教員の退職金はいくら?勤続年数別の手取り早見表と50代早期退職の注意点

「50代で早期退職したら、教員の退職金はいくら残る?」——結論、自己都合退職なら勤続30年で手取り約1,530〜1,700万円、勤続25年で約1,180〜1,350万円が目安(給料月額44万円・42万円のモデル)。本記事では2026年最新制度に基づき、勤続10年〜37年の額面・税金・手取り額を早見表で完全公開。50代早期退職の特別措置、損しない辞め方、退職後の運用ポイントまで、元公立中学校教員+キャリア支援延べ1,000名以上の経験から具体的な金額でお伝えします。

「辞めるか/続けるか」の前に、まずは退職金のリアルな金額を知ること。それが、納得のいくキャリア選択の第一歩です。

新川紗世 Re-Career代表

この記事の著者

新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役

公立中学校で11年、私立高校で1年、あわせて12年、英語教員として勤務。教員時代に病休を経験し退職。その後、教員専門のキャリア支援会社を設立。著書『「やめたいかも」と一度でも思ったら読む 教員の転職思考法』。スタッフ全員が元教員のキャリア支援会社を率い、自身も延べ1,000名以上のキャリア支援に携わる。

教員の退職金はいくらもらえる?|勤続年数別のシミュレーションと注意点

「教員を辞めたいけれど、退職金はいくらもらえるんだろう?」

「退職金の額面だけ見て『これだけあれば大丈夫』と思っていたんですが、実際に手取りの計算をしたら税金で200万近く引かれることを知って驚きました。先に知っておけば、退職タイミングをずらしたのに」
——Tさん(50代・元公立小学校教員/勤続28年で早期退職)

⏱️ 30秒でわかる結論

教員の退職金は「退職日の給料月額 × 支給率 + 調整額」。校種でも職位でも、計算式は同じです。

勤続10年自己都合の支給率5.022。給料月額32万円なら約160〜230万円

勤続20年自己都合の支給率19.6695。給料月額40万円なら約790〜870万円

勤続30年自己都合の支給率34.7355。給料月額44万円なら約1,530〜1,720万円

職位別校長は教諭より給料月額が10万円以上高く、退職金の差は500万円超

転職を考え始めた教員の方にとって、退職金は非常に大きな関心事です。何年働けばいくらもらえるのか、自己都合退職だとどれくらい減るのか、税金はどうなるのか――。気になることは山ほどあるのに、職場では聞きにくい話題でもあります。

この記事では、公立教員の退職金制度の仕組みから、勤続年数別の具体的なシミュレーション、自己都合退職と定年退職の違い、私立教員の事情、税金の注意点、そして退職金を最大化するタイミングまで、転職を検討する教員が知っておくべき情報を網羅的にまとめました。

※本記事に掲載している金額はあくまで概算です。退職金の正確な額は自治体・学校法人・個人の給与等級によって異なります。具体的な金額は、所属先の事務担当者に確認されることをおすすめします。

公立教員の退職金制度の基本

まず、公立学校の教員に支給される退職金(正式には「退職手当」)の仕組みを理解しておきましょう。公立教員は地方公務員ですので、退職手当は各自治体の条例に基づいて支給されます。基本的な計算構造は国家公務員の制度に準じており、全国でほぼ共通しています。

退職手当の計算式

公立教員の退職手当は、以下の計算式で算出されます。

退職手当 = 基本額(退職日の給料月額 × 退職理由別・勤続年数別支給率)+ 調整額

この計算式には、大きく分けて3つの要素があります。

(1)退職日の給料月額

退職する日に適用されている「給料月額」が基準となります。ここでいう給料月額とは、各種手当を含まない基本給のことです。教職調整額は含まれますが、扶養手当や住居手当などは含まれません。なお教職調整額は、2025年に成立した改正給特法により、2026年1月から給料月額の4%を起点に毎年1%ずつ引き上げられ、最終的に10%になる予定です(文部科学省「給特法等一部改正法の概要」PDF)。引き上げが進むほど、退職手当の基本額も少しずつ増えることになります。

一般的な公立小中学校の教員の場合、経験年数や職務の級によって異なりますが、本記事では以下をシミュレーション用のモデル値として使います。(参考:文部科学省「学校教員統計調査(令和4年度)」による公立学校の教諭の平均給料月額は、小学校307,600円・中学校320,900円・高等学校346,700円です)

  • 勤続5年目(20代後半):約24万〜28万円
  • 勤続10年目(30代前半):約30万〜34万円
  • 勤続15年目(30代後半):約34万〜38万円
  • 勤続20年目(40代前半):約38万〜42万円
  • 勤続30年目(50代前半):約42万〜45万円
  • 定年退職時(60歳前後):約43万〜47万円

(2)退職理由別・勤続年数別支給率

退職手当の額を大きく左右するのが「支給率」です。この支給率は、退職理由(自己都合・定年・勧奨など)と勤続年数によって決まります。

自己都合退職の場合、定年退職と比べて支給率が大幅に低くなります。特に勤続年数が短い場合、その差は顕著です。

例えば、勤続20年の場合の支給率の目安は以下のとおりです。

  • 自己都合退職:19.6695
  • 定年退職:24.586875

このように、同じ勤続年数でも退職理由によって支給率に大きな差があります。自己都合退職を検討している方は、この点を十分に理解しておく必要があります。

(3)調整額

調整額は、退職前の職務の級(いわゆる「役職段階」)に応じて加算される金額です。在職期間中の各月について、職員の区分に応じた「調整月額」が定められており、その中から金額の高い順に60月分が加算されます(国家公務員退職手当法・e-Gov法令検索)。60月=5年分が上限なので、そこから先は在職しても増えません。また勤続9年以下の自己都合退職では調整額は支給されず、勤続10年以上24年以下の自己都合退職では半額になります。

一般教諭であれば調整月額は比較的低い区分に該当しますが、教頭や校長を経験している場合は、この調整額が退職手当全体を数十万円〜百万円以上押し上げることもあります。

モヤモヤ2.png|退職金について悩む教員のイメージ

【勤続年数別】教員の退職金シミュレーション(自己都合退職の場合)

