常勤講師の退職金はいくら?3年勤めた場合の計算と「空白の1日」、非常勤講師のボーナス・時給まで【元教員が解説】

常勤講師の退職金はいくら?3年の計算式・空白の1日・非常勤講師のボーナス

常勤講師の退職金は全国一律ではなく、勤務先の自治体の条例で決まります。3年勤めた場合の計算式、任用の間に1日空いたときの違い、失業手当との関係、非常勤講師のボーナスや時給の決まり方まで、千葉県の条例と国の法律の条文で、元教員が確かめました。

「講師だから退職金は出ない」「非常勤はボーナスなし」とは、ひとまとめにできません。実際は任用の区分(常勤講師=臨時的任用か、会計年度任用職員か、そのフルタイムかパートタイムか)で、受け取れるお金の種類がはっきり分かれています。

私自身、教員としての最初の1年は私立高校の非常勤講師でした。その後、公立中学校で11年勤めています。講師という働き方を選ぶ方にも、正規を目指して講師を続けている方にも、辞めるかどうか考えている方にも、まず「自分の区分では何が出るのか」を正しく知ってほしいと思い、この記事を書きました。

新川紗世 Re-Career代表

この記事の著者

新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役

公立中学校で11年、私立高校で1年、あわせて12年、英語教員として勤務。教員時代に病休を経験し退職。その後、教員専門のキャリア支援会社を設立。著書『「やめたいかも」と一度でも思ったら読む 教員の転職思考法』。スタッフ全員が元教員のキャリア支援会社を率い、自身も延べ1,000名以上のキャリア支援に携わる。

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講師のお金は「任用の区分」と「勤務先の条例」で決まる

常勤講師給料と手当が出る。退職手当も条例の対象(千葉県では第2条第1項の「職員」に含まれる)

非常勤講師パートタイムの会計年度任用職員は「報酬」。期末・勤勉手当は条例で支給できるが、退職手当は地方自治法上の支給根拠がない

3年の退職金千葉県の式では、基本額が「退職日の給料月額×勤続年数×100/100×83.7%」(自己都合ならさらに×60/100)。自己都合でない退職では、これに調整額が加わることがある

空白の1日千葉県では、退職の翌日までに再び任用されれば勤続が通算され、1日空けば年度ごとに精算される

失業手当常勤講師など退職手当条例の対象者で雇用保険に入っていない人には、条例の「失業者の退職手当」で差額が補われる仕組みがある(勤続期間などの要件あり)

常勤講師・非常勤講師の退職金とお金は「任用の区分」で決まる

公立学校の校舎

講師のお金を調べると、話がかみ合わない情報がたくさん出てきます。いちばんの理由は、「講師」という呼び名の中に、法律上まったく別の3つの任用が入っているからです。

2020年4月から、地方公務員の非常勤の職は「会計年度任用職員」という制度に整理されました(総務省「会計年度任用職員制度の運用に係る事務処理マニュアル」(令和8年3月))。その結果、公立学校の講師はおおむね次の3つのどれかで任用されています。まずは、お手元の任用通知書(辞令)にどの区分が書かれているかを確かめてください。

常勤講師(臨時的任用) フルタイムの会計年度任用職員 パートタイムの会計年度任用職員(時間講師など)
法律上の根拠 地方公務員法 第22条の3 地方公務員法 第22条の2第1項第2号 地方公務員法 第22条の2第1項第1号
任期 6月以内。更新は1回まで その会計年度の末日まで その会計年度の末日まで
受け取るお金の名前 給料・手当(地方自治法 第204条) 給料・手当(地方自治法 第204条) 報酬(地方自治法 第203条の2)
期末・勤勉手当 条例で支給 条例で支給できる 条例で支給できる(第203条の2第4項)
退職手当 条例で支給(第204条第2項) 条例の要件を満たせば支給 地方自治法に支給の定めがない
副業(営利企業への従事) 服務を監督する教育委員会の許可が必要 服務を監督する教育委員会の許可が必要 地方公務員法 第38条の許可制の対象外

表の法律上の根拠は、地方公務員法と地方自治法の条文です。地方自治法 第204条は、常勤の職員とフルタイムの会計年度任用職員に「給料」を支給し、条例で退職手当などの手当を支給できると定めています。一方で、パートタイムの会計年度任用職員に支給するものとして第203条の2が挙げているのは、報酬・費用弁償・期末手当・勤勉手当です。

