「先生が足りない」問題、給料だけが原因じゃなかった

最近、こんな記事を読みました。
武道家・思想家の内田樹氏が、教員不足の背景にある「制度の歪み」について書いた論考です。
なぜ教員が不足するのか?意欲削ぐ”教育の歯車化” 武道家・思想家 内田樹氏 教育現場で深刻化する教員不足。その背景には、過重な業務負担や待遇の問題だけでなく、教育の現場から権限と尊厳を奪ってきた制度
「教員が足りない、子どもが足りない。どちらについても困っている」という書き出しから始まるこの文章を読みながら、
私は元教員として、そして今教員・元教員のキャリア支援をしている者として、深くうなずきながら読み進めました。
この記事を読んで「自分のキャリアについて話してみたい」と感じた方は、Re-Careerの個別相談・体験セミナーもお気軽にご活用ください。
教員不足の数字、知っていますか?
文部科学省の調査によると、2025年4月1日の始業時点で、全国の公立学校の教師不足は4,317人。3年前の調査では2,065人だったので、わずか3年で倍増以上という急増ぶりです。
「8%の学校が教員不足」という数字だけ見るとピンとこないかもしれませんが、不足率が極端に高い自治体もあり、現場の状況は深刻です。
定年退職した元教員のもとに、「4月の始業に間に合わないので来てほしい」という申し出が12〜13校から届いたという話も紹介されていました。
原因として挙げられているのは、英語・ICT・特別支援教育の増加による業務量増大、民間との待遇格差、そして保護者対応や管理職査定による心理的負荷。
そして内田氏が指摘するのは、「感謝される」機会をほとんど持てていない現実です。
「どんなにタイトな仕事でも、それに対する感謝の気持ちが誰かから示されて『ありがとう』という言葉が贈られるなら、人間はかなり無理してでも頑張ることができる」
参照記事:内田樹「教員不足の原因を考える」(JAcom)
激務の上に、上司から査定され、保護者から深夜に怒鳴られる。そんな環境では、意欲が減退して当然だと。
…私には、刺さりすぎる言葉でした。
「権限を奪われた職業」に、人は集まらない
内田氏が最も鋭く指摘しているのは、制度的な問題です。
2000年には、学校の職員会議が「校長の補助機関」と定義され、議論・決議の場ではなく、単なる連絡会議になりました。
2015年には、大学の教授会が「学長の諮問機関」に格下げされ、入学・卒業判定、人事、予算などの権限をほぼ失いました。
つまり、現場の教員たちは、教育に関する決定権を少しずつ、確実に奪われてきた。
「学生は『クライアント』ではないし、教育は『サービス』ではないし、教員は『奴隷』ではない」
参照記事:内田樹「教員不足の原因を考える」(JAcom)
この言葉、読んだとき思わず声に出してしまいました。当たり前のことを言っているようで、でも今の教育制度はまさにそれを間違えている。
そして内田氏はこう言い切っています。「多少給料を上げるくらいで志望者が増えると思っているとしたら、その人はよほど人間というものを舐めている」と。
本当に、そう思います。
でも、あなた自身の「権限」は、あなたが取り戻せる
制度の話は、すぐには変えられません。それは事実です。
でも、私がここで伝えたいのは、あなた自身のキャリアに関する選択権は、あなたにある、ということです。
「この仕事を続けるかどうか」「どんな働き方をしたいか」「自分の強みをどこで活かすか」——その判断を、制度や職場環境に奪わせないでほしい。
教員として培ってきた力は本物です。授業設計力、人前で話す力、多様な人との関係構築力、複雑な問題を整理して動く力。それらは、教育以外の場所でも確実に通用します。
「人間は自由を享受し、尊厳を保つことで、働く意欲を高め、そのパフォーマンスを最大化する」
参照記事:内田樹「教員不足の原因を考える」(JAcom)
自由と尊厳を取り戻すことが、どんな仕事においても出発点です。今の職場でそれを感じられないとしたら、選択肢を探すことは、逃げではなく、真っ当な判断だと私は思います。
「辞める・続ける」より先に、知っておいてほしいこと
教員を辞めることだけが答えではありません。でも、「辞めたい気持ちがあること」を否定しなくていい。
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まず、自分自身のことを話してみる場所として、使ってみてください。