教員・教師の異動は何年ごと?異動希望の書き方と例文、通らないとき、内示の時期【公立学校】

教員の異動は何年ごと? 異動希望の書き方・例文と内示の時期

公立学校の教員の異動が何年ごとかは、全国共通の決まりではなく、都道府県や政令市の教育委員会が定める方針や要領で決まります。異動希望の書き方と例文、通らないとき、内示の時期までを、自治体の原本と法律の条文で、元教員の私が一つずつ確かめました。

「同じ学校に何年いたら異動になるの?」「異動希望には何を書けばいいの?」。異動希望の書類を書く時期が近づくと、こうした疑問が浮かぶ先生もいると思います。ネットで調べると「◯年で異動」という数字がたくさん出てきますが、その数字がどこの自治体の話なのかが書かれていないこともあります。

この記事では、東京都・川崎市・堺市・栃木県の方針や要領の原本を並べて、異動の年数・手続き・内示の流れを整理します。そのうえで、つらい今の学校から離れる手段としての「異動」を、辞める・続けるの間にある選択肢として考えていきます。

新川紗世 Re-Career代表

この記事の著者

新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役

公立中学校で11年、私立高校で1年、あわせて12年、英語教員として勤務。教員時代に病休を経験し退職。その後、教員専門のキャリア支援会社を設立。著書『「やめたいかも」と一度でも思ったら読む 教員の転職思考法』。スタッフ全員が元教員のキャリア支援会社を率い、自身も延べ1,000名以上のキャリア支援に携わる。

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教員の異動の年数は「自治体の方針・要領」で決まる。まず自分の自治体の文書を確かめる

何年ごと全国共通の年数はない。例:川崎市は小中の教諭が同じ学校で7年、新規採用から4年で異動対象(令和8年度要領)

誰が決める市町村立小中学校(政令市を除く)の先生は、原則として都道府県の教育委員会が任命。服務の監督は市町村の教育委員会

異動希望例:川崎市は、本人が自己申告書を校長に出し、校長が面接して意見具申する。希望どおりになるとは限らない

内示時期は自治体ごと。例:川崎市は3月上旬に異動名簿を校長へ示し、内示日は別に通知

休職・育休中例:川崎市は4月1日時点で休職・育休中などの人を異動対象にしない。堺市は個別に協議

選択肢異動は「辞める」と「今の学校で続ける」の間にある選択肢。どれを選んでも間違いではない

教員の異動は何年ごと?先に結論|年数は自治体の方針で決まる

異動の方針の書類を見ながら説明を受けるイメージ

先に結論をお伝えします。

教員の異動が「何年ごと」かは、法律で全国一律に決まっているわけではありません。同じ学校に何年いると異動の対象になるか、異動希望をいつ出すか、内示がいつ来るかは、都道府県や政令指定都市の教育委員会が定める「人事異動方針」「実施要領」「異動基準」といった文書で決まります。この記事で見た川崎市・堺市・栃木県は、どれも年度ごとに定めていました。

同じ「教員の異動」でも、自治体によって年数の考え方はかなり違います。この記事で確かめた例を、先に並べておきます。

自治体(文書) 同じ学校での年数の目安
東京都(公立小中学校の公募の案内) 現任校で実勤務年数6年以上の教員を「必異動対象教員」と呼んでいる
川崎市(令和8年度 実施要領) 小中の教諭などは同一校7年、高校・特別支援学校は10年で異動対象。新規採用から同一校4年でも異動対象
堺市(令和8年度 異動基準) 初めての学校は3年又は4年、2校目以降は6年で異動。2校目以降は3年で異動することもできる
栃木県(令和9年度 定期異動方針) 方針の本文には年数の数字はなく、「同一校勤続年数等を考慮」と書かれている

川崎市と堺市は政令指定都市なので、市の教育委員会が自分で基準を決めています。東京都と栃木県は都道府県です。

自分の場合を知るには、勤務先の自治体の文書を確かめるのがいちばん確実です。学校の管理職や、教育委員会の人事担当の窓口でも確認できます。

そして、もう一つお伝えしたいことがあります。今の学校がつらくて「辞めたい」と思っているなら、辞める前に「異動」という道があるということです。人間関係や学校の状況が原因なら、学校が変わることで楽になる場合があります。この記事の後半では、その考え方もまとめています。

