教員・教師を辞めたいと思ったら|辞める前の12の判断基準と辞めない選択肢【元教員が解説】

教員・教師を辞めたいと思ったとき、最初に必要なのは転職先の情報ではありません。「その気持ちが、辞めないと解決しないものかどうか」を切り分けることです。この記事では、辞める前に確認したい12の判断基準と、辞めない選択肢、そして辞めたときにお金と保障がどう変わるかを、元教員の立場から順番に整理していきます。

私自身、公立中学校の教員として11年、その後に私立高校で1年勤めました。教員時代に病休を経験して退職しています。「辞めたい」と検索していた時期が、私にもありました。そのときにいちばん欲しかったのは、励ましでも転職先のリストでもなく、「今の自分は、どのくらいまずい状態なのか」を測るものさしでした。

Re-Careerは「辞めるが正解じゃない。選択肢を持つことが正解」という立場で運営しています。この記事も、辞めることをすすめる記事ではありません。辞める・続ける・変える。どれを選んでも読めるように書きます。

新川紗世 Re-Career代表

この記事の著者

新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役

公立中学校で11年、私立高校で1年、あわせて12年、英語教員として勤務。教員時代に病休を経験し退職。その後、教員専門のキャリア支援会社を設立。著書『「やめたいかも」と一度でも思ったら読む 教員の転職思考法』。スタッフ全員が元教員のキャリア支援会社を率い、自身も延べ1,000名以上のキャリア支援に携わる。

⏱️ 30秒でわかる結論

「辞めたい」は判断のスタート地点。辞める前に、12項目で自分の状態を測る。

まず結論心身の不調が出ているなら、判断より先に休む。判断は回復してからでいい

データ精神疾患による病気休職は年7,087人(文部科学省・令和6年度)。あなただけの話ではない

辞めたい理由1位は仕事量57.0%、長時間労働54.2%、家庭との両立44.9%。給与は14%(元教員107名・当社調査)

辞めない選択肢異動希望・校務分掌の交渉・病気休暇・休職・時短・校種変更。使わないまま辞める前に、全部並べる

お金の注意公立教員は雇用保険に入っていないため、辞めても失業手当は出ない。ここを知らずに辞めない

順番①休む → ②言語化する → ③辞めない選択肢を並べる → ④それでも辞めるなら準備する

「教員を辞めたい」と思ったときに、まずやること【結論】

教員を辞めたいと思ったときに立つ分かれ道

結論から書きます。「教員を辞めたい」と思ったときに最初にやることは、辞める・辞めないを決めることではありません。順番はこうです。

「辞めたい」と思ったときの4つの順番

  • ① 休む……眠れない・食べられない・涙が出るなどの症状があるなら、判断より先に体を戻す
  • ② 言語化する……何が嫌なのかを、人・業務・時間・構造の4つに分けて紙に書き出す
  • ③ 辞めない選択肢を並べる……異動・分掌交渉・休暇・休職・時短・校種変更を全部机に載せる
  • ④ それでも辞めるなら、準備してから辞める……お金・時期・伝える順番を決めてから動く

この順番を飛ばして④から入ると、「辞めたのに同じ理由でまた苦しくなる」という結果になりやすいです。

なぜ「まず休む」なのか

相談を受けていて、私がいちばん多く感じるのがこれです。疲れきっている状態で下した決断は、回復したあとに本人がいちばん納得できていない。

睡眠が削られ、休日も授業準備と部活で潰れている状態だと、「他の選択肢を考える」という作業そのものができません。思考の幅が狭くなって、「続ける」か「今すぐ辞める」の2択に見えてしまう。でも実際には、その間に選択肢はいくつもあります。

心身の症状が出ているなら、適応障害になった教員が最初にやることと教員の休職制度の解説を先に読んでください。診断書は「辞めるための書類」ではなく、「辞めずに休むための書類」でもあります。

「辞めたい」と検索する人が本当に知りたいこと

「教員 辞めたい」と検索してこの記事にたどり着いた方が知りたいのは、おそらく辞め方そのものではありません。次の3つではないでしょうか。

  • この気持ちは、甘えではないのか(=正当性の確認)
  • 辞めても生活していけるのか(=お金と身分の確認)
  • 辞める以外に、この状況を変える方法はないのか(=選択肢の確認)

