志望理由を考えるときは、その自治体が公表している教育の方針(教育振興基本計画など)を読んでおくと、自分の言葉で話しやすくなります。

社会人特別選考の見方|転身を狙う人向けポイント

分かれ道で進路を考える

社会人から教員を目指す人向けに、特別選考の見方を整理します。

志望先の区分を見比べるときは、教員採用試験の特別選考を自治体ごとに見る(社会人・講師経験・現職教員・カムバック)も参考にしてください。

選考の中身は自治体・区分ごとに違う

民間企業などでの勤務経験を評価する特別の選考には、一部の試験の免除、加点、特別免許状を活用した選考などがあり、組み合わせは自治体・区分ごとに違います(文部科学省の集計でも、特別の選考に「一部試験免除、加点、特別免許状を活用した選考、その他の特別選考」を含めています)。たとえば千葉県・千葉市の令和9年度採用の選考では、社会人特別選考の2次選考で、模擬授業の代わりにプレゼンテーションを行います。また、社会人特別選考の「民間企業等の経験」に、学校の教員としての経験を含めない自治体もあります(千葉県・千葉市、大阪市など)。どの区分を受けられるかは、自分の経歴が要件に当たるかどうかで決まるので、志望先の実施要項で確かめてください。

年齢制限の動向

文部科学省の集計(2023年度採用の選考)では、68の都道府県・政令市のうち53で、一般選考(小学校・中学校など中心となる校種)に年齢制限がありませんでした(この集計の「制限なし」は、満59歳以下を対象にしているものを指します)。さらに、定年の引き上げにあわせて上限を60歳以上に広げる自治体も出ています。令和9年度採用の選考では、東京都(特例選考。一部の区分を除く)・埼玉県・神奈川県・千葉県などが昭和40年4月2日以降に生まれた人まで、堺市が62歳まで受験できます。年齢の要件は自治体・区分ごとに違うので、必ず志望先の実施要項で確かめてください。

「45歳で民間からの社会人特別選考で合格しました。一般枠ならハードル高かったけど、特別選考なら職務経験を評価してもらえて、本当に道が開けた感覚です。」
——46歳・元営業職→中学校教諭・女性

社会人・現職教員・講師経験者が使える特別の選考

キャリアプランを書き出す手元

社会人・現職教員・講師経験者が使える特別の選考は、共同実施とは別に、各自治体が独自に設けているものです。1次試験の共通化が始まっても、どの区分があり、何が免除されるかは自治体ごとに確かめる必要があります。

民間経験者向けの特別の選考

民間企業などでの勤務経験を評価する特別の選考を行う自治体は、68の都道府県・政令市などのうち60で、前回の調査(令和5年度採用の選考)の59から増えています(文部科学省)。

ただし、採用者に占める民間企業等勤務経験者の割合は、2025年度採用で全体の4.2%(前年度は4.5%)です。選考の区分が増えていることと、実際に採用される人数の多さは別の話なので、区分があるかどうかに加えて、自分の経歴が要件に当たるかを確かめましょう。

現職教員が他県へ移るときの選考

現職教員が「他県に移りたい」と考えるとき、今の職を辞めなくても、ほかの自治体の採用試験に出願することはできます。さらに、他の自治体で正規の教員として働いている人を対象に、1次試験を免除する特別選考を設けている自治体もあります。たとえば千葉県・千葉市の令和9年度採用の選考の「他県等現職特例選考」は、他県等の国公立学校で正規の教諭などとして2年以上の経験があり、いまも正規で任用されていること(休職・育児休業中を除く)、経験のある校種・教科で受けることなどが条件で、1次選考は免除、2次選考は個別面接のみです。ただし、広島県・広島市の選考のように、その県・市の正規教員は受験できないと定めている選考もあります。受けられる区分や条件は自治体ごとに違うので、受験先の実施要項で確かめておきましょう。

講師経験者向けの試験免除・加点

臨時的任用講師(臨任)として勤務している人や講師経験のある人を対象に、1次試験の一部または全部を免除したり、加点したりする自治体があります。たとえば奈良県の令和9年度採用の選考では、県内の公立学校で県費常勤講師として連続24か月以上勤務し、令和8年4月も勤務している人は、出願時に申請すれば1次試験がすべて免除されます(受験する校種・教科での勤務に限ります。2次試験は受けます)。対象になる講師経験を「その自治体での勤務」に限る自治体もあれば、ほかの自治体での勤務も数える自治体もあり、必要な勤務期間や免除される範囲も自治体ごとに違います。「臨任を続けながら正規採用を狙う」なら、受験先の実施要項で条件を確かめておきましょう。

関連:臨時的任用教員(臨任)のキャリア戦略|正規登用 or 転職?