さらに第204条の2は、法律やそれに基づく条例に基づかない給付を禁じています。このため、パートタイムの会計年度任用職員には、地方自治法上、退職手当を支給する根拠がありません。「非常勤講師に退職金はあるの?」という疑問への答えは、ここで決まります。

なお、産休・育休の代替で任用される講師は、別の法律(地方公務員の育児休業等に関する法律など)で任用されることもあります。任期付職員として任用される場合もあるので、辞令の根拠条文を見るのが確実です。

この記事の「例」について

給料・手当・退職手当の具体的な要件は、勤務先の都道府県・市町村の条例と規則で決まります。この記事では、公式に公開されている千葉県「職員の退職手当に関する条例」(昭和29年千葉県条例第6号。本文は千葉県例規集で確認できます)と、千葉県教育委員会の講師向けの待遇ページを例に使います。数字や要件は千葉県のものです。ほかの自治体にお勤めの方は、同じ名前の条例(千葉県の場合は「職員の退職手当に関する条例」)の同じ条文を確認してください。

常勤講師(臨時的任用)の給料の決まり方と教職調整額

給料と年収を考えるイメージ

常勤講師(臨時的任用)は、法律上「常時勤務を要する職」に欠員が出たときに任用される職員です(地方公務員法 第22条の3)。フルタイムで、正規の先生と同じ業務を担います。

総務省「会計年度任用職員制度の運用に係る事務処理マニュアル」(令和8年3月)は、臨時的任用職員の給与について、常勤職員に適用される給料表と初任給基準に基づき、学歴免許等の資格や経験年数を考慮して決めるとしています。あわせて、常勤職員と同等の職務なのに下位の級に格付けしたり、上限を設けたりする取扱いは「改める必要がある」とも書いています。

講師経験の年数は給料に反映されるのが原則

つまり、講師を何年か続けていれば、その経験年数を考慮して号給が決まるのが原則です。前年と同じ学校で同じ仕事をしているのに給料が変わらない、という場合は、勤務先の教育委員会の給与担当に「経験年数の換算」を確認してみる価値があります。

千葉県の常勤講師の給与の目安

千葉県教育委員会の待遇ページ(2026年3月25日更新)には、臨時的任用教諭等の月額給与として、大学新卒の場合 月額306,795円と書かれています。ただし、地域手当を9.2パーセントで計算し、教員特別手当を含んだ「見込み」の額で、若干変動することがあると注記されています。

同じページには、代表的な諸手当として通勤手当、住居手当(賃借料に応じて上限28,000円まで)、期末勤勉手当(6月、12月に支給)が挙がっています。

教職調整額は常勤講師にもつく

給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)の「教育職員」には、講師(常時勤務の者など)が含まれています(第2条第2項)。そのため、常勤講師にも教職調整額が支給されます(第3条第1項)。

教職調整額の率は段階的に引き上げられている途中です。国の法律では、2026年(令和8年)1月から12月までは給料月額の5%を基準とし、その後は毎年1%ずつ上がって、2031年(令和13年)1月から10%になります(附則第2項)。実際の支給は、この基準に沿って各自治体の条例で定めます。詳しくは給特法改正で教員の給料は本当に上がるのかで解説しています。

給特法 第3条第3項第1号は、期末手当・勤勉手当・退職手当を給料で計算するときは、給料に教職調整額を加えた額を基礎にすることを条例で定めるよう求めています。講師のボーナスや退職手当も、この「給料+教職調整額」がもとになります。

「“給料、安定、やりがい”は、やっぱり教員でしか得られないものもあるのかなと個人的に思います。」
——30代・中学校・教諭で退職・女性(元教員キャリア実態調査2026)

非常勤講師の時給・報酬の決まり方|千葉県の例

非常勤講師の時給の決まり方を付箋で整理するイメージ

辞令に「会計年度任用職員(パートタイム)」とある非常勤講師(時間講師)が受け取るのは、「給料」ではなく「報酬」です。報酬の額と支給方法は条例で定めます(地方自治法 第203条の2第5項)。

