学級崩壊のクラスを担任してしまった先生へ|自分を守る5つの順番と、異動・休職という第3の道【元教員が解説】

学級崩壊のクラスを担任してしまったとき、最初にやるべきなのは「立て直し」ではありません。自分が壊れない状態を確保するほうが先です。この記事では、学級崩壊が担任個人の力量の問題ではないという根拠を文部科学省の資料から示したうえで、自分を守る5つの順番と、異動・働き方の変更・学校の外という第3の道を整理します。

「頑張れば立て直せます」とも、「もう辞めたほうがいい」とも書きません。どちらの方向にも押さないまま、いま取れる手だけを順番に並べます。

新川紗世 Re-Career代表

この記事の著者

新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役

公立中学校で11年、私立高校で1年、あわせて12年、英語教員として勤務。教員時代に病休を経験し退職。その後、教員専門のキャリア支援会社を設立。著書『「やめたいかも」と一度でも思ったら読む 教員の転職思考法』。スタッフ全員が元教員のキャリア支援会社を率い、自身も延べ1,000名以上のキャリア支援に携わる。

⏱️ 30秒でわかる結論

学級崩壊のクラスを持ったら、立て直しより先に「記録 → 共有 → 体制 → 医療 → 制度」の順で自分を守ります。

前提「学級崩壊」は国の統計用語でも法令用語でもなく、公式な全国件数は存在しません

根拠文部科学省の生徒指導提要は「担任が一人で抱え込まない」ことを前提に、3層のチーム対応を求めています

データ小学校の暴力行為は令和6年度82,997件。平成27年度の17,078件から約4.9倍です

休むとき休職の手続と効果は地方公務員法第28条第3項により条例事項。病気休暇の日数や要件も各自治体の条例・規則で、自治体ごとに違います

第3の道異動・働き方の変更・学校の外。辞める前に、選択肢として並べておきます

目次

【結論】学級崩壊のクラスを担任したとき、最初にやるのは「立て直し」ではありません

教室で一人で悩む教員のイメージ

ご相談の場で学級の話になったとき、いちばん多く聞く言葉があります。「私の力量が足りないからですよね」。次に多いのが「隣のクラスは、うまくいっているのに」です。

先に結論を書きます。学級崩壊のクラスを担任したとき、最初にやることは「立て直し」ではありません。自分が壊れない状態を確保することが先です。順番が逆になると、立て直しの前に担任のほうが先に倒れます。

そしてもうひとつ。この記事では「頑張れば立て直せます」とも書きません。立て直せる年もあれば、担任が何をしても年度内には収まらない年もあります。どちらであっても、あなたの人としての価値は変わりません。

「同じ学年の先生は、あんなに落ち着いているのに。授業を見に来られるのが怖くて、廊下の足音で心臓が跳ねるようになりました。」
——30代・公立小学校教諭・女性

この記事で扱うのは、次の3つです。

1つめは、学級崩壊が担任個人の力量の問題ではないという根拠。これは私の意見ではなく、文部科学省の基本書と国の統計から示します。

2つめは、自分を守る順番。記録・共有・体制・医療・制度の5つを、後戻りしやすい順に並べました。

3つめは、異動・働き方の変更・学校の外という第3の道。「今年を耐えるか、辞めるか」の2択に見えているものを、選択肢の形に戻します。

私自身、公立中学校で11年、私立高校で1年、あわせて12年を英語教員として過ごしました。教員時代に病気休暇を取った経験もあります。あのとき振り返って思うのは、こたえたのは業務の量よりも、「これは自分のせいだ」と一人で結論を出してしまった時間の長さのほうだった、ということです。

もし今、判断する力そのものが落ちていると感じるなら、この章と、後半の「限界が近いときに使う制度」の章だけ読んでいただければ大丈夫です。

なお、この記事に出てくる声や事例は、これまでのご相談をもとに、個人が特定されないよう再構成しています。数字はすべて出典を明記し、確認できなかったものは書いていません。

学級崩壊は担任個人の力量の問題ではない|文部科学省も「一人で抱え込まない」と書いている

文部科学省の資料を読むイメージ

まず、いちばん誤解されているところから整理します。

そもそも「学級崩壊」は、いまの国の統計用語でも法令用語でもない

知っておいていただきたいのは、「学級崩壊」という言葉は、国の統計用語でも法令用語でもないということです。

文部科学省が毎年公表している令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要(PDF)(令和7年10月29日公表/令和8年1月16日一部修正)の調査項目は、暴力行為・いじめ・出席停止・小中学校の長期欠席・高等学校の長期欠席・高等学校中途退学等・自殺・教育相談の8つです。この中に「学級崩壊」という項目はありません。

つまり、「全国で何件の学級崩壊が起きているか」という公式の数字は存在しません。ネット上で見かける件数や割合は、自治体の独自調査か、出典の書かれていない推計です。この記事でも、全国の件数は書きません。

国が定義を示したのは1999年。いまの定義は自治体ごとに置かれている

定義については、少しだけ歴史があります。1999年(平成11年)9月、当時の文部省は、「学級経営研究会」に委嘱した『学級経営の充実に関する調査研究』の中間まとめの概要として、いわゆる「学級崩壊」を「学級がうまく機能しない状況」と呼び、次のように定義していました。

「子どもたちが教室内で勝手な行動をして教師の指導に従わず、授業が成立しないなど、集団教育という学校の機能が成立しない学級の状態が一定期間継続し、学級担任による通常の手法では問題解決ができない状態に立ち至っている場合」(文部省「いわゆる『学級崩壊』について ~『学級経営の充実に関する調査研究』(中間まとめ)の概要~」平成11年9月・PDF