教員の異動を決めるのは誰?任命権者と服務監督のしくみ

学校の校舎

異動の流れを知る前に、「誰が先生の人事を決めているのか」を押さえておくと、手続きの意味が分かりやすくなります。ここは勤務先が公立の小・中学校か、政令市の学校か、県立の高校かで変わります。

市町村立の小・中学校の先生(政令市を除く)=県費負担教職員

政令指定都市を除く市町村立の小学校・中学校・義務教育学校・特別支援学校などの先生の給料は、都道府県が負担しています(市町村立学校職員給与負担法 第1条)。こうした先生を「県費負担教職員」と呼び、任命権は都道府県の教育委員会にあります(地方教育行政の組織及び運営に関する法律(地教行法) 第37条第1項)。

一方で、日々の服務を監督するのは市町村の教育委員会です(同法第43条第1項)。勤務先の学校を設置しているのは市町村なので、毎日の勤務の管理は市町村の教育委員会、採用や異動などの人事は都道府県の教育委員会、という役割分担になっています。

役割 誰が 根拠
任命(採用・異動など) 都道府県の教育委員会 地教行法 第37条第1項
任免などについての内申 市町村の教育委員会 地教行法 第38条第1項
進退についての意見の申出 校長(市町村の教育委員会へ) 地教行法 第39条
服務の監督 市町村の教育委員会 地教行法 第43条第1項

地教行法は、都道府県の教育委員会は市町村の教育委員会の「内申」をまって任免その他の進退を行う、と定めています(第38条第1項)。また、校長は、所属する先生の任免その他の進退について、市町村の教育委員会に意見を申し出ることができます(第39条)。

つまり、異動は「都道府県の教育委員会が一方的に決める」ものではなく、校長の意見 → 市町村の教育委員会の内申 → 都道府県の教育委員会の決定という流れの中で決まります。異動希望の書類や校長との面談が大事だと言われるのは、この流れの入り口にあたるからです。

例外:条例で市町村が任命の事務をしている地域もある

地教行法第55条第1項は、都道府県が条例で、都道府県の教育委員会の事務の一部を市町村に処理させることができると定めています。たとえば大阪府「府費負担教職員の人事行政事務に係る事務処理の特例に関する条例」は、豊中市・池田市・箕面市・豊能町・能勢町が設置する学校の職員の任免などの事務を、その市町が処理するとしています(第2条)。このため「原則として都道府県の教育委員会」と書いています。

政令指定都市の市立学校の先生

政令指定都市の市立学校の先生は、市町村立学校職員給与負担法第1条の対象から外れていて、市の教育委員会が任命します(地教行法第34条)。異動の基準も市が決めます。この記事で例に挙げる川崎市と堺市は、どちらも政令指定都市です。

都道府県立の高校・特別支援学校の先生

都道府県立の学校の先生は、その都道府県の教育委員会が任命します(地教行法第34条)。高校の異動の基準は、小・中学校とは別に定められていることがあります。

なお、私立学校の先生の異動は、学校法人ごとの就業規則や人事の決め方によります。この記事は公立学校の先生を前提にしています。

同じ学校に何年いると異動?自治体の方針で見る年数の例

データを確認するイメージ

ここからは、自治体の文書の原本で、異動の年数がどう書かれているかを見ていきます。数字はその自治体の、その年度のものです。ほかの自治体にそのまま当てはめないでください。

東京都:「必異動対象教員」は現任校で実勤務年数6年以上

東京都教育委員会「令和8年度(令和9年4月1日異動)公立小中学校教員公募の実施について」(2026年7月1日更新)は、「東京都公立学校教員の定期異動実施要綱」に基づいて行う公募の案内です。この中で、「必異動対象教員(現任校で、実勤務年数6年以上の者)」という言い方が出てきます。公募に応募できるのは、原則として現任校に3年以上勤務している教員です(島しょ地区の公募を除く)。