この記事は、その3つに順番に答えていきます。

教員・教師が「辞めたい」と感じる7つの理由|文科省データで見る現在地

教員・教師が辞めたいと感じる理由のデータ

教員・教師が「辞めたい」と感じる理由は、感情ではなくデータとして集計できる形で存在しています。まず、当社が2026年3〜5月に実施した独自調査の結果を出します。全国35都道府県の元教員107名(女性64名・男性42名/小学校49・中学校37・高等学校12・特別支援学校3)に、退職理由を複数回答で聞いたものです。

順位 理由 回答率 中身
1位 仕事量 57.0% 校務分掌・行事・書類。授業以外が終わらない
2位 長時間労働 54.2% 朝7時出勤・夜9時退勤・土日は部活が常態化
3位 家庭との両立 44.9% 女性回答者(n=64)では57.8%。育児・介護と物理的に両立しない
4位 キャリア拡張 39.3% 「他のことをやってみたい」という前向きな理由
5位 仕事内容 37.4% なりたかった教員像と、実際の業務のズレ
6位 体調 35.5% 回答者の27%が在職中に病気休職を経験している
7位 将来への不安 29.9% 教員を続けた先の見通しが持てない(選択肢名は「将来不安」)
8位 現場の空気感・閉塞感 24.3% 意見が通らない、前例が変わらない
同率9位 人間関係 20.6% 同僚・管理職との関係。保護者対応もここに含まれる
同率9位 制度・評価への不満 20.6% 評価が処遇に結びつかない

※ 複数回答(n=107)。「人間関係」と「制度・評価への不満」は回答数が同数のため同率9位です。これに次ぐ11位は「管理職への不安」で、TOP10には入っていません。

この結果でいちばん重要なのは、「給与待遇」を退職理由に挙げた人が14%にとどまったことです。世間では「教員は給料が安いから辞める」と語られがちですが、実際に辞めた人の声はそうではありません。上位3つはすべて「働く量と時間」に関するものでした。調査の全体像は教員が辞める理由ランキングTOP10|元教員107名調査と教員の退職理由TOP3の詳細分析にまとめています。

文部科学省のデータでも同じ方向を向いている

文部科学省の令和6年度 公立学校教職員の人事行政状況調査によると、精神疾患を理由に病気休職した公立学校の教育職員は7,087人で、全教育職員の0.77%にあたります。前年度(令和5年度)の7,119人からほぼ横ばいで、高止まりが続いている状態です。

内訳を見ると、学校種別では小学校が3,458人と全体の約半数、次いで中学校が1,639人。年代別では30代が2,118人で最多、次いで50代以上が1,892人となっています。休職に至った要因としては、児童生徒への指導、上司や同僚との対人関係、校務分掌や調査対応といった事務的な業務負担が挙げられています。

「最初は『この仕事、自分に向いていないんじゃないか』と思って。指導力がないのかも、とか、自分に合っていないかもしれない、って色々ひどく考えてました」

——Re-Career受講生インタビューより(くまこさん・40代・小学校教員)

この数字は「だから辞めるべき」という材料ではありません。「これはあなた個人の適性の問題ではない」という材料です。そこを取り違えないでください。

「先生を辞めたい」は甘えではない|追い詰められる構造の話

先生を辞めたいと悩む教員

「先生を辞めたい」と口にすると、「みんな大変なんだから」「子どものために」と返される。それが怖くて誰にも言えない、という相談があります。

ここははっきり書きます。「辞めたい」は甘えではありません。制度と構造の問題です。理由を3つ挙げます。

理由1:残業が「残業」として存在しないことになっている

公立学校の教員には、給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)が適用されます。教職調整額として給料月額に定率を掛けた額(改正前は4%、2026年1月からは5%)が一律で支給される代わりに、時間外勤務手当(残業代)は支給されません。つまり働く時間が増えても、給与は1円も動かない設計です。

2025年(令和7年)6月に改正給特法が成立・公布され(令和7年法律第68号)、この教職調整額は給料月額の4%から令和12年度までに10%へ段階的に引き上げられることが決まりました。ただしこれは「増えた仕事に対して支払われる」仕組みではなく、働いた時間と支給額が連動しない構造そのものは変わっていません。仕事量が減らない限り、体感はほとんど変わらないと考えたほうが現実的です。