総務省「会計年度任用職員制度の運用に係る事務処理マニュアル」(令和8年3月)は、パートタイムの会計年度任用職員の報酬について、職務の内容や責任、地域、知識・経験などを考慮しつつ、勤務の量に応じて支給することが適当としています。1時間いくら、1単位時間いくら、という形になっているのはこのためです。

千葉県の非常勤講師の報酬(例)

千葉県教育委員会の待遇ページ(2026年3月25日更新)に載っている、小・中学校・義務教育学校の会計年度任用職員の給与例の一部です。

職の種類(千葉県・小中学校など) 給与例
初任者研修に係る非常勤講師 3,230円/授業の1単位時間を含む1時間
妊娠教員補助講師 3,230円/授業の1単位時間を含む1時間
きめ細かな指導のための非常勤講師 213,800円/月(週5日29時間)
休暇等代替非常勤講師 213,800円/月(週5日29時間)
小学校専科非常勤講師(体育・図工専科講師) 3,230円/時間

同じ千葉県内でも、職の種類によって時間額で決まるものと月額で決まるものがあります。中学校の教科担任講師や県立高校の非常勤講師は、別添の資料で額が示されています。表の額は千葉県の例で、ほかの自治体の額とは異なります。

報酬が「授業1時間」単位の場合、授業準備や採点、会議に出た時間がどう扱われるかは、自治体の規則と任用時に示される勤務条件で決まります。任用のときに示される勤務条件の書面で、どこまでが報酬の対象かを確かめておくと安心です。

時間外に働いたときの扱い

給特法の「教育職員」に入る講師は、常時勤務の講師と短時間勤務の職を占める講師に限られます(給特法 第2条第2項)。パートタイムの会計年度任用職員は教職調整額の対象ではありません。

そのかわり、総務省「会計年度任用職員制度の運用に係る事務処理マニュアル」(令和8年3月)は、パートタイムの会計年度任用職員に正規の勤務時間を超えて勤務させたり、休日に勤務させたりした場合は、労働基準法の規定を踏まえ、時間外勤務手当に相当する報酬を支給するなど、同法に沿って対応すべきとしています。

「外から見ると意外と「元先生」ブランドって(年齢や経験年数に関わらず)強いです。」
——30代・中学校・非常勤講師(時間講師)で退職・女性(元教員キャリア実態調査2026)

講師のボーナス(期末手当・勤勉手当)は出る?

計画を立てるイメージ

ボーナスにあたるのは「期末手当」と「勤勉手当」です。講師でも、区分によって支給の仕組みがあります。

常勤講師(臨時的任用)

総務省「会計年度任用職員制度の運用に係る事務処理マニュアル」(令和8年3月)は、臨時的任用職員は「常時勤務を要する職」に就く職員として位置付けられるため、退職手当を含め、諸手当は常勤職員と同様に支給する必要があるとしています。千葉県の待遇ページでも、臨時的任用教諭等の代表的な諸手当として期末勤勉手当(6月、12月に支給)が挙がっています。

会計年度任用職員(フルタイム・パートタイム)

会計年度任用職員への期末手当は、2020年の制度開始時から支給できるようになりました。勤勉手当は、2023年の地方自治法改正(令和5年法律第19号)で支給できるようになっています(総務省「会計年度任用職員制度の運用に係る事務処理マニュアル」(令和8年3月))。

パートタイムの会計年度任用職員への期末手当・勤勉手当は、地方自治法 第203条の2第4項が「条例で支給することができる」と定めています。支給するかどうか、どの条件で支給するかは、勤務先の自治体の条例で決まります。

総務省マニュアルが示している「目安」

総務省のマニュアルは、期末手当・勤勉手当を「任期が相当長期にわたる者」に支給すべきとし、その「相当長期」を次のように説明しています。

・フルタイムの会計年度任用職員:任期6か月以上を基本とする
・パートタイムの会計年度任用職員:任期6か月以上、かつ週15時間30分以上の勤務時間を基本とする
・基準日は、常勤職員と同じく6月1日・12月1日に設けることが基本
・期末手当・勤勉手当を支給しない目的で、基準日を外した任用を行うことは避ける必要がある

