教員の退職金はいくらもらえる?|勤続年数別のシミュレーションと注意点
この記事の著者
新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役
元公立中学校英語教員(10年以上)。教員時代に病休を経験し退職。その後、教員専門のキャリア支援会社を設立。著書『「やめたいかも」と一度でも思ったら読む 教員の転職思考法』。スタッフ全員が元教員のプロフェッショナル集団として、延べ1000名以上のキャリア支援に携わる。
教員の退職金はいくらもらえる?|勤続年数別のシミュレーションと注意点
「教員を辞めたいけれど、退職金はいくらもらえるんだろう?」
転職を考え始めた教員の方にとって、退職金は非常に大きな関心事です。何年働けばいくらもらえるのか、自己都合退職だとどれくらい減るのか、税金はどうなるのか――。気になることは山ほどあるのに、職場では聞きにくい話題でもあります。
この記事では、公立教員の退職金制度の仕組みから、勤続年数別の具体的なシミュレーション、自己都合退職と定年退職の違い、私立教員の事情、税金の注意点、そして退職金を最大化するタイミングまで、転職を検討する教員が知っておくべき情報を網羅的にまとめました。
※本記事に掲載している金額はあくまで概算です。退職金の正確な額は自治体・学校法人・個人の給与等級によって異なります。具体的な金額は、所属先の事務担当者に確認されることをおすすめします。
公立教員の退職金制度の基本
まず、公立学校の教員に支給される退職金(正式には「退職手当」)の仕組みを理解しておきましょう。公立教員は地方公務員ですので、退職手当は各自治体の条例に基づいて支給されます。基本的な計算構造は国家公務員の制度に準じており、全国でほぼ共通しています。
退職手当の計算式
公立教員の退職手当は、以下の計算式で算出されます。
退職手当 = 基本額(退職日の給料月額 × 退職理由別・勤続年数別支給率)+ 調整額
この計算式には、大きく分けて3つの要素があります。
(1)退職日の給料月額
退職する日に適用されている「給料月額」が基準となります。ここでいう給料月額とは、各種手当を含まない基本給のことです。教職調整額(4%)は含まれますが、扶養手当や住居手当などは含まれません。
一般的な公立小中学校の教員の場合、経験年数や職務の級によって異なりますが、おおよそ以下のような水準です。
- 勤続5年目(20代後半):約24万〜28万円
- 勤続10年目(30代前半):約30万〜34万円
- 勤続15年目(30代後半):約34万〜38万円
- 勤続20年目(40代前半):約38万〜42万円
- 勤続30年目(50代前半):約42万〜45万円
- 定年退職時(60歳前後):約43万〜47万円
(2)退職理由別・勤続年数別支給率
退職手当の額を大きく左右するのが「支給率」です。この支給率は、退職理由(自己都合・定年・勧奨など)と勤続年数によって決まります。
自己都合退職の場合、定年退職と比べて支給率が大幅に低くなります。特に勤続年数が短い場合、その差は顕著です。
例えば、勤続20年の場合の支給率の目安は以下のとおりです。
- 自己都合退職:約19.6695
- 定年退職:約25.55635
このように、同じ勤続年数でも退職理由によって支給率に大きな差があります。自己都合退職を検討している方は、この点を十分に理解しておく必要があります。
(3)調整額
調整額は、退職前の職務の級(いわゆる「役職段階」)に応じて加算される金額です。在職期間中の各月について、職員の区分に応じた「調整月額」が定められており、その中から金額の高い順に60月分が加算されます。
一般教諭であれば調整月額は比較的低い区分に該当しますが、教頭や校長を経験している場合は、この調整額が退職手当全体を数十万円〜百万円以上押し上げることもあります。

【勤続年数別】教員の退職金シミュレーション(自己都合退職の場合)
ここからは、多くの方が最も知りたい「自己都合退職した場合、いくらもらえるのか」を勤続年数別にシミュレーションしていきます。
※以下はあくまで概算です。実際の金額は自治体の条例、個人の給料月額、職務の級などによって異なります。一つの目安としてご参照ください。
勤続5年で退職した場合(20代後半)
