退職した元教員51名から現職教員への声|4テーマで読む温度感のあるメッセージ【独自調査】
この記事の著者
新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役
元公立中学校英語教員(10年以上)。教員時代に病休を経験し退職。その後、教員専門のキャリア支援会社を設立。著書『「やめたいかも」と一度でも思ったら読む 教員の転職思考法』。スタッフ全員が元教員のプロフェッショナル集団として、延べ1,000名以上のキャリア支援に携わる。
「退職した人は、現職の自分たちのことをどう見ているのだろう」──退職者の率直な声を聞く機会は、現職教員にはほとんどありません。
Re-Career独自調査(全国30都道府県・元教員107名)の最後で、「現職の先生方へ伝えたいこと」を自由記述で尋ねたところ、107名中51名から温度感のあるメッセージが寄せられました。
寄せられた声は、退職者本人の経験と内省を踏まえた、現職教員への深いエールでした。本記事では、これらの声を4つのテーマに整理し、現職教員に届けたいメッセージとして再構成します。
⏱️ 30秒でわかる結論
退職者51名から現職教員へのメッセージは、批判ではなくエールだった。
テーマ1「自分で決めること」を重視する声
テーマ2「自分自身を大切に」という健康への配慮
テーマ3「学校外との繋がり」を持つことの推奨
テーマ4教員という仕事への深い敬意
総合的な特徴辞めるべきとも続けるべきとも一面的に言わない、温度感のある声
調査結果|107名中51名から自由記述メッセージ
本調査の最終問いとして「現職の先生方へ伝えたいこと」を自由記述で尋ねたところ、任意回答にもかかわらず107名中51名(49.0%)からメッセージが寄せられました。
寄せられた声を内容別に分類すると、大きく4つのテーマに整理することができます。
4つのテーマ
- 「自分で決めること」を重視するメッセージ
- 「自分自身を大切に」という健康への配慮
- 「学校外との繋がり」を持つことの推奨
- 教員という仕事への深い敬意
退職者は教員時代の経験を持つ「先輩」として、後輩・同僚・現職教員に向けた温度感のあるメッセージを残してくれました。
テーマ1|「自分で決めること」を重視するメッセージ
最も多く見られたのが、「教員を続けるか辞めるかは、自分で決めるべき」という、選択そのものへの主体性を強調するメッセージです。
寄せられた声(抜粋・要約)
「自分にとって何が大切か、優先したいかを明確にしておくことが大切。そうすると、どんな選択をしても後悔なく過ごせる。」
——元教員からのメッセージ
「教員を続けるのも辞めるのも、どちらも間違いではない。大切なのは『自分で決めること』。」
——元教員からのメッセージ
「辞めることは逃げではなく、選択の一つに過ぎない。」
——元教員からのメッセージ
このメッセージの意味
退職者からの声で最も多かったのは、「他人の声に流されるな、自分で決めよう」という主体性の強調。これは、退職者自身が「他人に決めてもらえなかった」「自分で決めた末に納得している」という経験を踏まえているからこそ。
現職教員への問いかけ
「あなたは、自分のキャリアを誰のために決めていますか?」「『辞められない理由』は、本当に自分の意志ですか、それとも他人の目ですか?」──退職者からの問いかけは、現職教員に深い内省を求めます。
テーマ2|「自分自身を大切に」という健康への配慮
次に多かったのは、現職教員の心身の健康を案じるメッセージ。病気休職経験率28.0%という調査結果と呼応するように、「無理をしないでほしい」「自分の身体を第一に」という声が多く寄せられました。
寄せられた声(抜粋・要約)
「先生方の仕事は本当に尊い。ただ、まずは自分自身を大切にしてほしい。心と身体のバランスを保ちながら、子どもたちと関わってほしい。」
——元教員からのメッセージ
「やらなくてもいい仕事がやるべき仕事になってしまっているのが教員の実態。やるべきこと、やらなくてもいい仕事をはっきりさせて、自分の身体第一で働いてほしい。」
——元教員からのメッセージ
「辛いなら、無理してとどまることはない。何かしら道は開いていく。」
——元教員からのメッセージ
このメッセージの意味
退職者の多くは、教員時代に「健康を犠牲にした働き方」を経験しています。だからこそ、現職教員に「同じ道を辿らないでほしい」という願いが込められたメッセージが多い。
「やらなくてもいい仕事がやるべき仕事になっている」という指摘は、教員の業務文化への鋭い洞察。「子どものために」が長時間労働を正当化してきた構造を、退職者の目から指摘したものです。
テーマ3|「学校外との繋がり」を持つことの推奨
退職を経験した立場から、現職教員へ「学校の外の世界とつながっておくこと」を勧める声が多く見られました。