2次試験は自治体ごとに違う|面接・模擬授業・論文の確かめ方

面接の準備をする

1次試験の問題が共通化されても、2次試験は自治体ごとに行われます。文部科学省の2023年5月の資料は、これまでの一般的な形として「8月に面接や模擬授業等の実技を中心とした2次試験」を挙げていますが、内容と日程は自治体・校種・区分によって違います。

面接

個人面接・集団面接・集団討論など、形式も回数も自治体によって違います。「教員としての適性」「コミュニケーション能力」「教育観」を問われる点は共通しているので、模擬面接で、自分の経験を短く具体的に話す練習をしておくと安心です。

模擬授業・場面指導・実技

模擬授業、場面指導、体育・音楽・英語などの実技を課す自治体・校種があります。板書計画・発問・子どもの反応への対応まで見られるので、本番と同じ形で練習しておくことが大切です。教育実習や講師の経験がある人は、実際の授業場面を思い出しながら準備できます。

論文・作文

論文・作文を課すかどうか、字数や時間も自治体によって違います。テーマに沿って論理的に書く力に加えて、その自治体の教育の方針への理解が問われることが多いので、志望先の教育振興基本計画などに目を通しておきましょう。

どの試験が課されるかは、受験する年の実施要項に必ず書かれています。前年の形を前提にせず、毎年確かめてください。

受験戦略を考える上での3つのアドバイス

戦略的に考える時間

1次試験の日程が動いている今の教員採用試験で結果を出すために、3つのアドバイスをまとめます。

① 志望自治体の選び方を「倍率」だけで決めない

倍率は重要な指標ですが、「働きやすさ」「異動範囲」「住みたい地域」「給与水準」など複数軸で検討してください。教員採用は人生設計に直結するため、合格後に後悔しない選び方が大切です。

② 1次試験の日を先に並べてから、併願先を決める

受けたい自治体の1次試験の日をカレンダーに並べると、どこが併願でき、どこが重なるかが一目でわかります。共通問題を使う予定の自治体は、3日程のどの日に実施するかも確かめましょう。日程が重なった場合は、倍率・勤務地・区分(社会人・講師経験など)を見比べて優先順位を決めます。

③ 不合格時のプランBを早めに準備する

合格発表の時期を実施要項で確かめ、「不合格の場合の次のステップ」を出願時点で考えておくことが大事。臨時的任用講師登録/民間教育業界/別自治体での再挑戦など、複数のルートを想定しましょう。

講師登録を考えるなら、都道府県から講師登録の窓口を探す(学校ではたらく)も参考にしてください。

受験前に確かめる5つ(チェックリスト)

・志望する自治体の1次試験の日(ほかの志望先と重ならないか)
・出願期間と、合格発表の時期
・受けられる特別の選考の区分(社会人・講師経験・現職教員など)と、その条件
・複数日程・地域枠・大学3年生向けの選考などがあるか
・その自治体が共通問題を使うか、使うならどの日程か(2027年度実施の選考から)

どれも受験する年の実施要項で確かめられます。前の年と同じとは限りません。

よくある質問(FAQ)

よくある質問

Q1. 教員採用試験の共通化(共同実施)は、いつから始まりますか?

A. 2027年度(令和9年度)に実施する選考(2028年度=令和10年度採用)から始める予定です。文部科学省の資料(2026年4月30日)では、51自治体の協議会が「共通問題配付方式」での実施に向けて協議中とされ、2026年7月29日には協議会が出題方針を公表し、開始に向けて準備を進めていると示しています。現在(2026年4月時点)の1次試験は、各都道府県・政令市の教育委員会がそれぞれ独自に実施しています。

Q2. 共通化には、どこの自治体が参加しますか?

A. 文部科学省の資料では、2026年4月時点で協議会に参画しているのは、37道府県・13政令市と大阪府豊能地区の51自治体です。東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県などは、この一覧に入っていません。協議会に参画していても、共通問題をどう使うかは自治体ごとに案内されるので、受験する自治体の実施要項で確かめてください。

Q3. 共通化されたら、1次試験は1つの自治体しか受けられなくなりますか?

A. 一律にそうなるわけではありません。文部科学省の資料では、共通問題配付方式は1次試験の実施日をそろえる必要があり、同じ日に試験をする自治体どうしの併願は難しいとされています。そのうえで、統一日を複数用意し、日程の重ならない自治体を併願できるようにすることが想定されていて、協議会は5月8日・6月12日・7月10日(いずれも土曜日)の3日程で合意しています。協議会に参画していない自治体との併願は、その自治体の試験日しだいです。

Q4. 共通問題になると、自治体独自の問題はなくなりますか?