これは国が示す運用の考え方で、支給要件そのものは各自治体の条例・規則です。「週◯時間だから出ない」と決めつけず、勤務先の規則で確認してください。

期末手当・勤勉手当の額の計算では、常勤講師の場合、給料に教職調整額を加えた額が基礎になります(給特法 第3条第3項第1号)。具体的な支給割合は、自治体ごとの給与条例で定められています。

常勤講師の退職金はいくら?3年勤めた場合の計算

データと数字のイメージ

ここからは、よく検索されている「常勤講師の退職金はいくら?」「3年だといくら?」にお答えします。正規の先生の退職金の全体像(勤続年数別の早見表など)は「教員の退職金はいくら?勤続年数別の手取り早見表と50代早期退職の注意点」にまとめています。この記事では、講師ならではのポイントに絞ります。

常勤講師は退職手当の対象になる

千葉県「職員の退職手当に関する条例」(昭和29年千葉県条例第6号。本文は千葉県例規集で確認できます)は、第2条第1項で退職手当を受ける「職員」を定めています。ここから除かれているのは、会計年度任用職員(地方公務員法 第22条の2第1項で採用された者)、定年後の再任用の職員、任期付職員です。臨時的任用の常勤講師は、この除外の中に入っていません。

同じ第2条第2項は、職員以外の人でも、職員の勤務時間以上勤務した日が18日以上ある月が引き続いて12月を超えた人を、職員とみなして退職手当を支給すると定めています。ただし、パートタイムの会計年度任用職員(第22条の2第1項第1号)はここから除かれています。

さらに、千葉県の令和元年条例第13号の附則第2項は、当分の間、この「18日以上の月」が引き続いて6月を超えた人にも第2条第2項を適用し、そのときの退職手当の額は計算した額の100分の50とする、と定めています。フルタイムの会計年度任用職員で任期が1年に満たない方は、この規定にも当たるかを確認してください。

千葉県の条例での計算式

勤続10年以下の場合、千葉県の条例での退職手当の基本額は、次の順で計算します。

・退職の日の給料月額 × 勤続年数 × 100分の100(第3条第1項第1号)
・自分の都合で退職した場合は、さらに × 100分の60(第3条第2項第1号。勤続1年以上10年以下)
・当分の間の調整として、さらに × 100分の83.7(附則第6項)

勤続期間は、職員になった日の属する月から退職した日の属する月までの月数で数えます(第7条第2項)。1年未満の端数は切り捨てですが、6月以上1年未満のときは1年として扱います(第7条第7項)。

千葉県の条例では、退職手当は、この基本額に「調整額」を足した額です(第2条の3)。調整額は、在職した各月の職員の区分に応じた額(調整月額)を、多い順に60月分まで足し合わせるもので、自己都合でない退職で勤続1年以上4年以下のときはその2分の1、自己都合退職で勤続9年以下のときは0円です(第6条の4第1項・第4項)。職員の区分は職務の級などで決まり、0円の区分もあるため、この記事では基本額だけを計算します。

3年勤めた場合の計算例(仮の給料月額で)

給料月額は、経験年数や学歴で一人ひとり違います。ここでは計算の形を見るために、退職の日の給料月額(教職調整額を含む)を仮に25万円として、千葉県の式に当てはめます。

ケース 計算 基本額
3年通算・自己都合でない退職 25万円 × 3年 × 100/100 × 83.7% 627,750円
3年通算・自己都合退職 25万円 × 3年 × 100/100 × 60/100 × 83.7% 376,650円
1年ずつ精算・自己都合でない退職(1回分) 25万円 × 1年 × 100/100 × 83.7% 209,250円

※仮の給料月額による基本額の計算例です。自己都合でない退職では、これに調整額が加わることがあります。実際の額は、ご自身の給料月額・職員の区分と勤務先の条例で決まります。

注意したいのは、任期の満了で退職したときに「自分の都合で退職した者」に当たるかどうかです。千葉県の条例 第3条第2項は、減額の対象を「その者の都合により退職した者」と書いています。任期満了がこれに当たるかどうかで、上の表の1行目と2行目のどちらになるかが変わります。ご自身の退職がどちらで扱われるかは、勤務先の教育委員会の給与・退職手当の担当に確認してください。