理由2:業務の総量を、現場では決められない

授業、校務分掌、行事、部活動、保護者対応、研修、各種調査への回答。これらはどれも「やらない」という選択肢が現場にありません。民間企業なら「工数が足りないので今期は見送ります」が成立する場面でも、学校では成立しにくい。コントロールできない仕事が増え続ける環境は、本人の能力や熱意とは無関係に人を消耗させます。

理由3:逃げ道が構造的に少ない

民間なら部署異動や配置転換が比較的柔軟です。学校は年度単位で人が動くため、4月に決まった担任・分掌・部活動は、原則としてその年度は変わりません。合わない環境に当たったとき、次の3月まで耐えるしかない構造になっている。これは根性の問題ではなく、人事の仕組みの話です。

「やめるというアイデアが全く浮かんでこなかったんです。子ども達と学ぶことや関わり、教育はとても楽しく、物理的に辛かっただけなので。来年は楽になるだろう、来年こそはと思い続けて、でも一向に教員数は改善されず」

——Re-Career受講生インタビューより(バタタさん・40代・中学校理科)

職員室の人間関係そのものがつらい場合は、教員の人間関係がつらいと感じたときの整理のしかたも合わせて読んでみてください。管理職からの言動が指導の範囲を超えていると感じるなら、教員のパワハラの相談先と記録の残し方に手順をまとめています。

教員を辞める前に確認したい12の判断基準チェックリスト

教員を辞める前の判断基準チェックリストを書き出すノート

ここが、この記事の中心です。教員を辞める前に確認したい12項目を挙げます。紙に書き出して、当てはまるものに印をつけてください。スマホのメモでも構いませんが、可能なら手で書くほうが整理されます。

A. 心身の状態(3項目)

  • 1. 平日の睡眠が6時間を切る日が、週の半分以上ある
  • 2. 休日に何もする気が起きない、または休んでも疲れが抜けない状態が1か月以上続いている
  • 3. 出勤前に動悸・吐き気・涙が出る、朝起きられないといった身体症状がある

3にひとつでも当てはまるなら、この先の項目は一旦飛ばしてください。最優先は受診と休養です。判断は回復してからで間に合います。

B. 原因の切り分け(3項目)

  • 4. つらさの原因を「特定の人」「特定の業務」「時間の総量」「学校という構造」の4つに分けて説明できる
  • 5. その原因のうち、異動や分掌の変更で消えるものと、消えないものを区別できている
  • 6. 「来年度、担任も分掌も部活も希望どおりになったら続けられるか」に、はっきり答えられる

6に「それでも辞めたい」と即答できるなら、原因は環境ではなく仕事内容そのものにある可能性が高いです。逆に「それなら続けられるかも」と思ったなら、辞める前にやれることがまだ残っています。

C. お金と生活(3項目)

  • 7. 現在の手取り月額と、生活に最低限必要な月額の差を、数字で言える
  • 8. 退職した場合の退職手当のおおよその額を調べてある
  • 9. 公立教員には失業手当が出ないことを知ったうえで、無収入期間の生活費を計算してある

9はとても重要なので、後の章で詳しく書きます。ここを知らずに3月末で辞めて、4月から想定外の資金繰りになる方が実際にいます。

D. 次への準備(3項目)

  • 10. 教員以外の仕事を、職種名で3つ以上挙げられる
  • 11. 自分の経験を、学校の外の人に通じる言葉で説明したことがある
  • 12. 家族やパートナーに、辞めたいと考えていることを話してある

判定の目安(当てはまった数)

  • 3に該当あり……まず受診。判断は先送りしてよい
  • A〜Dで0〜4個……まだ整理の段階。辞めない選択肢から検討する
  • 5〜8個……準備を始める段階。ただし在職中に動くほうが有利
  • 9個以上……行動の段階。時期と伝える順番を設計する

