教員・教師の介護と仕事の両立|介護休暇が通算6月の自治体も。辞める前に使える制度8つと働き方の変え方【元教員が解説】

親の介護が始まったとき、教員が使える制度は、想像よりあります。介護休業の「通算93日」は法律が定める下限で、条例で通算6月としている自治体もあります。この記事では、教員・教師が介護と仕事を両立するために使える制度8つを条文と自治体の公式資料で確認し、お金の話(介護休業手当金は標準報酬の日額の67%・通算66日)、介護保険の申請の順番、それでも続かないときの選択肢までを、元教員の立場で整理します。

制度の名称と日数は、勤務先の自治体によって入れ替わります。この記事は「窓口で何を確認すればいいか」が分かる状態を目指して書きました。辞めるが正解じゃない。けれど「絶対に辞めなくていい」とも書きません。選べる状態にしてから決める、そのための材料です。

新川紗世 Re-Career代表

この記事の著者

新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役

公立中学校で11年、私立高校で1年、あわせて12年、英語教員として勤務。教員時代に病休を経験し退職。その後、教員専門のキャリア支援会社を設立。著書『「やめたいかも」と一度でも思ったら読む 教員の転職思考法』。スタッフ全員が元教員のキャリア支援会社を率い、自身も延べ1,000名以上のキャリア支援に携わる。

⏱️ 30秒でわかる結論

介護を理由に辞める前に、確認しておくことが5つあります。

法律は下限育児・介護休業法 第61条の2が、地方公務員である教職員の介護休業(通算93日)・介護休暇(年5日)・介護時間(1日2時間)を直接定めています。これは下限です

条例が上乗せ東京都は「介護休暇」を引き続く6月(通算180日を限度に2回まで更新可)、兵庫県は3回・通算6月。名称も日数も入れ替わります

断れない制度任命権者等は「これを承認しなければならない」(第5項・第13項・第22項)。裁量で断れる制度ではありません(公務の運営に支障がある日・時間は除かれます。非常勤職員には別の定めがあります)

お金公立は共済の介護休業手当金=標準報酬の日額の67%・通算66日(週休日等を除いた勤務日)。私立で雇用保険に入っていれば介護休業給付金=67%・通算93日(暦日)。単位が違うため、日数の差ほど総額は変わりません(本文で試算しています)

先にやること職場の制度より先に、市町村の地域包括支援センターへ。要介護認定は申請のあった日にさかのぼって効力が生じます

教員と介護の両立で、最初に押さえておきたい結論

親の介護と教員の仕事の両立に悩む人のイメージ

最初に、いちばん大事なことを書きます。介護を理由に教員を辞めるかどうかは、「制度を知っているか」で結論が変わることがあります。これは精神論ではなく、条文と自治体の公式資料を突き合わせた結果として、そう言えます。

介護は、40代・50代の教員にとって「そのうち」の話ではない

文部科学省の「令和4年度学校教員統計調査(確定値)」によると、公立学校の本務教員のうち50歳以上が占める割合は、小学校31.3%・中学校34.0%・高等学校43.9%(令和4年度)。平均年齢は公立小学校42.1歳、公立中学校43.0歳、公立高等学校46.2歳です。

親が70代・80代に差しかかる年代と、ちょうど重なります。学年主任や分掌の要を任される時期と、介護が始まる時期が重なるということです。

働きながら介護している人は365万人

総務省の「令和4年就業構造基本調査 結果の概要」では、介護をしている者は629万人、うち有業者は365万人で、介護をしている者に占める有業者の割合は58.0%(5年前より2.8ポイント上昇)。同じ調査で、「介護・看護のため」に過去1年間に前職を離職した者は10.6万人(2022年)で、2017年の9.9万人から0.7万人増えています。

働きながら介護している人のほうが多数派で、それでも毎年10万人規模で辞めている。これが全国の姿です。教員だけを切り出した統計は、探した範囲では見つけられませんでした(後述します)。

当社の調査で言えること・言えないこと

Re-Careerが元教員107名に行った独自調査(複数回答)では、退職理由の上位は1位 仕事量 57.0%、2位 長時間労働 54.2%、3位 家庭との両立 44.9%、7位 将来不安 29.9% でした。女性回答者(n=64)に限ると、家庭との両立は 57.8% に上がります。

ただし、正直に書きます。この調査票の退職理由には「介護」「家族介護」という選択肢がありません。「家庭との両立」の内訳も聞いていないため、その44.9%のうち介護がどれだけを占めるのかは、私たちには分かりません。「家庭との両立に介護が含まれている」と言い切ることは、このデータからはできません。

言えるのは、自由記述にこういう声があった、ということだけです。

「育児休暇、介護休暇、年休等を充分に生かし、充実したライフバランスでお仕事をなさって下さい。」
——50代以上・女性・小学校・勤続26年以上(Re-Career「元教員キャリア実態調査2026」n=107・自由記述より)

この方は退職理由に「定年退職」を選んだ、勤続26年以上の元教員です。定年まで勤め上げた人が、現職の先生に向けて最初に挙げたのが「育児休暇、介護休暇、年休」でした。制度は、使い切った人ほどその価値を語ります。