ただし、これは27年前の資料です。全国各地で小学校の学級経営について関係者から聞き取りを行った事例調査であって、全国の件数を数えたものではありません。そして現在の生徒指導提要(令和4年12月改訂)に「学級崩壊」の定義は置かれておらず、毎年の全国調査にも項目がありません。先ほど「公式の件数は存在しない」と書いたのは、こういう意味です。なお同資料が要因の第一に挙げているのは学級担任の指導力不足の問題ですが、同時に「ある一つの『原因』によって『結果』が生まれるかのような単純な対応関係ではなく、複合的な要因が積み重なって起こります」とも書かれています。

いま実務で使われている定義は、自治体ごとに置かれています。たとえば神奈川県教育委員会が2018年6月に作成した小・中学校向けの児童・生徒指導の手引き(PDF)では、「正常な学習活動ができなくなった学級」いわゆる「学級崩壊」を、次のように定義しています。

「小学校において、学級全体が、一定期間(1カ月)以上、集団として授業規律を失い、正常な学習活動ができない状況にあるもの」(同手引き33ページ。平成28年度神奈川県児童・生徒の問題行動等調査(公立小・中学校版)実施要項からの引用として掲載)

これは神奈川県の定義であって、全国共通の定義ではありません。お住まいの自治体で同じ定義が使われているとは限らないので、そこは勤務先の教育委員会の資料でご確認ください。

ここで押さえておきたいのは、定義の中身よりも「学級全体が」「集団として」という主語です。担任個人の技術ではなく、集団の状態を指す言葉として定義されています。

文部科学省の基本書は「担任が一人で抱え込まない」と書いている

生徒指導の基本書である生徒指導提要(令和4年12月改訂・PDF)文部科学省の掲載ページ)には、次の記述があります。第1章1.3.4「チーム支援による組織的対応」(提要27ページ)です。

「深刻化、多様化、低年齢化する生徒指導の諸課題を解決するためには、前述のように、学級・ホームルーム担任が一人で問題を抱え込まずに生徒指導主事等と協力して、機動的連携型支援チームで対応することが求められます」

提要は、対応の単位を3つの層で示しています。1つめが、担任と生徒指導主事等による機動的連携型支援チーム。2つめが、生徒指導主事・教育相談コーディネーター・学年主任・養護教諭・SC・SSW等が加わる校内連携型支援チーム。3つめが、校外の関係機関と組むネットワーク型支援チームです。

いちばん小さい単位でも「担任+生徒指導主事等」です。担任1人での対応は、提要が示す枠組みの中には出てきません。

さらに第1章1.4.1(提要29ページ)には、「ホームルーム担任中心の抱え込み型生徒指導から、多職種による連携・協働型生徒指導へと転換していく際に重要となるのは、職場の人間関係の有り様です」とあります。

第3章3.1.2「チーム学校として機能する学校組織」(提要71ページ)でも、学校に関係する人々に求められる姿勢の第一に「①一人で抱え込まない 一人でやれることには限界があります」が挙げられています。

「管理職に相談したら「もう少し様子を見よう」で終わってしまって、次に相談する気力がなくなりました。」
——30代・公立中学校教諭・男性

付け加えると、300ページあるこのPDF全体で「学級崩壊」という語が出てくるのは1か所だけです。第4章のいじめの章で、いじめが複雑化しやすいケースの一つとして「いじめの起きた学級・ホームルームが学級崩壊的状況にある場合」と挙げられています。

国の基本書が、学級崩壊を「担任の指導技術の失敗」として章立てしていない。この事実そのものが、個人の力量の問題として扱われていないことの傍証だと思います。

職員室の側で消耗が重なっているなら、教員の人間関係がつらい4つの構造的理由のほうが今のしんどさに近いかもしれません。

データで見る教室のこの10年|小学校の暴力行為は17,078件から82,997件へ

統計データを確認するイメージ

次に、教室で起きていることが10年でどう変わったかを、国の統計で見ます。すべて令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要(PDF)文部科学省の掲載ページ)からの数字です。調査対象期間は令和6年度間です。

暴力行為の発生件数

年度 小学校 中学校 高等学校 合計
平成27年度 17,078件 33,073件 6,655件 56,806件
令和5年度 70,009件 33,617件 5,361件 108,987件
令和6年度 82,997件 40,039件 5,823件 128,859件

小・中・高等学校の合計は128,859件で、前年度の108,987件から19,872件(18.2%)増え、過去最多となりました。児童生徒1,000人当たりでは10.4件(前年度8.7件)です。令和2年度にいったん減ったあと、4年連続で増えています。

とくに小学校の増え方が大きく、平成27年度の17,078件から令和6年度の82,997件へ、約4.9倍になっています。1,000人当たりでは2.6件から13.8件です。

ここは正確に書きます。文部科学省は増加の背景について、「いじめの認知に伴うものや児童生徒に対する見取りの精緻化によって把握が増えたことが考えられる」と説明しています。つまり、この増加のすべてが「教室が荒れた分」ではありません。把握できるようになった分が含まれます。

それでも、担任のところに上がってくる事案の件数が、10年前の水準ではなくなっていることは言えます。

いじめ・不登校

同じ調査で、小・中・高・特別支援学校のいじめの認知件数は769,022件(前年度732,568件)で過去最多。児童生徒1,000人当たり61.3件です。いじめ防止対策推進法第28条第1項に規定する重大事態の発生件数は1,404件(前年度1,306件)でした。

小・中学校の不登校児童生徒数は353,970人(小学校137,704人・中学校216,266人)で、こちらも過去最多です。ただし増加率は前年度より低下しています。

文部科学省自身が「一人で抱え込む」を課題に挙げている

重大事態が増えた背景について、同じ資料にこう書かれています。

「学校としていじめの兆候を見逃してしまうなどの早期発見・早期対応への課題や、個々の教員が一人で抱え込んでしまうなどの組織的な対応への課題があったことも考えられる」