この判定は医学的な診断ではありません。自分の状態を言語化するための目安として使ってください。

書き出して整理すると何が起きるか。実際に手を動かした方の言葉を載せます。

「自分がやってきたことや興味を持てることを書き出していく中で、『あ、自分ってこういうことがやりたかったんだな』というのがはっきりしてきました」

——Re-Career受講生インタビューより(篠崎さん・50代・高等学校教員)

「辞める」以外にもある第3の道|異動・休職・時短・校種変更

辞める以外の選択肢を並べて考える

相談を受けていて、私がいちばんもったいないと感じるのがこれです。制度として使えるはずの選択肢を、一度も使わないまま辞めてしまうことがあります。

「辞める」と「今のまま続ける」の間には、少なくとも8つの道があります。まず全部机の上に並べてください。並べたうえで選ばないのと、知らずに選べないのとでは、あとの納得感がまったく違います。

選択肢 向いている状況 注意点・実際のところ
異動希望を出す 人間関係・管理職・地域性が原因のとき 希望調査は10〜11月が多い。内示は年度末。1回で通らないことも多く、複数年かかる場合がある
校務分掌・部活動の交渉 業務量の偏りが原因のとき 年度末の希望調査のタイミングで、口頭ではなく文書で残す。主顧問から副顧問への変更は実例がある
病気休暇を取る 心身の症状が出ているとき 多くの自治体で最長90日、給与は全額支給。診断書が必要。辞めずに離れられる最初の手段
病気休職に入る 90日で戻れないとき 多くの自治体で休職は最長3年。1年目は給料のおよそ8割、2年目以降は無給だが共済から傷病手当金
育児部分休業・時短 育児との両立が原因のとき 制度上は取得できるが、担任を外れる・分掌が変わるなど運用は自治体と学校で差がある
校種・自治体を変える 校種特有のつらさが原因のとき 小学校の全教科担任がつらいなら中高、生徒指導がつらいなら特別支援や高校など。他県受験も含む
公立から私立へ移る 異動や地域性が原因のとき 身分・給与体系・退職金の仕組みが変わる。異動がない代わりに学校が合わないと逃げ場もない
非常勤・会計年度任用に切り替える 総量を減らしたいとき 収入と身分の安定は下がるが、部活動と校務分掌から離れられる。副業が可能になる場合がある

「休む」を選択肢から外さない

多くの自治体では、病気休暇は最長90日まで給与が全額支給されます。そこで戻れなかった場合は病気休職に移り、休職1年目は給料のおよそ8割が支給されるのが一般的です。2年目以降は無給になりますが、公立学校共済組合から傷病手当金(標準報酬日額の3分の2相当)が通算1年6か月、その後さらに附加金が6か月支給される仕組みがあります。休職期間は最長3年としている自治体が多いです。

ただし制度の細部は自治体の条例によって差があります。必ずご自身の都道府県・市の条例と、共済組合の給付案内を確認してください。概要は教員の休職制度の解説に、診断書の取り方から復職までの流れは教員のうつ病からの復職・転職ガイドにまとめています。

それでも「辞めない選択肢」が効かない場合

次のようなときは、環境調整では解決しません。無理に続けるほうがリスクが大きい局面です。

  • 異動しても、学校という仕事の枠組み自体が合わないと分かっている
  • 復職と再発を2回以上繰り返している
  • やりたいことが教員の外にはっきり見えている

この場合は、辞めることが「逃げ」ではなく「選択」になります。ここまで来て初めて、転職先の話が意味を持ちます。

年代別|20代・30代・40代・50代で変わる「辞めたい」の中身

年代別に教員のキャリアを設計する

同じ「辞めたい」でも、年代によって中身がまったく違います。ここを混ぜて考えると、判断がぶれます。

年代 「辞めたい」の中身 転職市場での立ち位置 詳しい記事
20代 「向いていないのでは」という適性の不安。初任研と担任が同時に来る 第二新卒として扱われる年代。経歴の傷を過剰に恐れなくてよい 2290 / 3050
30代 育児・介護との両立。責任ある分掌が回ってきて総量が跳ね上がる 転職市場で最も動きやすい層。ただし収入を落とせない制約が強い 2309 / 2289
40代 管理職ルートに乗るかどうかの分岐。年収を維持できるかが最大の関心 マネジメント経験が評価される。求人数は減るが単価は下がらない 2291 / 4741
50代 退職手当と年金の受給設計が判断の中心になる 早期退職の割増と、定年まで勤めた場合の差額を必ず計算してから決める 2297 / 2286