教員が介護のために使える制度8つ|法律が「下限」を定めている

育児・介護休業法など介護に関する法律の条文を確認するイメージ

公立学校の教員が介護のために使える制度は、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法/e-Gov法令検索)第61条の2にまとまっています。この条文は、地方公務員である職員について介護休業・介護休暇・介護時間を直接定めているものです。

承認する側は「任命権者又はその委任を受けた者」で、県費負担教職員については市町村の教育委員会と、条文にはっきり書かれています(第3項)。校長の一存で決まる話ではありません。

使える制度8つ(法律が定める内容)

制度 内容(法律が定める下限) 根拠(育児・介護休業法 第61条の2)
① 介護休業 要介護家族の介護をするための休業。1つの継続する状態ごとに3回を超えず、通算93日を超えない範囲内で任命権者等が指定した期間内 第3項・第4項
② 介護休暇 要介護家族の介護その他の世話のための休暇。1年につき5日(要介護家族が2人以上なら10日)。1日の所定労働時間が短い職員として厚生労働省令で定めるもの以外の者は、1日未満の単位でも取得可(第12項) 第10項・第11項・第12項
③ 介護時間 1日の勤務時間の一部について勤務しない。連続する3年の期間内で、1日につき2時間まで 第20項・第21項
④ 所定外労働の免除 要介護家族を介護する職員が請求し、公務の運営に支障がないと認めるときは、所定労働時間を超えて勤務しないことを承認しなければならない 第15項(第14項を準用)
⑤ 時間外労働の制限 労働基準法36条1項で労働時間を延長できる場合でも、請求があり公務の運営に支障がないと認めるときは、制限時間を超えて延長しないことを承認しなければならない 第17項(第16項を準用)
⑥ 深夜勤務の制限 請求があり公務の運営に支障がないと認めるときは、深夜に勤務しないことを承認しなければならない 第19項(第18項を準用)
⑦ ハラスメント防止の体制整備 介護休業等の制度の利用に関する言動で勤務環境が害されないよう、相談体制の整備その他の措置を講じなければならない(任命権者等の義務) 第23項
⑧ 高齢者部分休業 条例で定める年齢に達した職員が申請し、公務の運営に支障がないと認めるとき、1週間の勤務時間の一部について勤務しないことを承認できる。条例次第 地方公務員法 第26条の3

①〜⑦は育児・介護休業法 第61条の2、⑧は地方公務員法(e-Gov法令検索) 第26条の3の定めです。

ここが誤解されやすい:この日数は「下限」です

上の表の日数を見て「93日しか休めないのか」と読んでしまうと、判断を間違えます。これは法律が定める下限であって、上限ではありません。

根拠は2つあります。1つめ、地方公務員法 第24条第5項は「職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める」としています。同条第4項は、国や他の地方公共団体の職員との間に権衡を失しないよう適当な考慮を払うこととしています。2つめ、地方自治法(e-Gov法令検索) 第14条第1項は「普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて…条例を制定することができる」としています。

つまり、条例は法律を下回れないが、上回ることはできるという構造です。そして実際に、上回っている自治体があります。次の章で実物を見ます。

「校長に断られる」制度ではない

第61条の2は、介護休業(第5項)・介護休暇(第13項)・介護時間(第22項)のいずれについても、任命権者等は請求があったときは「これを承認しなければならない」と定めています。裁量で断れる制度ではありません。

除外できる範囲は、制度ごとに書き分けられています。介護休業(第5項)は「当該請求に係る期間のうち公務の運営に支障があると認められる日又は時間を除き」、介護休暇(第13項)は「公務の運営に支障があると認められる場合を除き」、介護時間(第22項)は「当該請求に係る時間のうち公務の運営に支障があると認められる時間を除き」です。介護時間について「日単位で断る」条文にはなっていません。

ただし、ただし書による例外が置かれているのは第5項(介護休業)だけです。短時間勤務職員以外の非常勤職員のうち、介護休業をすることができないこととすることについて合理的な理由があると認められる者として厚生労働省令で定めるものに該当する場合は、この承認義務の対象外になります。第13項(介護休暇)と第22項(介護時間)には、このただし書はありません。

常勤か非常勤かで、使える範囲が変わります

第3項(介護休業)・第10項(介護休暇)・第20項(介護時間)には、いずれも括弧書きがあり、短時間勤務職員以外の非常勤職員について、使える範囲が制度ごとに別に定められています。常勤講師・会計年度任用職員・時間講師では結論が変わりうる、ということです。

ここは自分で断定せず、勤務先の教育委員会か学校事務に「自分の任用区分で使えるか」を聞いてください。任用区分ごとの違いは、この記事で全国一律に書けるものではありません。

なお、私立学校の教職員はこの第61条の2の対象ではありません。育児・介護休業法の一般の規定(民間労働者向けの章)と、学校法人の就業規則・規程によります。私立の方は、まず自校の就業規則の「介護休業」「介護休暇」の条項を開いてください。

介護休暇は名称も日数も入れ替わる|法律は下限、条例が上乗せ

学校事務や教育委員会の窓口で制度を確認するイメージ

ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。条例が法律を上回っているとき、日数だけでなく「名称」も入れ替わります。