同じ案内は、定期異動の要項の記載として「5校を経験するまでに、異なる3つの地域を経験するもの」とも書いています。東京都では、学校だけでなく「地域」をまたぐ異動も、人事の考え方に組み込まれていることが分かります。

川崎市:小中は同一校7年、新規採用は4年で異動対象

川崎市教育委員会「令和8年度教職員人事異動実施要領」(令和8年6月2日の教育委員会会議 議案第6号の参考資料に、令和7年度に実施した人事の要領として掲載)には、異動の基準がくわしく書かれています。主なものを表にしました(いずれも令和8年3月31日時点の同一校勤続年数)。

対象 異動対象になる年数
総括教諭・教諭・養護教諭(小・中学校) 同一校7年
同(高校・特別支援学校) 同一校10年
新規採用の教職員(栄養教諭・学校栄養職員・事務職員を除く) 新規採用から同一校4年
栄養教諭・学校栄養職員 同一校4年
学校事務職員 同一校3年
2校以上の経験がある教諭など 同一校3年以上7年(特別支援学校は10年)未満は、本人の異動希望と校長の意見具申に基づき、教育委員会が必要と認める場合

川崎市の要領には、年数に達しても延長できる場合も書かれています。たとえば小・中学校で同一校7年に達した教諭などは、学校運営上の観点から引き続き勤務する必要があると教育委員会が特に認めた場合、3年度以内で1年ごとに延長できます。

堺市:初めての学校は3年又は4年、2校目以降は6年

堺市教育委員会「令和8年度 堺市立学校園教職員人事異動基準」(令和7年12月18日施行)は、異動の年限を短くした改定です。教育長の報告資料には、改定のポイントが次のように書かれています。

対象 改定前 令和8年度の基準
新規採用者・他市などからの転入者(初めての学校) 6年以上 3年又は4年で異動(事務職員は3年)
2校目以上の経験者 8年以上 6年で異動。3年で異動することもできる

改定の理由として、子どもの数が減って学級数も減り、転出しても転入する教職員がいない学校が出ていること、早いうちに複数の学校を経験してキャリア形成を支援することが挙げられています。年数が短くなる方向の改定なので、数年前の情報のまま覚えていると、自分の異動の時期を読み違えることがあります。なお、同じ基準は経過措置として、令和6年度までに初めての学校に配置された人(事務職員を除く)について、学校運営上必要な場合は現任校での勤務年数の上限を6年とし、異動について協議するとしています(令和10年度末まで)。

栃木県:方針には年数の数字がない

栃木県教育委員会「令和9(2027)年度公立学校職員定期異動方針」(令和8年9月1日)は、11項目の方針の中で「勤務実績、年齢及び同一校勤続年数等を考慮して、適材を適所に配置する」としています。公表されている方針の本文には、何年で異動するかという数字は書かれていません。

このように、年数を公表している自治体もあれば、方針では考慮する要素だけを示している自治体もあります。数字が見つからないときは、管理職や教育委員会の人事担当に確かめてください。

法律が定めているのは「誰が基準を決めるか」

地教行法第38条第2項第1号は、一つの市町村での「標準的な在職期間その他の都道府県委員会が定める県費負担教職員の任用に関する基準」に従って、ほかの市町村へ移す場合があることを定めています。何年で動くかは、法律ではなく、この基準を含む各教育委員会の文書で決まる、と考えると分かりやすいと思います。

異動の1年の流れ|異動希望の提出から内示・4月の着任まで

計画を立てるイメージ

異動の手続きは、1年をかけて進みます。ここでは、川崎市の令和8年度の実施要領に書かれた流れを例に見てみます。日付は川崎市のものです。

時期(川崎市の例) すること
10月10日より前 異動対象者・異動可能対象者が「異動対象者自己申告書」を書いて校長に出す。校長は面接で本人の意向を確かめ、意見具申する
令和7年10月10日 校長が、校内人事計画の資料と自己申告書を教育委員会へ出す
11月・1月 教育委員会が校長との人事ヒアリングを2回行う
3月上旬 教育委員会が教職員異動名簿を校長に示す。各学校の内示日は別に通知する

川崎市の要領は、校長が面接をするときに、育児休業明けや病気休職明けなどの異動対象者については、本人の意向や個別の事情を考慮することも求めています。

「内示」はいつ来る?