20代|「3年は続けるべき」に根拠はない

「まだ3年経っていないから」という理由で動けない、という相談があります。ただ、企業の採用現場で「教員を3年やったかどうか」を基準に見ている担当者に、私は会ったことがありません。見られているのは在籍年数ではなく、「なぜ辞めるのか」を自分の言葉で説明できるかです。1年目・2年目のつらさの構造は教員を辞めたい初任・新任の先生へ|1年目・2年目に特化した解説に、20代の転職の進め方は教員の転職は20代がベスト?に詳しく書いています。

30代|「収入を落とせない」が最大の制約

30代の相談では、辞めたい気持ちより先に、住宅ローンや子どもの学費といったお金の制約が話に出てくることがあります。この場合、いきなり退職を検討するより、時短・部分休業で総量を下げながら在職中に情報を集めるほうが現実的なことが多いです。教員ママが辞めたいと感じる構造的な理由と30代教員の転職は遅くないを合わせて読んでみてください。

40代|管理職ルートに乗るかどうかの分岐

40代は「このまま教頭を目指すのか」という分岐が来る年代です。教頭の勤務実態を見て、「これを目指すために今の生活を続けるのか」と考え直す方がいます。40代の転職は遅くありません。むしろマネジメント経験が評価されるタイミングです。戦略は40代教員の転職は本当に遅い?にまとめています。

50代|先に計算する。感情の前に数字

50代の判断は、退職手当と年金の設計がすべてと言っていいくらいです。早期退職の割増を取るのか、定年まで勤めるのか。この差額を出さずに決めるのは、いちばんもったいないと思います。教員の退職金の勤続年数別の手取り早見表で自分の位置を確認してから、50代教員の定年後セカンドキャリアを読む順番をおすすめします。

お金の話|教員を辞めると収入と保障はこう変わる

教員を辞めたあとの収入と保障を計算する

ここが、いちばん誤解されている部分です。教員を辞めるとお金と保障がどう変わるか、事実だけを書きます。

公立学校の教員には、失業手当が出ない

公立学校の正規教員は地方公務員であり、雇用保険に加入していません。雇用保険法の適用除外にあたるためです。したがって退職しても、ハローワークの失業給付(基本手当)は支給されません。

判定は簡単です。給与明細の控除欄に「雇用保険料」の天引きがあるかどうかを見てください。なければ、あなたは雇用保険の被保険者ではありません。私立学校の教職員や、勤務形態によっては会計年度任用職員・非常勤講師の方が対象になっている場合があります。

代わりに「失業者の退職手当」という制度があります。これは、支給された退職手当の額が雇用保険の失業給付相当額に満たず、かつ退職の翌日から一定期間内に失業している場合に、その差額が支給されるものです。各都道府県の教育委員会が案内を出しています。ただし勤続年数が長いほど退職手当が大きくなるため、実際には「差額が発生せず1円も出ない」ケースが多いのが実情です。埼玉県教育委員会は、この制度をおおむね勤続3年未満の教職員を対象とするものと説明しています(勤続12か月以上・退職の翌日から1年以内に失業していること等が要件)。詳しくは教員が辞めたら失業保険はもらえる?公立が対象外でも届く5つのお金制度にまとめています。

辞める前に必ず数字にしておくこと

  • 退職手当の見込み額(勤続年数と退職理由で大きく変わる)
  • 無収入期間の生活費(失業手当が出ない前提で、最低3〜6か月分)
  • 健康保険をどうするか(共済の任意継続/国民健康保険/家族の扶養)
  • 年金の切り替え(共済組合から国民年金・厚生年金へ)
  • 住宅ローンや教育費など、削れない固定費の月額

「辞めてから調べる」ではなく「調べてから辞める」。この順番だけは崩さないでください。

退職の時期でも金額が変わる

退職手当は勤続年数で計算されるため、3月末退職と年度途中退職では額が変わります。また賞与(期末・勤勉手当)は基準日に在職していることが要件なので、基準日の前に辞めると支給されません。年度途中で辞めざるを得ない事情がある場合の手順は教員が年度途中に辞める方法に、金額の目安は教員の退職金はいくら?に整理しています。