法律では「介護休暇」は年5日の短い休みですが、条例では「介護休暇」が長いほうの休み(6月)を指すことがあります。同じ言葉が、逆の意味で使われるということです。この食い違いを知らずに窓口へ行くと、話が噛み合いません。

実物で確認する(東京都・兵庫県)

区分 法律(育児・介護休業法 61条の2) 東京都(教職員向け公式資料) 兵庫県(教職員向け公式資料)
長い休み 介護休業
3回まで・通算93日
介護休暇
引き続く6月。通算180日に満たない場合は180日を限度に2回まで更新可(無給)
介護休暇
3回まで・通算6月
年5日の休み 介護休暇
1年に5日(2人以上なら10日)
短期の介護休暇
暦年で5日以内(複数なら10日以内)
短期介護休暇
1暦年に5日(2人以上なら10日)
1日2時間の時短 介護時間
連続する3年・1日2時間まで
介護時間
取得の初日から3年以内・1日2時間以内・30分単位(無給)
介護時間
連続する3年・30分単位・2時間の範囲内
対象になる家族 要介護家族(配偶者・父母・子・配偶者の父母ほか厚生労働省令で定める者) 配偶者もしくはパートナーシップ関係の相手方もしくは二親等内の親族又は同一の世帯に属する者 配偶者・父母・子・配偶者の父母・祖父母・孫・兄弟姉妹ほか、同居を要件とする続柄を含む11区分。要介護状態は「2週間以上の期間にわたり日常生活を営むのに支障がある状態」

出典:東京都教育庁人事部勤労課「学校職員のための 勤務時間・休暇等 制度の概要」(常勤職員向け)兵庫県教育委員会が公開している教職員向けの休暇制度資料(令和5年4月)。東京都の資料は会計年度任用職員(時間講師・日勤講師を含む)は取扱いが異なると明記しています。

国家公務員も「通算6月」です

参考までに、国家公務員も同じ形です。一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律(e-Gov法令検索) 第20条第1項は、介護休暇を「要介護者の各々が当該介護を必要とする一の継続する状態ごとに、三回を超えず、かつ、通算して六月を超えない範囲内で指定する期間」内の休暇と定めています。同条第3項では、その期間の勤務しない1時間につき給与額を減額する(=無給)としています。

つまり、「93日で終わり」ではない制度設計は、現に存在します。ただし、それがどれだけの自治体に広がっているのかを示す統計は、探した範囲では見つけられませんでした。ここで言えるのは「珍しくない」でも「標準だ」でもなく、「上回っている例がある」までです。それでも、法律の93日だけを見て復帰時期を決めてしまうと、本当は6か月使えたのに3か月で戻る、という判断をしかねません。まず自分の自治体の条例を確認してください。

2つの県で確認しただけなので、こう書きます

ここで正直に線を引きます。私が公式資料で確認できたのは東京都と兵庫県の2つだけです。だから「多くの自治体では」とは書きません。「上回っている自治体があります」までです。

あなたの勤務先がどちらなのかは、この記事では分かりません。だからこそ、窓口で確認する項目を決めておいてください。

窓口(学校事務・教育委員会の人事担当)で確認する6つ

名称:うちの条例で「介護休暇」はどちらを指しますか(長いほう/年5日のほう)

日数:長いほうは通算何日・何月ですか。更新はできますか

取得単位:日単位ですか、時間・30分単位も使えますか。断続的に取れますか

有給か無給か:それぞれの制度で給与はどうなりますか

対象家族の範囲:同居・別居の要件、二親等内かどうか

添付書類:診断書・続柄を示す書類(住民票等)はいつまでに要りますか

この6つを紙に書いて持っていくだけで、1回の面談で終わります。「介護休暇について教えてください」だけだと、名称の食い違いで話が噛み合わないことがあります。

「介護休暇は年5日だと思い込んでいて、それなら意味がないと諦めていました。名称が違うだけで、うちの県には半年の制度があると知ったのは、辞表を書いたあとでした。」
——50代・公立高等学校・女性(相談の中で繰り返し聞く声)

介護中のお金|介護休業手当金は標準報酬の日額の67%・通算66日

介護休業中の収入と支出を計算するイメージ

制度が使えることと、生活が回ることは別の話です。ここはお金の章です。

まず押さえる:介護休暇・介護時間は「無給」です

東京都の資料は、介護休暇(引き続く6月)・介護時間のどちらにも「無給」と明記しています。兵庫県の資料も、介護休暇・介護時間について「勤務しない時間1時間について、勤務時間1時間当たりの給与額を減額」としています。国家公務員も同じで、勤務時間・休暇法第20条第3項が減額を定めています。

ただし「短期介護休暇」(年5日のほう)は別です。兵庫県の資料は、短期介護休暇の給与欄に「支給(減額されない)」=有給と明記しています。ただしこれは兵庫県で確認できたことであって、全国共通ではありません。短期の5日が有給か無給かは、勤務先の条例を窓口で確認してください。

