指導力がないのかも、合っていないのかも。休職中、ずっと自分を責めていた。

くまこさん(沖縄県・小学校教員・40代)

休職中、くまこさんが一番苦しんでいたのは「仕事量」ではなかった。「自分に指導力がないのかもしれない」「この仕事に向いていないのかもしれない」そう自分を責め続けていた。

SSプログラムを受け始めたのも、「転職したい」からではなく、「教員以外に何かあるなら知りたい」という、半ば自信を失った状態からだった。

それから約1年。くまこさんは今も小学校の先生を続けている。仕事は何も変わっていない。変わったのは、自分との向き合い方だった。

小学校の音楽の先生の授業が、ずっと頭に残っていた

新川:
教員を目指したきっかけから聞かせてもらえますか?

くまこさん:
小学校のときの音楽の先生の授業がすごく楽しくて、それが印象に残っていて。中学生の時に「将来の職業は?」みたいな授業があって、そこで「あ、あの先生みたいになりたい」って思ったんです。

新川:
その先生のどんなところが印象的だったんですか?

くまこさん:
今日ラジオで聴いたいい曲を、みんなでリコーダーで演奏しようとか、そういう授業をされてたんですよ。なんか他の先生とはちょっと違う、面白い授業でした。

新川:
それからブレずに教員を目指していった感じですか?

くまこさん:
他にもやってみたいことはあったんですけど、やっぱりそこに行き着くというか。ブレつつも、最終的にはそこでした(笑)。

日本人学校、児童相談所……「いろんな経験をしてみたい」という気持ちで動いてきた

新川:
くまこさんって、沖縄だけじゃなくて千葉での勤務や日本人学校、児童相談所での経験もあるんですよね。それは自分の希望だったんですか?

くまこさん:
はい、自分の希望でした。いろんな経験をしてみたいという気持ちがあって。

新川:
小学校とは違う現場で、何を感じましたか?

くまこさん:
小学校の中にいると、その中での考え方とか子どもの見方みたいなものに慣れてしまうんですよね。でも児童相談所には児童相談所での子どもの見取り方があるし、日本人学校には日本人学校ならではの取り組み方があって。外に出てみると、視野が広がるなと感じました。

新川:
それらを経て、また小学校に戻りたいと思えた理由は?

くまこさん:
集団の力ってすごく大きいなと思っていて。いろんな子たちが集まって、その集団でやる活動にすごく興味があるんだなっていうのを感じたんです。それが小学校に戻ろうと思った一番の理由です。

授業はやりたい。でも授業以外の仕事が、どんどん重くなっていった

新川:
小学校での勤務が長くなってくる中で、しんどくなってきた時期はありましたか?

くまこさん:
始めて3年目くらいまでは、自分のクラスのことを中心に考えていたと思うんですけど、だんだん学校全体のこととか、校務分掌もどんどん重くなっていって。責任感とかプレッシャーに押し潰されそうになる感じがしてきました。

新川:
授業は好きなのに、それ以外のところが大変になっていった感じですか?

くまこさん:
そうなんです。授業はやりたいし、力を入れたいと思うところなんですけど、そこ以外のことで比重が重くなっちゃうのが、きつかったです。「授業をやりたい」という気持ちはありました。でも、それに集中できない状況がずっと続いていたんです。

休職中、一番苦しかったのは「自分を責め続けること」だった

新川:
休職されていた時期があると聞いています。話せる範囲で聞かせてもらえますか?

くまこさん:
気持ちが仕事に向かなくなって。仕事だけじゃなく、生活面でもやる気も気力も何もわかない感じで。訳もわからず涙が出てくる、みたいな状況でした。

新川:
休職中、仕事のことはどんな風に考えていましたか?

くまこさん:
年度途中だったので、自分の仕事を投げ出してしまって人に迷惑をかけてる、とか、情けない、申し訳ない……すごく自分を責めていました。

新川:
休み慣れていないと、そこに行きますよね。

くまこさん:
最初は「この仕事、自分に向いていないんじゃないか」と思って。指導力がないのかも、とか、自分に合っていないかもしれない、って色々ひどく考えてました。他の可能性があるなら探ってみたいなって。

新川:
「やめたい」というより、自信を失っていた感じだったんですね。

くまこさん:
そうなんです。そのタイミングでSSプログラムと出会ったんです。

SSプログラムで気づいた「意外と積み重ねてきていた自分」

新川:
SSプログラムを受けてみて、一番印象に残っていることは何ですか?

くまこさん:
「意外と自分ってちゃんと積み重ねてきていたんだな」って気づけたことが大きかったです。

新川:
その気づきで、何が変わりましたか?

— くまこさん:
自分なりにまた積み重ねていけばいいのかな、って思えるようになりました。全く自分に期待も信頼もなかったんですけど、ちょっとそれが持てるようになった感じがします。

新川:
やってきたことを、自分で認められた、という感じですかね。

くまこさん:
はい。あと、コーチが、私が言語化できないことをしっかり言語化してくれて。「それが言いたかったんですよ」ってなることが何回かあって。1人でやってたらそこまで深まらなかったと思うので、コーチの存在がすごく大きかったです。

仕事は何も変わっていない。変わったのは、自分との向き合い方だった

新川:
SSプログラムを受けた後、仕事への向き合い方は変わりましたか?

くまこさん:
前は出勤前に気持ちが重くて、毎日こなすのに必死で。やっつけ仕事みたいな感じだったんですけど……今は前より生き生き働けてる感じがします。

新川:
仕事内容は変わっていないのに、ですよね。

くまこさん:
そうなんです。好きなこととか興味あること、得意なことに気がつくことができて、それが仕事でも見出せるようになってきたのかなって。

新川:
プライベートはどうですか?

くまこさん:
充実してます(笑)。「去年休む前よりきつい状況が来ても、大丈夫って思える自分がいる」それが、1年前と一番大きく変わったことですね。

「立ち止まることは、無駄じゃない」

新川:
今も迷っている先生たちに、何か伝えたいことはありますか?

くまこさん:
……難しいんですけど(笑)もし自分に声をかけるとしたら、「立ち止まったこと、不安に思ったこと、全然無駄じゃないよ」って言いたいです。

新川:
うんうん。

くまこさん:
立ち止まることって、変われるきっかけになると思っていて。立ち止まるのも悪くないし、そこからこういうプログラムとか、自分を見つめるきっかけになることがあれば、悪くなかったなって思えると思うので。

新川:
立ち止まっちゃダメじゃなくて、立ち止まっていいんだよ、ということですよね。そこからまた何かある、という。

くまこさん:
はい。そう思います。

編集後記

くまこさんのインタビューで印象的だったのは、「やめたい」ではなく「向いていないかもしれない」という言葉だった。仕事量への不満よりも、自分への不信が先にある。そういう状態の先生は、きっと少なくない。SSプログラムは「転職か継続か」を決める場所ではなく、「自分が何者か」を取り戻す場所でもある。くまこさんの1年間の変化が、そのことを静かに証明している。

取材:新川(Re-Career 株式会社 代表取締役)