ここからは、多くの方が最も知りたい「自己都合退職した場合、いくらもらえるのか」を勤続年数別にシミュレーションしていきます。

※以下はあくまで概算です。実際の金額は自治体の条例、個人の給料月額、職務の級などによって異なります。一つの目安としてご参照ください。

勤続5年で退職した場合(20代後半)

  • 想定給料月額:約25万円
  • 自己都合退職の支給率:2.511
  • 概算退職金:約60万〜70万円(勤続9年以下の自己都合退職には調整額が支給されないため、基本額のみ)

勤続5年の段階では、支給率が2.511と低く、さらに調整額も支給されないため、退職金はまとまった額にはなりません。20代のうちに転職を決断する場合、退職金よりも「若さ」というキャリア資産のほうが大きいとも言えます。

勤続10年で退職した場合(30代前半)

  • 想定給料月額:約32万円
  • 自己都合退職の支給率:5.022
  • 概算退職金:約160万〜230万円(調整額は半額)

30代前半での転職を検討する教員は多いですが、退職金は160万〜230万円程度が目安です。「10年勤めたのだから数百万円はあるはず」と思っていた、という声をよくいただくところです。転職後の収入や将来のキャリアプランと合わせて判断することが重要です。

「「退職金が300万円くらいだと聞いて、正直もっともらえると思っていました。でも、30代で転職して年収が上がったので、長い目で見れば正解だったと感じています」」

——Re-Career利用者・30代元中学校教員

勤続15年で退職した場合(30代後半〜40代前半)

  • 想定給料月額:約36万円
  • 自己都合退職の支給率:10.3788
  • 概算退職金:約370万〜460万円(調整額は半額)

勤続15年になると、退職金は370万〜460万円程度になります。一方で、年齢的にも転職市場での評価が変わり始める時期です。退職金の額と転職の可能性を天秤にかけて悩む方が多いゾーンでもあります。

勤続20年で退職した場合(40代前半〜半ば)

  • 想定給料月額:約40万円
  • 自己都合退職の支給率:19.6695
  • 概算退職金:約790万〜870万円(調整額は半額)

勤続19年の支給率は16.49727、勤続20年は19.6695。この1年で支給率が一段跳ね上がるため、給料月額40万円なら退職金は約130万円変わります。20年を超えるとまとまった金額になり、これは住宅ローンの繰り上げ返済や、転職期間中の生活資金として大きな安心材料になります。

「「20年勤めて退職金が約1,100万円。思い切って辞める決断ができたのは、この金額があったからです。転職活動中の半年間、経済的に焦らずに済みました」」

——Re-Career利用者・40代元高校教員

勤続30年で退職した場合(50代前半)

  • 想定給料月額:約44万円
  • 自己都合退職の支給率:34.7355
  • 概算退職金:約1,530万〜1,720万円(調整額を含む)

勤続30年ともなると退職金は1,500万円台後半になりますが、自己都合退職のため定年退職よりは低くなります。50代での転職は選択肢が限られる面もあるため、退職金だけでなく再就職先の見通しも含めた慎重な判断が求められます。

定年退職の場合(勤続38年前後)

  • 想定給料月額:約45万円
  • 定年退職の支給率:47.709(勤続35年以上は一律)
  • 概算退職金:約2,150万〜2,370万円(調整額含む)

定年まで勤め上げた場合、退職金は2,000万円台になります。実際に、埼玉県教職員互助会が公開している計算例では、勤続37年・定年退職の教諭で約2,276万円という数字が示されています。

重要:上記の金額はあくまで一般的な概算値です。都道府県・市区町村によって給料表や支給率が異なるため、正確な金額を知りたい場合は所属先の人事・総務課に問い合わせてください。

自己都合退職と定年退職の退職金の違い

教員の退職金を考える上で、最も理解しておくべきポイントが「退職理由による支給率の違い」です。

同じ勤続年数であっても、自己都合退職と定年退職では支給率に大きな差があります。以下に、主な勤続年数における支給率の違いをまとめます。

  • 勤続10年:自己都合 5.022 / 定年 8.37 → 給料月額32万円なら約161万円と約268万円(差 約107万円)
  • 勤続20年:自己都合 19.6695 / 定年 24.586875 → 給料月額40万円なら約787万円と約983万円(差 約197万円)
  • 勤続25年:自己都合 28.0395 / 定年 33.27075 → 給料月額42万円なら約1,178万円と約1,397万円(差 約220万円)
  • 勤続30年:自己都合 34.7355 / 定年 40.80375 → 給料月額44万円なら約1,528万円と約1,795万円(差 約267万円)
  • 勤続35年:自己都合 39.7575 / 定年 47.709 → 給料月額45万円なら約1,789万円と約2,147万円(差 約358万円)

※支給割合は埼玉県教職員互助会が公開している支給割合一覧表(平成30年2月1日以降)による。退職手当は各自治体の条例で定めるため、必ずご自身の自治体の数字を確認してください。金額は上記の給料月額を当てはめた基本額のみの試算です。

この差を見ると、自己都合退職は定年退職と比べて数百万円単位で少なくなることが分かります。しかし、だからといって「定年まで我慢して働き続けるべき」とは限りません。

転職によって得られる収入アップ分や、精神的な健康、残りのキャリアで得られる経験を金額換算すると、自己都合退職の減額分を上回るケースも少なくありません。

また、自己都合退職であっても「勧奨退職」扱いになる場合(早期退職募集制度の利用など)は、定年退職に近い支給率が適用されることがあります。お住まいの自治体に早期退職募集制度があるかどうか、確認してみる価値はあるでしょう。

私立教員の退職金事情

ここまでは公立教員の退職金について説明してきましたが、私立学校に勤務する教員の退職金事情は大きく異なります。

私立教員の退職金は学校法人次第

私立学校の教員は公務員ではなく、各学校法人の就業規則に基づいて退職金が支給されます。そのため、学校によって退職金の水準は大きく異なります。

  • 大規模な学校法人:公立教員に準じた退職金制度を整備しているところもある
  • 中小規模の学校法人:退職金制度はあるが、公立よりかなり低い水準の場合が多い
  • 一部の学校法人:退職金制度そのものがない場合もある