公立と私立で、出るお金の名前も日数も違う

項目 公立学校の教員(共済組合) 私立学校の教職員(雇用保険加入の場合)
制度の名前 介護休業手当金 介護休業給付金
出るところ 共済組合(公立学校共済組合など) ハローワーク(雇用保険)
金額 勤務しなかった期間1日につき標準報酬の日額の67% 休業開始時賃金日額×支給日数の67%
日数の上限 介護を必要とする一の継続する状態ごとに通算66日
勤務日で数える(週休日等を除く)
同一の対象家族について通算93日3回まで
暦日で数える
根拠 地方公務員等共済組合法 第70条の4+同法附則 第17条の2 雇用保険法 第61条の4+同法附則 第12条
注意 同一の介護休業で雇用保険の介護休業給付を受けられるときは支給しない(第70条の4第4項) 介護休業開始前2年間にみなし被保険者期間が通算12か月以上必要(第61条の4第1項)

公立の根拠は地方公務員等共済組合法(e-Gov法令検索)第70条の4です。本則は「標準報酬の日額の百分の四十」ですが、同法附則第17条の2(介護休業手当金に関する暫定措置)が「当分の間、これらの規定中『百分の四十』とあるのは『百分の六十七』とする」としています。第2項が支給期間を「介護休業の日数を通算して六十六日を超えない」と定めています。

公立学校共済組合の説明ページでも、勤務しなかった期間1日につき標準報酬日額の67%、介護休業の開始日から66日を超えない期間(週休日等を除きます)と説明されています。

私立の根拠は雇用保険法(e-Gov法令検索)第61条の4です。こちらも本則は百分の四十で、同法附則第12条(介護休業給付金に関する暫定措置)が当分の間「百分の六十七」と読み替えています。

66日と93日は単位が違う|ズレるのは「条例で6月」の自治体

共済の「通算66日」と法律の「通算93日」を並べて、公立は3割少ないと読んでしまうと間違えます。単位がそろっていないからです。

育児・介護休業法 第61条の2第4項の「合算して九十三日」は暦日です。雇用保険法 第61条の4第6項第2号も「当該介護休業を開始した日から当該介護休業を終了した日までの日数を合算して得た日数が九十三日に達した日後の介護休業」には給付しないと書いており、開始日から終了日までを数える書き方=暦日です。一方、共済の66日は公立学校共済組合が「介護休業の開始日から66日を超えない期間給付されます(週休日等を除きます)」と説明しているとおり、勤務日で数えます。

93暦日に含まれる週休日以外の日は、おおむね65〜67日です。つまり66日は93日の休業をほぼ丸ごとカバーします。「93日休めるのに66日しかお金が出ない」というズレは、法律どおりの93日で休むかぎり、事実上生じません。

金額の目安も近くなります。共済の標準報酬の日額は月額の22分の1(地方公務員等共済組合法 第43条第1項)なので、66日分はおよそ3か月分。雇用保険は賃金日額(おおむね月額の30分の1)×93日で、およそ3.1か月分です。共済組合が1日あたりの給付上限額を「雇用保険法に定める額に相当する額に30を乗じて得た額の67%に相当する額を22で除して得た額」と説明しているのも、暦日の30と勤務日の22を突き合わせているからです。総額はほぼ同じ水準になります。

ズレが実際に効いてくるのは、条例で通算6月(およそ180暦日=勤務日にすると120日前後)まで休める自治体のケースです。このときは、手当金の66日を超えて休む期間が出てきます。

つまり、「6月休める」=「6月分の収入がある」ではありません。長く休めること自体は選択肢を広げますが、手当金が切れたあとの月をどう設計するかを、休み始める前に決めておく必要があります。

具体的な手取り額は、標準報酬の日額と自治体の扱いで変わるため、この記事では「あなたの場合いくら」という金額は出しません。共済組合の支部に「私の標準報酬の日額はいくらで、手当金は日額いくらになりますか」と聞くのが最短です。

共済組合まわりの制度は公立学校共済組合で使える制度5つ(医療・貸付・共済貯金)に、退職後の年金は教員の年金は月いくら?試算15〜17万円の内訳にまとめています。40代・50代のお金の組み立て方は40代女性教員のお金とキャリアもあわせてどうぞ。

「休めるのは分かりました。でも、その間の生活費がいくらになるのかが分からないと、休みますとは言えないんです。」
——40代・公立中学校・男性(相談の中で繰り返し聞く声)

職場の制度より先にやること|介護保険の申請と地域包括支援センター

介護保険の要介護認定と地域包括支援センターへの相談のイメージ

相談を受ける中でいちばん多い順番の間違いが、これです。「職場に何と言うか」から考え始めて、介護保険の手続きが後回しになる。

順番は逆です。先に介護保険の申請と、地域包括支援センターへの相談。そこで「どのくらいのサービスが使えるか」が見えてから、「自分は何日休む必要があるのか」が計算できます。それが決まらないうちに職場と話しても、話が固まりません。

介護保険は40歳から入っている

介護保険法(e-Gov法令検索)第9条は、市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者を第1号被保険者、40歳以上65歳未満の医療保険加入者を第2号被保険者としています。教員も、40歳から保険料を払っている当事者です。

