教員の退職理由は性別・校種で違う?|男女差が出た理由・出なかった理由【独自調査】

教員の退職理由を性別・校種・年代で比べた、Re-Career独自調査(元教員107名)のクロス分析です。女性は「長時間労働」「家庭との両立」「体調」を挙げた割合が男性より高く、「キャリア拡張」の男女差ははっきりしませんでした。校種別の差も人数が少なく、はっきりとは言えません。年代別では、30代の89.4%が「後悔していない」と答えています。

新川紗世 Re-Career代表

この記事の著者

新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役

公立中学校で11年、私立高校で1年、あわせて12年、英語教員として勤務。教員時代に病休を経験し退職。その後、教員専門のキャリア支援会社を設立。著書『「やめたいかも」と一度でも思ったら読む 教員の転職思考法』。スタッフ全員が元教員のキャリア支援会社を率い、自身も延べ1,000名以上のキャリア支援に携わる。

「教員の退職理由」は、性別や校種によって違うのでしょうか。Re-Career独自調査(全国35都道府県・元教員107名)のクロス分析で、男女・校種ごとの違いを見ました。

結論からお伝えすると、女性は「長時間労働」「家庭との両立」「体調」を挙げた割合が男性より高い一方、「キャリア拡張」の男女差ははっきりしませんでした。校種別の差も、人数が少なくはっきりとは言えません。自分の性別・校種に照らし合わせることで、退職パターンの自己理解が深まります。

⏱️ 30秒でわかる結論

男女で差が出た理由と、出なかった理由がある。校種・年代の差は人数が少なく、参考として読む。

女性教員長時間労働67.2% / 仕事量64.1% / 家庭両立57.8% / 体調45.3%(n=64)

男性教員仕事量45.2% / キャリア拡張45.2% / 仕事内容35.7% / 長時間労働33.3%(n=42)

小中学校業務量・時間・家庭両立中心(小49名・中37名)

高校キャリア拡張比率高め。ただし12名のみのため参考値

30代の納得度89.4%(47名中42名)が「後悔していない」

性別ごとの退職理由|男女で違う「辞めるパターン」

男女別退職理由

退職理由を性別ごとに集計すると、男女で差が出る項目があります(n=106、回答しない1名除く)。

女性教員の退職理由TOP7(n=64)

  1. 長時間労働:67.2%
  2. 仕事量:64.1%
  3. 家庭との両立:57.8%
  4. 体調:45.3%
  5. 仕事内容:37.5%
  6. キャリア拡張:34.4%
  7. 将来不安:32.8%

男性教員の退職理由TOP7(n=42)

  1. 仕事量:45.2%
  2. キャリア拡張:45.2%
  3. 仕事内容:35.7%
  4. 長時間労働:33.3%
  5. 現場の空気感:31.0%
  6. 将来不安:23.8%
  7. 体調・人間関係・管理職への不安:各21.4%(同率)

男女差が出た理由・出なかった理由

2つの退職パターン

男女別の結果を、差がはっきり出た理由と、出なかった理由に分けて見ます。

女性が多く挙げた理由:長時間労働・家庭との両立・体調

女性の上位4つ「長時間労働・仕事量・家庭両立・体調」は、どれも「現状の働き方が続けられない」ことにつながる理由です。

家庭との両立を退職理由に挙げた女性は57.8%(64名中37名)で、男性の26.2%(42名中11名)を大きく上回りました。長時間労働(女性67.2%・男性33.3%)と体調(女性45.3%・男性21.4%)も、女性のほうが高い結果でした。

男女差がはっきりしなかった理由:キャリア拡張

「キャリア拡張」は男性45.2%(42名中19名)、女性34.4%(64名中22名)で、男性のほうが10.9ポイント高い結果でした。ただし、この差に統計的な有意差は確認できませんでした。男性のほうが前向きな理由で辞めるとまでは言えません。

男性でも、仕事量(45.2%)と長時間労働(33.3%)は上位に入っています。

「夫が「もっと挑戦したい」で退職した。同じ職場で働く私は「もう持たない」で退職した。同じ「退職」でも、男女で全然違うパターンがあるんだなと感じた。」
——40代・元中学校教諭・女性(自由記述より要約)

