教員を辞めた後の進路はどうなるか|フリーランス最多・転職2回以上で年収増25%【独自調査】
この記事の著者
新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役
元公立中学校英語教員(10年以上)。教員時代に病休を経験し退職。その後、教員専門のキャリア支援会社を設立。著書『「やめたいかも」と一度でも思ったら読む 教員の転職思考法』。スタッフ全員が元教員のプロフェッショナル集団として、延べ1,000名以上のキャリア支援に携わる。
「教員を辞めたら、次は何の仕事をしているのだろう」──退職を検討する現役教員にとって、最も気になる問いです。Re-Career独自調査(全国30都道府県・元教員107名)の結果から、退職後の進路の意外なリアルが見えてきました。
結論からお伝えすると、退職後の進路は大きく多様化しています。最多はフリーランス・個人事業主(24.0%)、次いで「無職・準備中」(18.3%)、民間正社員(教育業界外)(12.5%)、民間正社員(教育業界)(9.6%)、非常勤講師・臨時的任用(7.7%)と続きます。正規教員として復帰した人はわずか3名のみ。年収は77.6%が「減った」と回答する一方、転職2回以上の人では「増えた」が25%に上昇します。
この記事では、退職後の進路の分布、年収変化のリアル、転職回数と収入の関係、教員以外で活きるスキルまで、データに基づいて整理します。
⏱️ 30秒でわかる結論
退職後の進路は多様化。フリーランス最多、転職回数を重ねるほど年収「増えた」割合は上昇。
1位フリーランス・個人事業主 24.0%
2位無職・準備中 18.3%(学び直し期間)
3位民間正社員(教育業界外)12.5%
4位民間正社員(教育業界)9.6%
5位非常勤講師・臨任 7.7%
年収77.6%減 / 転職2回以上で「増えた」25%
退職後の進路|「就業状況」の分布
「現在の主たる就業状況(最も収入が多いもの)」の集計結果は次の通りです(n=107)。
- 個人事業主・フリーランス:25名(24.0%)
- 無職・準備中:19名(18.3%)
- 民間正社員(教育業界外):13名(12.5%)
- 民間正社員(教育業界):10名(9.6%)
- 非常勤講師・臨時的任用:8名(7.7%)
- 専業主婦・主夫:6名
- パート・アルバイト:5名
- 公務員(一般行政):5名
- 法人経営者:4名
- 正規教員として復帰:3名
- その他:6名
正規教員として復帰した人はわずか3名のみ。退職後に正規教員に戻る選択をする人は極めて少数派であることが明らかになりました。
「フリーランス」が最多|時間と裁量を取り戻す働き方
退職後の進路で最多となったのは「個人事業主・フリーランス」24.0%。これは、退職した教員が「時間と裁量の自由」を求めていることを象徴的に示すデータです。
元教員のフリーランス・主な業種
- キャリアコーチ・コンサル:教員時代の対人経験を活かす
- ライター・編集者:文章力と教育業界知識を活用
- 教材開発・コンテンツ制作:EdTech関連の業務委託
- YouTuber・SNSクリエイター:教育系コンテンツ発信
- 家庭教師・個別指導:自分のペースで子どもと関わる
- 翻訳・通訳:英語教員出身者に多い
フリーランスを選ぶ理由
「時間に縛られない」「上司がいない」「自分のスキルで稼げる」──これらは、教員時代の「自由のなさ」の反動として、退職者の多くが選ぶ理由になっています。
「無職・準備中」18.3%の意味|学び直し期間としての退職後
退職後の進路で2番目に多いのが「無職・準備中」18.3%。これは「ニート」ではなく、「学び直し・キャリア再設計の期間」と捉えるべきです。
この期間に何をしているか
本調査では、退職後に経験した働き方を尋ねた質問で31.7%が「学び直し」を経験と回答。「無職・準備中」の多くは以下のような活動をしています:
- 大学院進学:教育研究・心理学・経営学などの修士課程
- 資格取得:キャリアコンサルタント・社労士・公認心理師など
- 講座受講:ライティング・マーケティング・プログラミングなど
- 留学:英語教員に特に多い
- 体力・メンタルの回復:休職を経た人の場合
関連:教員の学び直し完全ガイド|教育訓練給付金が使えない理由と在職中・退職後の選択肢
「退職して半年は「無職」だったけど、その間に大学院の入試準備とキャリアコンサルタント資格を取った。あの時間が今のキャリアの土台。」
——40代・元中学校教諭・女性(自由記述より要約)
「教員以外への転職」が大勢|進路の多様化
本調査が示すもう一つの重要な発見は、「教員を辞める=教育の世界を完全に離れる」とは限らない多様な働き方の広がりです。
「教育業界に残る」選択
民間正社員(教育業界)9.6% + 非常勤講師・臨任7.7% + 教育系フリーランス(一部)=退職者の約2〜3割が教育業界の中で別の立場で働いています。
- EdTech企業(教材開発・教室運営・カスタマーサクセス)
- 学習塾・予備校(教室長・講師・教材編集)
- 大学・研究機関の教員・職員
- NPOの教育支援
- スクールサポートスタッフ・教育委員会の指導主事
「教育業界外への転職」
民間正社員(教育業界外)12.5% + 公務員5名 + 法人経営4名など、完全に異業種への転身も2割強。
- 人材業界(キャリアアドバイザー・採用担当)
- 研修・コンサル業界
- IT・SaaS企業のカスタマーサクセス
- 行政職(市役所・教育委員会の事務系)
- 独立・起業(飲食・サービス業など)
