教員の病気休職率28%・うち36%が1年以上の長期休職|メンタルヘルス問題の深刻さ【独自調査】

新川紗世 Re-Career代表

この記事の著者

新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役

元公立中学校英語教員(10年以上)。教員時代に病休を経験し退職。その後、教員専門のキャリア支援会社を設立。著書『「やめたいかも」と一度でも思ったら読む 教員の転職思考法』。スタッフ全員が元教員のプロフェッショナル集団として、延べ1,000名以上のキャリア支援に携わる。

「教員時代に病気で休職したことがあるか」──この問いに、Re-Career独自調査(全国30都道府県・元教員107名)の28.0%が「ある」と答えました。そして、休職経験者のうち36.4%が1年以上の長期休職を経験しています。

本記事では、教員の病気休職の実態、文科省統計との対比、退職と病気休職の関係、メンタルヘルス対策の重要性を、調査データから整理します。教員のメンタルヘルスは「個人の問題」ではなく「構造的な課題」であることが、データから明らかになります。

⏱️ 30秒でわかる結論

退職した教員の28%が病気休職を経験。「健康を損なってから辞める」「損なう前に辞める」が混在。

病気休職経験者28.0% / 退職者の約3人に1人

1年以上の長期休職休職経験者の36.4%

退職時に病気休職中13.5% / 育児休業中5.8%

文科省統計現職教員の精神疾患休職者は年間6,000人超で過去最多

示唆メンタルヘルス対策は教員不足対策の優先課題

調査結果|退職者の28%が病気休職を経験

病気休職28%

「教員時代に病気休職の経験はあるか」という問いへの回答は次の通りです(n=107)。

  • あり(1回):21.2%
  • あり(2〜3回):5.8%
  • あり(4回以上):1.0%
  • なし:72.0%

合計28.0%の回答者が病気休職を経験。退職者の約3人に1人が病気休職経験を持つ計算になります。

1年以上の長期休職経験者が36.4%

長期休職

休職経験者の中で、休職期間が1年以上に及んだ人は36.4%に達します。短期休職(数週間〜数ヶ月)で復帰した人も多い一方で、長期離脱が必要だった人も少なくありません。

1年以上休職するということ

1年以上の休職は、うつ病・適応障害などの精神疾患のケースが多くを占めます。教員の精神疾患による休職は文科省統計でも年間6,000人超で過去最多を更新中。本調査の母集団(退職者)に病気休職経験者が多くなるバイアスはあるものの、それでも約3人に1人という比率は重く受け止めるべき結果です。

退職時の状況|13.5%が「病気休職中の退職」

退職時の状況

退職時の状況については次の通りです(n=107)。

  • 通常勤務中に退職:77.6%
  • 病気休職中に退職:13.5%
  • 育児休業中に退職:5.8%
  • その他:2.9%

退職者の約2割(19.3%)が病気休職または育児休業中に退職を決断していました。心身の不調や育児期の制約のなかで退職を選ぶケースが、決して例外的ではないことがわかります。

「病気休職中に「もう戻れない」と気づいた。復帰の話が出るたびに体調が悪化する自分を見て、退職を決めた。」
——30代・元小学校教諭・女性(自由記述より要約)

「健康を損なう前に辞める」「損なってから辞める」の2パターン

2つのパターン

本調査が示す重要な示唆の一つが、教員の退職判断には「健康を損なう前に辞める」「損なってから辞める」の2パターンが混在している点です。

パターン①|「損なう前」の予防的退職

「このまま続けたら、必ず病気になる」と予感して、健康を損なう前に退職を決める教員。本調査の通常勤務中退職77.6%の中に、この予防的退職タイプが多く含まれています。「自分を守るための退職」として、近年の若手・中堅教員に増えています。

パターン②|「損なってから」の事後的退職

うつ病・適応障害・身体疾患を発症してから退職するケース。病気休職を経て退職する13.5%+休職経験者28.0%のうち相当数が含まれます。「もう続けられないと体が訴えた」結果の退職。

「予防的退職」のほうが望ましい

キャリア支援者の立場から見ると、「健康を損なう前に辞める」予防的退職のほうが望ましいです。回復に1年以上かかる病気を予防できるだけでなく、退職後のキャリア再構築もスムーズになります。