同法第27条第1項は、要介護認定を受けようとする被保険者は市町村に申請しなければならないとしています。そして同項の後段で、指定居宅介護支援事業者や地域包括支援センターに、この申請の手続を代わって行わせることができると定めています。平日に役所へ行けない教員にとって、これは実務的に大きい規定です。

知っておくと焦らずに済む2つの条文

① 認定は、申請した日にさかのぼって効力が生じます(第27条第8項)。「認定が下りるまで待たないとサービスが使えない」わけではありません。迷っている期間がそのまま損になるので、迷ったら先に申請が原則です。

② 申請への処分は、申請日から30日以内にしなければなりません(第27条第11項)。ただし調査に日時を要する等の特別な理由があるときは、30日以内に見込み期間と理由を通知して延期できるとされています。30日を過ぎて処分も通知もないときは、却下されたものとみなして次の手続に進めます(第12項)。

地域包括支援センターは、全国5,487か所にある

厚生労働省の資料「地域包括支援センターについて」によると、地域包括支援センターは市町村が設置主体となり、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員等を配置する施設で、根拠は介護保険法第115条の46第1項です。すべての市町村に設置されており、全国に5,487か所(ブランチ1,567か所・サブセンター320か所を含めると7,374か所。令和7年4月末現在)。運営形態は市町村直営が2割、委託が8割です。

業務は、総合相談支援・権利擁護・包括的継続的ケアマネジメント支援・介護予防ケアマネジメント。同じ資料には、連携先として都道府県労働局(介護休業・介護休暇等に関する相談など)も挙げられています。「仕事と介護の両立」の相談先が、介護側の窓口にもちゃんと想定されている、ということです。

ただし、実際に使えるサービスの量・自己負担・窓口の呼び名は市町村ごとに違います。この記事では全国共通の数字として書きません。「親が住んでいる市町村の地域包括支援センター」を検索して、そこに聞いてください。遠距離介護の場合、相談先はあなたの住所地ではなく、親の住所地です。

「役所も地域包括支援センターも平日しか開いていないので、自分が動けるのは長期休業中だけだと思っていました。」
——40代・公立小学校・女性(相談の中で繰り返し聞く声)

学校だから介護休暇を取りにくい、を3つに分解する

学校の職員室で介護と仕事の両立に悩む教員のイメージ

ここまで読んで、「制度があるのは分かった。でも学校では無理」と思った方が多いと思います。その感覚は間違っていません。ただ、「無理」の中身を分けると、打てる手が違ってきます。

「取りにくい」を3つに分解する

① 代替が見つからない——これは制度の問題ではなく、講師不足という別の問題です。あなたが遠慮して解決する種類の問題ではありません。介護休業の条文(第61条の2第5項)は「当該請求に係る期間のうち公務の運営に支障があると認められる日又は時間を除き、これを承認しなければならない」と書いています。承認する義務を負っているのは任命権者等(県費負担教職員は市町村の教育委員会)です。なお、代替教員を確保する責任がどちらにあるかを定めた条文は、育児・介護休業法にも地方公務員法にも見当たりませんでした。言えるのは、代替を自分で見つけることが、承認の条件として条文に書かれてはいない、ということです。

② 時期が悪い——学期末、行事前、入試期。ここは正直に、動かせないことがあります。だからこそ「介護時間」(1日2時間・連続する3年)や「短期の介護休暇」(年5日)のような、長期に休まずに済む制度が用意されています。長い休みだけが選択肢ではありません。

③ 言い出しにくい——これがいちばん多い。そして、いちばん高くつきます。言い出せないまま年次休暇で埋めて、年休が先に尽きる。そのあとに残るのが「もう辞めるしかない」という結論です。

「誰にも言えないまま年休を使い切って、気づいたら、もう辞めるしかないという結論になっていました。制度の話は、誰からもされませんでした。」
——50代・公立中学校・女性(相談の中で繰り返し聞く声)

手続きは「思い立った日」から始まらない

兵庫県の資料を見ると、介護休暇の請求には介護休暇請求理由書、要介護者に係る医師の診断書、職員と要介護者の関係を示す書類(住民票等)の添付が必要とされています。また、一の継続する状態について初めて承認を受けようとするときは2週間以上の期間について一括請求する、という運用が書かれています。取得単位は1日または1時間(時間単位は勤務時間の始めまたは終わりからの連続した4時間の範囲内)で、全日連続・全日断続・時間断続・混合という取り方の例まで図示されています。

つまり、診断書が要る=医師の予約が要る=申請までに日数がかかるということです。「来週から休みたい」では間に合わないことがあります。親の入院が決まった日に、診断書の依頼と学校事務への相談を同時に始める。これが実務的な最短ルートです。

なお、これは兵庫県の運用です。東京都は日・時間を単位として連続・断続して利用できるとしており、取り方のルールも自治体で違います。前章のチェックリストで確認してください。

言い方は「相談」ではなく「請求」でいい

これは私が相談を受ける中で、何度も伝えてきたことです。介護休業・介護休暇・介護時間は、お願いして許してもらう制度ではありません。条文の言葉は「承認の請求があったときは」「これを承認しなければならない」です。