内示の時期は、自治体によって違います。川崎市の例では、3月上旬に異動名簿が校長に示され、各学校での内示日は別に通知されます。同じ資料の中の、小学校専科指導教員の公募では「令和8年3月に配置校を内示する」と書かれています。

異動の日付は、たとえば東京都の公募の案内では「令和9年4月1日異動」と書かれていて、年度の始まりの日付です。川崎市の例でも、異動名簿が校長に示されるのは3月上旬なので、内示から着任までは長くありません。引き継ぎや引っ越しの準備は、内示の前から少しずつ考えておくと安心です。

公募という道もある

自治体によっては、学校や地域が求める先生を募集する「公募」の仕組みもあります。東京都の令和8年度の公募は、申込期間が令和8年10月1日から各学校の定める期日までで、所属長と所属する教育委員会の推薦を得た人が対象です(必異動対象教員は推薦がなくても応募できる)。

通常の異動希望とは別の入り口なので、「この地域・この学校で働きたい」という希望がはっきりしている方は、自分の自治体に公募があるかを確かめてみてください。

異動希望の書き方|理由の伝え方と例文

異動希望の理由を付箋で整理するイメージ

異動希望を書く書類の名前は、「異動対象者自己申告書」(川崎市)、「異動調書」(堺市)など、自治体によって違います。書く欄や選べる項目も違います。ここでは、どの様式でも使える考え方をまとめます。法律や要領で決まっていることではなく、私が元教員として、また教員の方の相談を受ける立場からおすすめしたい書き方です。

書き方の3つのポイント

・事実を書く:「つらい」「しんどい」だけでなく、「いつから」「何が」「どのくらい」を書く
・希望の条件を具体的にする:地域・校種・通勤時間など、何を優先したいかを書く
・家庭や健康の事情は、書ける範囲で書く:書類に書きにくいことは、校長との面談で口頭で伝える方法もある

堺市の異動基準には、異動の年限に当たる人でも「個別の理由で異動調書に書かれた内容が客観的に正当と認められる者」は異動について協議する、という定めがあります。書類に書いた理由が、人事を考えるうえで読まれる材料になることが分かります。

理由の例文

次の例文は、そのまま使うためではなく、書き方の形を見ていただくためのものです。数字や事情は、ご自身のものに置き換えてください。

事情 例文
介護 同居する父(80代)の通院に週1回付き添っています。通勤時間が片道1時間以内の学校を希望します。
育児 子どもが2人(3歳・1歳)おり、保育園の送迎を担っています。○○市内の学校を希望します。
通勤 現在、通勤に片道1時間30分かかっています。転居の予定はないため、○○方面の学校を希望します。
健康 ○年○月から通院しています。主治医からは通勤時間を短くするよう助言を受けています。
経験を広げたい これまで中学校で9年間勤務しました。小中連携に関心があり、小学校での勤務を希望します。

健康のことは、書類に詳しく書くのに抵抗がある方もいると思います。その場合は、「健康上の事情があり、面談でお伝えしたい」と書いて、校長との面談で話す方法もあります。学級崩壊など、今の学校の状況がつらいときの伝え方は、学級崩壊のクラスを担任してしまった先生へ|自分を守る5つの順番と、異動・休職という第3の道でもくわしく書いています。

「どの環境にもメリットとデメリットがあるので、自分の価値観に合う環境とは何か?を考えて、それに合う働き方や生活環境を整えて行くといいと思います。」
——30代・中学校教諭・女性(当社「元教員キャリア実態調査2026」の自由記述より)

異動希望が通らないとき・出さないとき|休職中・育休中の扱い

悩む人のイラスト

異動希望は、出せば必ず通るものではありません。川崎市の要領でも、2校以上の経験がある先生の異動は「本人による異動希望及び校長による異動を必要とする意見具申に基づき、教育委員会が必要と認める者」とされています。希望は、人事を決めるときの材料の一つです。