教員のメンタルヘルス|文科省統計との対比

文科省統計

本調査結果を、文科省の公的統計と対比してみましょう。

文科省「公立学校教職員の人事行政状況調査」

  • 精神疾患による休職者数:年間約6,000人超(過去最多)
  • 全教員に対する比率:約0.7%(年単位)
  • 長期にわたる累積で見ると、教員の3〜5%が現役中に休職経験

本調査との関係

本調査の対象は「退職経験者」のため、現役教員全体よりも病気休職経験率が高くなるバイアスはあります。ただし、28%という数字は「教員のメンタルヘルス問題の深刻さ」を端的に示す指標として、極めて重要なデータです。

教員に多い精神疾患の種類と初期サイン

精神疾患

教員が罹患しやすい精神疾患と、初期サインを整理します。

① うつ病

長時間労働・人間関係ストレスから発症。初期サイン:朝起きられない/何をしても楽しくない/涙が止まらない/食欲低下/不眠。教員に最も多い精神疾患。

② 適応障害

特定のストレス源(職場・人間関係など)に対する反応として発症。初期サイン:仕事が頭から離れない/週末は調子いいが月曜になると体調不良/頭痛・腹痛・吐き気が頻繁。職場と離れると症状が和らぐ特徴がある。

③ 自律神経失調症

身体症状が主で、検査で異常が見つからない状態。初期サイン:動悸・めまい・耳鳴り・冷や汗・しびれ。慢性ストレスが原因の代表的な疾患。

④ パニック障害

突発的な強い不安・動悸・呼吸困難。初期サイン:通勤電車で発作/教室に入る前に動悸/会議で過呼吸。早期受診で十分に治療可能。

初期サインを見逃さないために

これらの初期サインが2週間以上続いたら、必ず心療内科・メンタルクリニックへ。「もう少し頑張ればなんとかなる」と限界まで耐えると、回復に1年以上かかるケースに発展します。

教員の病気休職制度|公立教員の経済保障

病気休職制度

「経済的に休めない」と思い込んでいる教員に、公立教員の手厚い経済保障を整理します。

段階1:病気休暇(最大90日・給与満額)

診断書があれば取得可能。給与・賞与とも満額支給。「まず3ヶ月休む」という選択肢を最初に検討してください。

段階2:休職(最大3年・給与は段階的減額+傷病手当金)

病気休暇90日を超えると休職扱いに。休職1年目は給与8割支給(自治体による)、それ以降は共済組合の傷病手当金(標準報酬月額の約2/3)

段階3:退職した場合の保障

休職満了で退職した場合も、雇用保険(失業手当)+退職金で当面の生活は確保できます。詳しくは教員の退職金記事も参照。

💰 月給35万円の教員の場合の保障目安

  • 病気休暇期間(最大90日):満額支給=約105万円
  • 休職1年目:給与8割+傷病手当金で年収約400万円相当
  • 休職2年目以降:傷病手当金中心で年収約280万円相当
  • 退職時:雇用保険(約3〜6ヶ月)+退職金

「経済的に動けない」は思い込みのケースが多い。所属自治体の事務に確認を。

休職→復帰vs休職→退職|何が分かれ目か

復帰と退職の分岐

同じ休職経験でも、復帰する人と退職する人の違いは何でしょうか。本調査からは以下の傾向が見えます。

復帰する人の特徴(推測)

  • 休職開始時に「復帰の青写真」を持っていた
  • 主治医・産業医・第三者と継続的に対話していた
  • 復帰時に配置転換や働き方の調整を受けられた
  • 家族・職場の理解があった

退職する人の特徴(本調査の退職者28%)

  • 休職中に「教員に戻る自分」がイメージできなくなった
  • 復帰の話で症状が再発した
  • 同じ環境では再発リスクが高いと判断した
  • 休職期間中に別のキャリアの可能性を見つけた

関連:「一度休むといけなくなる」は本当か|元教員が病休から復帰・退職を経験して見えたこと

「休職中、「教員に戻る自分」を想像しようとしたら、頭が真っ白になった。それで退職を決めた。」
——40代・元中学校教諭・女性(自由記述より要約)

メンタルヘルスを守るための5つの対策

メンタル対策

本調査データを踏まえ、現役教員がメンタルヘルスを守るための具体的な対策を5つ提案します。

① 早めの受診(初期サインが出たら2週間以内)

朝起きられない・食欲低下・涙が止まらない・不眠──こうした初期サインが2週間以上続いたら、心療内科・メンタルクリニックへ。「自分は弱くない」と思い続けることが、最大の悪化要因です。

