「20代はがむしゃらに働く」と決めていた私が、30歳でようやく自分のペースに気づいた

さやさん(千葉県・30歳・小学校教員9年目・産育休取得・退職を視野に入れながら、自分と家族を大切にする選択を模索中)

千葉県の小学校で9年間教えてきた さやさん(30歳)。小学3年生の時に憧れた担任の先生の姿が、今も教員を続ける原点にある。20代はとにかくがむしゃらに働くと決めていた。でも25歳の頃から、睡眠が取れているのに体がだるいという感覚が続くようになった。転職サイトを見たこともあった。それでもここまで来た。30歳になった今、産育休取得と退職という選択肢を前に、はじめて自分のペースで立ち止まっている。

小学3年生の記憶——先生への憧れの原点

— 新川: 
教員を目指したきっかけを教えてもらえますか?

— さやさん: 
小学校3、4年生の時の担任の先生がとても好きで。字がお上手だったり、歌とジェスチャーを一緒に教えてくださったり、音楽も好きだったのでピアノと歌を組み合わせた授業がとても楽しくて。今振り返ると素晴らしい学級経営をされていたんだなと思うんですが、当時の自分は「この先生みたいになりたい」と思ったのがそもそもの始まりです。

新川: 
その頃から先生という仕事に興味を持っていたんですね。

さやさん: 
実は「先生ってどんなお仕事なんですか」と聞いてみたいと思った時期が4年生の頃にあって。今思うと聞いておけばよかったなと思うんですが(笑)。高校生になって進路を考える時期に、高校の先生に「教員はブラックだからやめた方がいい」と言われたこともありました。でも他にあまり選択肢が思い浮かばなかったこともあって、あの頃の憧れを思い出して採用試験を受けることにしました。

「小学3年生の時の先生への憧れが、今も私の原点です。あの先生みたいになりたいと思ったことが、すべての始まりでした」

現場で感じたやりがいと、9年間のリアル

新川: 
実際に働いてみて、どんなことを感じてきましたか?

さやさん: 
子どもの頃に思い描いていた先生のイメージと、実際にやってみるとのギャップはありました。事務処理が多かったり、子どもたちとじっくり向き合う時間が思ったより取れなかったり。でも子どもたちが成長していく姿を見る瞬間や、できなかったことができるようになった時間はやっぱり好きで、そこがこの仕事の魅力だと感じています。

新川: 
9年間で、何か変化はありましたか?

さやさん: 
25歳ごろ、睡眠を取っているはずなのに体がだるいという時期が続いたことがあって。生徒と話し始めたら楽になったこともあったんですが、余裕を持って子どもたちに関われないなと感じていました。この働き方を定年まで続けられるのかという疑問が、その頃から生まれていました。

「睡眠を取っているはずなのに体がだるい。今思えば、それは体からのサインだったのかもしれません」

転職サイトを見た25歳、それでも続けてきた理由

新川: 
25歳の頃、転職サイトに登録したと聞いています。

さやさん: 
教員からの転職というキーワードで色々調べました。当時はまだ20代前半で、今なら動けるという気持ちもあって。でも実はもともと、20代はとにかくがむしゃらに働こうという気持ちが自分の中にあって。それと、30代になったら違う仕事で働いてみたい、結婚して子どもができたらというような人生のプランも子どもの頃から漠然とあったので、なかなかすぐに転職に踏み切れなかったというのが正直なところです。

新川: 
30歳になった今、その気持ちはどう変わっていますか?

さやさん: 
ちょうど今年30歳になって、立ち止まるタイミングだと感じました。今年は妊活もしていて、産育休を取ってからどうするかという選択肢が現実的になってきています。今年1年で退職になるかもしれないという気持ちもあるので、これまでがむしゃらにやってきた分を今年は丁寧に、1つ1つに向き合って、やり切る1年にしたいと思っています。

「20代はがむしゃらに働くと決めていた。30歳になって、はじめて自分のペースで立ち止まれた気がします」

校長先生からの一冊、SSとの出会い

新川: 
SSを知ったきっかけを教えてもらえますか?

さやさん: 
当時働いていた小学校の校長先生が新川さんの本を紹介してくださって。手に取って読んでみたら、話を聞いてみたいと思って連絡しました。自分の中だけで考えを完結させるのは難しいなと感じていた時期だったので、客観的に自分のことを知れる機会があるなら受けてみようと思いました。

SSプログラムで変わったこと

新川: 
プログラムを受けて、印象に残っていることはありますか?

さやさん: 
どんな仕事をしてきたか100個以上書き出すワークが特に印象的でした。100個も出るかなと思いながらやってみたら、本当に100個以上埋められて。自分でこんなにこなしてきたんだと、少し自信を持てるようになりました。

新川: 
日々の生活にも変化はありましたか?

さやさん: 
時間を意識するようになりました。世界遺産検定を今年3月に3級を受けて合格したんですが、平日は朝10分、休日は最低30分と決めて勉強を続けていて。一気に頑張ろうとすると続かないので、時間で区切るやり方が自分に合っていると分かりました。SSを受けてから、生活の整理ができるようになってきた実感があります。

「仕事を100個書き出してみたら、本当に100個以上埋まった。自分ってこんなにやってきたんだと、はじめて思えました」

これからのこと

新川: 
今後についてはどんなことを考えていますか?

さやさん: 
今年は妊活をしていて、産育休を取得する可能性もあります。育休中や退職後のことも、自分の価値観に照らし合わせながら考えていきたいと思っています。今はまだ答えは出ていませんが、自分と家族を大事にすることをベースに、1つ1つ丁寧に選択していけたらと思っています。

同世代の先生へ

新川: 
同じように悩んでいる先生たちへ、一言いただけますか?

さやさん: 
まず健康を大事にしてほしいです。毎年学校で1〜2人は休職される方がいて、他人事ではないなと感じています。自分のことを後回しにしすぎず、体と心のサインにちゃんと気づいてほしいなと思います。一緒に頑張っていけたらと思っています。

「毎年学校で誰かが休職される。体と心のサインに、ちゃんと気づいてほしいです」

編集後記

さやさんのインタビューで印象的だったのは、「20代はがむしゃらに働く」という自分との約束を本当に守り続けてきたという誠実さだ。体にサインが出ていた25歳の頃も、転職サイトを見た時も、結局踏み出さなかったのは弱さではなく、自分で決めた道を最後まで走り切ろうとする意志の表れだったのだと思う。

30歳という節目に立ち止まって、「今年は丁寧にやり切る1年にしたい」と言えるのは、走り続けてきたからこそだろう。産育休・退職という選択肢を前に、ゆっくり自分のペースで考えている姿が、とても頼もしく映った。

世界遺産検定を朝10分の積み重ねで合格したエピソードが好きだ。小さく続けることの力を、さやさんはもう体で知っている。これからの選択も、きっとそうやって一歩ずつ進んでいくんだろうと思う。

取材・文:新川(Re-Career株式会社 代表取締役)