通らなかったときに知っておきたいこと

・年限で異動の時期が来ることがある:川崎市・堺市のように、同一校の年数で異動対象を決めている自治体では、希望が通らなくても、いずれ異動の時期が来る
・翌年度にもう一度伝える:川崎市の要領のように異動の手続きが年度ごとに定められている場合は、事情が続いているなら翌年度も伝える(出せる時期や出せる人は自治体の要領で確かめる)
・事情が変わったら、時期を待たずに管理職に伝える:家族の介護が始まった、体調を崩したなど、状況が変わったときは早めに共有する

堺市の基準には、「やむを得ない事情により配置換を希望する者の異動については、協議する」という定めもあります。定期の時期以外の扱いは自治体によって違うので、まずは管理職に相談してみてください。

異動希望を出さないとどうなる?

異動の希望を出さなくても、年限に達すれば異動の対象になる自治体があります。たとえば川崎市では、小・中学校の教諭などは同一校7年で、新規採用の教職員は同一校4年で、異動対象者として異動するものとされています(延長できる場合があります)。「希望を出さなければ今の学校にずっといられる」とは限りません。

休職中・育休中・定年が近い場合

休んでいる人や、定年が近い人の扱いを定めている自治体もあります。川崎市と堺市の例を挙げます。

自治体 扱い
川崎市(令和8年度 要領) 令和8年4月1日時点で、出産休暇・育児休業・長期の病気休暇・休職などの人(見込みを含む)は、異動対象者としない。定年退職までの勤務年数が3年以下の人も、原則として異動対象者としない。育休や病気休職から復職した人は、本人の希望と校長の意見具申に基づき、勤続年数を延長できる場合がある
堺市(令和8年度 基準) 異動の年限に当たる人のうち、退職予定・産前産後休暇や育児休業の予定・病気休職・介護休暇の予定などに当たる人は、年限が来たら異動するという定めをそのまま当てはめず(基準の文言は「その限りではなく」)、異動について協議する

扱いは自治体ごとに違います。休職中の方は、復職と異動の時期が重なることもあるので、主治医とも相談しながら考えてみてください。休職からの復職の考え方は、教員のうつ病からの復職・転職完全ガイドにまとめています。

「育児休暇、介護休暇、年休等を充分に生かし、充実したライフバランスでお仕事をなさって下さい。」
——50代以上・小学校非常勤講師・女性(当社「元教員キャリア実態調査2026」の自由記述より)

市町村をまたぐ異動・校種をまたぐ異動・学校の外への異動

いくつもの方向を指す矢印(市町村・校種をまたぐ異動のイメージ)

異動には、同じ市町村の中で学校が変わるものだけでなく、市町村をまたぐもの、校種をまたぐもの、学校の外へ出るものがあります。

市町村をまたぐ異動

市町村立の小・中学校の先生(県費負担教職員)は、同じ都道府県の中で、市町村をまたいで異動することがあります。地教行法第40条は、都道府県の教育委員会が「一の市町村の県費負担教職員を免職し、引き続いて当該都道府県内の他の市町村の県費負担教職員に採用することができる」と定めています。任命権者は、原則として、どちらの市町村でも同じ都道府県の教育委員会です(第37条第1項)。

同じ条文は、移る前の市町村ですでに正式任用になっていた人については、移った先での採用に地方公務員法第22条(条件付採用)を適用しない、とも定めています。つまり、正式任用になった後で市町村をまたいで異動した場合は、条件付採用の期間からやり直すことにはなりません。

給与や勤務時間などの勤務条件は、県費負担教職員の場合、都道府県の条例で定められます(地教行法第42条)。

校種をまたぐ異動(小学校⇔中学校など)

川崎市の要領は「多様な経験を積み、幅広い視野を持てるよう校種間の人事異動を推進する」としています。堺市の基準は、校園種間の異動を「4年間の期限付または期限なしのいずれか」とし、希望する場合は協議により異動することがある、としています。教員は、勤める学校の種類に相当する免許状を持っている必要があります(教育職員免許法 第3条)。校種をまたぐ異動を考えるときは、自分の免許状を確かめておきましょう。

