教員の退職理由TOP3|仕事量・長時間労働・家庭両立、給与は14%にとどまる【独自調査】

教員の退職理由TOP3は「仕事量57.0%・長時間労働54.2%・家庭との両立44.9%」。Re-Career独自調査(元教員107名)が明らかにした、「給与」より「働き方」を選ぶ教員のリアルな退職理由。給特法改正だけで退職を防げるのかという課題、教員不足対策への示唆まで解説します。

新川紗世 Re-Career代表

この記事の著者

新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役

公立中学校で11年、私立高校で1年、あわせて12年、英語教員として勤務。教員時代に病休を経験し退職。その後、教員専門のキャリア支援会社を設立。著書『「やめたいかも」と一度でも思ったら読む 教員の転職思考法』。スタッフ全員が元教員のキャリア支援会社を率い、自身も延べ1,000名以上のキャリア支援に携わる。

📋 目次

  1. 退職理由TOP10|「働く量と時間」が圧倒的
  2. なぜ「給与待遇」は14%にとどまるのか
  3. 給特法改正だけで退職は防げるか
  4. 退職理由TOP3を深掘り
  5. 意外に多い「前向きな退職理由」|キャリア拡張39.3%
  6. 退職理由が示す「教員という仕事の本質的な課題」
  7. 「組織への不満」も各2割前後|空気感・人間関係・管理職
  8. 教員不足対策への示唆
  9. 各退職理由の構造的背景|なぜそれが「辞める理由」になるのか
  10. 退職を検討中の教員へ|自分の本当の理由を言語化する
  11. 退職理由から見える、自治体・国・社会への提言
  12. シリーズ全9本へのリンク
  13. まとめ|退職理由は「働き方の構造問題」が中心
  14. 合わせて読みたい|Re-Careerの3大ガイド

「教員はなぜ辞めるのか」──教員不足が深刻化する中、政府・自治体・メディアで様々な議論が交わされていますが、当の退職者本人が挙げる「退職理由」はどんなものなのでしょうか。

Re-Career独自調査(全国35都道府県・元教員107名)の結果は、教員不足対策議論に重要な一石を投じる内容でした。退職理由のTOP3は「仕事量」「長時間労働」「家庭との両立」。一方で「給与待遇」を挙げた人は14%にとどまります。教員の退職判断の中心にあるのは「給料の額」ではなく、「働き方の構造」だったのです。

この記事では、調査が示した退職理由TOP10の詳細、なぜ給与より働き方が重要なのか、給特法改正だけでは退職を防げない理由、教員不足対策への示唆を整理します。

⏱️ 30秒でわかる結論

教員の退職理由TOP3は「仕事量・長時間労働・家庭両立」。給与は14%にとどまる。

1位 仕事量57.0%

2位 長時間労働54.2%

3位 家庭との両立44.9%

給与待遇14% / 退職判断の中心ではない

組織課題空気感24.3%・人間関係20.6%・制度20.6%・管理職19.6%

退職理由TOP10|「働く量と時間」が圧倒的

退職理由TOP10

退職理由(複数選択可)の上位10項目を集計した結果は、次の通りです(n=107)。

  1. 1位 仕事量:57.0%
  2. 2位 長時間労働:54.2%
  3. 3位 家庭との両立:44.9%
  4. 4位 キャリア拡張:39.3%
  5. 5位 仕事内容:37.4%
  6. 6位 体調:35.5%
  7. 7位 将来への不安:29.9%
  8. 8位 現場の空気感・閉塞感:24.3%
  9. 同率9位 人間関係:20.6%
  10. 同率9位 制度・評価への不満:20.6%

※ 複数回答(n=107)。7位の「将来への不安」は、調査票の選択肢名「将来不安」を読みやすく表記したものです。「人間関係」と「制度・評価への不満」は回答数が同数のため同率9位です。これに次ぐ11位は「管理職への不安」(19.6%)で、TOP10には入っていません。

上位3つは「仕事量」「長時間労働」「家庭との両立」──いずれも「働く量と時間」に直結する要因です。「他にやりたいことが見えてきた(キャリア拡張)」も39.3%と高く、前向きな理由で退職する人も一定数いることがわかります。

