教員の病気休職率27%・うち41%が1年以上の長期休職|メンタルヘルス問題の深刻さ【独自調査】
退職した教員の27%が病気休職を経験、うち41.4%が1年以上の長期休職。Re-Career独自調査(元教員107名)が示す、教員のメンタルヘルス問題の深刻さ。「健康を損なう前に辞める」予防的退職と「損なってから辞める」事後的退職の構造、現役教員が今できる5つの対策まで、データと支援者目線で解説します。
この記事の著者
新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役
公立中学校で11年、私立高校で1年、あわせて12年、英語教員として勤務。教員時代に病休を経験し退職。その後、教員専門のキャリア支援会社を設立。著書『「やめたいかも」と一度でも思ったら読む 教員の転職思考法』。スタッフ全員が元教員のキャリア支援会社を率い、自身も延べ1,000名以上のキャリア支援に携わる。
📋 目次
- 調査結果|退職者の27%が病気休職を経験
- 休職経験者の41.4%が1年以上の長期休職
- 退職時の状況|13.1%が「病気休職中の退職」
- 「健康を損なう前に辞める」「損なってから辞める」の2パターン
- 教員のメンタルヘルス|文科省統計との対比
- 教員に多い精神疾患の種類と初期サイン
- 教員の病気休職制度|公立教員の経済保障
- 休職→復帰vs休職→退職|何が分かれ目か
- メンタルヘルスを守るための5つの対策
- 「休職経験者」のキャリア再構築の実例
- シリーズ全9本へのリンク
- 「自分は大丈夫」と思っている教員ほど読んでほしい話
- まとめ|病気休職27%が示す、教員のメンタルヘルス対策の重要性
- 合わせて読みたい|Re-Careerの3大ガイド
「教員時代に病気で休職したことがあるか」──この問いに、Re-Career独自調査(全国35都道府県・元教員107名)の27.1%が「ある」と答えました。そして、休職経験者のうち41.4%が1年以上の長期休職を経験しています。
本記事では、教員の病気休職の実態、文科省統計との対比、退職と病気休職の関係、メンタルヘルス対策の重要性を、調査データから整理します。教員のメンタルヘルスは「個人の問題」ではなく「構造的な課題」であることが、データから明らかになります。
⏱️ 30秒でわかる結論
退職した教員の27%が病気休職を経験。「健康を損なってから辞める」「損なう前に辞める」が混在。
病気休職経験者27.1% / 退職者の約3人に1人
1年以上の長期休職休職経験者の41.4%
退職時に病気休職中13.1% / 育児休業中5.6%
文科省統計現職教員の精神疾患休職者は令和6年度7,087人(0.77%)で高止まり
示唆メンタルヘルス対策は教員不足対策の優先課題
調査結果|退職者の27%が病気休職を経験
「教員時代に病気休職の経験はあるか」という問いへの回答は次の通りです(n=107)。
- あり(1回):20.6%
- あり(2〜3回):5.6%
- あり(4回以上):0.9%
- なし:72.9%
合計27.1%の回答者が病気休職を経験。退職者の約3人に1人が病気休職経験を持つ計算になります。
休職経験者の41.4%が1年以上の長期休職
休職経験者29名の中で、休職期間が1年以上に及んだ人は41.4%(12名)に達します。短期休職(数週間〜数ヶ月)で復帰した人も多い一方で、長期離脱が必要だった人も少なくありません。
1年以上休職するということ
1年以上の休職は、うつ病・適応障害などの精神疾患のケースが多くを占めます。教員の精神疾患による休職は文科省統計(令和6年度 公立学校教職員の人事行政状況調査)でも令和6年度7,087人(全教育職員の0.77%)で、前年度の7,119人から32人減ったものの高止まりが続いています。本調査の母集団(退職者)に病気休職経験者が多くなるバイアスはあるものの、それでも約3人に1人という比率は重く受け止めるべき結果です。
退職時の状況|13.1%が「病気休職中の退職」
退職時の状況については次の通りです(n=107)。
- 通常勤務中に退職:78.5%
- 病気休職中に退職:13.1%
- 育児休業中に退職:5.6%
- その他:2.8%
退職者の約2割(18.7%)が病気休職または育児休業中に退職を決断していました。心身の不調や育児期の制約のなかで退職を選ぶケースが、決して例外的ではないことがわかります。
「病気休職中に「もう戻れない」と気づいた。復帰の話が出るたびに体調が悪化する自分を見て、退職を決めた。」