校種別の退職理由|小中高で違う構造

校種別退職理由

校種別に退職理由を比較します(n=98=小学校49名・中学校37名・高校12名)。校種による差は、人数が少ないため統計的な有意差は確認できませんでした。高校は12名と特に少ないため、順位ではなく参考値として扱います。

小学校教員の退職理由TOP5(n=49)

  1. 1位 仕事量:63.3%(49名中31名)
  2. 2位 長時間労働:55.1%(49名中27名)
  3. 3位 家庭との両立:49.0%(49名中24名)
  4. 4位 体調:36.7%(49名中18名・同率4位)
  5. 4位 仕事内容:36.7%(49名中18名・同率4位)

小学校では、仕事量と長時間労働が上位2つでした。

中学校教員の退職理由TOP5(n=37)

  1. 1位 長時間労働:59.5%(37名中22名)
  2. 2位 仕事量:54.1%(37名中20名)
  3. 3位 キャリア拡張:45.9%(37名中17名・同率3位)
  4. 3位 家庭との両立:45.9%(37名中17名・同率3位)
  5. 5位 体調:40.5%(37名中15名)

小学校と同じく業務量と時間が上位を占めますが、中学校では長時間労働が1位でした(本調査では、長時間労働の中身までは尋ねていません)。3位に「キャリア拡張」が「家庭との両立」と並ぶのも中学校の特徴です。なお「仕事内容」は32.4%(37名中12名)で6位でした。

高校教員の退職理由(n=12・参考値)

高校は回答者が12名と少なく、順位を振れるだけの人数がありません。ここでは順位ではなく、実数と割合を参考値として示します。

  • ・長時間労働:12名中6名(50.0%)
  • ・キャリア拡張:12名中6名(50.0%)
  • ・仕事内容/仕事量/将来不安/家庭との両立/制度・評価への不満:いずれも12名中5名(41.7%)

高校では「キャリア拡張」が「長時間労働」と並んで最も多く(各12名中6名)、小学校30.6%・中学校45.9%と比べても高い比率でした。「次の挑戦」を求めての退職が相対的に多い可能性はありますが、12名の回答にもとづく参考値であり、傾向として断定できるものではありません。

年代別の納得度|30代が最高89.4%「後悔していない」

年代別納得度

退職についての振り返りを年代別に集計すると、すべての年代で「後悔していない」が最多回答ですが、年代別に微妙な差があります。

  • 30代(n=47):89.4%(47名中42名)が「後悔していない」(最高)
  • 40代(n=30):73.3%(30名中22名)
  • 50代以上(n=21):71.4%(21名中15名)。「少し後悔」は19.0%(21名中4名)
  • 20代(n=9):回答者が9名と少なく、割合として傾向を読み取れないため数値は示しません

年代による差の読み方

「後悔していない」の割合は30代が最も高い結果でしたが、年代による差に統計的な有意差は確認できませんでした。30代が特に納得しやすい年代だ、とまでは言えない点に注意してください。

50代以上の「少し後悔」19.0%の意味

50代以上で「少し後悔」と答えた4名(21名中・19.0%)のうち2名は、退職理由に「定年退職」を選んでいます(4名とも、退職時の状況は「通常勤務中に退職」)。実数は4名であり、幅を持って読む必要があります。

退職理由・校種別に考えられる「次のキャリア」の例

次のキャリア

本調査では、転職先の業界や職種までは尋ねていません。ここで挙げるのは、退職理由や校種ごとに考えられる選択肢の例です。

「働き方が続けられない」が理由のとき

  • 時短勤務・パートタイム(家庭両立)
  • フリーランス・在宅ワーク(時間の自由)
  • 非常勤講師(教員とほぼ同じ仕事だが負担減)
  • 教育系民間(学習塾・教材会社)

