教員の退職理由は性別・校種で違う|女性は防御的退職、男性は攻撃的退職【独自調査】
この記事の著者
新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役
元公立中学校英語教員(10年以上)。教員時代に病休を経験し退職。その後、教員専門のキャリア支援会社を設立。著書『「やめたいかも」と一度でも思ったら読む 教員の転職思考法』。スタッフ全員が元教員のプロフェッショナル集団として、延べ1,000名以上のキャリア支援に携わる。
「教員の退職理由」は、性別や校種によって明確に異なります。Re-Career独自調査(全国30都道府県・元教員107名)のクロス分析から、男女・校種ごとの違いが浮き彫りになりました。
結論からお伝えすると、女性は「長時間労働・家庭両立・健康」を中心に「防御的退職」、男性は「キャリア拡張・仕事内容」を中心に「攻撃的退職」の傾向。校種別では小中学校が業務量起因、高校がキャリア起因という違いがあります。自分の性別・校種に照らし合わせることで、退職パターンの自己理解が深まります。
⏱️ 30秒でわかる結論
退職理由には明確な男女差・校種差。自分のパターンを知ることが、後悔しない決断につながる。
女性教員長時間労働68.3% / 仕事量63.5% / 家庭両立59.3% / 体調46.0%
男性教員仕事量45% / キャリア拡張45% / 仕事内容37.5% / 長時間労働32.5%
小中学校業務量・時間・家庭両立中心(義務教育段階の構造)
高校キャリア拡張比率高め(より「次」を見据えた退職)
30代の納得度89.4%が「後悔していない」最多
性別ごとの退職理由|男女で違う「辞めるパターン」
退職理由を性別ごとに集計すると、男女で大きく異なる傾向が現れます(n=103、回答しない1名除く)。
女性教員の退職理由TOP7(n=63)
- 長時間労働:68.3%
- 仕事量:63.5%
- 家庭との両立:59.3%
- 体調:46.0%
- 仕事内容:38.1%
- キャリア拡張:33.3%
- 現場の空気感:22.2%
男性教員の退職理由TOP7(n=40)
- 仕事量:45.0%
- キャリア拡張:45.0%
- 仕事内容:37.5%
- 長時間労働:32.5%
- 現場の空気感:30.0%
- 体調:22.5%
- 人間関係:22.5%
女性は「防御的退職」、男性は「攻撃的退職」
男女差から見えるのは、退職パターンの構造的な違いです。
女性教員:「防御的退職」
女性教員の上位4つ「長時間労働・仕事量・家庭両立・体調」は「現状の働き方が続けられない」という現実的限界から来る要因。「自分を守るための退職」です。
家庭との両立を退職理由に挙げた女性は59.3%。教員の女性比率の高さ(小学校6割超)と、家事・育児・介護の負担の偏りを反映しています。
男性教員:「攻撃的退職」
男性教員は「キャリア拡張」が45.0%と、女性の33.3%より11.7ポイント高い。「他にやりたいことが見えた」という前向きな退職理由が多めです。
仕事量・長時間労働も上位ですが、女性ほど切実ではなく、「現状+次のキャリアへの興味」という構造で退職を選ぶ傾向。
「夫が「もっと挑戦したい」で退職した。同じ職場で働く私は「もう持たない」で退職した。同じ「退職」でも、男女で全然違うパターンがあるんだなと感じた。」
——40代・元中学校教諭・女性(自由記述より要約)
校種別の退職理由|小中高で違う構造
校種別に退職理由TOP5を比較すると、構造的な差異が見えます(n=96)。
小学校教員の退職理由TOP5(n=49)
- 仕事量
- 長時間労働
- 家庭との両立
- 体調
- 仕事内容
「学級担任ほぼ100%」「保護者対応の濃さ」「行事ラッシュ」が背景。業務量と時間が圧倒的。
中学校教員の退職理由TOP5(n=36)
- 仕事量
- 長時間労働
- 家庭との両立
- キャリア拡張
- 仕事内容
小学校とほぼ同じトレンドだが、「部活動指導」が長時間労働の主因として加わる。
高校教員の退職理由TOP5(n=11)
- キャリア拡張
- 仕事内容
- 仕事量
- 長時間労働
- 現場の空気感
高校では「キャリア拡張」がトップ。「次の挑戦」を求めて退職する傾向が小中より明確。専門教科の高度化や社会的視点の広さが影響していると考えられる。
年代別の納得度|30代が最高89.4%「後悔していない」
退職についての振り返りを年代別に集計すると、すべての年代で「後悔していない」が最多回答ですが、年代別に微妙な差があります。
- 30代:89.4%が「後悔していない」(最高)