「次への準備をせずに退職してしまったことが、経済的な不安定さもあり少し心残りです。十分な準備をしてからの退職であれば、安心感が違ったのかとも感じています」

——元教員キャリア実態調査 2026(n=107)の自由記述より(50代・女性・元特別支援学校教員)

教員を辞めた人・辞めなかった人|3つの実例

教員を辞めた人と辞めなかった人に話を聞く

実際に話を聞かせていただいた3人を紹介します。いずれもご本人の同意を得て公開しているインタビューからの引用です。結論は、3人とも違います。

実例1:やめたい気持ちが8割だったが、続けることを選んだ(30代・特別支援学校)

校内研究の対象になって業務量が増え、ペアを組む先生を指導する立場にもなった年。「言いたいことも言えなくて、ずっと抑えながら過ごしていて、本当にいっぱいいっぱいでした」という状態で、やめたい気持ちは8割だったと話されています。

その後に本人から出てきた言葉が、「逃げたかっただけだったんだな」でした。「好きでやってきたんだということを改めて確認できました。そう思ったらやめる理由がなくなったというか、続けることを自分で選べた感じです」——結論は、辞めないことでした。(のびさん・30代・特別支援学校教員/Re-Career受講生インタビューより)

実例2:休んだ期間に転職活動をしたが決めきれず、一度戻ってから決めた(30代・小学校)

「大変すぎて病気でお休みをもらった時期があって、その間に転職活動をしました」。教員免許しか持っていないからと保育関係で探し、内定も出た。けれど「教員と比べると年収が下がるし、モヤモヤが拭えなくて。結局『教員しかないかな』と思って復帰することにしました」。

復帰してみても働き方は変わっていないと感じ、そこから改めて自分の望みを整理して、今度は自分で決めて退職されています。疲れきっている最中の転職活動は、決めきれないまま終わりやすい。①まず休む、を先に置く理由がここにあります。(Nanaさん・30代・小学校教員14年/Re-Career受講生インタビューより)

実例3:勤続25年の区切りで、早期退職を選んだ(50代・小中学校)

50歳を前に、子どもの習い事の送り迎えと親の介護が重なり、睡眠も取れなくなった。「何のために仕事しているのかが自分でもわからなくなってしまいました」という時期を経て、50歳で初めて自分を深く掘り下げたと話されています。

変えられるものと変えられないものを分けたところ、まず働き方のほうが先に変わりました(「残業がすごく少なくなりました。今は定時から1〜2時間以内には帰れるようになっています」)。そのうえで、勤続25年の節目に早期退職制度を使うと決められています。「嫌になってやめるわけじゃないので、それはいい意味での区切りだと思っています」。(よねさん・50代・教員歴25年/Re-Career受講生インタビューより)

辞めた後の実際の暮らしがどうだったかは、教員を辞めた後の幸せな人生|元教員100人のリアルな声に、良かったという声と後悔した声の両方を載せています。後悔した人としなかった人の分かれ目は教員の転職で後悔した人/しなかった人の決定的な違いにまとめました。

3人に共通しているのは、結論が違っても、決める前に自分の状態と望みを言葉にしていたことです。続けると決めた人も、辞めると決めた人も、そこは同じでした。逆に、言葉にする前に動いた期間は、決めきれないまま終わっています。

辞めると決めたあとの手順|切り出し方から年度途中退職まで

辞めると決めたあとの手順を3ステップで進める

ここまで来て「それでも辞める」と決めたなら、準備の順番があります。思い立った順にやると必ず損をします。

ステップ1:在職中に情報を集める(辞める3〜6か月前)

退職してから探すより、在職中に探すほうが圧倒的に有利です。収入が途切れないので、条件を妥協せずに済みます。教員経験がどの職種で評価されるのかは教員・教師からの転職先おすすめ15選にまとめました。まず職種名を3つ挙げられる状態を目標にしてください。

ステップ2:伝える順番を決める(辞める2〜3か月前)