——30代・元小学校教諭・女性(自由記述より要約)
「健康を損なう前に辞める」「損なってから辞める」の2パターン
本調査が示す重要な示唆の一つが、教員の退職判断には「健康を損なう前に辞める」「損なってから辞める」の2パターンが混在している点です。
パターン①|「損なう前」の予防的退職
「このまま続けたら、必ず病気になる」と予感して、健康を損なう前に退職を決める教員。本調査の通常勤務中退職78.5%の中に、この予防的退職タイプが多く含まれています。「自分を守るための退職」として、近年の若手・中堅教員に増えています。
パターン②|「損なってから」の事後的退職
うつ病・適応障害・身体疾患を発症してから退職するケース。病気休職を経て退職する13.1%+休職経験者27.1%のうち相当数が含まれます。「もう続けられないと体が訴えた」結果の退職。
「予防的退職」のほうが望ましい
キャリア支援者の立場から見ると、「健康を損なう前に辞める」予防的退職のほうが望ましいです。回復に1年以上かかる病気を予防できるだけでなく、退職後のキャリア再構築もスムーズになります。
教員のメンタルヘルス|文科省統計との対比
本調査結果を、文科省の公的統計と対比してみましょう。
文科省「公立学校教職員の人事行政状況調査」
- 精神疾患による病気休職者数:令和6年度7,087人(前年度7,119人から32人減)
- 全教育職員に対する割合:0.77%(令和6年度・在職者922,776人)
本調査との関係
本調査の対象は「退職経験者」のため、現役教員全体よりも病気休職経験率が高くなるバイアスはあります。ただし、27%という数字は「教員のメンタルヘルス問題の深刻さ」を端的に示す指標として、極めて重要なデータです。
年代別に見ると、精神疾患による休職は20代で1,310人(令和6年度)。5年前の844人から増えています。1年目で辞めた885人|初任の離職を文部科学省データで見るに、条件附採用の統計とあわせて整理しました。
教員に多い精神疾患の種類と初期サイン
教員が罹患しやすい精神疾患と、初期サインを整理します。
① うつ病
長時間労働・人間関係ストレスから発症。初期サイン:朝起きられない/何をしても楽しくない/涙が止まらない/食欲低下/不眠。教員に最も多い精神疾患。
② 適応障害
特定のストレス源(職場・人間関係など)に対する反応として発症。初期サイン:仕事が頭から離れない/週末は調子いいが月曜になると体調不良/頭痛・腹痛・吐き気が頻繁。職場と離れると症状が和らぐ特徴がある。
③ 自律神経失調症
身体症状が主で、検査で異常が見つからない状態。初期サイン:動悸・めまい・耳鳴り・冷や汗・しびれ。慢性ストレスが原因の代表的な疾患。
④ パニック障害
突発的な強い不安・動悸・呼吸困難。初期サイン:通勤電車で発作/教室に入る前に動悸/会議で過呼吸。早期受診で十分に治療可能。
初期サインを見逃さないために
これらの初期サインが2週間以上続いたら、必ず心療内科・メンタルクリニックへ。「もう少し頑張ればなんとかなる」と限界まで耐えると、回復に1年以上かかるケースに発展します。
教員の病気休職制度|公立教員の経済保障
「経済的に休めない」と思い込んでいる教員に、公立教員の手厚い経済保障を整理します。
段階1:病気休暇(最大90日・給与満額)
診断書があれば取得可能。給与・賞与とも満額支給。「まず3ヶ月休む」という選択肢を最初に検討してください。
段階2:休職(最大3年・給与は段階的減額+傷病手当金)
病気休暇90日を超えると休職扱いに。休職1年目は給与8割支給(自治体による)。8割の支給が終わったあとは共済組合の傷病手当金(1日につき「直近12か月の標準報酬月額の平均÷22」の3分の2。月額に換算するとおよそ3分の2)に切り替わります。共済は実際に支給された報酬の日額と給付日額を比べ、給付日額のほうが多いときだけ差額を支給します。8割が支給されている間は報酬日額のほうが大きいことが多く、その場合、傷病手当金は支給されません(報酬日額は実際に支給された給与の額から、給付日額は標準報酬月額から計算されるため、減額の内容によっては8割支給中に支給が始まることもあります)。いずれにしても「8割+傷病手当金の満額」にはなりません。支給期間は通算1年6か月で、公立学校共済組合はこれに附加金6か月が上乗せされ、合わせて最長2年です(附加金は在職中のみ。退職後は出ません)。