なぜ「給与待遇」は14%にとどまるのか

給与は14%

本調査で最も注目すべき発見の一つが、「給与待遇」を退職理由として挙げた人が14%にとどまった点です。

教員の法定給与はOECD平均を下回る。それでも退職理由の中心ではない

先に事実を確認しておきます。OECD「Education at a Glance 2025」によれば、日本の教員の法定給与は依然としてOECD平均を下回っています(初等教育教員の法定給与は初任34,863米ドル〜最高66,530米ドル、OECD平均は44,153〜74,896米ドル)。つまり「教員の給料は高い」わけではありません。それでもなお、退職理由として「給与待遇」を挙げた人は14%にとどまりました。給与が低いのは事実だが、辞めるスイッチを押すのは別のところにある──それが本調査の読み方です。(出典:OECD『Education at a Glance 2025』カントリーノート 日本)

問題は「労働時間に対する給与」

では、なぜ教員はしんどいのか。給与の額そのものに加えて、「労働時間に対する給与」が見合っていないことが効いています。OECDのTALIS 2024では、日本の中学校教員の1週間当たりの仕事時間は55.1時間で、前回に引き続き参加国中で最長でした(OECD平均41.0時間。小学校は52.1時間で、参加国平均は40.4時間)。法定給与(初等教育)はOECD平均を下回り、働く時間は参加国で最長。この組み合わせが「割に合わない」という実感の正体です。(出典:文部科学省「OECD国際教員指導環境調査(TALIS)2024 報告書のポイント」)

多く選ばれたのは「働き方」に関わる理由

本調査で多く選ばれた退職理由は、「給与待遇」(14.0%)ではなく、「仕事量」「長時間労働」「家庭との両立」といった働き方に関わるものでした。選んだ人数は、仕事量61名・長時間労働58名・家庭との両立48名に対し、給与待遇は15名です。

「給料は世間平均より良いと思っていた。問題は時間。給料が10万円増えても、時間が増えないと続けられなかった。」
——40代・元中学校教諭・男性(自由記述より要約)

給特法改正だけで退職は防げるか

給特法改正の限界

2025年6月11日に成立した給特法改正(6月18日公布・令和7年法律第68号)で、教職調整額は2026年1月の5%を起点に毎年1%ずつ上がり、2031年1月に10%になることが決まりました。率は改正法附則第2項に年ごとに書き込まれているので、自治体の判断で前後するものではありません。給料月額35万円の人なら、4%(14,000円)から10%(35,000円)へ月21,000円、12か月分で252,000円の増加です。期末手当・勤勉手当の算定基礎にも加わりますが、支給月数は各自治体の条例で決まるため、賞与込みの年額を全国一律の数字で出すことはできません。(出典:e-Gov法令検索「給特法」/文部科学省「給特法等の一部を改正する法律の概要」)

処遇改善は重要、でも本質ではない

処遇改善は教員の士気・生活の質を上げる重要な施策です。ただ、本調査で「給与待遇」を退職理由に選んだ人は14.0%で、上位の理由は働き方に関わるものでした。給与改善だけで退職が止まるとは限らないと考えられます。

本質的に必要なのは「業務量と時間の構造改革」

退職理由TOP3が「仕事量」「長時間労働」「家庭との両立」である以上、必要なのは:

  • 業務量そのものの削減(不要業務の廃止・支援員拡充)
  • 長時間労働の構造的是正(35人学級・部活地域移行)
  • 育児・介護期の柔軟な働き方(時短勤務・在宅勤務)

関連:給特法改正で教員の給料は本当に上がるのか

関連:35人学級は教員の負担を減らすのか

関連:部活動の地域移行で教員は本当に楽になるのか

退職理由TOP3を深掘り

TOP3深掘り

1位 仕事量(57.0%)|「終わらない業務」の構造

教員の業務は授業・成績処理・行事準備・校務分掌・保護者対応・部活動と多岐にわたります。退職理由に「仕事量」を選んだ退職者は、半数を超える57.0%(61名)。「これ以上は無理」と感じた瞬間に退職が現実になります。

2位 長時間労働(54.2%)|参加国で最長の仕事時間

TALIS 2024でも、日本の中学校教員の1週間当たりの仕事時間は55.1時間、小学校は52.1時間で、いずれも参加国中で最長です。本調査でも、退職者の54.2%(58名)が「長時間労働」を退職理由に選んでいます。男女別では、女性64名のうち43名(67.2%)、男性42名のうち14名(33.3%)でした。