A. なくなるとは限りません。共通問題配付方式は、共通問題をもとにしながら、自治体が独自に問題を追加・改変できる方式です。協議会の出題方針(2026年7月29日)も、試験問題を自治体が独自に改編して使う場合があること、一般教養や教職教養を実施しない自治体もあることを示しています。2次試験は、これまでどおり各自治体が行います。

Q5. いまの教員採用試験の1次試験は、何月にありますか?

A. 自治体ごとに違います。文部科学省の集計では、2024年に実施された選考(2025年度採用)で、6月までに1次試験を行った自治体は68のうち40(前年は16)で、そのうち6月第3週が29でした。2025年に実施された選考(2026年度採用)も6月までが40で、5月以前が10ありました(文部科学省調べ)。志望する自治体の実施要項で日程を確かめてください。

Q6. 教員採用試験は、年に何回受けられますか?

A. 自治体によって違います。春から夏の選考に加えて、秋から冬などに特別の選考を行うなど、日程を複数設けている自治体は、2024年に実施された選考で30(前回の調査の2022年実施の選考では20)でした(文部科学省)。複数の自治体を受けるなら、それぞれの1次試験の日が重ならないかも確かめてください。

Q7. 民間企業から教員を目指す場合、共同実施は有利ですか?

A. 共同実施は1次試験の問題を自治体が共同で作る仕組みで、民間からの転身者向けの制度ではありません。転身者に関わるのは、各自治体が別に設けている特別の選考です。民間企業などでの勤務経験を評価する特別の選考を行う自治体は、68の都道府県・政令市などのうち60(前回の調査は59)で、試験の一部免除や加点、プレゼンテーションなど、中身は自治体・区分ごとに違います。志望先の実施要項で確かめてください。

合格後に知っておきたい|配属・初任給・初年度の研修

教員生活のスタート

合格はゴールではなくスタート。新任教員として勤務を始める前に知っておくべき基本情報を整理します。

配属先は、採用した自治体の中で決まる

どの学校に配属されるかは、採用した教育委員会などが決めます。希望がどこまで考慮されるか、異動の範囲がどこまでかは、自治体ごとに違います。住まいや家族の事情がある人は、志望先の採用案内や説明会で、配属と異動の考え方を確かめておきましょう。

初任給は自治体の給料表(条例)で決まる

公立学校の教員の初任給は、都道府県・政令市ごとの条例で定める給料表で決まり、全国一律の額はありません。地域手当などの手当や、期末手当・勤勉手当(ボーナス)の支給月数も、自治体の条例で決まります。志望する自治体の採用案内や給与条例で、初任給の例を確かめてください。

初任者研修の負担

新任教員は初任者研修(教育公務員特例法第23条により、採用の日から1年間)を受ける義務があり、通常業務と並行して進めます。初任者研修を実施するのは、法律で「研修実施者」とされる教育委員会です。多くは採用した教育委員会(任命権者)ですが、中核市の小中学校などでは、その中核市の教育委員会が実施します。進め方は自治体によって違います。1年目は通常業務に加えて研修の時間も見込んでおきましょう。

そして、合格して着任したあとに「辞めたい」と思うこともあります。それは失敗ではありません。採用されたあとに辞めたいと思ったら|初任1年目のデータと制度を用意しています。

まとめ|共同実施は2027年度実施の選考から。いまは日程の確認がいちばん大事

教員採用試験の共同実施(共通化)は、2027年度実施の選考から、51自治体の協議会が作る共通問題を1次試験に使う予定の仕組みです。2024年に起きたのは早期化で、共同実施はまだ始まっていません。

本記事のポイントを再確認しましょう。

・共同実施(共通問題配付方式)は、2027年度(令和9年度)実施の選考からの開始に向けて準備中(2026年7月時点)
・協議会に参画しているのは37道府県・13政令市・大阪府豊能地区の51自治体(2026年4月時点)
・2024年に起きたのは1次試験の早期化。6月までに1次試験をした自治体は16から40に
・共通問題でも、自治体の改編や2次試験の違いは残る。併願できるかは日程しだい
・社会人・現職教員・講師経験者の特別の選考は、各自治体が別に設けている。条件は実施要項で確かめる

制度の話は、どうしても「いつ時点の情報か」で答えが変わります。受験する年の実施要項を手元に置いて、日程と区分を1つずつ確かめていけば、迷いはずいぶん減るはずです。受験準備に迷ったら、同じ道を通ってきた元教員に相談するのも一つの方法です。

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Re-Career代表 新川紗世
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