これはいじめの重大事態についての記述で、学級崩壊について書かれたものではありません。ただ、「一人で抱え込む」ことが、国のレベルで課題として名指しされていることは知っておいてよいと思います。あなたが抱え込みをやめるのは、逃げではなく、国の資料に書かれている方向です。

自分を守る順番|記録・共有・体制・医療・制度の5つを、後戻りしやすい順に

手順を書き出すノートのイメージ

ここからが本題です。順番を守ってください。いきなり最後まで進む必要はありません。1つめから順に、できるところまでで大丈夫です。

1つめ:記録する(自分のためではなく、共有物にするため)

最初にやるのは記録です。ただし「反省ノート」にしないでください。書くのは事実だけです。

・日付と時限 ・誰が、何をしたか(推測や性格の評価は書かない) ・そのとき自分が取った対応 ・その場にいた他の職員 ・保護者や管理職に伝えた内容と、その日時

気持ちを書くのは別のノートにします。共有できる形にしておくことが目的だからです。手書きよりも、校内で共有できる形式にしておくほうが後で楽になります。

記録の具体的な書き方は、教員のパワハラ、どこに相談する?(記録テンプレつき)に載せているテンプレートがそのまま使えます。

2つめ:相談ではなく「報告」として共有する

2つめは共有です。ここでつまずく方がとても多いです。「相談」の形で持っていくと、「もう少し様子を見よう」で終わってしまうことがあるからです。

おすすめは、相談ではなく報告の形にすることです。「困っています、どうしたらいいでしょうか」ではなく、「○月○日にこういう事案があり、私はこう対応しました。記録は残しています」と伝えます。

相手は、学年主任・生徒指導主事・教育相談コーディネーター・管理職のうち、いちばん話が通りやすい人からで構いません。順番に決まりはありません。

3つめ:校内の体制に乗せる

3つめは、担任個人の対応から、校内の体制に移すことです。前の章で見た提要の「校内連携型支援チーム」がこれにあたります。

校内には、担任以外に動ける人がいます。生徒指導主事、教育相談コーディネーター、学年主任、養護教諭、スクールカウンセラー(SC)、スクールソーシャルワーカー(SSW)です。SC・SSWの配置日数や配置形態は自治体ごとに違うので、勤務先の教育委員会の要項でご確認ください。

あわせて知っておいていただきたい制度があります。学校教育法(e-Gov法令検索)第35条第1項です。

「市町村の教育委員会は、次に掲げる行為の一又は二以上を繰り返し行う等性行不良であつて他の児童の教育に妨げがあると認める児童があるときは、その保護者に対して、児童の出席停止を命ずることができる」

掲げられている行為の4番目は「授業その他の教育活動の実施を妨げる行為」です。同条第2項では、あらかじめ保護者の意見を聴き、理由と期間を書いた文書を交付することが定められています。

この規定は小学校についてのものですが、第49条により中学校に準用されます。一方、高等学校について準用を定める第62条に第35条は含まれていないため、高等学校には適用されません。

ここで大事なのは中身よりも主語です。命じるのは市町村の教育委員会であって、担任でも校長でもありません。担任の裁量を超えたところに、制度としての手段が用意されているということです。使うかどうかは別として、「自分の指導力で何とかするしかない」という前提が事実ではないことは、条文で確認できます。

4つめ:体のサインを医療につなぐ

4つめは自分の体です。次のようなサインが2週間以上続いているなら、校内の相談より先に、医療につないでください。

・寝つけない、朝方に目が覚めてしまう ・食べられない、または食べすぎる ・休日にも回復しない ・出勤前に涙が出る、動悸がする ・「消えてしまいたい」と思う瞬間がある

受診先は、心療内科・精神科のほか、自治体によっては教職員向けの健康相談窓口や共済組合のメンタルヘルス相談が使えます。窓口の名前と使える範囲は自治体・共済組合の支部ごとに違うので、勤務先の担当課にご確認ください。

この段階でのセルフケアの考え方は教員のメンタルヘルスセルフケアに、診断が出たあとの動き方は適応障害になった教員が最初にやることにまとめています。

5つめ:制度の窓口だけ、先に確認しておく

5つめは、実際に休むかどうかを決める前に、窓口だけ確認しておくことです。追い詰められてから調べるのは、いちばん体力を使います。

・病気休暇の日数と手続き(勤務先の服務規程・条例) ・病気休職に移る場合の流れ(教育委員会の人事担当) ・共済組合の給付(加入している共済組合の支部) ・年度途中で担任を外れる場合の校内の手続き(管理職)

制度の中身は次の章で扱いますが、「誰に聞けばいいか」だけ先に押さえておくと、判断がずいぶん軽くなります。

「学級崩壊を立て直せたか」で自分を採点しない|代わりに置く3つの指標

評価の軸を切り替えるイメージ

ここは、私がいちばん伝えたい章です。

学級崩壊のクラスを担任すると、多くの方が「年度末までに立て直せたかどうか」を自分の評価軸に置いてしまいます。これは、かなり危ない置き方です。

理由は2つあります。1つめは、結果が自分の努力だけで決まらないからです。学級の状態は、児童生徒の構成、支援を要する子への配置、前年度からの経緯、家庭の状況、教職員の人数、そして年度途中に何が起きるかで変わります。担任が変えられる範囲は、その一部です。

2つめは、この軸だと「まだ足りない」で終わり続けるからです。少し落ち着いても、次に崩れた瞬間にゼロに戻ります。終わりが定義されていない評価軸は、いくら頑張っても達成されません。