3位 家庭との両立(44.9%)|特に女性教員に深刻

女性の回答者64名のうち37名(57.8%)が「家庭との両立」を退職理由に挙げています(男性42名では11名・26.2%)。「家族のために辞める」のではなく「家族とまともに過ごすために辞める」のがリアル。

「土日のたびに部活で家にいない父親に、子どもが『パパは仕事の人』と言うようになった。これは違う、と思って辞めた。」
——40代・元中学校教諭・男性(自由記述より要約)

意外に多い「前向きな退職理由」|キャリア拡張39.3%

キャリア拡張

退職理由は「逃げ」だけではありません。「他にやりたいことが見えてきた(キャリア拡張)」を挙げた人が39.3%と、退職理由としては第4位。

前向きな退職の特徴

  • 教育に対する別のアプローチを見つけた(EdTech・教材会社など)
  • 自分の専門性をもっと深めたい(大学院・留学)
  • 独立・起業・フリーランス志向
  • 転職市場の価値を試したい

「前向きな退職」と「防御的退職」の違い

男女別に見ると、女性64名では「長時間労働」67.2%・「仕事量」64.1%・「家庭との両立」57.8%、男性42名では「仕事量」45.2%・「キャリア拡張」45.2%・「仕事内容」35.7%が上位でした。「キャリア拡張」は女性34.4%・男性45.2%ですが、人数にすると差は数人分で、男性のほうが前向きな理由で辞めるとまでは言えません。性別による退職パターンの違いは、調査07で詳しく扱います。

退職理由が示す「教員という仕事の本質的な課題」

本質的課題

退職理由TOP10の分布から、教員という仕事の本質的な課題が浮かび上がります。

「業務の境界線」がない

教員業務は「ここまでが本業、ここからは違う」という境界線が曖昧。生徒・保護者からの相談、SNS時代の対応、土日の連絡、家庭訪問──プライベートと仕事の境界がほぼ消えている職業です。

「子どものため」が美化される文化

「子どものためなら長時間労働も仕方ない」「子どものために自分を犠牲にすべき」という美徳が、過剰労働を正当化してきた歴史があります。これが個々の教員に「断りにくさ」を生み、結果として退職要因に。

「魅力ある働き方」のロールモデル不足

教員の中で「健康に・家族と両立しながら・自分らしく」働くロールモデルが少ない。「上司・先輩のように働けば一人前」という文化の中で、若手・中堅が「自分の理想形」を描けないまま辞めるケース。

「「子どものため」と言いながら、自分の子どもには会えない日々。これは何のために働いているのか、わからなくなった。」
——30代・元小学校教諭・女性(自由記述より要約)

「組織への不満」も各2割前後|空気感・人間関係・管理職

組織課題

個人の業務量・時間以外に、学校組織の構造そのものに対する不満を退職理由に選んだ人も、項目ごとに約2割います(4項目のいずれかを選んだ人は50名・46.7%)。

組織課題TOP4

  • 現場の空気感・閉塞感:24.3%
  • 人間関係:20.6%
  • 制度・評価への不満:20.6%
  • 管理職への不安:19.6%

「閉鎖性」が辞める理由になる

学校現場は閉鎖的な空間と言われがち。職員室の人間関係、管理職のマネジメント、評価制度の不透明さ──これらが「教員という職業の魅力を損なう要因」として、それぞれ約2割の退職者に選ばれています。

教員不足対策への示唆

教員不足対策

本調査の退職理由データは、教員不足対策の議論に重要な示唆を与えます。

「呼び戻し」より「辞めない環境」

退職理由が「仕事量・時間・家庭両立」である以上、「これから辞める人を防ぐ=現職教員が辞めずに済む環境をつくる」ことが最優先課題。給与改善・業務削減・支援員拡充・働き方の柔軟化が、複合的に進む必要があります。

「魅力ある職業」への再設計

教員不足の根本的な対策は、「教員という職業を、新卒・社会人転身者が選びたくなる職業にする」こと。本調査の退職理由データは、そのために何を変えるべきかの優先順位を示しています。