都道府県単位の「退職資金事業」という仕組み

私立学校の退職金にかかわる仕組みとして、都道府県単位で運営される「退職資金事業」があります。たとえば公益財団法人 東京都私学財団の退職資金事業は、都内の私立学校を対象に、加入者である学校等設置者(学校法人)へ退職資金を交付するものです。全国共通の単一組織があるわけではなく、加入しているかどうかも、交付の条件も都道府県ごとに異なります。交付先はあくまで学校法人ですので、実際に受け取る退職金の額は自校の退職金規程で決まります。

私立教員の方は、自校の退職金規程を確認し、勤続年数に応じた支給額の目安を事前に把握しておくことが大切です。採用時の契約書や就業規則に記載されていることが多いので、一度確認してみてください。

退職金にかかる税金の注意点

教員の退職金は全額が手取りになるわけではありません。税金について正しく理解しておかないと、想定より少ない手取り額に驚くことになりかねません。

退職所得控除の計算

退職金にかかる税金は「退職所得」として計算され、通常の給与所得とは分離して課税されます。退職所得には大きな控除があるため、税負担は比較的軽くなります。

退職所得控除額の計算方法は以下のとおりです。

  • 勤続年数20年以下の場合:40万円 × 勤続年数(最低80万円)
  • 勤続年数20年超の場合:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)

例えば、勤続15年の場合の退職所得控除額は「40万円 × 15年 = 600万円」です。退職金が700万円だった場合、退職所得は「(700万円 − 600万円)× 1/2 = 50万円」となり、この50万円に対して所得税・住民税が課されます。

例えば、勤続25年の場合の退職所得控除額は「800万円 + 70万円 ×(25年 − 20年)= 1,150万円」です。退職金が1,500万円だった場合、退職所得は「(1,500万円 − 1,150万円)× 1/2 = 175万円」に対して課税されます。

「退職所得の受給に関する申告書」を必ず提出

退職時に「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出すれば、退職所得控除が適用された上で源泉徴収が行われるため、原則として確定申告は不要です。

この申告書を提出しなかった場合、退職金全額に対して一律20.42%の所得税が源泉徴収されてしまいます。後から確定申告で取り戻すことは可能ですが、一時的に手取りが大幅に減ります。退職時には必ず申告書を提出しましょう。

住民税にも注意

退職金に対する住民税は、退職所得の金額に対して一律10%(市町村民税6%+都道府県民税4%)が課されます。退職金から特別徴収(天引き)されるのが一般的です。

また、退職した翌年の住民税にも注意が必要です。住民税は前年の所得に基づいて翌年に課税されるため、退職後に収入が減っていても前年分の住民税の支払いが発生します。転職までの期間が空く場合は、この住民税の支払いも資金計画に織り込んでおきましょう。

中途退職で退職金を最大化するタイミング

自己都合退職を決意した場合でも、退職のタイミングによって退職金の額が変わることがあります。少しの工夫で数十万円の差が生まれることもありますので、以下のポイントを押さえておきましょう。

年度末(3月31日)退職が基本

教員の退職は年度末が圧倒的に多く、学校運営の観点からも年度途中の退職は避けるのが一般的です。退職金の面でも、年度末退職のほうが有利になるケースがあります。

退職手当の計算における勤続年数は、原則として「年単位」で計算されます。例えば、4月1日に採用された教員が翌年の3月31日に退職すれば勤続1年ですが、3月1日に退職すると勤続1年に満たないため、支給率が下がる可能性があります。

勤続年数の区切りを意識する

退職手当の支給率は勤続年数が1年増えるごとに段階的に上がります。特に勤続年数が5年、10年、15年、20年、25年といった区切りのタイミングでは、支給率の上がり幅が大きくなる場合があります。

あと数か月で勤続年数が1年増えるという場合は、その区切りまで待ってから退職するほうが合理的です。数か月の違いで退職金が数十万円変わることもあります。

退職月の給料月額が高いタイミング

退職手当は「退職日の給料月額」を基に計算されるため、昇給後に退職するほうが退職金は高くなります。ただし定期昇給の日は自治体によって異なります(4月1日の自治体も、1月1日の自治体もあります)。全国共通のルールではありませんので、ご自身の自治体の給与条例・規則で昇給日を確認してください。

ただし、年度途中の退職は後任の手配などで学校に迷惑をかける可能性があるため、昇給のタイミングだけを理由に退職時期を決めるのは現実的ではありません。年度末退職を基本としつつ、できるだけ勤続年数の区切りと重なるように計画するのが理想的です。

「「退職を決めたのは2学期の終わり頃でしたが、あと3か月で勤続10年になるタイミングだったので、年度末まで頑張りました。結果的に退職金が50万円以上変わったので、待って正解でした」」

——Re-Career利用者・30代元小学校教員

退職金の額だけで人生を決めないでほしい

ここまで退職金の計算方法やシミュレーションを詳しく解説してきました。退職を考える際に、経済面の見通しを立てることは非常に大切です。

しかし、元教員として転職を経験し、現在Re-Careerで多くの教員の方のキャリア相談に携わる立場から、一つだけお伝えしたいことがあります。

退職金の額だけで、人生の大きな決断をしないでください。

「あと5年働けば退職金が数百万円増えるから」と、心身ともに限界を感じながら教壇に立ち続ける方を何人も見てきました。その5年で失うもの――健康、家族との時間、新しいキャリアへの挑戦機会――は、数百万円では買い戻せません。

もちろん、経済的な備えは重要です。退職金がいくらもらえるかを把握し、転職後の収入見通しと合わせて生活設計を立てることは、安心して次のステップに踏み出すための土台になります。

ただ、退職金はあくまで「過去の労働に対する対価」です。これからの人生で得られる収入、やりがい、成長、幸福感は、退職金の額とは別の次元にあります。

人生の時間は有限です。退職金の数字に縛られて、本当にやりたいことを先延ばしにしてしまわないよう、広い視野で判断していただけたらと思います。

Re-Careerでは、退職金や転職後の収入も含めた「お金の不安」に寄り添いながら、教員一人ひとりに合ったキャリアプランを一緒に考えています。退職金の見通しが立たないことが転職への一歩を踏み出せない理由になっているなら、ぜひ一度ご相談ください。

