育休中に「本当に戻れるのか」と問い続けた2年間——教員5年目が選んだ新しい道

ゆうみさん(神奈川県・20代後半・小学校教員5年・R7年度末退職)

東京の小学校で5年間教壇に立ち、育休中に「戻れるだろうか」という問いと向き合い続けた ゆうみさん(20代後半)。もともと大学院進学を目指していたが、教育実習で出会った一人の先生に魅了され、急遽教員の道へ。子どもとの仕事は大好きだったのに、育休に入って初めて「本当にこのまま戻っていいのか」という揺らぎが生まれた。「自分なんて」という気持ちを長年抱えてきた彼女が、SSプログラムを通じて「自分を大切にしていい」と気づくまでの話。

まさかの教員転向——実習で出会った先生

新川: 
もともと教員になるつもりはなかったとうかがっています。どんなきっかけで目指すことになったんですか?

ゆうみさん: 
教育学部に入ったんですが、実は教員になる気はあまりなくて、大学院に進学するつもりでいました。ただ、卒業条件として教育実習があったので行ったんですね。そこで出会った指導教員の先生が本当に素晴らしい方で、教育に対してものすごく情熱のある先生でした。その先生の元で学ぶうちに、小学校の先生ってこんなに素敵なんだと思って、急遽大学院進学をやめて教員採用試験を受けることにしました。

新川: 
周りからは驚かれましたか?

ゆうみさん: 
かなり驚かれました。教育実習がそんなに楽しかったなんてあまり聞かないって(笑)。でも私にとっては、あの先生との出会いがすべてのきっかけでした。もともと音楽をずっとやっていたので音楽関係の仕事という選択肢もあったんですが、実習後は教員一択という感じになっていましたね。

「教育実習で出会った先生が、私の人生の針を動かしました。大学院進学を諦めるほどの出会いでした」

子どもとの仕事が大好きだった5年間

新川: 
実際に働き始めてみて、どんな先生を目指していましたか?

ゆうみさん: 
憧れの先生が軸にあったので、とにかく子どもとの信頼関係を築くことを大切にしていました。その先生はいちいち指示しなくても子どもたちが自然に動いていて、それは信頼関係から生まれているものだと感じていたので。最初はなかなかうまくいかなくて苦戦していましたが、それに向き合いながらやっていました。

新川: 
仕事は好きでしたか?

ゆうみさん: 
育休に入るまでは、教員の仕事が大好きでした。業務に対する不満は正直ありましたが、仕事内容自体はすごく好きで、やめるなんて全く考えていなかったです。

育休2年目に生まれた「本当に戻れるか」という問い

新川: 
育休中はどんなことを考えていましたか?

ゆうみさん: 
育休に入る時は「必ず1年で戻ります」と同僚に伝えて、本当にそのつもりでした。でも子どもが生まれると、仕事のことを考える余裕が全くなくなって。1年目はとにかく目の前のことでいっぱいいっぱいでした。2年目に入った頃、周りの先生たちが復帰しているのを見ながら、自分は戻った後の両立ができるのかと思い始めて。

新川: 
実家が近くても、頼ることへの抵抗があったとも聞きました。

ゆうみさん: 
協力してもらえる環境はあるんですが、仕事のために家族をそのために動かすっていうのがなんか気持ち的に嫌というか、想像するだけで申し訳なくて。自分の家族のことをほっぽり出して仕事に熱中するのも違うと思っていて。朝早くて夜も遅い教員の働き方に保育園の送り迎えが加わることを想像すると、キャパオーバーになりそうという感覚がありました。

「1年目は目の前のことでいっぱいいっぱい。2年目に入って初めて「本当に戻れるのか」という問いと向き合いました」

本との出会いと、SSプログラムへ

新川: 
SSを知ったのはどんなきっかけでしたか?

ゆうみさん: 
育休中にとにかく本を読み漁っていました。転職とか、出産後のライフステージの変化に関する本をたくさん読んでいたんですが、その中でたまたま紗世さんの本に出会って。もうこれは私のために書いてくれた本なんじゃないかというくらい刺さって、2〜3日で一気にワークまで全部やりました。

新川: 
2〜3日であのワークはすごいです。その時点では、やめるつもりはあったんですか?