退職手当にかかる税金

退職手当は「退職所得」として、給与とは別に計算されます。所得税法 第30条では、勤続年数が20年以下の場合の退職所得控除額を「40万円×勤続年数」とし、計算した額が80万円に満たないときは80万円としています(第30条第3項第1号・第6項第2号)。

退職手当を受け取るときは、支払者(勤務先)を通じて「退職所得の受給に関する申告書」を出します(第203条)。前の年までに別の退職手当を受け取っている場合は、控除額の計算に調整が入ることがあります(第30条第6項第1号)。講師として何度か退職手当を受け取っている方は、源泉徴収票の記載を確かめておくと安心です(参考:国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき)。

「空白の1日」で変わること|常勤講師の退職金・年金・健康保険

退職金・年金・健康保険の書類を見ながら説明を受けるイメージ

講師のお金の話で、条文を読まないと判断を誤りやすいのが「空白の1日」です。年度末の3月30日で任用が終わり、4月1日から次の任用が始まると、間に3月31日の1日が空きます。この1日で何が変わるのかを、条例と総務省のマニュアルで確かめました。

そもそも常勤講師の任期は区切られている

欠員の補充などで行う臨時的任用の期間は6月を超えることができず、更新も1回までです(地方公務員法 第22条の3第1項・第4項)。育児休業の代替の場合は、別の法律(地方公務員の育児休業等に関する法律 第6条)による任用となり、任期は育児休業の期間を上限に決まります(臨時的任用の場合は1年まで)。会計年度任用職員の任期も、その会計年度の末日までです(地方公務員法 第22条の2第2項)。講師を続ける方は、毎年あらためて任用されることになります。

退職手当:千葉県では「翌日までの再任用」で通算される

千葉県「職員の退職手当に関する条例」(昭和29年千葉県条例第6号。本文は千葉県例規集で確認できます)は、職員が退職した日またはその翌日に再び職員となったときは、在職期間の計算で引き続いて在職したものとみなすと定めています(第7条第3項)。同時に、その場合は退職のたびの退職手当は支給しないとしています(第19条第1項)。

つまり千葉県の条例では、次のように分かれます。

・退職の日の翌日までに次の任用が始まる → 勤続期間が通算され、退職手当は最後にまとめて計算される
・退職の日の翌日より後に次の任用が始まる(1日以上空く) → 条例上は通算されず、その任用ごとに退職手当が計算される

勤続10年以下の間は、基本額の1年あたりの割合が同じ100分の100なので、給料月額が毎年同じなら、基本額の合計は通算でも1年ずつでも大きく変わりません。ただし調整額は、自己都合でない退職で勤続が5年以上になると2分の1でなくなる(第6条の4第4項第1号)ため、通算した場合のほうが多くなることがあります。ほかに差が出やすいのは、通算した勤続が11年以上になるとき(1年あたりの割合が上がる。第3条第1項第2号以降)と、自己都合の減額割合の区分(勤続11年以上15年以下は100分の80、16年以上19年以下は100分の90。第3条第2項第2号・第3号)、そして退職の日の給料月額がどの年のものになるか、の3つです。

「空白があるから退職金が出ない」のではなく、「通算されるか、区切って精算されるか」が変わる、と理解しておくと整理しやすくなります。

年金・健康保険:「事実上の継続」なら資格を失わない扱い

総務省「会計年度任用職員制度の運用に係る事務処理マニュアル」(令和8年3月)は、臨時的任用職員が1日ないし数日の間を空けて再度任用される場合でも、任用の終了時にあらかじめ次の任用の予定が明らかであるなど、事実上、任用関係が中断することなく存続していると判断される場合は、厚生年金保険の被保険者資格を喪失させずに取り扱う必要があり、共済組合の短期給付・福祉事業の組合員資格も喪失しないものとして取り扱う、としています。

同じマニュアルは、退職手当や社会保険料などを負担しないようにするために、再度の任用の間に「空白期間」を設けることは適切ではない、とも明記しています。会計年度任用職員については、地方公務員法 第22条の2第6項が、必要以上に短い任期を定めて任用を繰り返さないよう配慮する義務を任命権者に課しています。

空白の1日のあとに、健康保険証(資格確認書)の切り替えや、国民年金への切り替えの案内が届いたときは、そのまま手続きする前に、勤務先の事務担当に「事実上の継続として扱われるか」を確認してみてください。