「授業が始まってから終わるまで、ずっと自分の声だけが空回りしていました。帰り道でその45分を何度も再生してしまうんです。」
——20代・公立小学校教諭・男性

代わりに置く3つの指標

代わりに、自分で確認できて、しかも終わりが定義できる指標に置き換えます。

指標1:眠れているか。寝つき・中途覚醒・早朝覚醒のどれかが2週間続いているなら、学級の状態にかかわらず対応が必要です。

指標2:一人で持っている情報が減っているか。今週、何件を誰かに渡せたか。渡した先が増えていれば、学級が落ち着いていなくても前に進んでいます。

指標3:休日に回復するか。土日を挟んで月曜に戻れているか。戻れない週が続くなら、休むタイミングの検討に入る段階です。

この3つはどれも、学級が落ち着いたかどうかとは独立に判定できます。そして、どれも自分の意思で改善に動ける項目です。

「立て直せなかった」は、キャリアの傷にはならない

もうひとつ。「学級崩壊のクラスを持った」という事実が、その後のキャリアの傷になることはありません。

学校の外で経歴を見る人は、学級の状態を採点しません。見られるのは、そこで何をどう組み立てたかです。記録を残した、周囲に共有した、外部の専門職につないだ、保護者との連絡の窓口を整理した——これらはすべて、業務としての説明ができる行動です。

逆に言えば、ここまでの4つの章でやってきたことは、そのまま職務経歴の材料になります。自分を守る行動と、キャリアの材料をつくる行動は、この場面では同じものです。

限界が近いときに使う制度|病気休暇・休職・公務災害(自治体差に注意)

制度を確認するイメージ

ここからは制度の話です。この章はいちばん誤情報が多い領域なので、条文で確認できることと、自治体ごとに違うことを、はっきり分けて書きます。

病気休暇と病気休職は別のもの

まず用語の整理です。病気休暇は、療養が必要なときに勤務しないことが承認される休暇で、要件も日数も各自治体の条例・規則で定められています。病気休職は、地方公務員法にもとづく分限処分で、身分を持ったまま職務から離れる扱いです。両者は根拠も手続きも違います。

病気休職の根拠は地方公務員法(e-Gov法令検索)第28条第2項です。同項第1号にこうあります。

「心身の故障のため、長期の休養を要する場合」

条文は「その意に反して、これを休職することができる」という定め方です。本人の希望による休みではなく、分限処分としての規定である点が病気休暇との大きな違いです。

そして同条第3項が、実務上いちばん重要です。

「職員の意に反する降任、免職、休職及び降給の手続及び効果は、法律に特別の定めがある場合を除くほか、条例で定めなければならない

つまり、休職の期間の上限や、その間の給与の扱いは、法律ではなく自治体の条例で決まります。全国共通の数字は存在しません。

なお、この第28条第3項は「休職の手続及び効果」についての条文であって、病気休暇そのものの根拠条文ではありません。病気休暇の日数や取得の要件は、各自治体の勤務時間・休暇等に関する条例と規則で定められています。

ですのでこの記事では、病気休暇の日数も、休職期間の上限も、給与が何割になるかも書きません。お住まいの自治体・勤務先の規程でご確認ください。ネット上にある「教員の病気休暇は○日」という数字は、どこかの自治体の値です。あなたの自治体の値とは限りません。

休むと戻れなくなるのか

「一度休んだら、もう戻れないのではないか」という不安は、本当によく聞きます。

これも自治体の運用によるので、一般論としての答えは書けません。復職の手続きや、復職に向けた訓練・支援のしくみを設けている自治体もありますが、あるかどうかも、名称も、進め方も自治体ごとに違います。休む前に人事担当課で確認しておくと、戻り方のイメージが持てます。

休職からの復帰と、その後のキャリアの立て直し方については教員のうつ病からの復職・転職完全ガイドにまとめています。

公務災害になるのか

「学級の対応で体調を崩したのだから、公務災害ではないか」と考える方もいます。

公立学校の常時勤務の教職員については地方公務員災害補償法(e-Gov法令検索)が適用されます。同法第2条第1項第1号は、対象となる職員を「常時勤務に服することを要する地方公務員」と定めています。非常勤の職員は扱いが異なりますので、任用区分をご確認ください。また、私立学校の教員はこの法律の対象ではありません。ただし、これは「何の枠組みもない」という意味ではありません。労働者災害補償保険法(e-Gov法令検索)第3条第1項は「この法律においては、労働者を使用する事業を適用事業とする」と定めており(同条第2項が適用除外としているのは国の直営事業と官公署の事業です)、私立学校の教員は労災保険の枠組みで扱われます。

認定するのは地方公務員災害補償基金です。精神疾患が公務上のものと認定されるかどうかは個別の事情によります。認定基準の具体的な判断項目は、この記事では書きません(一次資料に当たれていないためです)。ご自身のケースについては、勤務先の公務災害担当と、必要なら弁護士や労働組合にご相談ください。

教員がメンタルで休むのは、あなただけではない

数字も見ておきます。令和6年度 公立学校教職員の人事行政状況調査(概要・PDF)文部科学省の掲載ページ/令和7年12月22日公表)によると、公立学校の教育職員のうち精神疾患による病気休職者は7,087人、全教育職員数922,776人(令和6年5月1日現在)の0.77%でした。

ここは正確に書きます。前年度の令和5年度は7,119人で、令和6年度は32人減っています(割合は0.77%で横ばい)。「過去最多」ではありません。

そして、要因の集計(要因の集計表(1-1-19・PDF))を見ると、教育委員会が挙げた要因の第1位は「業務内容①(児童・生徒に対する指導そのものに関すること)」で26.5%(332件/計1,253件)でした。第2位が「職場の対人関係(上司、同僚、部下等)」の23.2%です。

年代 業務内容①(指導そのもの) 職場の対人関係
〜20代 33.5% 27.1%
30代 29.8% 24.0%
40代 22.7% 22.1%
50代〜 21.4% 20.5%
全体 26.5% 23.2%