公立学校では、次年度の人事は前年度の秋から動き始めます。一般には年内から遅くとも1月ごろまでに管理職へ意思を伝えるのが、学校にとっても本人にとっても穏やかです。ただし自治体や学校によって運用は違います。切り出し方の具体的な言い方は教員が「辞めます」を伝えるタイミングと伝え方に例文つきで書いています。

伝える順番は、①家族 → ②管理職(校長)→ ③学年主任など直属 → ④同僚が基本です。同僚に先に話すと、管理職の耳に別ルートで入ることがあり、その後の話し合いが難しくなります。

ステップ3:手続きと引き継ぎ(辞める1か月前〜)

  • 退職願・退職届の提出(様式は自治体ごとに指定がある)
  • 健康保険の切り替え(共済の任意継続は退職後20日以内など期限がある)
  • 年金の切り替え、住民税の納付方法の確認
  • 指導要録・成績・所見など、年度をまたぐ書類の引き継ぎ

年度途中に辞めざるを得ない場合は年度途中に辞める方法と手順を参照してください。「迷惑をかけるから年度末まで」と考えて心身を壊すのは、順番が逆です。体が先、制度は後から追いつきます。

校種・職種によって進み方が違う

同じ「辞めたい」でも、校種や職種で事情が変わります。該当するものがあれば、そちらも読んでみてください。

よくある質問

Q. 教員を辞めたいと思うのは甘えですか?

A. 甘えではありません。文部科学省の令和6年度調査では、精神疾患を理由に病気休職した公立学校の教育職員は7,087人で、全教育職員の0.77%にあたります。また当社が元教員107名に実施した調査では、退職理由の上位3つが「仕事量57.0%」「長時間労働54.2%」「家庭との両立44.9%」と、いずれも働く量と時間に関するものでした。給特法によって働いた時間と給与が連動しない構造や、年度単位でしか人が動かない人事の仕組みなど、個人の努力では動かせない要因が大きく関わっています。ただし「甘えではない」ことと「辞めるべき」は別の話です。まず状態を測ることから始めてください。

Q. 教員を辞めたら失業保険(失業手当)はもらえますか?

A. 公立学校の正規教員は地方公務員で雇用保険に加入していないため、ハローワークの失業給付(基本手当)は支給されません。判定は給与明細の控除欄に「雇用保険料」の天引きがあるかで確認できます。代わりに「失業者の退職手当」という制度があり、支給された退職手当が雇用保険の失業給付相当額に満たない場合に差額が支給されますが、勤続年数が長いほど退職手当が大きくなるため、実際には支給されないケースが多いです。私立学校の教職員や、勤務形態によっては非常勤講師・会計年度任用職員の方が雇用保険の対象になっている場合があります。

Q. 教員を辞めたいけれど、辞めずに済む方法はありますか?

A. 少なくとも8つの選択肢があります。異動希望を出す、校務分掌や部活動の担当を交渉する、病気休暇を取る、病気休職に入る、育児部分休業や時短を使う、校種や自治体を変える、公立から私立へ移る、非常勤や会計年度任用職員に切り替える、です。相談の現場で最ももったいないと感じるのは、これらを一度も使わないまま辞めてしまうことです。「来年度、担任も分掌も部活も希望どおりになったら続けられるか」にはっきり答えられるかどうかが、辞めない選択肢が有効かどうかの分かれ目になります。

Q. 教員を辞めるなら、何年目まで我慢すべきですか?

A. 「3年は続けるべき」に客観的な根拠はありません。企業の採用担当者が「教員を何年やったか」を基準にしている場面を、私は見たことがありません。見られているのは在籍年数ではなく、「なぜ辞めるのか」を自分の言葉で説明できるかどうかです。むしろ心身に症状が出ている状態で年数を優先すると、回復に必要な時間のほうが長くなることがあります。年数ではなく、心身の状態と、原因が環境調整で解決するかどうかで判断してください。

Q. 休職すると、給料はどうなりますか?

A. 多くの自治体では、病気休暇は最長90日まで給与が全額支給されます。そこで復帰できない場合は病気休職に移り、休職1年目は給料のおよそ8割が支給されるのが一般的です。2年目以降は無給になりますが、公立学校共済組合から傷病手当金(標準報酬日額の3分の2相当)が通算1年6か月、その後さらに附加金が6か月支給される仕組みがあります。休職期間は最長3年としている自治体が多いです。ただし制度の細部は自治体の条例によって差があるため、ご自身の都道府県・市の条例と共済組合の給付案内を必ず確認してください。