まとめ:教員の退職金を正しく理解して、後悔のない選択を

最後に、この記事のポイントを整理します。

  • 公立教員の退職手当は「退職日の給料月額 × 支給率 + 調整額」で計算される。校種・職位が違っても計算式は同じ
  • 自己都合退職の退職金は、定年退職と比べて数百万円少なくなる
  • 自己都合退職の目安は、勤続5年で約60万〜70万円、勤続10年で約160万〜230万円、勤続20年で約790万〜870万円
  • 私立教員の退職金は学校法人によって大きく異なり、制度がない場合もある
  • 退職金には退職所得控除があり、税負担は比較的軽い
  • 退職のタイミング(年度末、勤続年数の区切り)で退職金が変わる
  • 退職金の額だけでなく、人生全体を見据えた判断が大切

金額はあくまで概算であり、自治体や個人の条件によって異なります。正確な金額を知りたい場合は、所属先の事務担当者への確認をおすすめします。

退職金の見通しが立ったら、次は転職後のキャリアプランを具体的に描いていきましょう。Re-Careerでは、教員経験を活かせる転職先の提案から、履歴書・職務経歴書の作成サポート、面接対策まで、教員の転職に特化した支援を行っています。

Re-Careerの無料キャリア相談では、退職金のシミュレーションや転職後の収入見通しも含めた「お金の不安」に寄り添いながら、あなたに合ったキャリアプランを一緒に考えます。教員からの転職を経験したアドバイザーが、あなたの一歩を全力でサポートします。まずはお気軽にご相談ください。

勤続年数別 教員の退職金 手取り早見表【勤続10年〜37年】

年収1.png|自己都合退職と定年退職の退職金比較のグラフ

幅広い勤続年数別の退職金目安を早見表にしました。ご自身の勤続年数に近い行を確認してください。支給率は埼玉県教職員互助会が公開している支給割合一覧表(平成30年2月1日以降)の実数です。

勤続年数 年齢目安 支給率(自己都合) 額面(自己都合) 手取り目安 額面(定年・勧奨)
10年 32〜35歳 5.022 約160〜230万円 約160〜230万円
15年 37〜40歳 10.3788 約370〜460万円 約370〜460万円
20年 42〜45歳 19.6695 約790〜870万円 約790〜865万円 約980〜1,150万円
25年 47〜50歳 28.0395 約1,180〜1,370万円 約1,180〜1,350万円 約1,400〜1,590万円
30年 52〜55歳 34.7355 約1,530〜1,720万円 約1,530〜1,700万円 約1,800〜1,990万円
35年 57〜60歳 39.7575 約1,790〜2,050万円 約1,790〜2,030万円 約2,150〜2,370万円
37年(定年) 60歳 約2,140〜2,340万円 約2,150〜2,370万円

※ 給料月額のモデル値は、勤続10年=32万円、15年=36万円、20年=40万円、25年=42万円、30年=44万円、35年以上=45万円。額面の下限は「基本額のみ」、上限は「基本額+調整額の目安」です。勤続10年〜24年の自己都合退職は調整額が半額、勤続9年以下は支給されません。手取りは退職所得控除を差し引いて所得税(復興特別所得税込み)と住民税10%を計算したものです。実際の金額は自治体・給料月額・退職理由で変わります。正確な額は所属自治体の事務担当に必ず確認してください。

手取りベースで見る「勤続15年で辞めるvs30年まで残る」の差

勤続15年で自己都合退職=手取り約370〜460万円。勤続30年まで残った場合=手取り約1,530〜1,700万円。差額は約1,100〜1,300万円にもなります。

ただしこれは「退職金だけ」を見た比較。15年で辞めて15年間で得られる「新しい仕事の年収」×15年分を加えると、生涯年収では大きな差にならないケースも多いです。退職金額だけで判断せず、「生涯年収+人生の満足度」で決めることが重要です。

校種別に見る教員の退職金|小学校・中学校・高校で違いはあるのか

小学校・中学校・高校の校舎|校種別の教員の退職金

「小学校教員の退職金はいくらもらえるのか」「中学校と高校では差があるのか」。相談の場でも、検索でも、実際によくいただく質問です。

先に結論をお伝えします。退職手当の「制度」そのものは、校種によって変わりません。公立学校の教員はいずれも地方公務員ですから、「基本額(退職日の給料月額 × 支給率)+ 調整額」という計算の骨組みは、小学校でも中学校でも高校でも同じです。

それでも金額に差が出るのは、掛け算のもとになる「給料月額」が校種によって違うからです。多くの自治体では、教育職の給料表が「小・中学校用」と「高等学校等用」に分かれています。教育職給料表(一)・(二)といった呼び方をされているものです。同じ年数を勤めても、適用される給料表と号給が違えば給料月額が変わり、その差はそのまま退職金の差になります。

文部科学省の統計で見る、校種別・職名別の平均給料月額

文部科学省「学校教員統計調査(令和4年度)」には、校種別・職名別の平均給料月額が公表されています。公立学校の数字を抜き出すと、次のとおりです。

職名 小学校 中学校 高等学校
教諭 307,600円 320,900円 346,700円
主幹教諭 401,800円 401,200円 409,700円
教頭 426,000円 425,100円 444,800円
校長 446,800円 444,800円 469,500円
養護教諭 306,000円 325,500円 342,500円
講師 259,100円 246,600円 261,100円
全職名の平均 322,300円 332,000円 353,200円

※出典:文部科学省「学校教員統計調査(令和4年度)」より、公立学校の平均給料月額。給料月額は令和4年9月分の給料(本俸)額で、諸手当および教職調整額は含みません。

この差は、退職金にするとどれくらいになるのか

教諭の平均給料月額を並べると、小学校が約30.8万円、中学校が約32.1万円、高等学校が約34.7万円。小学校と高校では月あたり約3.9万円の開きがあります。

定年退職(勤続35年以上)の支給率は47.709です。この差額に支給率を掛けると、約187万円。小学校と中学校の差(約1.3万円)でも、約63万円に相当します。校種による月々の差は小さく見えても、退職金という一時金になると百万円単位で顔を出します。