※分母は1,253件。選択肢のうち「その他」「教育委員会として把握していない」は除いて算出されています(同資料の注記)。

校種別に見ると、小学校では全年代で「業務内容①(指導そのもの)」が第1位で、〜20代41.2%、30代43.3%、40代35.5%、50代〜32.3%でした。中学校も全年代で第1位(〜20代35.2%、30代37.1%、40代25.9%、50代〜24.2%)です。

この調査は、休職に至った要因について教育委員会がどう認識しているかを尋ねたものです。そのうえで、いちばん多く挙げられている要因が「児童・生徒に対する指導そのもの」だという事実は、知っておいてよいと思います。これはあなた個人の弱さの話ではありません。

第3の道①異動|「逃げ」ではなく、配置を変えるという打ち手

進路の分岐点のイメージ

ここからが「第3の道」です。今年を耐えるか、辞めるか——その2択に見えているものを、選択肢の形に戻していきます。

1つめは異動です。

異動は、担任の評価ではなく配置の問題

異動を「逃げ」だと感じてしまう方は多いです。でも、異動は人事上の配置であって、担任の評価ではありません。学校の規模、教職員の年齢構成、支援を要する児童生徒の在籍状況、校内で相談できる相手がいるかどうか——これらは学校ごとに大きく違い、そして担任には変えられません。

神奈川県の手引きにも、正常な学習活動ができなくなった学級に見られる状況として、次のような記述があります。

「学級が孤立しており、学年としての取組が行われていない、教職員が互いに支え合い、成長し、高め合っていく同僚性に欠けるなど、チームで取り組む体制ができていない」

「経験年数の少ない教職員が多くなり、その学年の中に配置された中核となる教職員に校務等が集中し、中核となる教職員が悩みを相談できる相手がいない」

これらはどれも学校の側の条件です。同じ人が別の学校に行けば、条件は変わります。異動が有効な打ち手になりうるのは、そのためです。

ただし、内示の時期も希望の出し方も自治体ごとに違う

ここは正直に書きます。異動希望の提出時期、様式、記入できる理由の範囲、内示のタイミングは、都道府県・政令市ごとにまったく違います。「○月までに出す」といった全国共通のルールはありません。勤務先の教育委員会が出している異動要綱でご確認ください。

そのうえで、自治体を問わず準備しておいて損がないことが3つあります。

1つめ。伝えるときは「事実」の形にする。「しんどい」ではなく、「○年度に○○の状況があり、通院している」という事実の形にしたほうが、担当者が扱いやすくなります。ここで、最初の章で作った記録が効きます。

2つめ。管理職との面談は、記録が残る場です。面談で口頭で伝えたことは、書面に残らないと引き継がれません。伝えた内容と日付を自分でも控えておいてください。

3つめ。健康上の事情は、通常の手続の中で配慮を求められる場合があります。ここは正直に書きます。「健康状態の人だけが使える専用の別ルート」が全国共通で用意されているわけではありません。異動の手続は名称も様式も流れも自治体ごとに違い、通常の異動希望の手続(自己申告書などの提出、校長との面談)の中で健康状態を伝えられる場合があります。まずは勤務先の自治体の異動要綱で、どの様式にどこまで書けるのかをご確認ください。自治体によっては、人事異動方針の中に「病気休職明けなどの異動対象者については、本人の意向や個別の事情を考慮する」「障害のある教職員については、本人の申し出に応じて配慮する」といった記述を置いていることもあります。そうした定めがあるかどうかも、実際の扱いも自治体ごとに違います。人事担当課に確認してください。

配偶者も教員で、異動をどう組み合わせるかで悩んでいる方は教員夫婦の異動・転勤問題も参考になると思います。

第3の道②働き方を変える|時短・部分休業・任用区分(使える条件は制度ごとに決まっている)

働き方の選択肢を検討するイメージ

2つめは、辞めずに勤務の量そのものを減らす方向です。ここも、使える条件がはっきり決まっているので、条文で確認します。

育児短時間勤務

地方公務員の育児休業等に関する法律(e-Gov法令検索)第10条第1項は、育児短時間勤務をこう定めています。

「職員(非常勤職員、臨時的に任用される職員その他これらに類する職員として条例で定める職員を除く。)は、任命権者の承認を受けて、当該職員の小学校就学の始期に達するまでの子を養育するため、当該子がその始期に達するまで、常時勤務を要する職を占めたまま、(中略)当該職員が希望する日及び時間帯において勤務することができる」

ポイントは3つです。1つめ、対象は小学校就学前の子を養育する職員に限られます。2つめ、任命権者の承認が要ります。3つめ、期間は1月以上1年以下で請求します(同条第2項)。

なお同条第3項には、「任命権者は、前項の規定による請求があったときは、当該請求に係る期間について当該請求をした職員の業務を処理するための措置を講ずることが困難である場合を除き、これを承認しなければならない」とあります。原則は承認、というつくりです。

部分休業

同法第19条第1項は部分休業を定めています。こちらも対象は「小学校就学の始期に達するまでの子を養育するため」で、任命権者が「公務の運営に支障がないと認めるとき」に承認できるという構造です。第2項では、あらかじめ「一日につき二時間を超えない範囲内」(第1号)などのいずれの範囲内で請求するかを、任命権者に申し出るものとされています。

正直に書きます:時短は「理由」が限定されます|つらさそのものは制度の入口になりません

ここは期待をもたせない書き方をします。「学級の状況がつらいから勤務時間を短くする」という理由の時短制度は、法律上の一般制度としては存在しません。制度は「どんな理由か」で入口が決まっていて、つらさの大きさでは決まらないつくりになっています。