② 第三者(職場以外)との定期対話

職場の中だけで悩むと視野が狭くなります。家族・友人・キャリア支援者・コーチ・カウンセラーなど、職場以外の第三者と定期的に話す習慣を持つこと。

③ 「辞めない選択肢」を知っておく

休職・配置転換・働き方変更・異動などの選択肢を把握しておく。「もう辞めるしかない」と追い詰められる前に、複数の選択肢があると知っているだけで、心理的余裕が変わります。

④ 経済的バッファの確保

「経済的に辞められない」が最大の縛りになりがち。病気休暇90日(給与満額)→休職3年(傷病手当金)の制度を理解し、必要なら3〜6ヶ月分の生活費を別途確保しておく。

⑤ 病気休職を「キャリアの分岐点」と捉える

病気休職は「失敗」ではなく、「キャリアを見直すための強制的なリセット時間」。ネガティブに捉えず、回復と並行して自分のキャリアを再設計する時間として活用する。

「休職経験者」のキャリア再構築の実例

再構築実例

病気休職を経験した後、キャリアを再構築した元教員の実例を3つ紹介します(個人特定を避けるため一部内容を改変)。

実例①|35歳・うつ病で6ヶ月休職→退職→フリーランスへ

担任業務と保護者対応のストレスでうつ病発症。6ヶ月の休職後に退職を選択。1年のリフレッシュ期間を経て、教育系ライターとしてフリーランスに。「教員時代の経験が今の仕事の土台」と本人。

実例②|42歳・適応障害で1年休職→配置転換で復帰

適応障害で1年休職後、担任から専科教員への配置転換で復帰。「退職も考えたが、配置を変えてくれた管理職の理解があった」。現在は無理のないペースで教員生活継続中。

実例③|50歳・自律神経失調症→早期退職→市の教育委員会へ

自律神経失調症で半年休職後、復帰せず早期退職。1年の休養を経て、市の教育委員会の社会人特別選考枠で再就職。教員経験を活かしながら、健康に働ける環境を確保。

3人に共通すること

  • 休職を「失敗」ではなく「キャリアの分岐点」と捉えた
  • 第三者(産業医・キャリア支援者・コーチ)と対話を続けた
  • 「以前と同じ自分」ではなく「変化した自分」として次に進んだ

シリーズ全9本へのリンク

📊 元教員キャリア実態調査2026|シリーズ全9本

「自分は大丈夫」と思っている教員ほど読んでほしい話

自分は大丈夫と思っている人へ

本調査の回答者の多くが「自分はメンタル疾患とは無縁」と思っていた、と語っています。「自分は大丈夫」と思っている教員ほど、休職リスクが高いのが現実です。

「自分は大丈夫」が危ない3つの理由

  • 限界まで頑張る人ほど、突然崩れやすい:日々の小さな疲労を見逃して蓄積
  • 「弱音を吐けない」性格:相談できないまま悪化させがち
  • 「責任感が強い」「真面目」が裏目に:休む決断が遅れる

「「自分はメンタル弱くない」と思っていた人ほど、突然倒れる。私もそうだった。」
——40代・元中学校教諭・女性(自由記述より要約)

セルフチェック|こんな自分なら要注意

  • 「弱音を吐かない」「人に迷惑をかけたくない」が口癖
  • 休日も学校のことを考えてしまう
  • 「もう少し頑張れば」と何度も限界を更新してきた
  • 体調不良でも休まず出勤するのが普通
  • 同僚が休職したとき「自分は大丈夫」と思った

3つ以上当てはまる教員は、「自分の心と体に投資する時間」を意識的に確保してください。

まとめ|病気休職28%が示す、教員のメンタルヘルス対策の重要性

退職者の28%が病気休職を経験、うち36.4%が1年以上の長期休職。これらの数字は、教員のメンタルヘルス対策が「個人の頑張り」ではなく「組織・制度の問題」として捉えるべきテーマであることを示しています。

本記事のポイント:

  • 退職者の28.0%が病気休職経験、うち36.4%が1年以上の長期休職
  • 退職時に病気休職中13.5%・育児休業中5.8%
  • 「健康を損なう前に辞める」「損なってから辞める」の2パターン
  • 復帰と退職の分岐は「復帰の青写真」「第三者対話」「環境調整」
  • メンタルヘルスを守る5つの対策で予防的退職を選択肢に

Re-Careerでは、メンタルヘルスとキャリアの両面で、現役教員に伴走します。


Re-Career代表 新川紗世
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