- 20代:83.3%
- 40代:77.1%
- 50代以上:71.1%(「少し後悔」15.8%とやや高め)
30代が最も納得度が高い理由
30代は「教員一本でやってきたが、次のキャリアの可能性が見える年代」。退職市場でもまだ若く、選択肢が多い。「決断するなら今」という覚悟で動いた結果、納得度が高いと考えられる。
50代以上の「少し後悔」15.8%の意味
50代以上で「少し後悔」が15.8%とやや高いのは、定年や任期満了など選択の余地が限定された退職ケースが含まれる影響。完全な自由意志の退職ではない人が一定数いることを示しています。
男女・校種別の「次のキャリア選択」傾向
退職理由が異なれば、次のキャリア選択も異なります。本調査から見える傾向です。
女性教員(防御的退職)の次のキャリア
- 時短勤務・パートタイム(家庭両立)
- フリーランス・在宅ワーク(時間の自由)
- 非常勤講師(教員とほぼ同じ仕事だが負担減)
- 教育系民間(学習塾・教材会社)
男性教員(攻撃的退職)の次のキャリア
- 民間正社員(人材・コンサル・IT)
- 起業・独立(教育NPO・コンサルティング)
- 大学院・留学(学び直し)
- 公務員(行政職への転身)
小学校教員の次のキャリア
- 個別指導塾の教室長・講師
- EdTechのカスタマーサクセス
- 子育て支援系のNPO・スタートアップ
中学校教員の次のキャリア
- 教育系SaaS・EdTech企業
- 人材会社のキャリアアドバイザー
- 研修・コンサルタント(マネジメント経験を活かす)
高校教員の次のキャリア
- 大学・予備校・専門学校の講師
- 専門教科を活かす研究職・専門職
- 大学院進学・留学
「自分のパターン」を知る|自己分析の5つの問い
男女・校種・年代のデータを踏まえて、退職を検討中の現役教員が自己分析する5つの問いです。
① 自分は「防御的退職」?「攻撃的退職」?
「現状が続けられない」のか「他にやりたいことがある」のか。両方が混在しているケースも多い。
② 性別の典型パターンに当てはまる?外れる?
女性で「キャリア拡張型」、男性で「家庭両立型」も当然ある。「性別だけで決めつけない」のが大事。
③ 自分の校種特有の負担は何?
小学校なら学級担任、中学校なら部活、高校なら専門性──校種特有の負担と、自分の限界の関係を見極める。
④ 年代を考慮した退職タイミングは?
30代なら「動きやすい年代」、40代なら「管理職経験を活かす」、50代なら「定年前の最後の選択」など、年代の戦略性を意識。
⑤ どのパターンが自分にしっくりくる?
本調査のデータと自分を照らし合わせて、「自分の退職物語」を整理する。これが後悔しない決断の出発点。
「自分は「攻撃的退職」型だと思っていたが、よく考えると「もう続けられない」も大きかった。両方が同時にあった。」
——30代・元中学校教諭・男性(自由記述より要約)
サンプルサイズの注意点と今後の検証
本調査は107名のサンプルから得られた結果であり、サンプルサイズが限定的です。特に高校教員11名・特別支援学校教員3名は数が少なく、傾向の確度には注意が必要です。
本調査の信頼性と限界
- 信頼できる範囲:全体傾向・小学校・中学校・女性教員のデータ
- 傾向把握として:男性・高校・特支のデータ(仮説提示)
- 今後の検証:サンプル拡大、複数年での追跡調査
「あなた一人のデータ」が次の調査を作る
Re-Careerでは継続的な調査を予定しています。退職経験のある方は、ぜひ次回調査にご協力ください。皆さまの一票一票が、教員のキャリアをめぐる社会的議論を前に進めます。
「一つのデータだけで「男はこう」「女はこう」と決めつけたくないけど、傾向として知っておく価値はあると思う。」
——40代・元高校教諭・男性(自由記述より要約)
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まとめ|性別・校種・年代で異なる退職パターン
退職理由には男女差・校種差・年代差が明確にあります。「教員の退職」を一括りにせず、自分の属性・状況に照らして理解することが、後悔しない決断につながります。
本記事のポイント:
- 女性は「防御的退職」(長時間労働・家庭両立・健康)
- 男性は「攻撃的退職」(キャリア拡張・仕事内容)
- 小中学校は業務量起因、高校はキャリア起因の退職
- 30代の納得度が最高89.4%、50代以上は「少し後悔」やや高め
- 自分のパターンを5つの問いで自己分析
Re-Careerは、性別・校種・年代に応じたキャリア支援を提供しています。