「育児休暇、介護休暇、年休等を充分に生かし、充実したライフバランスでお仕事をなさって下さい。」
——50代以上・小学校・非常勤講師(時間講師)で退職・女性(元教員キャリア実態調査2026)

常勤講師は失業手当をもらえる?雇用保険と「失業者の退職手当」

悩む人のイラスト

「常勤講師 失業手当」も、検索されている言葉です。ここは、雇用保険に入っているかどうかで答えが分かれます。

公務員は雇用保険の適用が外れることがある

雇用保険法 第6条第6号は、国や都道府県、市町村などに雇用される人のうち、離職したときに条例などで支給される給与が、雇用保険の求職者給付などを超えると認められる人を、雇用保険の適用から外すと定めています。具体的な範囲は雇用保険法施行規則 第4条で、都道府県や市町村が法を適用しないことについて申請し、承認を受けた人などとされています。

また総務省「会計年度任用職員制度の運用に係る事務処理マニュアル」(令和8年3月)は、会計年度任用職員について、週20時間以上・31日以上の雇用見込みなどの要件を満たせば雇用保険の加入手続きが必要だとしたうえで、退職手当条例の適用を受けるようになったときからは雇用保険の被保険者でなくなる、と説明しています。

自分が雇用保険に入っているか確かめる方法

・給与明細の控除欄に「雇用保険料」があるか
・任用のときに示された勤務条件の書面に、雇用保険の記載があるか
・わからなければ、勤務先の事務担当に「雇用保険の被保険者かどうか」を聞く

雇用保険に入っていれば、離職後はハローワークで基本手当(いわゆる失業手当)の手続きをします。

雇用保険に入っていない常勤講師などのための「失業者の退職手当」

退職手当条例の対象で、雇用保険に入っていない職員のために、退職手当条例には「失業者の退職手当」という仕組みがあります。パートタイムの会計年度任用職員は退職手当条例の対象外なので、この仕組みは使えません(週20時間以上などの要件を満たせば雇用保険の対象です)。千葉県「職員の退職手当に関する条例」(昭和29年千葉県条例第6号。本文は千葉県例規集で確認できます)では第10条です。

千葉県の条例では、勤続期間12月以上(雇用保険の特定受給資格者に相当する「特定退職者」は6月以上)で退職した職員について、すでに受け取った退職手当の額が、雇用保険の基本手当に相当する額に満たない場合、失業している日について、その差額を退職手当として、雇用保険の基本手当の支給条件に従って支給すると定めています(第10条第1項)。

勤続期間が12月に満たない場合や、要件・手続きの細部は自治体ごとに異なります。退職前に、勤務先の教育委員会の担当に「失業者の退職手当」の対象になるかを確認しておきましょう。公立教員の失業手当の全体像は、教員が辞めたら失業保険はもらえる?公立は対象外でも届く5つのお金制度と教員は失業手当(失業保険)がもらえない?公立教員が損しないための退職後お金完全ガイドで詳しく解説しています。

私立学校の講師の場合は、学校法人と結ぶ雇用契約の話になり、公立の条例はそのままは当てはまりません。雇用保険の加入の有無は、同じく給与明細と雇用契約書で確認してください。

講師の社会保険・副業・確定申告

本が並ぶ棚

最後に、講師として働くうえで押さえておきたい「社会保険」「副業」「確定申告」をまとめます。

年金と健康保険:区分と勤務時間で変わる

総務省「会計年度任用職員制度の運用に係る事務処理マニュアル」(令和8年3月)によると、臨時的任用職員は、2月以内の任期で、その期間を超えて使用される見込みがない人を除き、年金は厚生年金保険(第1号厚生年金被保険者)、医療保険は共済組合の短期給付・福祉事業の対象になります。

会計年度任用職員は、同じく2月以内の任期の人を除き、次のいずれかに当てはまると、年金は厚生年金保険、医療保険は共済組合の短期給付・福祉事業の対象になります。

・任用が事実上続いていて、常勤の勤務時間以上勤務した日が月18日以上ある(その状態が12月を超えるまでの間)
・勤務時間が常勤職員の4分の3以上
・週の所定勤務時間が20時間以上、報酬月額が8.8万円以上、学生でない、の3つをすべて満たす