ただし、理由が当てはまれば使える時短は、育児と介護だけではありません。使えるとすれば、次のいずれかです。

・育児を理由とする育児短時間勤務・部分休業(上記のとおり、子の年齢要件あり) ・介護を理由とする介護休業・介護休暇・介護時間(育児・介護休業法第61条の2。使えるかどうかは条例ではなく法律が全国共通で定めています。ただし日数は法律の下限で、条例が上回っていることがあります。下で条文を挙げます) ・修学を理由とする修学部分休業(地方公務員法第26条の2) ・一定の年齢に達した職員の高齢者部分休業(同法第26条の3) ・病気休暇・病気休職(前章のとおり) ・任用区分そのものを変える(常勤から非常勤講師へ、など)

介護のほうは誤解されやすいので、先に条文を挙げておきます。育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法/e-Gov法令検索)第61条の2は、地方公務員である職員について介護休業・介護休暇・介護時間を直接定めています。承認する側は任命権者等で、県費負担教職員については市町村の教育委員会と条文に名指しされています。同条に「条例」という語は一度も出てきません。使えるかどうかが自治体差で決まる制度ではなく、法律の定めです。ただし、ここから挙げる日数は、法律が定める下限です。勤務先の条例がこれを上回っていることがあり、そのとき名称も変わります。年5日のほうを「短期介護休暇」と呼び、長いほうの「介護休暇」を6月としている自治体があります(国家公務員も一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律(e-Gov法令検索)第20条で「三回を超えず、かつ、通算して六月を超えない範囲内」とされています)。窓口では、「介護休業/介護休暇/短期介護休暇/介護時間」のどれに当たるのかを、名称と日数の両方で確認してください。

中身はこうです。介護休業は、要介護家族の介護を必要とする一の継続する状態ごとに、3回を超えず、合算して93日を超えない範囲内(同条第3項・第4項)。介護休暇は一の年において5日、要介護家族が2人以上の場合は10日を限度(同条第10項・第11項)。介護時間は、連続する3年の期間内において1日につき2時間を超えない範囲内(同条第20項・第21項)。そして任命権者等は、承認の請求があったときは公務の運営に支障があると認められる日や時間(介護休暇は支障があると認められる場合)を除き、「これを承認しなければならない」とされています(同条第5項・第13項・第22項)。裁量で断れる制度ではありません(ただし介護休業については、短時間勤務職員以外の非常勤職員のうち厚生労働省令で定める者は、この承認義務の対象外です=同条第5項ただし書)。なお、短時間勤務職員以外の非常勤職員については、同条第3項・第10項・第20項の括弧書きで使える範囲が別に定められています(いずれも2026年9月時点の条文)。

残る2つ、修学部分休業と高齢者部分休業は、あまり知られていないのでこちらも条文を挙げておきます。地方公務員法(e-Gov法令検索)第26条の2は、職員が申請した場合において、公務の運営に支障がなく、かつ公務に関する能力の向上に資すると認めるときは、条例で定めるところにより、「大学その他の条例で定める教育施設における修学のため」一週間の勤務時間の一部について勤務しないこと(修学部分休業)を任命権者が承認できる、と定めています。

同法第26条の3は、高年齢として条例で定める年齢に達した職員が申請した場合において、公務の運営に支障がないと認めるときは、条例で定めるところにより、定年退職日までの期間中、同じく一週間の勤務時間の一部について勤務しないこと(高齢者部分休業)を承認できる、というものです。「フルタイムのままは厳しい。でも辞めるのも違う」と感じている50代の方は、勤務先の条例を一度確認する価値があります。

ただし、どちらの条文にも「条例で定めるところにより」と書かれています。その自治体が条例を置いていなければ使えません。対象になる年齢も、認められる期間も、条例次第で変わります。制度があるかどうかを含めて、勤務先の人事担当課と条例でご確認ください。なお、どちらも臨時的に任用される職員・任期を定めて任用される職員・非常勤職員は対象から除かれており、勤務しなかった時間分の給与は減額して支給されます(第26条の2第3項。高齢者部分休業には第26条の3第2項により準用されます)。

任用区分の変更が可能かどうか、退職して講師登録をし直す形になるのかは、自治体によって扱いがまったく違います。ここも人事担当課への確認が必要です。給与・共済・退職手当の扱いも変わるので、口頭の説明だけでなく、書面で条件を確認してください。

非常勤講師という働き方の実際については教員の非常勤講師×副業という働き方に、年代別の考え方は50代教員の定年後セカンドキャリアにまとめています。

第3の道③学校の外|学級崩壊をきっかけに外を見た人たちが、実際に何を選んだか

キャリアの選択肢を並べるイメージ

3つめは、学校の外です。ここに進むことをおすすめしているわけではありません。選択肢として並べておくと、残る選択も自分で選んだものになる、というだけです。

元教員107名への独自調査で分かっていること

当社では、教員を退職した経験を持つ方107名にアンケートを実施しました(Googleフォーム・無記名、全国35都道府県、最終勤務校種は小学校49名・中学校37名・高等学校12名・特別支援学校3名ほか)。

退職理由(複数回答・n=107)の上位は次のとおりです。

順位 退職理由 割合
1位 仕事量 57.0%
2位 長時間労働 54.2%
3位 家庭との両立 44.9%
4位 キャリア拡張 39.3%
5位 仕事内容 37.4%
6位 体調 35.5%
7位 将来不安 29.9%
8位 現場の空気感・閉塞感 24.3%
同率9位 人間関係 20.6%
同率9位 制度・評価への不満 20.6%

先に、この調査で言えないことを書きます。この設問の選択肢に「学級崩壊」はありません。ですので「学級崩壊が退職理由の第何位」という数字は、この調査からは出せません。