年収はどう変化したか|77.6%が「減った」も、転職2回以上で25%が「増えた」
年収変化(教員時代との比較)は次の通りです(n=107)。
- 減った:77.6%
- ほぼ同じ:11.5%
- 増えた:10.6%
退職直後は収入ダウンを経験する人が約8割。これは退職を検討する現職教員が事前に知っておくべき現実です。
転職回数別の年収変化(クロス分析)
ただし、転職回数と年収のクロス分析では興味深い傾向が見えます。
- 転職0回(退職後最初の職場のまま):減った84.2% / 増えた7.0%
- 転職1回:減った77.8% / 増えた7.4%
- 転職2回以上:減った60.0% / 増えた25.0%
転職回数が増えるほど、年収「増えた」と回答する割合が上昇する明確な傾向。退職後すぐに収入が回復するのではなく、複数回のキャリア移行を経るなかで段階的に収入面の改善が起きている実態が読み取れます。
「最初の転職は年収100万円ダウンだった。でも2社目で50万円戻して、3社目で教員時代と同じ水準。最初の転職で「全部決まる」と思わなくていい。」
——30代・元小学校教諭→人材会社・男性(自由記述より要約)
「最初の転職で全てが決まる」はウソ|キャリアは試行錯誤で育つ
本調査データから現職教員に伝えたい重要なメッセージが、「最初の転職で全てが決まるわけではない」という事実です。
キャリアは段階的に育てるもの
「教員を辞めたら、次の仕事で人生が決まってしまう」という思い込みを持つ教員は多いですが、データは違う現実を示しています。転職を重ねるほど条件が良くなる傾向は、キャリアは試行錯誤を経て育つものという証拠です。
1回目の転職で「完璧」を求めない
「教員からの転職」は未経験職種への挑戦が多いため、最初は「経験を積む」「業界を知る」のが最大の目的でOK。年収にこだわらず、次のキャリアの土台を作る期間と捉えましょう。
2回目以降で年収アップを狙う
1社目で経験を積めば、2社目以降は転職市場でのバリューが大幅にアップ。教員経験+第二の業界経験を組み合わせることで、独自のキャリアパスが見えてきます。
校種別・年代別|退職後の進路の傾向
本調査の集計から、校種別・年代別の進路傾向も見えてきます。
校種別の傾向
- 小学校教員出身:フリーランス(個別指導・コーチング)、学習塾、教育系企業への転身が多い
- 中学校教員出身:教育業界外の民間(人材・コンサル・SaaS)への異業種転身、起業も多め
- 高校教員出身:大学・予備校・専門学校、専門教科を活かした研究職や翻訳業
- 特別支援学校教員出身:福祉・医療系、特別支援系の民間支援事業
年代別の傾向
- 20代:第二新卒として未経験職種にチャレンジ、IT・人材・コンサルが多い
- 30代:教育業界・EdTech・人材業界が中心、キャリアアップ志向
- 40代:管理職経験を活かしたコンサル・研修講師・起業
- 50代以上:学校以外の公務員(社会人特別選考)、地域団体での教育活動、独立
「40代だからもう転職難しいかな、と思っていたら、管理職経験を高く評価される機会が多かった。年代を悲観する必要はなかった。」
——45歳・元小学校教諭→教育コンサル・男性(自由記述より要約)
教員経験で活きる「ポータブルスキル」
退職後の進路でフリーランス・民間転職が多いのは、教員時代に培ったスキルが他業界でも活きるからです。
教員から他業界へ持っていけるスキルTOP10
- 対人コミュニケーション:生徒・保護者対応で培う
- プレゼンテーション:毎日授業=講演スキル
- マネジメント:30人前後のクラス運営
- 計画立案:年間カリキュラム・行事運営
- 文章力:通知表・所見・連絡文の作成
- 調整力:管理職・同僚・保護者との折衝
- 教育コンテンツ設計:授業案作成
- 個別指導力:生徒一人ひとりへの対応
- 危機管理:いじめ・事故・緊急対応
- 多様性への対応:個性ある生徒の理解
これらは民間業界で「対人スキル」「マネジメント力」「コンテンツ制作力」として高く評価されます。
「年収ダウン」と上手く付き合う3つの工夫
退職直後の年収ダウンを乗り切るための、現実的な3つの工夫です。
① 退職前の経済バッファ確保(6ヶ月分以上)
退職前に6ヶ月〜1年分の生活費を別途貯蓄。退職金がある場合も、生活費はそれとは別に確保しておくと安心。
② 固定費の見直し
退職を機に住居費・通信費・サブスクなどの固定費を一度見直す。年収ダウンに合わせて固定費も下げれば、生活の質はそれほど落ちません。
③ 副業・複数収入源の確立
退職後は副業・複業を組み合わせて「複数収入源」を作るのが現代的。1社の正社員収入だけに頼らない働き方が、教員からの転身者には合います。
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まとめ|退職後の進路は想像以上に多様。試行錯誤で育つキャリア
退職後の進路はフリーランス最多・無職準備中18.3%・民間転職・公務員転身など、想像以上に多様化しています。「教員を辞めたら仕事がない」というのは事実ではなく、退職者107名のリアルがそれを証明しています。
本記事のポイント:
- 退職後の進路は多様化、フリーランス24%が最多・正規教員復帰はわずか3名
- 「無職・準備中」18.3%は学び直し期間として活用される
- 年収は77.6%が「減った」も、転職2回以上で「増えた」25%まで上昇
- 「最初の転職で全てが決まる」はウソ。キャリアは段階的に育つ
- 教員のポータブルスキル10は他業界で高評価
Re-Careerは、退職後のキャリア設計を含めて、現役教員に伴走します。