なお、常勤の勤務時間以上勤務した日が18日以上ある月が引き続いて12月を超えると、その後は共済組合の長期給付なども適用されます。どれにも当てはまらない会計年度任用職員は、国民年金と国民健康保険に加入することになります。時間講師を複数の学校で掛け持ちしている方は、1か所ごとの勤務時間で判断されるのか、自分がどれに当たるのかを任用先に確認してください。

副業:常勤講師は許可制、パートタイムは許可制の対象外

地方公務員法 第38条第1項は、職員が営利企業の役員を兼ねたり、報酬を得て事業や事務に従事したりするには任命権者の許可が必要だと定めています。ただし書で、非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員とフルタイムの会計年度任用職員を除く)は、この限りでないとしています。

つまり、常勤講師(臨時的任用)とフルタイムの会計年度任用職員は許可制の対象、パートタイムの会計年度任用職員は同条の許可制の対象外です。許可を出すのは服務を監督する教育委員会で、市町村立の小中学校の先生なら市町村の教育委員会です(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第43条・第47条)。ただし、勤務時間中の職務専念や信用失墜行為の禁止など、ほかの服務のルールはかかります。任用先の規程もあわせて確認してください。非常勤講師と副業の組み合わせ方は、教員の非常勤講師×副業という新しい働き方でまとめています。

確定申告:学校を掛け持ちしている人の20万円ルール

所得税の確定申告が必要かどうかは、「20万円」の判定で決まる場合があります(所得税法 第121条第1項)。

給与を1か所から受け取っているなら、副業など給与以外の所得の合計が20万円以下かどうかで判定します(第1号)。学校の掛け持ちやアルバイトなどで2か所以上から給与を受け取っているなら、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与以外の所得の合計が20万円以下かどうかで判定します(第2号イ)。

20万円以下で所得税の確定申告をしない場合でも、給与以外の所得があれば住民税の申告は原則として必要です(地方税法 第317条の2第1項)。判定の詳しい条件は国税庁 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人で確認できます。

お金から見た講師の選択肢|続ける・正規を目指す・組み合わせる・外に出る

選択肢を選ぶイメージ

講師のお金の仕組みがわかったところで、これからの選択肢を、お金の面から並べてみます。どれが正解ということはありません。

1. 講師を続ける

常勤講師なら給料・手当・期末勤勉手当・退職手当の仕組みがあり、経験年数も給料に反映されるのが原則です。続けるなら、毎年の任用の間が空くかどうかと、その扱いを任用のたびに確認しておくことが、いちばんのお金の守り方になります。

2. 正規の教員を目指す

講師経験を評価する選考を設けている自治体もあります。条件は自治体ごとに違うので、受けたい自治体の実施要項で確認してください。講師を続けながら正規を目指すか、別の道に進むかの考え方は、臨時的任用教員(臨任)のキャリア戦略|正規登用 or 転職?にまとめています。

3. 非常勤講師として、ほかの仕事と組み合わせる

パートタイムの会計年度任用職員は、地方公務員法 第38条の許可制の対象外です。学校の仕事を続けながら、別の収入源を持つこともできます。そのときは、社会保険の加入区分と確定申告の要否が変わる点に注意してください。

4. 学校の外で働く/いったん学校を離れて、また戻る

私たちが2026年2月〜5月に実施した元教員キャリア実態調査(記名式・氏名は非公開、n=107)では、最後の雇用形態が講師だった方が9名(非常勤講師6名・常勤講師3名)いました。また、107名中22名(約21%)が、退職後に非常勤講師・臨時的任用として働いた経験があると答えています。学校を離れることが、学校と縁を切ることとは限りません。調査の全体は元教員107名のリアル【元教員キャリア実態調査2026】で紹介しています。

都道府県・市区町村の講師登録の窓口は、学校ではたらく(講師登録の窓口まとめ)で探せます。

「お金の不安でやむなく続けているなら、別の道を考えてもよいのではないでしょうか。」
——30代・小学校・教諭で退職・女性(元教員キャリア実態調査2026)