学校の外への異動・転職

教育委員会の事務局などへ移る道もあります。どの職に、どのような形で移るのかは、自治体によって違います。

任命権者が同じ職場への異動と違い、任命権者も、給与や退職手当を定める条例も教員時代と変わる職場へ移る場合は、いったん教員を退職して、採用先に採用される形になります。政令指定都市以外の市町村立小中学校の教員は、原則として都道府県の教育委員会が任命し、給与や退職手当も都道府県の条例で決まるため(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第37条・第42条)、市町村の行政職へ移る場合はこれに当たります。給与は採用先の給料表で決まります。退職手当の勤続期間が教員時代と通算されるのは、教員として退職手当を受け取らずに引き続き採用され、退職手当条例に通算の定めがある場合に限られます。

教員から行政の仕事へ移る道については、教員から公務員への転職|行政職・教育委員会への転身ガイドで詳しく書いています。

異動で給料や手当は変わる?お金の基本

年収のイメージ

異動で気になるのが、給料や手当がどう変わるかです。ここでは、県費負担教職員の場合の基本を整理します。

項目 異動で変わる? 根拠・補足
給料(給料表) 県費負担教職員なら、どの市町村の学校に移っても都道府県の条例で決まる。校種が変わると、適用される給料表が変わることがある 地教行法 第42条
通勤手当 通勤の距離や手段が変われば変わる 条例で決まる
へき地手当 へき地学校などに勤務すると支給される へき地教育振興法 第5条の2。額や対象校は条例で決まる
その他の手当(住居手当・単身赴任手当など) 住まいや家族の状況が変われば変わることがある 市町村立学校職員給与負担法 第1条は、これらの手当も都道府県が負担する給与として挙げている

へき地教育振興法第5条の2は、都道府県(政令市が設置する小・中学校などは政令市)が、条例で指定するへき地学校などに勤務する教員・職員に、条例で定めるところによりへき地手当を支給しなければならない、と定めています。月額は、文部科学省令で定める基準を参酌して条例で定めます。

校種が変わる場合の例として、川崎市の小学校専科指導教員の公募(応募できるのは中学校・高校の教諭など)の資料は、小学校に配置された後に適用される給料表は「義務教育諸学校教育職給料表」になる、と書いています。

ただし、手当の名前や額、支給の条件は、都道府県や政令市の条例・規則で決まります。異動で生活がどう変わるかは、内示のあとに事務の担当の方に確かめるのが確実です。

給与のしくみは同じでも、通勤時間が変わると、家庭の時間の使い方は大きく変わります。夫婦ともに教員の方は、教員夫婦の異動・転勤問題|どちらが動くか決める3つの視点も参考にしてください。教員と結婚を考えている方には、教師と結婚するメリット・デメリット|妻・夫のリアルもあります。

「辞めたい」の前に、異動という選択肢|悩み別に読む記事

選択肢を考えるイメージ

最後に、この記事でいちばんお伝えしたいことです。

今の学校がつらくて「教員を辞めたい」と思っているとき、選択肢は「辞める」と「今の学校で我慢して続ける」の2つだけではありません。学校を変える=異動という、3つ目の道があります。

つらさの中身 異動で変わる可能性 関連する記事
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異動で変わるのは、主に「人」「学校の状況」「通勤」です。一方で、教員という仕事の中身そのものが合わないと感じているなら、異動では変わりにくいかもしれません。その場合は、転職も含めて考える時期なのかもしれません。

私自身は、公立中学校での11年目に病気休暇を取り、2020年に退職しました。私は辞める道を選びましたが、辞めることだけが答えだとは思っていません。異動で環境を変えて続けるのも、今の学校で続けるのも、別の仕事に移るのも、どれも間違いではないと思います。大切なのは、どの道があるのかを知ったうえで、自分で選ぶことです。

「教員を続けるのも、辞めるのも、どちらも間違いではないと思います。大切なのは、『自分で決めること』なのではないかと。」
——30代・中学校教諭・男性(当社「元教員キャリア実態調査2026」の自由記述より)