自由入力欄まで含めて107名分を確認したところ、「学級崩壊」という語を書いた方は1名でした。退職理由の自由入力に、こう書かれています。

「ちょっとしたミスが学級崩壊に繋がるかもしれないという高い緊張感。」
——元教員107名への独自調査/退職理由の自由入力より(原文のまま)

1名なので割合は書きません。ただ、この一文は「崩壊したから辞めた」ではなく「崩壊させてはいけないという緊張感が続いたから辞めた」という書き方になっています。渦中にいる方にとって、こちらのほうが実感に近いのではないかと思います。

病気休職を経験した方の内訳

同じ調査で、教員時代に病気休職を経験した方は107名中29名でした。その29名のうち、休職・休業の合計期間が1年以上だった方が12名(29名中41.4%)です。

分母は107ではなく29です。「教員の41%が1年以上休職している」ではありませんので、そこは誤読しないでください。

学校の外での評価のされ方

学級の対応で身につけたことは、外でどう見えるのか。相談の場でよく確認するのは次の3つです。

記録と報告の習慣。事実と解釈を分けて書ける人は、どの業界でも重宝されます ・複数の関係者の間に立った経験。児童生徒・保護者・管理職・外部機関の間で調整した経験は、そのまま調整業務の説明になります ・ゼロから関係をつくり直した経験。年度の途中で立て直しに動いた過程は、成果の有無にかかわらず語れます

辞めるかどうかを整理したい段階であれば、教員・教師を辞めたいと思ったら|辞める前の12の判断基準のほうが順を追って考えられると思います。中学校で部活動や保護者対応が重なっている場合は中学校教員を辞めたいと思ったらも見てみてください。

実例|学級崩壊の1年を経験した3人が、その後に選んだ道

キャリアについて対話するイメージ

ここでは3人の例を紹介します。いずれもご相談をもとに、個人が特定されないよう再構成したものです。

Aさん(20代・公立小学校教諭)|異動を選び、教員を続けた

初任から3年目で、前年度から荒れが続いていた学年を担任。5月には授業が成立しない日が出はじめました。最初の面談で私がお願いしたのは、立て直しの相談ではなく「記録を共有物にすること」だけでした。

Aさんは、日付と時限と事実だけを書く形式に変え、週に1回、学年主任に報告として渡す運用に切り替えました。3回目の報告で、学年会の議題に上がりました。ここで初めて、Aさん一人の問題ではなくなりました。

その年度は最後まで落ち着きませんでした。それでもAさんは、健康上の事情を書いた異動希望を出し、翌年度に別の学校へ。現在も教員を続けています。「立て直せなかったことより、ひとりで抱えていた5月から7月がいちばんしんどかった」と話していました。

Bさん(30代・公立中学校教諭)|病気休暇を取り、復職してから考えた

秋口から睡眠が崩れ、朝の動悸が続いていました。相談に来られた時点で、休日にも回復しない状態が1か月以上続いていました。

このときにお伝えしたのは、「辞めるかどうかは、いま決めなくていい」ということだけです。判断力が落ちている状態で人生の分岐を決めると、後で選び直しにくいからです。

Bさんは受診し、病気休暇に入りました。復帰後、担任は外れ、教科と分掌の担当になりました。復職から半年たって、初めて「続けるか、変えるか」を落ち着いて話せるようになりました。今は在職のまま、学校の外の仕事も含めて情報を集めている段階です。

「保護者から「先生が変わってから荒れた」と言われて、そこから眠れなくなりました。反論できる材料が自分にはなかったんです。」
——40代・公立中学校教諭・女性

Cさん(40代・公立小学校教諭)|学校の外に出て、教育に関わり続けた

Cさんは、崩れた学級を2年続けて担任しました。2年目の途中で「自分がこの仕事に向いていないのではないか」と考えるようになったそうです。

面談で最初にやったのは、この2年間にやったことを業務として書き出す作業でした。保護者への連絡記録の様式を作ったこと、支援員との引き継ぎのやり方を整えたこと、外部機関との連絡窓口を一本化したこと。本人は「当たり前のこと」と言っていましたが、外から見れば全部が業務改善の実績です。

Cさんは最終的に退職し、教育系の企業で学校向けサービスの導入支援に携わる道を選びました。選んだ理由は「学校から逃げたかったから」ではなく、「同じ課題に、別の立場から関わりたかったから」だったそうです。

3人に共通しているのは、結論がバラバラだということです。続けた人、休んだ人、外に出た人。どれが正解ということはありません。共通しているのは、一人で抱えるのをやめた時点から、選択肢が見えはじめたということだけです。

もし今、しんどさの中心が学級ではなく職員室の側にあるなら、職員室の人間関係を整理した記事のほうが近いかもしれません。辞める・続ける・変えるの判断そのものを整理したい方は辞める前の12の判断基準を見てみてください。

よくある質問

Q. 学級崩壊は担任の責任になりますか?

A. 文部科学省の生徒指導提要(令和4年12月改訂)は、第1章1.3.4で「学級・ホームルーム担任が一人で問題を抱え込まずに生徒指導主事等と協力して、機動的連携型支援チームで対応することが求められます」と書いています。提要が示す対応の単位は、いちばん小さいものでも「担任+生徒指導主事等」で、担任1人での対応は枠組みに出てきません。ただし、校内で実際にどう扱われるかは学校ごとに違います。だからこそ、事実の記録を残し、報告の形で共有しておくことが自分を守ることにつながります。

Q. 全国で学級崩壊は何件くらい起きているのですか?

A. 公式の件数は存在しません。文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(令和6年度)の調査項目は、暴力行為・いじめ・出席停止・小中学校の長期欠席・高等学校の長期欠席・高等学校中途退学等・自殺・教育相談の8つで、「学級崩壊」という項目はありません。定義については、1999年(平成11年)に文部省が「学級がうまく機能しない状況」として示したものはありますが、現在の生徒指導提要には定義が置かれておらず、いま実務で使われている定義は自治体の調査要項ごとに置かれています。