続けるにしても、変えるにしても、辞めるにしても、「自分の区分で何が出るのか」を知っていれば、選ぶときの不安はずいぶん小さくなります。

よくある質問

Q. 常勤講師を3年続けたら、退職金はいくらですか?

A. 勤務先の条例と給料月額で決まるため、一律の金額はありません。千葉県の条例では、勤続10年以下の基本額は「退職の日の給料月額×勤続年数×100分の100×100分の83.7」で、自分の都合による退職ならさらに100分の60を掛けます。仮に給料月額25万円・3年通算なら、基本額は自己都合でない場合627,750円、自己都合の場合376,650円です。自己都合でない退職では、これに調整額(勤続4年以下は2分の1)が加わることがあります。

Q. 非常勤講師にも退職金は出ますか?

A. パートタイムの会計年度任用職員には、地方自治法上、退職手当を支給する根拠がありません(第203条の2に定めがなく、第204条の2が法律・条例に基づかない給付を禁じているため)。フルタイムの会計年度任用職員は、条例の要件を満たせば退職手当の対象になります。

Q. 講師にボーナス(期末手当・勤勉手当)は出ますか?

A. 常勤講師(臨時的任用)は、常勤職員と同様に諸手当を支給する必要があるとされています。パートタイムの会計年度任用職員への期末手当・勤勉手当は、地方自治法第203条の2第4項により条例で支給できます。支給の条件は勤務先の自治体の条例・規則で確認してください。

Q. 任用の間に1日空くと、退職金はどうなりますか?

A. 千葉県の条例では、退職の日またはその翌日に再び職員になれば勤続期間が通算され(第7条第3項)、その時点の退職手当は支給されません(第19条第1項)。1日以上空くと通算されず、任用ごとに退職手当が計算されます。勤続10年以下の間は、給料月額が同じなら基本額の合計は大きく変わりません。ただし、自己都合でない退職で通算の勤続が5年以上になると、調整額は通算した場合のほうが多くなることがあります。

Q. 常勤講師は失業手当をもらえますか?

A. 雇用保険に入っていれば、ハローワークで基本手当の手続きができます。入っていない場合は、退職手当条例の「失業者の退職手当」で、退職手当が雇用保険の基本手当相当額に満たない分が支給される仕組みがあります。千葉県の条例では勤続期間12月以上(特定退職者は6月以上)が要件です(第10条)。

Q. 非常勤講師は副業をしてもいいですか?

A. 地方公務員法第38条第1項ただし書により、パートタイムの会計年度任用職員は同条の許可制の対象外です。常勤講師とフルタイムの会計年度任用職員は、服務を監督する教育委員会の許可が必要です。市町村立の小中学校の先生なら、許可を出すのは市町村の教育委員会です(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第43条・第47条)。職務専念義務などほかの服務のルールはかかるので、任用先の規程も確認してください。

Q. 私立学校の講師も同じですか?

A. いいえ。この記事は公立学校の講師の制度です。私立学校の講師は学校法人との雇用契約で、給与・賞与・退職金は学校法人の規程で決まります。雇用保険の加入の有無は、給与明細と雇用契約書で確認してください。

まとめ

・講師のお金は「常勤講師(臨時的任用)」「フルタイムの会計年度任用職員」「パートタイムの会計年度任用職員」のどれかで決まる。まず辞令の区分を見る
・常勤講師の給料は、常勤職員の給料表と初任給基準に基づき、経験年数を考慮して決めるのが原則。教職調整額もつく
・パートタイムの会計年度任用職員は「報酬」。期末・勤勉手当は条例で支給できるが、退職手当は地方自治法上の支給根拠がない
・千葉県の条例では、常勤講師の退職手当の基本額は「給料月額×勤続年数×100/100×83.7%」。自己都合ならさらに×60/100。自己都合でなければ調整額が加わることがある。任期満了がどちらに当たるかは担当に確認する
・空白の1日は「退職金が出ない」ではなく「通算か、区切って精算か」が変わる。年金・健康保険は事実上の継続なら資格を失わない扱いが求められている
・常勤講師など退職手当条例の対象者で雇用保険に入っていなければ、条例の「失業者の退職手当」がある。千葉県では勤続期間12月以上(特定退職者は6月以上)が要件
・続ける・正規を目指す・組み合わせる・外に出る。どれを選ぶにしても、自分の区分で何が出るかを知っておけば、選ぶときの不安は小さくなる




Re-Career代表 新川紗世
元教員が運営するキャリア支援

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