⚠️ この数字の読み方(ここを誤解すると計算がずれます)

  • 平均給料月額は全年齢の平均です。退職直前の給料月額はこれより高くなります。上の187万円は「退職金の差の目安」であって、誰かの退職金そのものではありません。
  • 小学校の平均が低いのは、給料表の水準だけが理由ではありません。校種によって年齢構成・男女比・育休や休職の取得状況が違うことも数字に影響しています。
  • 実際の退職手当は「退職日の給料月額」で計算されます。ご自身の給与明細の「給料」欄の額を使ってください。

※ 正確な金額は、所属自治体の退職手当条例と給料表によります。事務担当者に確認するのがいちばん確実です。

実際の計算例:勤続37年・定年退職した教諭のケース

一般財団法人 埼玉県教職員互助会が公開する退職手当資料(PDF)には、教員の退職手当の計算例が掲載されています。金額の出どころが分かる数少ない例なので、そのまま引用します。

  • 退職時の給料月額:414,200円(教育職給料表 2級)
  • 教職調整額:414,200円 × 4/100 = 16,568円
  • 基本額:430,768円(教職調整額を含む)× 支給率47.709 = 20,551,510円
  • 調整額:43,350円 × 24月 + 32,500円 × 36月 = 2,210,400円
  • 退職手当の合計:約2,276万円

この例から読み取れることが3つあります。

  • 教職調整額は給料月額に含めて計算される。基本給だけで計算すると、その分だけ低く見積もることになります。
  • 2級(多くの自治体で教諭にあたる級)のまま定年を迎えても、2,000万円台に届く。管理職にならなければ大きく損をする、という話ではありません。
  • 調整額は「金額の高い区分から60月分」しか加算されない。この点は次の章で詳しく扱います。

なお教職調整額は、2025年に成立した改正給特法により、2026年1月から給料月額の4%を起点に毎年1%ずつ引き上げられ、最終的に10%になる予定です。上の計算例は4%時点のものなので、今後に退職する方は、その時点の率で計算し直す必要があります。

「同じ年に採用された高校の同期と、40代になって初めて給料月額の話をしました。そこで給料表が別だと知って、退職金にも差が出ると気づいたんです。誰も教えてくれませんでした」
——46歳・公立小学校教諭・女性

「小学校教員の退職金はいくら?」に、いちばん正確に答える方法

ネット上には「小学校教員の退職金は◯◯万円」という記事がたくさんあります。ただ、退職手当は各自治体の条例で決まるため、全国一律の「小学校教員の退職金」という数字は、そもそも存在しません。校種で決まるのではなく、ご自身の給料月額と勤続年数で決まります。

ですので、次の3ステップで出していただくのがいちばん近道です。

  • 給与明細の「給料」欄(各種手当を除いた本俸)の金額を確認する
  • 勤続年数と退職理由(自己都合/定年/勧奨)から支給率を調べる
  • ①×②に、職務の級に応じた調整額を足す

②の支給率と、そこから出る金額の目安は、この記事の勤続年数別 教員の退職金 手取り早見表にまとめています。ご自身の勤続年数の行に、①で確認した給料月額を当てはめてみてください。

養護教諭・特別支援学校・私立学校の場合

養護教諭の平均給料月額は、小学校306,000円・中学校325,500円・高等学校342,500円。同じ校種の教諭とほぼ同水準です(出典は前掲の学校教員統計調査)。退職手当の計算式も教諭と同じですので、「養護教諭だから退職金が少ない」ということはありません。

退職したあとのキャリアまで含めて考えたい方は、養護教諭の転職先12選と年代別の戦略もあわせてご覧ください。

特別支援学校については、適用される給料表や手当の扱いが自治体によって異なります。この点は全国共通の数字を出せないため、ご自身の給与明細と自治体の条例を必ず確認してください。

私立学校は事情がまったく違います。学校教員統計調査によれば、私立高校の教諭の平均給料月額は364,400円で、公立高校の346,700円を上回っています。ところが退職金は各学校法人の規程次第で、公立のような支給率表が公表されているとは限りません。給料は高くても退職金の水準は読めない、ということが起こります。私立にお勤めの方は、就業規則の退職金規程を先に確認しておくことをおすすめします。

私自身、公立中学校で11年勤めたあと、私立高校で1年働きました。校種と設置者が変わると、給与の考え方も、退職金の考え方も、まったく別物になります。「教員の退職金」とひとくくりに検索して出てきた数字を、そのまま自分に当てはめないでほしいと思っています。

教頭・校長など管理職の退職金は、教諭とどれくらい変わるのか

職員室での打ち合わせ|教頭・校長など管理職の退職金

「教頭になったら退職金はいくら増えるのか」「校長の退職金の相場はどのくらいか」。管理職を打診されたときに、多くの方が最初に気にされるところです。

ここでも先に前提を共有させてください。校長・教頭の退職金にも、全国一律の相場はありません。退職手当は自治体ごとの条例で決まりますし、同じ校長でも退職時の号給と、管理職を何年務めたかで金額が変わります。「校長の退職金は◯◯万円」という一つの数字を探しても、たどり着けないのが実情です。

その代わり、どういう仕組みで増えるのかは共通しています。管理職になると、退職金は次の2つの経路で増えます。

  • 経路①:基本額が増える……退職手当の基本額は「退職日の給料月額 × 支給率」。管理職は上位の職務の級に格付けされるため、給料月額そのものが上がります。
  • 経路②:調整額が増える……調整額は職務の級ごとに定められた「調整月額」を積み上げる部分。上位の級にいた月ほど、単価が高くなります。

なお管理職手当は「諸手当」であって「給料月額」ではないため、管理職手当そのものは退職手当の基本額には入りません。基本額に効くのは、あくまで給料表上の給料月額です。

経路①:職位別の平均給料月額を並べてみる

文部科学省「学校教員統計調査(令和4年度)」から、公立学校の職名別・平均給料月額を抜き出します。

職名 小学校 中学校 高等学校
教諭 307,600円 320,900円 346,700円
主幹教諭 401,800円 401,200円 409,700円
教頭 426,000円 425,100円 444,800円
副校長 438,800円 427,600円 447,300円
校長 446,800円 444,800円 469,500円