「教員を辞める人を呼び戻すより、これから辞めようとしている人を止めるほうが、ずっと現実的。」
——新川紗世

各退職理由の構造的背景|なぜそれが「辞める理由」になるのか

構造的背景

各退職理由の背景には、教員特有の構造的問題があります。

「仕事量」の背景

教員の業務は、本来の授業以外に校務分掌(生徒指導・進路指導・人権教育など多種多様)、行事運営、保護者対応、部活動指導、研修受講、書類作成と無数にあります。「やらないと回らない」業務が積み重なって、慢性的なオーバーワークに。

「長時間労働」の背景

給特法のもとで残業代が発生しないため、「いつまでも働き続けてしまう」構造。さらに「子どものため」という大義名分が長時間労働を正当化しがち。TALIS 2024では、日本の中学校教員の1週間当たりの仕事時間は55.1時間で、参加国中最長です(OECD平均41.0時間)。

「家庭との両立」の背景

朝7時出勤・夜9時退勤・土日も部活──このスケジュールでは育児・介護・家族時間との両立は物理的に不可能。特に女性教員は出産・育児で続けられなくなるケースが顕著。

「体調」の背景(35.5%)

長時間労働+慢性ストレスで、30代後半から体に不調が出始めるのが教員あるある。本調査では、教員時代に病気休職を経験した人が27.1%(29名)いました。退職時に病気休職中だった人も13.1%(14名)います。「健康を損なう前に辞める」「損なってから辞める」が混在しています。

退職を検討中の教員へ|自分の本当の理由を言語化する

自分の理由を言語化

本調査が示すデータと、自分自身を照らし合わせて、「自分の本当の退職理由」を言語化するのが、後悔しない決断の第一歩です。

自己分析の5つの問い

  1. 10個の退職理由のうち、自分に当てはまるのはどれ?
  2. 最も切実な理由は何?それは「働き方」か「やりがい」か?
  3. 「給与」「人間関係」など他の要因も背景にある?
  4. 「辞めない選択肢」(休職・配置転換・働き方変更)は試した?
  5. 退職して何を取り戻したい?時間?健康?家族?やりがい?

これらの問いに答えていくことで、自分が「逃げで辞めるのか、選択で辞めるのか」が明確になります。

退職理由から見える、自治体・国・社会への提言

社会への提言

本調査の退職理由データから、自治体・国・社会全体への具体的な提言を整理します。

自治体への提言

  • 業務削減策の実行:給食指導・部活動・行事の見直し、支援員拡充
  • 柔軟な働き方の制度化:時短勤務・在宅勤務の選択肢
  • キャリア相談窓口の設置:辞める前に相談できる場所を
  • 異動の柔軟化:希望が叶いやすい人事システム

国・文科省への提言

  • 教員定数の見直し:35人学級の確実な完了+次の段階
  • 給特法のさらなる見直し:処遇改善+労働時間管理
  • 教員業務支援員の全校配置
  • 部活動地域移行の加速

社会への提言

  • 「教員=聖職」観の見直し:自分を犠牲にする職業ではない
  • 「働き方の選択肢」を持つ職業への進化
  • 退職者・元教員の社会参画:教員経験者の知見を社会で活かす

シリーズ全9本へのリンク

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退職理由の背景には、数字に出にくいハラスメントが隠れていることがあります。教員のパワハラ、どこに相談する?外部窓口10選と記録の残し方もあわせてご覧ください。

まとめ|退職理由は「働き方の構造問題」が中心

教員の退職理由TOP3は「仕事量」「長時間労働」「家庭との両立」。「給与待遇」は14%にとどまりました。多く選ばれたのは「給料の額」よりも、仕事量・労働時間・家庭との両立といった働き方の問題でした。

本記事のポイント:

  • 退職理由TOP3は「仕事量57.0%・長時間労働54.2%・家庭両立44.9%」
  • 給与待遇は14%。給特法改正だけで退職が防げるとは限らない
  • 「キャリア拡張」39.3%など前向きな理由も多数
  • 男女別の上位:女性は長時間労働・仕事量・家庭との両立、男性は仕事量・キャリア拡張
  • 組織への不満(空気感・人間関係・管理職)も項目ごとに約2割

退職を検討する現職教員は、自分の本当の理由を言語化することから始めてください。Re-Careerは、その整理に伴走します。

合わせて読みたい|Re-Careerの3大ガイド

本記事の内容と関連する、当サイトの総合ガイド3本もぜひご覧ください。


Re-Career代表 新川紗世
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