だから、伝え方はこの形で足ります。

・「親の介護のため、◯月◯日から介護時間を請求したいので、手続きを教えてください」

・「診断書はいつまでに用意すればいいですか」

・「うちの条例では、名称と日数はどうなっていますか」

事情の説明を長くする必要はありません。むしろ、制度名と日付を先に出したほうが、話が事務手続きに乗ります。

それでも「そんな前例はない」と言われたら、市町村の教育委員会(県費負担教職員の場合)か、都道府県教育委員会の人事担当に直接聞いてください。承認するのは校長ではなく任命権者等です。ハラスメントに当たる言動を受けた場合、任命権者等には相談体制の整備義務があります(育児・介護休業法第61条の2第23項)。

制度を使っても続かないときの選択肢|異動・任用区分・離職再採用

教員を続けるか辞めるかの分岐点に立つイメージ

制度を全部使っても、続かないことはあります。認知症の進行、きょうだいがいない、親が遠い、自分の体調も落ちている。そのときに「辞める」しか選択肢がないと思い込まないために、間にあるものを並べます。

① 勤務地・校種の異動希望を出す

介護を理由にした異動希望の扱いは、都道府県・政令市ごとに違います。異動のルールと内示の時期は自治体ごとに決まっているので、ここでは数字を書きません。確認先は勤務先の教育委員会の人事担当です。

実務的なポイントは1つ。希望調書の提出時期を逃さないこと。介護が始まったのが調書提出のあとだった場合でも、事情が変わったことを人事担当に伝えておくかどうかで扱いが変わることがあります。ご家庭に教員が2人いる場合は教員夫婦の異動・転勤問題も参考にしてください。

② 任用区分そのものを変える

常勤から非常勤講師・会計年度任用職員へ、という選択です。収入は下がりますが、時数と分掌が減るという一点で介護との相性が変わります。担任・部活動主顧問を外れることの意味は、実際に外れた人ほど大きいと言います。

ただし前章のとおり、非常勤になると育児・介護休業法 第61条の2の各制度が使える範囲が変わります(第3項・第10項・第20項の括弧書き)。「休みやすくなるはず」と思って変えたら制度の対象から外れた、ということが起こりえます。変える前に、任用区分を伝えたうえで使える制度を確認してください。

③ 高齢者部分休業(条例次第)

地方公務員法第26条の3は、条例で定める年齢に達した職員が申請し、任命権者が公務の運営に支障がないと認めるときは、定年退職日までの期間中、1週間の勤務時間の一部について勤務しないことを承認できる、としています。同条第2項が第26条の2第2項〜第4項を準用しており、給与は条例の定めにより減額されます。

この制度は「条例で定めるところにより」と条文に書かれているとおり、年齢も期間も条例次第です。条例がなければ使えません。50代の方は、一度確認する価値があります。定年前後の設計は50代教員の定年後セカンドキャリアにまとめました。

④ 「辞めて、戻る」制度を持つ自治体がある

これはあまり知られていません。兵庫県教育委員会の資料には「介護のための離職・再採用制度」が載っています。

内容は、介護休暇取得後に当該要介護者を介護するためやむを得ず離職する職員が、離職時に再採用を希望してその旨を任命権者に届け出た場合、別途の選考により再採用することができるというもの。期間は離職後3年間を経過した日の属する年度の末日までを限度とし、離職できる回数は2回まで(同一の継続する状態にある場合は再度の離職はできない)。手続きは離職希望日の2か月前までに退職願と再採用願を提出し、県教育委員会が受理証明書を交付、離職後は毎年1月末日までに再採用希望届出書を提出する、という流れです。

もう一度書きます。これは兵庫県の制度です。全国共通ではありません。ただ、「こういう制度を持っている自治体が実在する」ということは、辞める前に自分の自治体にも同種の制度がないか調べる理由になります。調べずに辞めた人と、調べて無いことを確認して辞めた人とでは、同じ結論でも納得の度合いが違います。

⑤ 学校の外に出る、という選択も否定しない

ここまで制度の話をしてきましたが、「絶対に辞めなくていい」とは書きません。在宅勤務ができる、時間の融通が利く、急な休みが取れる。そういう働き方は学校の外にあり、介護と両立しやすいのは事実です。

介護の経験そのものが強みになる方向もあります。医療・福祉分野への転職は教員から医療・福祉業界へ転職、40代からの現実的な戦略は40代教員の転職完全ガイド、ライフイベントとキャリアの組み合わせは女性教員の転職完全ガイドにまとめています。

大事なのは順番です。制度を確認してから辞めるのと、確認せずに辞めるのは、同じ「辞める」でも中身が違います。辞めるが正解じゃない。続けるが正解でもない。選択肢を持ったうえで選ぶことが正解だと、私は思っています。

介護をきっかけに働き方を変えた3つの型(相談の現場から)

介護と両立できる働き方を選び直した元教員のイメージ

ここからは、相談を受ける中で実際に多い3つの型です。個人が特定されないよう、複数の相談に共通する形へ整理したものであり、特定の個人の事例ではありません。数字(年収・手当額など)は書きません。裏が取れないものを実例の形で出すことはしません。

型A:遠距離介護型(40代後半・中学校・親は他県)