※出典:文部科学省「学校教員統計調査(令和4年度)」より、公立学校の平均給料月額(令和4年9月分の本俸額。諸手当・教職調整額を含まない)。

教諭と管理職の差を、定年退職の支給率47.709で退職金に換算すると、おおよそ次のようになります。

  • 小学校:教頭と教諭の差 約565万円/校長と教諭の差 約664万円
  • 中学校:教頭と教諭の差 約497万円/校長と教諭の差 約591万円
  • 高等学校:教頭と教諭の差 約468万円/校長と教諭の差 約586万円

⚠️ この差額を「昇任すればこれだけ増える」と読まないでください

  • 校長・教頭の平均には、年齢が高いという要素が混ざっています。教諭のまま定年を迎える人の給料月額も、平均より高くなります。純粋な昇任効果だけを取り出した数字ではありません。
  • 退職手当の基本額は「退職日の給料月額」で決まります。つまり校長を1年務めても15年務めても、退職日の給料月額が同じなら基本額は同じです。管理職を長く務めた分が基本額に反映されるわけではありません。
  • 在職年数の長さが効いてくるのは、次に説明する「調整額」のほうです。

経路②:調整額は「高い区分から60月分」で頭打ちになる

調整額は、在職中の各月について職務の級に応じた「調整月額」を割り当て、金額の高いものから順に60月分だけを合計する仕組みです(国家公務員退職手当法(e-Gov法令検索))。60月=5年分が上限で、そこから先はいくら在職しても増えません。

埼玉県教職員互助会が公開する退職手当資料(PDF)に載っている区分表を、教育職の部分だけ抜き出すと次のとおりです。

区分 調整月額 教育職の該当(例)
第3号 59,550円 4級(管理職手当1種)
第4号 54,150円 4級(上記以外)
第5号 43,350円 3級/特2級/2級(大卒経験36年超)
第6号 32,500円 特2級(上記以外)/2級(大卒経験27年超)
第7号 27,100円 2級(大卒経験10年超)
第8号 21,700円 2級(上記以外)/1級(大卒経験15年超)
第9号 0円 1級(上記以外)

※これは埼玉県教職員互助会が公開している資料に基づく一例です。区分の金額も、級と区分の対応も自治体の条例で定められるため、他の自治体では異なります。

多くの自治体の教育職給料表では、おおまかに1級が講師・助教諭、2級が教諭、3級が教頭、4級が校長にあたります。これを踏まえて上の表を見ると、見落とされがちな事実が2つ浮かびます。

  • 60月すべてが第3号(校長)なら 59,550円 × 60月 = 約357万円。60月すべてが第5号なら 43,350円 × 60月 = 約260万円。差は約97万円です。基本額の差(数百万円)に比べると、調整額の差は思ったほど大きくありません。
  • この区分表では、3級(教頭)と「2級で大卒経験36年超の教諭」は同じ第5号です。つまりこの自治体では、教頭を経験しても調整額の単価は、長く勤めた教諭と変わりません。教頭で増えるのは主に基本額のほうだ、ということになります。

もうひとつ、教諭の方にも関係する大事なルールがあります。勤続9年以下の自己都合退職では調整額は支給されず、勤続10年以上24年以下の自己都合退職では調整額が半額になります。若いうちに辞める場合、調整額はあまりあてにできない、と考えておくのが安全です。

「校長の退職金の相場」を、いちばん誠実に見積もる

相場という言い方はできませんが、公表されている数字だけを使って粗く試算することはできます。校長の平均給料月額に定年退職の支給率47.709を掛け、調整額を上限(60月すべてが第3号)で足すと、次のとおりです。

  • 小学校の校長:446,800円 × 47.709 = 約2,132万円 + 調整額 約357万円 = 約2,489万円
  • 中学校の校長:444,800円 × 47.709 = 約2,122万円 + 調整額 約357万円 = 約2,479万円
  • 高等学校の校長:469,500円 × 47.709 = 約2,240万円 + 調整額 約357万円 = 約2,597万円

ただしこれは、全年齢の平均給料月額を退職時の給料月額として使った粗い計算です。実際の退職時の給料月額は平均より高くなるのが普通ですし、調整額の区分も自治体によって違います。「だいたいこのくらいの桁になる」以上のことは言えません。

ご自身の数字を出したい方は、この記事の勤続年数別 教員の退職金 手取り早見表と、冒頭の退職手当の計算式に、給与明細の給料月額を当てはめてみてください。校種や職位を問わず、計算の手順はまったく同じです。

「教頭になれば退職金が増えると言われて引き受けました。実際に計算してみたら、増えるのは確かです。ただ、あの数年で失った時間と釣り合っているかどうかは、いまも答えが出ていません」
——54歳・公立中学校教頭・男性

管理職にならない、という選択も同じくらい正当です

相談の場で、管理職試験を勧められて迷っている方のお話を伺うことがよくあります。退職金の差を計算して「やっぱり受けます」と決める方もいれば、「数百万円のために、あと10年これを続けるのは違う」と結論を出す方もいます。私はどちらの結論も、その方にとっては正解だと思っています。

ここまで数字を並べてきましたが、伝えたいのは「管理職になったほうが得です」ということではありません。数字を知らないまま、なんとなくの印象で人生の10年を決めてほしくないということです。

実際に計算してみると、「思ったより増える」と感じる方もいれば、「思ったほどではない」と感じる方もいます。教頭の勤務実態を考えたときに、その差額をどう評価するかは、人によって違って当然です。

辞める、続ける、管理職を目指す、目指さない。どれを選んでも否定されない状態で選べるように、まずは自分の数字を持っておく。それが、この章でいちばんお伝えしたかったことです。