出典:公立学校共済組合「傷病手当金/傷病手当金附加金」/地方公務員等共済組合法 第68条・第71条(e-Gov)。支給対象日を「週休日(土日)を除く日」とする取扱いは、公立学校共済組合の各支部(東京・大阪・北海道・静岡ほか)の案内によります。詳細は所属支部にご確認ください。
段階3:退職した場合|退職手当と「失業者の退職手当」
ここは誤解がとても多いところなので、はっきり書きます。公立学校の教員は地方公務員なので、雇用保険の適用除外です。退職しても失業手当(基本手当)は支給されません。判定は簡単です。給与明細の控除欄に「雇用保険料」の天引きがあるかどうかを見てください。なければ雇用保険の被保険者ではありません。ただし勤務形態によっては、非常勤講師や会計年度任用職員の方が雇用保険の対象になっている場合があります。「失業手当が数ヶ月分は出るはず」と当てにして退職日を決めると、あとで生活設計が狂います。
そのかわりに公立教員には、「失業者の退職手当」という制度があります。ただしこれは、支給された退職手当の額が雇用保険の失業給付相当額に満たない場合に、その差額が支給されるものです。勤続年数が長いほど退職手当が大きくなるため、実際には「差額が発生せず1円も出ない」ケースが多いのが実情です(埼玉県教育委員会は、おおむね勤続3年未満の教職員を対象とする制度と説明しています)。要件も額も自治体ごとに異なるので、勤務先の自治体の人事・給与担当に必ず確認してください。
一方で、私立学校の教員は雇用保険に加入していますので、退職後は失業手当を受給できます。公立と私立はまったく別の制度なので、ここを混同しないでください。なお自己都合退職の場合の給付制限は、2025年4月1日以降の離職は原則1か月です(離職後7日間の「待期」とは別のものです)。
休職満了で退職したあと、当面の生活を支えるのは失業手当ではなく、退職手当と貯蓄です。詳しくは教員の退職金記事も参照してください。
💰 月給35万円の教員の場合の保障目安
- 病気休暇期間(最大90日):給与は満額支給=約105万円(給与部分のみ。賞与は別途)
- 休職1年目(給与8割支給の期間):給与の8割が支給されます。支給される給与の日額が傷病手当金の日額を上回ることが多いため、この期間の傷病手当金は原則として支給されません(減額の内容によっては差額が支給される場合があります。8割と傷病手当金の足し算にはなりません)
- 休職2年目以降:傷病手当金中心で年収約280万円相当
- 退職時:退職手当(公立教員は雇用保険の適用除外なので失業手当は出ません。かわりに条例にもとづく「失業者の退職手当」があり、要件・額は自治体ごとに異なります)
「経済的に動けない」は思い込みのケースが多い。所属自治体の事務に確認を。
休職→復帰vs休職→退職|何が分かれ目か

同じ休職経験でも、復帰する人と退職する人の違いは何でしょうか。本調査からは以下の傾向が見えます。
復帰する人の特徴(推測)
- 休職開始時に「復帰の青写真」を持っていた
- 主治医・産業医・第三者と継続的に対話していた
- 復帰時に配置転換や働き方の調整を受けられた
- 家族・職場の理解があった
退職する人の特徴(本調査の退職者27%)
- 休職中に「教員に戻る自分」がイメージできなくなった
- 復帰の話で症状が再発した
- 同じ環境では再発リスクが高いと判断した
- 休職期間中に別のキャリアの可能性を見つけた
関連:「一度休むといけなくなる」は本当か|元教員が病休から復帰・退職を経験して見えたこと
「休職中、「教員に戻る自分」を想像しようとしたら、頭が真っ白になった。それで退職を決めた。」
——40代・元中学校教諭・女性(自由記述より要約)
メンタルヘルスを守るための5つの対策
本調査データを踏まえ、現役教員がメンタルヘルスを守るための具体的な対策を5つ提案します。
① 早めの受診(初期サインが出たら2週間以内)
朝起きられない・食欲低下・涙が止まらない・不眠──こうした初期サインが2週間以上続いたら、心療内科・メンタルクリニックへ。「自分は弱くない」と思い続けることが、最大の悪化要因です。
② 第三者(職場以外)との定期対話
職場の中だけで悩むと視野が狭くなります。家族・友人・キャリア支援者・コーチ・カウンセラーなど、職場以外の第三者と定期的に話す習慣を持つこと。
③ 「辞めない選択肢」を知っておく
休職・配置転換・働き方変更・異動などの選択肢を把握しておく。「もう辞めるしかない」と追い詰められる前に、複数の選択肢があると知っているだけで、心理的余裕が変わります。
④ 経済的バッファの確保