- 想定給料月額:約25万円
- 自己都合退職の支給率:約4.155
- 概算退職金:約100万〜150万円
勤続5年の段階では、支給率がまだ低いため、退職金はそれほど大きな額にはなりません。20代のうちに転職を決断する場合、退職金よりも「若さ」というキャリア資産のほうが大きいとも言えます。
勤続10年で退職した場合(30代前半)
- 想定給料月額:約32万円
- 自己都合退職の支給率:約8.3350
- 概算退職金:約300万〜500万円
30代前半での転職を検討する教員は多いですが、退職金は300万〜500万円程度が目安です。大きな金額に見えますが、転職後の収入や将来のキャリアプランと合わせて判断することが重要です。
「「退職金が300万円くらいだと聞いて、正直もっともらえると思っていました。でも、30代で転職して年収が上がったので、長い目で見れば正解だったと感じています」」
——Re-Career利用者・30代元中学校教員
勤続15年で退職した場合(30代後半〜40代前半)
- 想定給料月額:約36万円
- 自己都合退職の支給率:約14.7975
- 概算退職金:約700万〜900万円
勤続15年になると、退職金は700万〜900万円程度と、まとまった金額になってきます。一方で、年齢的にも転職市場での評価が変わり始める時期です。退職金の額と転職の可能性を天秤にかけて悩む方が多いゾーンでもあります。
勤続20年で退職した場合(40代前半〜半ば)
- 想定給料月額:約40万円
- 自己都合退職の支給率:約19.6695
- 概算退職金:約1,000万〜1,300万円
勤続20年を超えると、退職金は1,000万円を超えてきます。これは住宅ローンの繰り上げ返済や、転職期間中の生活資金として大きな安心材料になります。
「「20年勤めて退職金が約1,100万円。思い切って辞める決断ができたのは、この金額があったからです。転職活動中の半年間、経済的に焦らずに済みました」」
——Re-Career利用者・40代元高校教員
勤続30年で退職した場合(50代前半)
- 想定給料月額:約44万円
- 自己都合退職の支給率:約34.7360
- 概算退職金:約1,800万〜2,200万円
勤続30年ともなると退職金は2,000万円前後となりますが、自己都合退職のため定年退職よりは低くなります。50代での転職は選択肢が限られる面もあるため、退職金だけでなく再就職先の見通しも含めた慎重な判断が求められます。
定年退職の場合(勤続38年前後)
- 想定給料月額:約45万円
- 定年退職の支給率:約47.709
- 概算退職金:約2,200万〜2,500万円(調整額含む)
定年まで勤め上げた場合、退職金は2,200万〜2,500万円程度が一般的な水準です。これは民間企業の平均と比較しても高い水準にあります。
重要:上記の金額はあくまで一般的な概算値です。都道府県・市区町村によって給料表や支給率が異なるため、正確な金額を知りたい場合は所属先の人事・総務課に問い合わせてください。
自己都合退職と定年退職の退職金の違い
教員の退職金を考える上で、最も理解しておくべきポイントが「退職理由による支給率の違い」です。

同じ勤続年数であっても、自己都合退職と定年退職では支給率に大きな差があります。以下に、主な勤続年数における支給率の違いをまとめます。
- 勤続10年:自己都合 約8.33 / 定年 約10.04 → 差は約1.7倍ではないが、金額にして数十万円の差
- 勤続20年:自己都合 約19.67 / 定年 約25.56 → 金額にして約200万〜300万円の差
- 勤続25年:自己都合 約28.03 / 定年 約33.27 → 金額にして約200万〜350万円の差
- 勤続30年:自己都合 約34.74 / 定年 約40.80 → 金額にして約250万〜400万円の差
- 勤続35年:自己都合 約39.76 / 定年 約47.71 → 金額にして約350万〜500万円の差
この差を見ると、自己都合退職は定年退職と比べて数百万円単位で少なくなることが分かります。しかし、だからといって「定年まで我慢して働き続けるべき」とは限りません。