教員の退職金はなくなるのか?|2026年時点の事実関係を整理

教員の退職金はなくなるのかを解説

「教員の退職金がなくなるらしい」——最近この言葉で検索して来られる方が急に増えています。結論から先にお伝えします。

2026年8月時点で、教員(地方公務員)の退職手当を廃止する制度改正は存在しません。「なくなる」という表現が独り歩きしていますが、実際に起きているのは廃止ではなく、①受け取るときの税金のルール変更、②定年引き上げにともなう計算方法の変更、③過去に行われた支給水準の引き下げ——この3つが混ざって伝わっている状態です。順に整理します。

①2026年1月から変わったのは「税金のルール」(iDeCoとの併給)

2026年1月1日以後に支給される退職金から、退職所得控除の調整ルールが変わりました。iDeCo(確定拠出年金)の一時金を先に受け取り、その後に退職手当を受け取る場合、これまでは5年空ければそれぞれに満額の退職所得控除が使えました。これが10年に延長されています(いわゆる「5年ルール→10年ルール」)。

教員でiDeCoを利用している方は少なくありません。「iDeCoを60歳で一時金として受け取り、その後に退職手当を受け取る」という順番を考えていた方は、手取りが変わる可能性があります。該当しそうな方は、受け取り方(一時金か年金か)と時期を、退職前に必ず試算し直してください。

②定年引き上げで「計算方法」が変わっている

定年が段階的に65歳へ引き上げられている途中のため、退職手当の計算も過渡期の扱いになっています。60歳以降は給料が7割水準になりますが、退職手当についてはその影響で不利にならないよう、60歳までの期間分と61歳以降の期間分を分けて計算する仕組みが設けられています。「給料が7割になるから退職金も3割減る」というのは誤解です。

③過去に支給水準が引き下げられた経緯がある

不安の源になっているのがここです。2012年の法改正以降、公務員の退職手当は段階的に引き下げられました。当時「退職金が数百万円減る」と大きく報じられたため、「また減るのでは」という記憶が残っています。ただし、これはすでに実施済みの過去の改定であり、いま新たに廃止が決まったという話ではありません。

「なくなる」と聞いたときに確認すべき4つのこと

  • 廃止の話なのか、支給水準の話なのか、税金の話なのかを切り分ける
  • iDeCoの一時金を受け取る予定があるか(ある人は10年ルールの影響を受ける可能性)
  • 自分の勤続年数だと、支給率が上がる節目まであと何年か
  • 情報源が「国の制度」なのか「自分の自治体の条例」なのか

※退職手当は各自治体の条例で定められています。最終的な金額と取り扱いは、必ず勤務先の人事担当部署にご確認ください。

私たちが伝えたいこと

制度の話が出るたびに「今のうちに辞めたほうがいいのでは」というご相談が増えます。ただ、制度改正を理由に急いで辞めて得をした方を、私たちはほとんど見ていません。支給率が上がる節目の直前で辞めてしまい、数十万円単位で損をしたケースのほうが圧倒的に多いのが実感です。

正確に知ったうえで、落ち着いて決める。「辞めるのが正解じゃない、選択肢を持つこと」という私たちの考え方は、こういう場面でこそ効いてきます。

「ニュースで「退職金が減る」と見て、慌てて年度途中で辞めようとしていました。調べたら私の場合はあと1年で支給率が上がるところで、危うく損をするところでした」
——52歳・公立中学校教諭・男性

常勤講師・臨時的任用教員の退職金はどうなる?

常勤講師・臨時的任用教員の退職金

正規採用の教諭ではなく、常勤講師(臨時的任用教員)や会計年度任用職員として働いている方からも、退職金についてのご相談をよくいただきます。ここは正規と扱いが違うため、分けて整理します。

常勤講師(臨時的任用)にも退職手当は出ることが多い

「講師だから退職金は出ない」と思い込んでいる方が多いのですが、常勤講師も、一定期間以上継続して勤務していれば退職手当の対象になるのが一般的です。ただし正規教諭と比べると、①勤続年数が短くなりがち、②任用が年度ごとに切れる、という理由で、金額は大きく下がります。

いちばんの論点は「任用が通算されるかどうか」

年度ごとに任用が切れる働き方でも、空白期間なく再任用されていれば勤続年数として通算される取り扱いをしている自治体があります。逆に、間に1日でも空白があると通算が切れる場合もあります。ここは自治体によって運用差が大きい部分なので、「自分の任用が通算されているか」を人事担当部署に確認するのがもっとも確実です。数年単位で金額が変わります。

会計年度任用職員(非常勤)の場合

会計年度任用職員は、勤務時間によって扱いが分かれます。フルタイムの会計年度任用職員は退職手当の対象になり得ますが、パートタイムは対象外となるのが一般的です。こちらも条例次第なので、自分がどちらの区分なのかを確認してください。

正規採用を目指すか、外に出るかの判断材料に

講師を続けながら採用試験を受け続けるか、それとも民間へ移るか——この判断で悩む方は多いです。退職手当が積み上がりにくい働き方である以上、「あと何年講師を続けるか」は経済的にも大きな決断になります。感覚ではなく、通算年数と見込み額を出したうえで考えてみてください。

共済組合の制度については、公立学校共済組合で使える制度5つ|医療・貸付・共済貯金と退職時の手続きで、現役中に使える給付と、退職後の任意継続・国保切替の判断をまとめています。

合わせて読みたい|Re-Careerの3大ガイド

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Re-Career代表 新川紗世
元教員が運営するキャリア支援

辞める・辞めないに関わらず、
教員キャリアの選択肢を広げよう

Re-Careerは元教員が立ち上げた、教員専門のキャリア支援サービスです。
まずは体験セミナーで、自分のキャリアについて考えるきっかけをつくりませんか?