Q. 管理職に相談したら「力量不足」と思われませんか?

A. そう感じてしまう方はとても多いです。おすすめは、相談ではなく報告の形にすることです。「困っています」ではなく「○月○日にこういう事案があり、こう対応しました。記録は残しています」と伝えます。事実の報告は業務であって、力量の告白ではありません。相手は学年主任・生徒指導主事・教育相談コーディネーター・管理職のうち、いちばん話が通りやすい人からで構いません。

Q. 授業を妨害する児童生徒への対応は、担任が全部やるしかないのですか?

A. 担任の裁量を超えた手段が制度としてあります。学校教育法第35条第1項は、「授業その他の教育活動の実施を妨げる行為」などを繰り返し行う等性行不良で他の児童の教育に妨げがあると認める児童について、市町村の教育委員会が保護者に対して出席停止を命じることができると定めています。命じるのは市町村の教育委員会であって、担任でも校長でもありません。実際に使うかどうかの判断も担任の役割ではありません。なお、第35条は小学校についての規定です。第49条により中学校には準用されますが、高等学校について準用を定める第62条に第35条は含まれておらず、高等学校には適用されません。

Q. 学級崩壊を理由に異動希望は出せますか?

A. 異動希望の提出時期・様式・記入できる理由の範囲・内示のタイミングは、都道府県や政令市ごとにまったく違います。全国共通のルールはないので、勤務先の教育委員会が出している異動要綱でご確認ください。一般に、異動希望を書く様式には「しんどい」ではなく「○年度に○○の状況があり、通院している」という事実の形で書いたほうが担当者が扱いやすくなります。健康上の事情の伝え方も自治体ごとに違います。専用の別ルートがあるかどうかを含めて、通常の異動希望の手続のどこで伝えられるのかを先に確認しておくと安心です。人事異動方針の中に病気休職明けの職員や障害のある教職員への配慮を書いている自治体もありますが、そうした定めがあるかどうかも扱いも自治体ごとに違うので、人事担当課に確認してみてください。

Q. もう限界です。休むにはどんな制度がありますか?

A. 公立学校の教員の場合、病気休暇と病気休職があります。病気休職の根拠は地方公務員法第28条第2項第1号「心身の故障のため、長期の休養を要する場合」です。同条第3項により、休職の手続と効果は条例で定めることになっているため、休職できる期間や給与の扱いは自治体ごとに違います。病気休暇の日数や要件も各自治体の条例・規則で定められています。全国共通の数字はありませんので、勤務先の服務担当課でご確認ください。

Q. 学級の対応で体調を崩したら、公務災害になりますか?

A. 公立学校の常時勤務の教職員には地方公務員災害補償法が適用されます。同法第2条第1項第1号は対象を「常時勤務に服することを要する地方公務員」と定めており、非常勤の職員は扱いが異なります。私立学校の教員はこの法律の対象ではありませんが、労働者災害補償保険法第3条第1項により労災保険の適用事業として扱われます。公立学校について認定を行うのは地方公務員災害補償基金で、精神疾患が公務上のものと認定されるかどうかは個別の事情によります。認定基準の判断項目についてはこの記事では扱っていませんので、勤務先の公務災害担当にご相談ください。

Q. 学級崩壊を経験した年があると、転職で不利になりますか?

A. 学校の外で経歴を見る人は、学級の状態そのものを採点しません。見られるのは、その状況で何をどう組み立てたかです。事実と解釈を分けた記録を残したこと、校内の複数の職種に共有したこと、外部機関につないだこと、保護者との連絡の窓口を整理したこと。これらはすべて業務としての説明ができます。なお、当社が元教員107名に実施した調査では、退職理由の選択肢に「学級崩壊」はなく、この調査から学級崩壊と転職結果の関係を述べることはできません。

まとめ

  • 学級崩壊のクラスを担任したとき、最初にやるのは「立て直し」ではなく、自分が壊れない状態を確保すること
  • 「学級崩壊」は国の統計用語でも法令用語でもなく、全国の公式な件数は存在しない。定義は1999年に文部省が示したものがあるが、いま実務で使われている定義は自治体ごとに置かれている
  • 文部科学省の生徒指導提要(令和4年12月改訂)は、担任が一人で抱え込まず、3層のチームで対応することを前提にしている
  • 令和6年度の小学校の暴力行為の発生件数は82,997件。平成27年度の17,078件から約4.9倍(ただし文科省は「把握が増えた」ことも背景に挙げている)
  • 自分を守る順番は、記録 → 報告としての共有 → 校内の体制 → 医療 → 制度の窓口確認の5つ
  • 「立て直せたか」で自分を採点しない。眠れているか/一人で持っている情報が減ったか/休日に回復するか、の3つに置き換える
  • 休職の手続と効果は地方公務員法第28条第3項により条例事項。病気休暇の日数や要件も各自治体の条例・規則。いずれも全国共通の数字は存在しない
  • 精神疾患による病気休職者は7,087人(0.77%)で前年度から32人減少。教育委員会が挙げた要因の第1位は「児童・生徒に対する指導そのもの」26.5%(計1,253件)
  • 第3の道は、異動・働き方の変更(時短は理由が限定される。育児休業・育児短時間勤務・介護は使えるかどうかを法律が全国共通で定めているが、介護の日数は法律の下限で、条例が上回っていることがある。部分休業・修学部分休業・高齢者部分休業は自治体の条例次第)・学校の外の3つ。辞める前に並べておく
  • 辞める/続ける/変える。どれを選んでも、学級崩壊を経験したことがあなたの価値を下げることはありません




Re-Career代表 新川紗世
元教員が運営するキャリア支援

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