ゆうみさん: 
全然なかったです。8割は戻るつもりで、2割くらいで違う道もあるかもという感じ。5年しか現場に出ていなかったので、まだまだこれからという時期だったし、やめるのは早いかなという気持ちがありました。

— 新川: 
それがどう変わっていったんですか?

ゆうみさん: 
SSプログラムを通じて、周りのコーチや仲間の行動や決断を見ていくうちに、自分もやろうという気持ちに変わっていきました。あとは「自分のことを大切にしていい」ということを学んだのが大きかったです。今まで自分を後回しにして生きてきた部分がずっとあったんですが、自分がやりたいことをしてもいいんだと思えるようになって。

「ずっと自分を後回しにして生きてきた。「自分のことを大切にしていい」と気づいた時、何かが変わりました」

葛藤と、それでも踏み出せた理由

— 新川: 
退職の決断に葛藤はありましたか?

ゆうみさん: 
もちろんありました。安定した収入、育休中でも手当が出る福利厚生、社会的な立場、教員という仕事はそういう面で本当に安心感があって。子どももまだ小さいのに、それを手放して自分のやりたいことをやって大丈夫なのかというのは、今でも少し残っています。

新川: 
それでも踏み出せたのはなぜだと思いますか?

ゆうみさん: 
家族が応援してくれたというのもあるんですが、一番大きかったのはやっぱり環境ですね。コーチや仲間の存在がなければ、たぶん退職という選択はなかったと思います。それと「もしうまくいかなければまた教員に戻るという選択肢もある」と思えたことで、一旦やってみようという気持ちになれました。

これからの三本柱

新川: 
退職後はどんな働き方を考えていますか?

ゆうみさん: 
まず、教員が嫌いでやめるわけじゃないので、何かしらの形で学校に関わり続けたいという気持ちがあります。非常勤や講師、支援員など、形はまだ決めていませんが、学校をサポートする側として携わりたいです。もう一つは、音楽をずっとやってきたのでピアノを教えること。4月からお声がけいただいているところがあるので、そこから始めようと思っています。それから、育休中に感じたことや悩みを、同じような状況のママさんたちに届けるようなオンラインでの発信もやっていきたいと思っています。

新川: 
複数の軸で動いていくんですね。

ゆうみさん: 
そうですね。一つに絞るよりも、いくつかを組み合わせながらやっていく方が自分らしいかなと思っています。まだ試行錯誤中ですが、一つずつ着実にやっていきたいです。

育休中に悩んでいる先生へ

新川: 
育休中に将来の働き方を悩んでいる先生たちへ、一言お願いします。

ゆうみさん: 
育休中は、仕事をしている時よりも自分と向き合える時間が取れる時期だと思うんですね。その時間を、子どもとの時間と合わせて、自分自身のことを考える時間にも使ってほしいです。続けるにしても違う選択をするにしても、自分と向き合うことで、きっとその人なりの答えが見えてくると思うので。

「育休中は、自分と向き合える貴重な時間。続けるにしても違う道を選ぶにしても、その時間がきっと答えを教えてくれます」

編集後記

ゆうみさんのインタビューで印象的だったのは、「教育実習が楽しかった」という言葉だ。まわりに驚かれるほど珍しいその体験が、大学院進学という道を捨てさせるほどの力を持っていた。それだけ一人の先生との出会いが大きかったということだろう。

育休中に「本当に戻れるのか」と問い始めたのは、子どもへの愛情と仕事への誠実さが両方あったからこそだと思う。自分を犠牲にして走り続けることへの違和感を、彼女はちゃんと感じていた。

「自分のことを大切にしていい」という気づきは、シンプルだけど深い。長年自分を後回しにしてきた人にとって、それは革命的な一言だ。非常勤・ピアノ指導・オンライン発信という三本柱で新しいステージへ向かうゆうみさんの歩みを、これからも応援していきたい。

取材・文:新川(Re-Career株式会社 代表取締役)