寄せられた声(抜粋・要約)
「学校外の方々との繋がりを持って、視野を広げる意識を持ってほしい。」
——元教員からのメッセージ
「学校の外の世界はめちゃくちゃ広い。面白い生き方をしている人がたくさんいる。辛いタイミングがあれば気楽に辞めていい。教師にはいつでも戻れる。」
——元教員からのメッセージ
「学校外の方々とつながりを作っておくことが、きっと将来のキャリアに活きてくる。」
——元教員からのメッセージ
このメッセージの意味
教員という仕事は「学校内で完結しがち」な閉鎖性があります。退職者は退職後に「外の世界の広さ」を実感した経験から、現職教員にも「視野を広げてほしい」と願っています。
具体的な「学校外との繋がり」
- 異業種の友人・知人
- SNSでの教員コミュニティ参加
- 教育系イベント・セミナー
- 趣味のサークル
- キャリア相談・コーチング
「学校外との繋がり」は、辞める前にも、辞めた後にも、教員のセーフティネットになります。
テーマ4|教員という仕事への深い敬意
退職者でありながら、教員という仕事そのものへの深い敬意を表すメッセージも数多く寄せられました。「辞めた人=教員批判」という単純な構図ではないことが、自由記述からも明確に読み取れます。
寄せられた声(抜粋・要約)
「素晴らしい、唯一無二の職業。頑張ってください。」
——元教員からのメッセージ
「学校の先生がやっている仕事は本当に尊いと思うし、その世界にいられたことを転職した今でも誇りに思っている。これからは学校の外側から、先生方のサポートをしていきたい。」
——元教員からのメッセージ
「職場に子供がいる職業は他にはない。できるだけ続けてほしい。」
——元教員からのメッセージ
このメッセージの意味
退職者の声は「教員批判ではなく、現職教員への敬意とエール」に満ちています。「辞めた=教員を否定」ではなく、「辞めた今でも教員を尊敬している」という温度感が伝わってきます。
これは、教員という仕事が持つ社会的価値の高さを物語っています。退職者の中にも「外側からサポートしたい」という思いを持つ人が多く、Re-Careerのようなキャリア支援組織の存在意義もここにあります。
退職者の声から読み取る、教員へのメッセージ
4つのテーマを総合すると、退職者からのメッセージには次の特徴があります。
「辞めるべき」とも「続けるべき」とも一面的に言わない
退職者は「自分の選択を押し付けない」姿勢で書いています。「私は辞めた、だからあなたも辞めるべき」とは決して言わない。「続けるのも辞めるのも自分次第」「あなたの状況はあなたが一番わかる」という温度感。
「個別の選択に寄り添う」温度感
退職者は「あなたが何を大切にするか」「あなたが何を犠牲にできるか」という個別の選択に寄り添う視点を持っています。万人向けのアドバイスではなく、一人ひとりの状況に応じた選択を尊重するスタンス。
「教員批判」ではなく「現職教員へのエール」
退職者の声は、教員という仕事への敬意とエールに満ちています。「辞めた今でも、教員という仕事を尊敬している」という想いが、4つのテーマすべてに通底しています。
現職教員の方へ|退職者の声を受け止める3つの方法
退職者51名の声をどう受け止めるか。現職教員の方へ3つの提案です。
① 「自分のための時間」をとる
退職者は皆「自分で決める」「自分を大切に」と言っています。週に1時間でも、自分のキャリア・健康・人生について考える時間を持ってください。
② 学校外の人と話す機会を作る
異業種の友人・知人、SNSでの教員コミュニティ、キャリア相談など、学校外の第三者と話す機会を意識的に作る。退職者からの強いメッセージです。
③ 退職者の声を「他人事」にしない
「自分は大丈夫」と思っている教員ほど、突然崩れがちです。退職者51名の声を、未来の自分の声と捉えて受け止めてほしい。
シリーズ全9本へのリンク
📊 元教員キャリア実態調査2026|シリーズ全9本
まとめ|退職者からのメッセージは批判ではなくエール
退職者51名から寄せられたメッセージは、現職教員への批判ではなく、温度感のあるエールでした。「自分で決めること」「自分を大切に」「学校外との繋がり」「教員への敬意」──4つのテーマが、現職教員のキャリア意思決定の助けになります。
本記事のポイント:
- 107名中51名(49%)から自由記述で温度感のあるメッセージ
- 4つのテーマ:自分で決める・自分を大切に・学校外との繋がり・教員への敬意
- 退職者は「辞めるべき」「続けるべき」を押し付けない
- 「教員批判」ではなく「現職教員への敬意とエール」
- 現職教員はこれらの声を「未来の自分の声」として受け止める
退職者の声は、教員という職業の尊さと、現職教員への深い理解を示しています。Re-Careerは、退職者と現職教員の橋渡しを続けます。