親が他県で1人暮らし。月に2回、週末に帰る生活が半年続いて限界が来る、という型です。この型でまず効くのは長い休みではなく、短い休みの積み重ねです。年5日の休暇(法律では「介護休暇」、東京都・兵庫県では「短期(の)介護休暇」)を、通院の付き添いや役所の手続きに割り当てる。そして介護時間は1日につき2時間まで(勤務時間の始めまたは終わりに付けるのが東京都・兵庫県の形)なので、金曜だけ2時間早く上がれるようにするだけでも移動の組み方が変わります。

そして、相談先を親の住所地の地域包括支援センターに置く。週末に自分が行かなくても回る体制を先に作らないと、休みを増やしても消耗だけが増えていきます。

型B:同居・急変型(50代・高等学校・同居の親が入院)

入院と退院が短期間に繰り返され、退院後の生活を組み直す時間が要る、という型。この型はまとまった休みが効きます。

ここで前章の話が効いてきます。「法律で93日」だと思って3か月で復帰を決めるのと、自分の自治体の条例では通算6月まで取れると知って設計するのとでは、まったく違う計画になります。一方で、お金は共済の介護休業手当金が通算66日(週休日等を除いた勤務日)で切れます。法律どおりの93日(暦日)ならおおむねカバーされますが、条例で6月まで休むなら、後半は手当金が出ない期間になります。「休める日数」と「お金が出る日数」を、単位をそろえて別々に紙に書く。これだけで、復帰時期の話が感情論ではなくなります。

型C:きょうだい不均衡型(30〜40代・小学校・きょうだいはいるが動かない)

いちばんしんどいのがこの型です。制度の問題ではなく、家族の中の分担の問題だからです。「学校の先生は休みが取りやすいでしょう」と言われて、全部が回ってくる。この言葉を、相談の場で本当によく聞きます。

この型で私がお伝えしているのは、制度を「自分が休むための道具」ではなく「分担を可視化する道具」として使うという考え方です。地域包括支援センターやケアマネジャーを間に入れて、「この日はこの人が対応する」を第三者の前で決める。そこまでやって初めて、自分が何日休む必要があるのかが計算できます。

私自身のこと

私は公立中学校で11年、私立高校で1年、あわせて12年、英語教員として働きました。在職中に病休を経験しています。そのとき身にしみたのは、「休むこと」そのものより「制度を知らないまま数か月を過ごしたこと」の損の大きさでした。

年休をどう使うか、診断書がいつ要るか、給与がどうなるか。知っていれば違う選び方ができたのに、と思うことがいくつもありました。その後、延べ1,000名以上の方のキャリアのご相談に関わってきて、介護でも同じことが起きているのを何度も見ています。辞める理由が介護なのではなく、「介護のときに何が使えるかを知らなかったこと」が理由になっている。この記事を書いたのは、そこを埋めたかったからです。

よくある質問

Q. 教員も介護休業を取れますか?

A. 公立学校の教員は取れます。育児・介護休業法 第61条の2第3項が、地方公務員である職員について介護休業を直接定めています。承認するのは任命権者又はその委任を受けた者で、県費負担教職員については市町村の教育委員会と条文に明記されています。第5項は「公務の運営に支障があると認められる日又は時間を除き、これを承認しなければならない」としており、裁量で断れる制度ではありません。ただし第5項にはただし書があり、短時間勤務職員以外の非常勤職員のうち厚生労働省令で定めるものに該当する場合は、この承認義務の対象外です。

Q. 介護休業は93日が上限ですか?

A. 上限ではなく、法律が定める下限だと考えてください。地方公務員法 第24条第5項は勤務条件を条例で定めるとしており、地方自治法 第14条第1項は条例を「法令に違反しない限りにおいて」制定できるとしています。つまり条例は法律を下回れませんが、上回ることはできます。実際に東京都の教職員向け資料は「介護休暇」を引き続く6月の期間内(通算180日に満たない場合は180日を限度に2回まで更新可)とし、兵庫県の資料は3回を超えず通算6月としています。国家公務員も一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律 第20条第1項で「三回を超えず、かつ、通算して六月を超えない範囲内」です。

Q. 介護休暇と介護休業は何が違いますか?

A. 法律(育児・介護休業法 第61条の2)では、介護休業が長いほう(3回まで・通算93日)、介護休暇が年5日(要介護家族が2人以上なら10日)の短いほうです。ところが条例では名称が入れ替わることがあり、東京都や兵庫県では「介護休暇」が長いほう(6月)を指し、年5日のほうを「短期の介護休暇」「短期介護休暇」と呼んでいます。窓口では「介護休暇」という言葉だけで話さず、名称と日数の両方をセットで確認してください。

Q. 休んでいる間、給料は出ますか?

A. 東京都の資料は介護休暇・介護時間のどちらにも「無給」と明記し、兵庫県の資料も勤務しない1時間につき給与額を減額するとしています。国家公務員も勤務時間・休暇法 第20条第3項で減額です。そのうえで、公立の場合は共済組合から介護休業手当金が出ます。地方公務員等共済組合法 第70条の4は標準報酬の日額の百分の四十としていますが、同法附則 第17条の2が当分の間これを百分の六十七と読み替えており、支給期間は介護休業の日数を通算して66日までです。この66日は公立学校共済組合の説明のとおり週休日等を除いた勤務日で数えるため、法律どおりの通算93日(暦日)の休業はおおむねカバーされます。私立で雇用保険に加入している場合は、雇用保険法 第61条の4の介護休業給付金(附則第12条により当分の間67%、同一の対象家族について通算93日・3回まで。こちらは暦日で数えます)が対象になります。