転職によって得られる収入アップ分や、精神的な健康、残りのキャリアで得られる経験を金額換算すると、自己都合退職の減額分を上回るケースも少なくありません。
また、自己都合退職であっても「勧奨退職」扱いになる場合(早期退職募集制度の利用など)は、定年退職に近い支給率が適用されることがあります。お住まいの自治体に早期退職募集制度があるかどうか、確認してみる価値はあるでしょう。
私立教員の退職金事情
ここまでは公立教員の退職金について説明してきましたが、私立学校に勤務する教員の退職金事情は大きく異なります。
私立教員の退職金は学校法人次第
私立学校の教員は公務員ではなく、各学校法人の就業規則に基づいて退職金が支給されます。そのため、学校によって退職金の水準は大きく異なります。
- 大規模な学校法人:公立教員に準じた退職金制度を整備しているところもある
- 中小規模の学校法人:退職金制度はあるが、公立よりかなり低い水準の場合が多い
- 一部の学校法人:退職金制度そのものがない場合もある
私立学校退職金財団の活用
私立学校の多くは「私立学校退職金財団」に加入しています。この財団を通じて退職資金の積立・給付が行われますが、あくまで財団からの給付に上乗せして学校法人が独自に支給する部分との合計が実際の退職金となります。
私立教員の方は、自校の退職金規程を確認し、勤続年数に応じた支給額の目安を事前に把握しておくことが大切です。採用時の契約書や就業規則に記載されていることが多いので、一度確認してみてください。
退職金にかかる税金の注意点
教員の退職金は全額が手取りになるわけではありません。税金について正しく理解しておかないと、想定より少ない手取り額に驚くことになりかねません。
退職所得控除の計算
退職金にかかる税金は「退職所得」として計算され、通常の給与所得とは分離して課税されます。退職所得には大きな控除があるため、税負担は比較的軽くなります。
退職所得控除額の計算方法は以下のとおりです。
- 勤続年数20年以下の場合:40万円 × 勤続年数(最低80万円)
- 勤続年数20年超の場合:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)
例えば、勤続15年の場合の退職所得控除額は「40万円 × 15年 = 600万円」です。退職金が700万円だった場合、退職所得は「(700万円 − 600万円)× 1/2 = 50万円」となり、この50万円に対して所得税・住民税が課されます。
例えば、勤続25年の場合の退職所得控除額は「800万円 + 70万円 ×(25年 − 20年)= 1,150万円」です。退職金が1,500万円だった場合、退職所得は「(1,500万円 − 1,150万円)× 1/2 = 175万円」に対して課税されます。
「退職所得の受給に関する申告書」を必ず提出
退職時に「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出すれば、退職所得控除が適用された上で源泉徴収が行われるため、原則として確定申告は不要です。
この申告書を提出しなかった場合、退職金全額に対して一律20.42%の所得税が源泉徴収されてしまいます。後から確定申告で取り戻すことは可能ですが、一時的に手取りが大幅に減ります。退職時には必ず申告書を提出しましょう。
住民税にも注意
退職金に対する住民税は、退職所得の金額に対して一律10%(市町村民税6%+都道府県民税4%)が課されます。退職金から特別徴収(天引き)されるのが一般的です。
また、退職した翌年の住民税にも注意が必要です。住民税は前年の所得に基づいて翌年に課税されるため、退職後に収入が減っていても前年分の住民税の支払いが発生します。転職までの期間が空く場合は、この住民税の支払いも資金計画に織り込んでおきましょう。
中途退職で退職金を最大化するタイミング
自己都合退職を決意した場合でも、退職のタイミングによって退職金の額が変わることがあります。少しの工夫で数十万円の差が生まれることもありますので、以下のポイントを押さえておきましょう。
年度末(3月31日)退職が基本
教員の退職は年度末が圧倒的に多く、学校運営の観点からも年度途中の退職は避けるのが一般的です。退職金の面でも、年度末退職のほうが有利になるケースがあります。