教員の退職金「手取り」はいくら?|額面と手取りの違い

退職金の手取り計算

「退職金1,500万円」と聞いても、実際の手取りはそれより少ない金額です。手取り額の計算式と、教員の退職金の手取りシミュレーションを整理します。

「55歳で早期退職するか、定年まで残るかでずっと迷っていました。試算してみたら、早期退職の特別措置で『定年まで残るのと数百万しか変わらない』と分かって、自分の時間を選ぶ決断ができました」
——Yさん(50代・元公立中学校教員/55歳で退職)

退職金にかかる税金は2種類

退職金には「所得税」と「住民税」がかかります。ただし通常の給与所得と違って大幅な税優遇が用意されており、勤続年数が長いほど税負担は軽くなります。

退職所得控除の計算式

  • 勤続20年以下:40万円 × 勤続年数(最低80万円)
  • 勤続20年超:800万円 + 70万円 × (勤続年数 – 20年)

例:勤続30年なら 800万円 + 70万円 × 10年 = 1,500万円が控除される。

退職金の手取り計算式(勤続30年・退職金2,000万円のケース)

  1. 退職所得 = (2,000万円 – 1,500万円) ÷ 2 = 250万円
  2. 所得税 = 250万円 × 10% – 9.75万円 = 約15.25万円(復興特別税込で約15.6万円)
  3. 住民税 = 250万円 × 10% = 25万円
  4. 税金合計 = 約40.6万円
  5. 手取り = 2,000万円 – 40.6万円 = 約1,959万円

勤続30年であれば、退職金2,000万円のうち手取りは約1,959万円(97.9%)。税優遇により、ほぼ全額を受け取れる計算です。

勤続年数別|教員の退職金 手取り額シミュレーション

勤続年数別手取り

勤続年数別に、額面と手取りのリアルな目安を整理します。

「退職金を一括で受け取って投資した方が良いと思っていましたが、相談員さんに『分割受給で税金を抑える選択肢もある』と教えてもらって、結果的に手取りが100万円以上増えました」
——Iさん(50代・元高校教員/勤続32年)

💰 教員の退職金 手取り額シミュレーション(自己都合・公立中学校モデル)

  • 勤続10年:額面 約160〜230万円 / 控除400万円 / 手取り 約160〜230万円(全額非課税)
  • 勤続20年:額面 約790〜870万円 / 控除800万円 / 手取り 約790〜865万円
  • 勤続30年:額面 約1,530〜1,720万円 / 控除1,500万円 / 手取り 約1,530〜1,700万円
  • 勤続37年(定年):額面 約2,150〜2,370万円 / 控除1,990万円 / 手取り 約2,140〜2,340万円

※ 自治体・退職理由(自己都合/定年/病気等)・基本給で大きく変動。あくまで目安です。

50代早期退職の手取りは?

50代で早期退職する場合、自治体の早期退職募集制度を使えると、退職理由が「応募認定退職」となって定年退職と同じ支給率が適用されたり、給料月額に割増が加算されたりすることがあります。ただし割増の有無も割増率も自治体ごとの条例次第で、全国共通の数字はありません。募集要項は毎年度出ますので、該当しそうな方は所属自治体の教育委員会の募集要項を必ず確認してください。本記事では裏づけの取れる数字だけを扱うため、割増額の目安は掲載していません。

「手取り」をさらに増やす方法

  • 退職金を「一時金」と「年金」に分割受け取り:税優遇を2回使える
  • 受け取り方(一時金/年金)を先に決めてから退職日を決める:受け取り順によって退職所得控除の扱いが変わります
  • 勤続20年・30年の節目で退職を検討:控除額が増えるタイミング

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教員の退職金についてよくある質問

Q1. 小学校教員と中学校教員では、退職金に差がありますか?

退職手当の制度そのものは同じで、「退職日の給料月額 × 支給率 + 調整額」で計算します。差が出るのは給料月額のほうです。文部科学省「学校教員統計調査(令和4年度)」による公立学校の教諭の平均給料月額は、小学校307,600円・中学校320,900円・高等学校346,700円。小学校と高校の差(約3.9万円)に定年退職の支給率47.709を掛けると、約187万円に相当します。ただし平均給料月額は全年齢の平均で、年齢構成や男女比の違いも含まれた数字です。ご自身の給与明細の「給料」欄の額で計算してください。

Q2. 教頭や校長になると、退職金はどのくらい増えますか?

増え方には2つの経路があります。ひとつは基本額(上位の級になるため給料月額が上がる)、もうひとつは調整額(職務の級ごとの調整月額が上がる)です。公立学校の平均給料月額で比べると、校長と教諭の差は小学校で約13.9万円。定年退職の支給率47.709を掛けると約664万円に相当します。一方、調整額の差は上限まで積んでも約97万円で、思われているほど大きくありません。なお平均給料月額の差には「校長は年齢が高い」という要素も含まれるため、純粋な昇任効果だけの数字ではありません。

Q3. 校長の退職金の相場はいくらですか?

退職手当は各自治体の条例で決まるため、全国一律の相場はありません。公表されている数字だけで粗く試算すると、校長の平均給料月額に定年退職の支給率47.709を掛け、調整額を上限で足した場合、小学校で約2,489万円、中学校で約2,479万円、高等学校で約2,597万円になります。ただしこれは全年齢の平均給料月額を退職時の額として使った計算なので、「だいたいこの桁になる」以上のことは言えません。

Q4. 勤続10年で自己都合退職すると、退職金はいくらですか?

自己都合退職の支給率は勤続10年で5.022です。給料月額が32万円なら基本額は約161万円。これに調整額が加わりますが、勤続10年以上24年以下の自己都合退職では調整額は半額になるため、合計で約160万〜230万円が目安になります。「10年勤めたのだから数百万円はあるはず」と思っていた、という声をよくいただく水準です。なお勤続9年以下の自己都合退職には、調整額は支給されません。

Q5. 自己都合退職と定年退職では、退職金はどのくらい違いますか?

同じ勤続年数でも支給率が違います。勤続20年なら自己都合19.6695に対して定年24.586875で、給料月額40万円なら約787万円と約983万円、差は約197万円。勤続35年なら自己都合39.7575に対して定年47.709で、給料月額45万円なら差は約358万円です。差は確かに大きいのですが、その年数を働き続けることで得られるものと失うものを合わせて考えていただきたいと思っています。

Q6. 常勤講師だった期間は、勤続年数に通算されますか?

自治体によって運用差が大きい部分です。空白期間なく再任用されていれば勤続年数として通算される取り扱いをしている自治体がある一方、間に1日でも空白があると通算が切れる場合もあります。数年単位で金額が変わるところなので、「自分の任用が通算されているか」を人事担当部署に確認するのがもっとも確実です。