元教員107名に聞いた調査の結果は、元教員107名のリアル【元教員キャリア実態調査2026】にまとめています。

「教員をそのまま続けるにせよ辞めるにせよ、いったんどこかで立ち止まって自分を見つめる機会は必要だと思いますし、それには色んな人に話を聞いてもらうのが大切だと思います。」
——40代・高等学校教諭・男性(当社「元教員キャリア実態調査2026」の自由記述より)

よくある質問

Q. 教員の異動は何年ごとですか?

A. 全国共通の年数はありません。都道府県や政令市の教育委員会が定める方針・要領で決まります。例として、川崎市の令和8年度の要領では、小・中学校の教諭などは同一校7年、高校・特別支援学校は10年で異動対象です。堺市の令和8年度の基準では、2校目以降は6年で異動です。

Q. 新任(初任校)は何年で異動しますか?

A. 自治体によって違います。川崎市の令和8年度の要領では、新規採用の教職員(栄養教諭・学校栄養職員・事務職員を除く)は新規採用から同一校4年で異動対象です。堺市の令和8年度の基準では、初めての学校は3年又は4年で異動します。

Q. 異動希望を出せば必ず通りますか?

A. 必ず通るとは限りません。川崎市の要領でも、2校以上の経験がある先生の異動は、本人の異動希望と校長の意見具申に基づき、教育委員会が必要と認めた場合とされています。川崎市の要領のように異動の手続きが年度ごとに定められている場合は、事情が続いているなら翌年度も伝えてみてください。

Q. 異動希望を出さなければ、今の学校にいられますか?

A. 年限に達すれば異動の対象になる自治体があります。たとえば川崎市では、小・中学校の教諭などは同一校7年で異動対象者として異動するものとされています(延長できる場合があります)。

Q. 異動の内示はいつですか?

A. 自治体によって違います。川崎市の令和8年度の要領では、3月上旬に教職員異動名簿を校長に示し、各学校の内示日は別に通知するとしています。

Q. 休職中や育休中でも異動になりますか?

A. 扱いは自治体ごとに違います。川崎市の令和8年度の要領では、4月1日時点で育児休業や長期の病気休暇・休職などの人(見込みを含む)は異動対象者としません。堺市の令和8年度の基準では、異動の年限に当たる人のうち育児休業や病気休職などに当たる人は、年限が来たら異動するという定めをそのまま当てはめず、異動について協議するとしています。

Q. 市町村をまたいで異動すると、身分や給料はどうなりますか?

A. 市町村立の小・中学校の先生(政令市を除く)は、原則として都道府県の教育委員会が任命し、給与などの勤務条件は都道府県の条例で定められます(地教行法第37条・第42条)。市町村をまたぐ異動は、法律上は一の市町村で免職し、引き続いて他の市町村で採用する形です(第40条)が、すでに正式任用だった人は、移った先で条件付採用からやり直すことにはなりません。

まとめ

・教員の異動が何年ごとかは、全国共通の決まりではない。都道府県・政令市の教育委員会の方針・要領で決まる
・例:東京都は現任校6年以上を「必異動対象教員」と呼ぶ。川崎市は小中の教諭などが同一校7年、新規採用は4年。堺市は初めての学校3年又は4年、2校目以降6年
・市町村立の小・中学校(政令市を除く)の先生は、原則として都道府県の教育委員会が任命し、服務の監督は市町村の教育委員会。校長の意見→市町村の内申→都道府県の決定、の流れで決まる
・異動希望は事実と条件を具体的に書く。書きにくいことは面談で伝える。必ず通るとは限らない。事情が続くなら、翌年度の手続きでもう一度伝える(出せる時期や出せる人は自治体の要領で確かめる)
・休職中・育休中・定年が近い人の扱いを定めている自治体もある。自分の自治体の文書で確かめる
・異動は「辞める」と「今の学校で続ける」の間にある3つ目の道。どれを選んでも間違いではない




Re-Career代表 新川紗世
元教員が運営するキャリア支援

お金もキャリアも、自分で選ぶ。
そのために、選択肢を一緒に見ていきませんか?

Re-Careerは元教員が立ち上げた、教員専門のキャリア支援サービスです。
「辞める/続ける/変える」どの選択でも、お金とキャリアの両面で伴走します。