退職手当の計算における勤続年数は、原則として「年単位」で計算されます。例えば、4月1日に採用された教員が翌年の3月31日に退職すれば勤続1年ですが、3月1日に退職すると勤続1年に満たないため、支給率が下がる可能性があります。
勤続年数の区切りを意識する
退職手当の支給率は勤続年数が1年増えるごとに段階的に上がります。特に勤続年数が5年、10年、15年、20年、25年といった区切りのタイミングでは、支給率の上がり幅が大きくなる場合があります。
あと数か月で勤続年数が1年増えるという場合は、その区切りまで待ってから退職するほうが合理的です。数か月の違いで退職金が数十万円変わることもあります。
退職月の給料月額が高いタイミング
退職手当は「退職日の給料月額」を基に計算されるため、昇給後に退職するほうが退職金は高くなります。公立教員の定期昇給は通常1月1日に行われるため、12月に退職するよりも1月以降に退職するほうが有利です。
ただし、年度途中の退職は後任の手配などで学校に迷惑をかける可能性があるため、昇給のタイミングだけを理由に退職時期を決めるのは現実的ではありません。年度末退職を基本としつつ、できるだけ勤続年数の区切りと重なるように計画するのが理想的です。
「「退職を決めたのは2学期の終わり頃でしたが、あと3か月で勤続10年になるタイミングだったので、年度末まで頑張りました。結果的に退職金が50万円以上変わったので、待って正解でした」」
——Re-Career利用者・30代元小学校教員
退職金の額だけで人生を決めないでほしい
ここまで退職金の計算方法やシミュレーションを詳しく解説してきました。退職を考える際に、経済面の見通しを立てることは非常に大切です。
しかし、元教員として転職を経験し、現在Re-Careerで多くの教員の方のキャリア相談に携わる立場から、一つだけお伝えしたいことがあります。
退職金の額だけで、人生の大きな決断をしないでください。
「あと5年働けば退職金が数百万円増えるから」と、心身ともに限界を感じながら教壇に立ち続ける方を何人も見てきました。その5年で失うもの――健康、家族との時間、新しいキャリアへの挑戦機会――は、数百万円では買い戻せません。
もちろん、経済的な備えは重要です。退職金がいくらもらえるかを把握し、転職後の収入見通しと合わせて生活設計を立てることは、安心して次のステップに踏み出すための土台になります。
ただ、退職金はあくまで「過去の労働に対する対価」です。これからの人生で得られる収入、やりがい、成長、幸福感は、退職金の額とは別の次元にあります。
人生の時間は有限です。退職金の数字に縛られて、本当にやりたいことを先延ばしにしてしまわないよう、広い視野で判断していただけたらと思います。
Re-Careerでは、退職金や転職後の収入も含めた「お金の不安」に寄り添いながら、教員一人ひとりに合ったキャリアプランを一緒に考えています。退職金の見通しが立たないことが転職への一歩を踏み出せない理由になっているなら、ぜひ一度ご相談ください。
まとめ:教員の退職金を正しく理解して、後悔のない選択を
最後に、この記事のポイントを整理します。
- 公立教員の退職手当は「退職日の給料月額 × 支給率 + 調整額」で計算される
- 自己都合退職の退職金は、定年退職と比べて数百万円少なくなる
- 勤続5年で約100万〜150万円、勤続20年で約1,000万〜1,300万円が自己都合退職の目安
- 私立教員の退職金は学校法人によって大きく異なり、制度がない場合もある
- 退職金には退職所得控除があり、税負担は比較的軽い
- 退職のタイミング(年度末、勤続年数の区切り)で退職金が変わる
- 退職金の額だけでなく、人生全体を見据えた判断が大切
金額はあくまで概算であり、自治体や個人の条件によって異なります。正確な金額を知りたい場合は、所属先の事務担当者への確認をおすすめします。
退職金の見通しが立ったら、次は転職後のキャリアプランを具体的に描いていきましょう。Re-Careerでは、教員経験を活かせる転職先の提案から、履歴書・職務経歴書の作成サポート、面接対策まで、教員の転職に特化した支援を行っています。
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