「他にやりたいことがある」が理由のとき

  • 民間正社員(人材・コンサル・IT)
  • 起業・独立(教育NPO・コンサルティング)
  • 大学院・留学(学び直し)
  • 公務員(行政職への転身)

小学校教員の次のキャリア

  • 個別指導塾の教室長・講師
  • EdTechのカスタマーサクセス
  • 子育て支援系のNPO・スタートアップ

中学校教員の次のキャリア

  • 教育系SaaS・EdTech企業
  • 人材会社のキャリアアドバイザー
  • 研修・コンサルタント(マネジメント経験を活かす)

高校教員の次のキャリア

  • 大学・予備校・専門学校の講師
  • 専門教科を活かす研究職・専門職
  • 大学院進学・留学

「自分のパターン」を知る|自己分析の5つの問い

自己分析

男女・校種・年代のデータを踏まえて、退職を検討中の現役教員が自己分析する5つの問いです。

① 自分は「防御的退職」?「攻撃的退職」?

「現状が続けられない」のか「他にやりたいことがある」のか。両方が混在しているケースも多い。

② 性別の典型パターンに当てはまる?外れる?

女性で「キャリア拡張型」、男性で「家庭両立型」も当然ある。「性別だけで決めつけない」のが大事。

③ 自分の校種特有の負担は何?

小学校なら学級担任、中学校なら部活、高校なら専門性──校種特有の負担と、自分の限界の関係を見極める。

④ 年代を考慮した退職タイミングは?

30代なら「動きやすい年代」、40代なら「管理職経験を活かす」、50代なら「定年前の最後の選択」など、年代の戦略性を意識。

⑤ どのパターンが自分にしっくりくる?

本調査のデータと自分を照らし合わせて、「自分の退職物語」を整理する。これが後悔しない決断の出発点。

「自分は「攻撃的退職」型だと思っていたが、よく考えると「もう続けられない」も大きかった。両方が同時にあった。」
——30代・元中学校教諭・男性(自由記述より要約)

サンプルサイズの注意点と今後の検証

今後の検証

本調査は107名のサンプルから得られた結果であり、サンプルサイズが限定的です。特に高校教員12名・特別支援学校教員3名は数が少なく、傾向の確度には注意が必要です。

本調査の信頼性と限界

  • 信頼できる範囲:全体傾向・小学校・中学校・女性教員のデータ
  • 傾向把握として:男性・高校・特支のデータ(仮説提示)
  • 今後の検証:サンプル拡大、複数年での追跡調査

「あなた一人のデータ」が次の調査を作る

Re-Careerでは継続的な調査を予定しています。退職経験のある方は、ぜひ次回調査にご協力ください。皆さまの一票一票が、教員のキャリアをめぐる社会的議論を前に進めます。

「一つのデータだけで「男はこう」「女はこう」と決めつけたくないけど、傾向として知っておく価値はあると思う。」
——40代・元高校教諭・男性(自由記述より要約)

シリーズ全9本へのリンク

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📊 元教員キャリア実態調査2026|シリーズ全9本

性別や校種による違いの奥には、職員室の力関係の問題があります。教員のパワハラ相談先の使い分け|校長・教育委員会・外部窓口をご覧ください。

まとめ|性別・校種・年代で異なる退職パターン

退職理由には、男女で差がはっきり出た項目と出なかった項目があり、校種・年代の差は人数が少なく参考の範囲でした。「教員の退職」を一括りにせず、自分の属性・状況に照らして理解することが、後悔しない決断につながります。

本記事のポイント:

  • 女性は長時間労働・家庭との両立・体調を挙げた割合が男性より高い
  • 「キャリア拡張」は男性45.2%・女性34.4%だが、統計的な有意差は確認できない
  • 校種別の差ははっきりしない(高校はn=12の参考値)
  • 30代の89.4%(47名中42名)が「後悔していない」。50代以上は「少し後悔」19.0%(21名中4名)。年代差に統計的な有意差は確認できない
  • 自分のパターンを5つの問いで自己分析

Re-Careerは、性別・校種・年代に応じたキャリア支援を提供しています。

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Re-Career代表 新川紗世
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