Q. 教師を辞めたいことを、いつ誰に伝えればいいですか?

A. 公立学校では次年度の人事が前年度の秋から動き始めるため、一般には年内から遅くとも1月ごろまでに管理職へ意思を伝えるのが、学校にとっても本人にとっても穏やかです。ただし自治体や学校によって運用は違います。伝える順番は、①家族 ②管理職(校長)③学年主任など直属 ④同僚が基本です。同僚に先に話すと管理職の耳に別ルートで入り、その後の話し合いが難しくなることがあります。心身に症状が出ている場合は、この順番より受診が優先です。

Q. 先生を辞めたら、次の仕事はありますか?

A. あります。当社が元教員107名に行った調査でも、退職後の進路は個人事業主・フリーランス、民間企業の正社員、非常勤講師、公務員(教員以外)などに分かれていました。ただし「教員経験は活きます」という抽象的な言い方は、実際の転職活動では役に立ちません。重要なのは、学級経営を「複数の利害関係者を巻き込んだ進行管理」に、保護者対応を「難易度の高い折衝」に翻訳して説明できるかどうかです。職種名を3つ挙げられる状態になってから動き始めると、面接で「なぜこの仕事なのか」に答えられるようになります。

Q. 辞めたい気持ちを誰にも相談できません。どうすればいいですか?

A. 校内で相談しにくいのは、あなたの人間関係の問題ではなく、学校が「辞める話をしにくい構造」を持っているからです。辞めるかどうかを決めていない段階なら、校内より校外に話す相手を持つほうが安全です。心身の症状がある場合は、まず医療機関か自治体の職員相談窓口へ。管理職の言動が指導の範囲を超えていると感じる場合は、記録を残したうえで教育委員会や外部窓口を使う手順があります。キャリアの整理として話したい場合は、元教員が対応する相談先を選ぶと学校の前提から説明せずに済みます。

まとめ

  • 「教員を辞めたい」と思ったときの順番は、①休む ②言語化する ③辞めない選択肢を並べる ④それでも辞めるなら準備する
  • 心身に症状が出ているなら、判断より先に受診と休養。判断は回復してからで間に合う
  • 精神疾患による病気休職は年7,087人・全教育職員の0.77%(文部科学省・令和6年度)。個人の適性の問題ではない
  • 辞めた人の理由の1位は仕事量57.0%、2位は長時間労働54.2%、3位は家庭との両立44.9%。給与を挙げた人は14%にとどまる(元教員107名・当社調査)
  • 辞める前に確認したいのは12項目。心身の状態3・原因の切り分け3・お金3・次への準備3
  • 「辞める」と「今のまま続ける」の間には、異動・分掌交渉・病気休暇・休職・時短・校種変更など少なくとも8つの選択肢がある
  • 病気休暇は最長90日まで給与全額、休職1年目はおよそ8割(多くの自治体の場合)。「休む」を選択肢から外さない
  • 公立学校の教員は雇用保険に入っていないため、辞めても失業手当は出ない。判定は給与明細の「雇用保険料」欄で行う
  • 年代で「辞めたい」の中身は変わる。20代は適性の不安、30代は両立、40代は管理職ルートの分岐、50代は退職手当と年金
  • 辞めると決めたら、①在職中に情報を集める ②年内〜1月に管理職へ伝える ③手続きと引き継ぎ、の順番で進める
  • 辞めた人も辞めなかった人も、判断の順番を踏んだ方は後から揺れない。辞めるが正解じゃない。選択肢を持つことが正解です。

合わせて読みたい|Re-Careerの総合ガイド

本記事の内容と関連する、当サイトの総合ガイドもぜひご覧ください。




Re-Career代表 新川紗世
元教員が運営するキャリア支援

お金もキャリアも、自分で選ぶ。
そのために、選択肢を一緒に見ていきませんか?

Re-Careerは元教員が立ち上げた、教員専門のキャリア支援サービスです。
「辞める/続ける/変える」どの選択でも、お金とキャリアの両面で伴走します。