「経済的に辞められない」が最大の縛りになりがち。病気休暇90日(給与満額)→休職3年(傷病手当金)の制度を理解し、必要なら3〜6ヶ月分の生活費を別途確保しておく。
⑤ 病気休職を「キャリアの分岐点」と捉える
病気休職は「失敗」ではなく、「キャリアを見直すための強制的なリセット時間」。ネガティブに捉えず、回復と並行して自分のキャリアを再設計する時間として活用する。
「休職経験者」のキャリア再構築の実例

病気休職を経験した後、キャリアを再構築した元教員の実例を3つ紹介します(個人特定を避けるため一部内容を改変)。
実例①|35歳・うつ病で6ヶ月休職→退職→フリーランスへ
担任業務と保護者対応のストレスでうつ病発症。6ヶ月の休職後に退職を選択。1年のリフレッシュ期間を経て、教育系ライターとしてフリーランスに。「教員時代の経験が今の仕事の土台」と本人。
実例②|42歳・適応障害で1年休職→配置転換で復帰
適応障害で1年休職後、担任から専科教員への配置転換で復帰。「退職も考えたが、配置を変えてくれた管理職の理解があった」。現在は無理のないペースで教員生活継続中。
実例③|50歳・自律神経失調症→早期退職→市の教育委員会へ
自律神経失調症で半年休職後、復帰せず早期退職。1年の休養を経て、市の教育委員会の社会人特別選考枠で再就職。教員経験を活かしながら、健康に働ける環境を確保。
3人に共通すること
- 休職を「失敗」ではなく「キャリアの分岐点」と捉えた
- 第三者(産業医・キャリア支援者・コーチ)と対話を続けた
- 「以前と同じ自分」ではなく「変化した自分」として次に進んだ
シリーズ全9本へのリンク

📊 元教員キャリア実態調査2026|シリーズ全9本
- 👉 調査01 ハブ|元教員107名のリアル
- 👉 調査02 退職検討期間55.1%が1年以上
- 👉 調査03 退職理由TOP3
- 👉 本記事(調査04):病気休職率27%
- 👉 調査05〜09(公開予定)
「自分は大丈夫」と思っている教員ほど読んでほしい話
本調査の回答者の多くが「自分はメンタル疾患とは無縁」と思っていた、と語っています。「自分は大丈夫」と思っている教員ほど、休職リスクが高いのが現実です。
「自分は大丈夫」が危ない3つの理由
- 限界まで頑張る人ほど、突然崩れやすい:日々の小さな疲労を見逃して蓄積
- 「弱音を吐けない」性格:相談できないまま悪化させがち
- 「責任感が強い」「真面目」が裏目に:休む決断が遅れる
「「自分はメンタル弱くない」と思っていた人ほど、突然倒れる。私もそうだった。」
——40代・元中学校教諭・女性(自由記述より要約)
セルフチェック|こんな自分なら要注意
- 「弱音を吐かない」「人に迷惑をかけたくない」が口癖
- 休日も学校のことを考えてしまう
- 「もう少し頑張れば」と何度も限界を更新してきた
- 体調不良でも休まず出勤するのが普通
- 同僚が休職したとき「自分は大丈夫」と思った
3つ以上当てはまる教員は、「自分の心と体に投資する時間」を意識的に確保してください。
職場のハラスメントで悩んでいる方は、教員のパワハラ、どこに相談する?校長・教育委員会・外部窓口の使い分けと10選+記録テンプレで、校内で言えないときの外部窓口と、証拠として残る記録の書き方をまとめています。
まとめ|病気休職27%が示す、教員のメンタルヘルス対策の重要性
退職者の27%が病気休職を経験、うち41.4%が1年以上の長期休職。これらの数字は、教員のメンタルヘルス対策が「個人の頑張り」ではなく「組織・制度の問題」として捉えるべきテーマであることを示しています。
本記事のポイント:
- 退職者の27.1%が病気休職経験、うち41.4%が1年以上の長期休職
- 退職時に病気休職中13.1%・育児休業中5.6%
- 「健康を損なう前に辞める」「損なってから辞める」の2パターン
- 復帰と退職の分岐は「復帰の青写真」「第三者対話」「環境調整」
- メンタルヘルスを守る5つの対策で予防的退職を選択肢に
Re-Careerでは、メンタルヘルスとキャリアの両面で、現役教員に伴走します。
合わせて読みたい|Re-Careerの3大ガイド
本記事の内容と関連する、当サイトの総合ガイド3本もぜひご覧ください。
- 📖 「教員を辞めたい」と思ったときに読む完全ガイド|判断基準・後悔しないための3ステップ
- 📖 教員のキャリアプラン完全ガイド|5つの選択肢×年代別戦略と後悔しない設計法
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