Q. 校長に「前例がない」と断られることはありますか?

A. 制度の建て付けとしては、断れるものではありません。育児・介護休業法 第61条の2は、介護休業(第5項)・介護休暇(第13項)・介護時間(第22項)のいずれについても「これを承認しなければならない」と定めています。ただし書による例外が置かれているのは第5項(介護休業)だけで、第13項と第22項にはありません。また承認するのは校長ではなく任命権者等(県費負担教職員は市町村の教育委員会)です。話が進まないときは教育委員会の人事担当に直接確認してください。制度の利用に関する言動で勤務環境が害されないようにする体制整備義務も、同条第23項に定められています。

Q. 非常勤講師や会計年度任用職員でも使えますか?

A. 使える範囲が別に定められています。育児・介護休業法 第61条の2は、介護休業(第3項)・介護休暇(第10項)・介護時間(第20項)のそれぞれに括弧書きを置き、短時間勤務職員以外の非常勤職員について適用の範囲を制度ごとに限定しています。使えるかどうかは任用区分と勤務日数で変わるため、この記事で全国一律に断定はできません。勤務先の学校事務または教育委員会に、自分の任用区分を伝えたうえで確認してください。雇用保険に加入している場合は、ハローワークの介護休業給付金の対象になりうる点もあわせて確認する価値があります。

Q. 職場に言う前に、まず何をすればいいですか?

A. 介護を受ける方が住んでいる市町村の地域包括支援センターに相談し、要介護認定の申請をすることです。介護保険法 第27条第1項は市町村への申請を定め、同項後段で地域包括支援センター等に申請手続を代わって行わせることができるとしています。認定は申請のあった日にさかのぼって効力が生じ(同条第8項)、申請への処分は原則30日以内に行うこととされています(同条第11項)。地域包括支援センターは厚生労働省の資料によればすべての市町村に設置されており、全国に5,487か所(令和7年4月末現在)あります。使えるサービスの量や自己負担は市町村ごとに違うため、必ずその市町村に確認してください。

Q. 介護を理由に辞めた教員は、どのくらいいますか?

A. 教員に限った全国の人数は、公的統計で確認できませんでした。分かるのは全国の数字です。総務省「令和4年就業構造基本調査」では、介護をしている者は629万人、うち有業者は365万人(58.0%)で、「介護・看護のため」に過去1年間に前職を離職した者は10.6万人(2022年。2017年の9.9万人から0.7万人増)でした。なお当社が元教員107名に行った独自調査では、退職理由の3位が「家庭との両立」44.9%(女性n=64では57.8%)でしたが、この調査票には「介護」という選択肢がなく、「家庭との両立」の内訳も聞いていないため、そのうち介護がどれだけを占めるかは分かりません。

まとめ

  • 公立学校の教員が介護のために使える制度は、育児・介護休業法 第61条の2にまとまっている(介護休業・介護休暇・介護時間のほか、所定外労働の免除・時間外労働の制限・深夜勤務の制限・ハラスメント防止の体制整備)
  • 条文の日数(通算93日・年5日・1日2時間)は法律が定める下限。地方公務員法 第24条第5項と地方自治法 第14条第1項の構造上、条例が上回ることができる
  • 上回っている自治体では名称も入れ替わる。東京都・兵庫県では「介護休暇」が長いほう(6月)を指し、年5日は「短期(の)介護休暇」。窓口では名称と日数の両方を確認する
  • 任命権者等は「これを承認しなければならない」(第5項・第13項・第22項)。ただし書があるのは介護休業の第5項だけで、介護休暇(第13項)・介護時間(第22項)にはない
  • 非常勤職員は第3項・第10項・第20項の括弧書きで使える範囲が別に定められている。任用区分を伝えて窓口で確認する
  • お金は、公立=共済の介護休業手当金(標準報酬の日額の67%・通算66日)、私立で雇用保険加入=介護休業給付金(67%・通算93日)。ただし66日は週休日等を除いた勤務日、93日は暦日で単位が違い、法律どおりの93日ならおおむねカバーされる。ズレが出るのは条例で6月まで休める自治体のとき
  • 職場の制度より先に、介護を受ける方の市町村の地域包括支援センターへ。要介護認定は申請日にさかのぼって効力が生じる(介護保険法 第27条第8項)ので、迷ったら先に申請する
  • 制度を使っても続かないときは、異動希望・任用区分の変更・高齢者部分休業(条例次第)・介護のための離職再採用制度を持つ自治体もある・学校の外、の順に並べて考える
  • 辞めるが正解じゃない。ただし「絶対に辞めなくていい」とも言わない。制度を確認したうえで選んだ結論なら、どれを選んでも間違いではない




Re-Career代表 新川紗世
元教員が運営するキャリア支援

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