教員は失業保険がもらえない?退職前に知るべき5つの受給制度と転職準備
この記事の著者
新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役
元公立中学校英語教員(10年以上)。教員時代に病休を経験し退職。その後、教員専門のキャリア支援会社を設立。著書『「やめたいかも」と一度でも思ったら読む 教員の転職思考法』。スタッフ全員が元教員のプロフェッショナル集団として、延べ1000名以上のキャリア支援に携わる。
教員は失業保険がもらえない?|退職後に受け取れるお金を完全解説

「教員って失業保険もらえないんですか?」
Re-Careerの無料相談でも、この質問はとても多く寄せられます。退職を考えているけれど、辞めた後の生活費が不安で一歩が踏み出せない。その気持ちは、元教員である私自身もよく分かります。
結論からお伝えすると、公立学校の教員は雇用保険の適用対象外のため、いわゆる「失業保険(失業手当)」は受給できません。ただし、それに代わる「失業者の退職手当」という制度があります。また、私立学校の教員であれば、一般企業の会社員と同じように失業保険を受け取ることができます。
この記事では、教員が退職後に受け取れるお金について、公立・私立それぞれのケースを網羅的に解説します。制度の仕組み、金額の目安、具体的な申請手続きまで、この記事を読めば退職後のお金の不安が大きく軽減されるはずです。
この記事は、教員からの転職支援を専門とするRe-Career株式会社の代表・新川紗世が、元教員の視点から執筆しています。Re-Careerのサポーターは全員が元教員です。
そもそも「失業保険」とは?基本の仕組みを理解しよう
まず、失業保険の基本的な仕組みを押さえておきましょう。
一般的に「失業保険」や「失業手当」と呼ばれているものは、正式には雇用保険制度の中の「基本手当」のことを指します。雇用保険に加入している労働者が失業した場合に、再就職するまでの生活を支えるために支給される給付金です。
失業保険(基本手当)の主な受給条件
- 雇用保険に加入していた期間が、離職日以前の2年間で通算12か月以上あること(会社都合の場合は6か月以上)
- 働く意思と能力があり、積極的に求職活動を行っていること
- ハローワークに求職の申し込みをしていること
この「雇用保険に加入していたかどうか」が、教員にとって大きなポイントになります。
公立教員が失業保険をもらえない理由
公務員は雇用保険の適用対象外
公立学校の教員は地方公務員です。そして、地方公務員は雇用保険法第6条により、雇用保険の適用対象から除外されています。
なぜ公務員が雇用保険の対象外なのか。その理由は、公務員は法律上の身分保障があり、民間企業の労働者と比べて「失業のリスクが極めて低い」とされているためです。分限免職などの例外を除けば、基本的に本人の意思に反して職を失うことはないという前提で制度が設計されています。
しかし現実には、心身の不調や職場環境への不満、キャリアチェンジの希望などから、自らの意思で退職する教員は少なくありません。文部科学省の調査によれば、精神疾患による休職者は毎年5,000人を超える水準で推移しています。
「失業保険がもらえない=何ももらえない」ではない
ここで重要なのは、公立教員が雇用保険に加入していないからといって、退職後に何の給付も受けられないわけではないということです。
公立教員には、失業保険に相当する「失業者の退職手当」という独自の制度が用意されています。次の章で詳しく解説します。
「退職を決意したとき、一番怖かったのはお金のことでした。失業保険がもらえないと知ったときは本当に焦りましたが、退職手当の制度を知って少し安心しました。」
——Re-Career利用者(元公立中学校教員・30代女性)
公立教員のための「失業者の退職手当」制度を徹底解説
「失業者の退職手当」とは
「失業者の退職手当」とは、雇用保険の適用を受けない公務員が退職した場合に、通常の退職手当に加えて支給される手当のことです。雇用保険の基本手当に相当する金額を受け取れる制度として、国家公務員退職手当法および各自治体の条例に基づいて運営されています。
具体的には、退職時に支給された退職手当の額が、雇用保険の基本手当の総額を下回る場合、その差額分が「失業者の退職手当」として追加支給されます。
受給できる条件
失業者の退職手当を受給するための主な条件は以下のとおりです。
- 勤続年数が12か月以上あること(公務員としての在職期間)
- 退職後、再就職の意思があり、求職活動を行っていること
- 退職手当の額が、雇用保険の基本手当相当額を下回っていること
- 退職の日の翌日から起算して1年以内に申請すること
金額の計算方法
失業者の退職手当の金額は、次のように計算されます。
まず、雇用保険の基本手当日額に相当する額を算出します。これは退職前6か月の給与総額を180で割った金額(賃金日額)をもとに、所定の給付率を掛けて計算します。
賃金日額の目安として、月給30万円の場合は約5,000円、月給35万円の場合は約5,800円、月給40万円の場合は約6,500円程度の基本手当日額となります(2025年度の給付率に基づく概算)。
この基本手当日額に所定給付日数を掛けた総額と、実際に受け取った退職手当の額を比較し、退職手当が下回っている場合にその差額が支給されます。
所定給付日数の目安
自己都合退職の場合の所定給付日数は以下のとおりです。
- 勤続1年以上10年未満:90日
- 勤続10年以上20年未満:120日
- 勤続20年以上:150日
なお、勤続年数が長い教員の場合、退職手当の額が基本手当相当額を上回ることが多いため、失業者の退職手当が支給されないケースもあります。特に差額が発生しやすいのは、比較的勤続年数が短い(おおむね10年未満の)教員です。
申請方法と必要書類
失業者の退職手当の申請は、ハローワークではなく、退職時の所属先(教育委員会や学校の事務局)を通じて行います。
必要な書類は自治体によって多少異なりますが、一般的には以下のものが求められます。
- 退職手当に関する証明書(退職時に所属先から交付)
- 国家公務員退職票または地方公務員退職票
- 離職票に相当する書類
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
- 求職活動を行っていることの証明
重要なポイントとして、この制度は自分から申請しなければ受給できません。退職時に自動的に案内されないケースもあるため、退職前に必ず人事担当者や教育委員会に確認しましょう。
注意点
- 退職の翌日から1年以内に手続きを開始する必要があります
- 再就職が決まった場合、支給は打ち切られます
- 自治体によって運用が異なる部分があるため、必ず退職前に所属先の教育委員会に詳細を確認してください
- 待機期間(7日間)の後、自己都合退職の場合は2か月の給付制限期間があります(2025年4月以降の制度改正により、従来の3か月から短縮)
私立教員は失業保険を受給できる

私立教員は雇用保険に加入している
私立学校の教員は、公務員ではなく民間の労働者として扱われます。そのため、一般企業の会社員と同様に雇用保険の加入対象です。学校法人が雇用保険に加入手続きを行っており、毎月の給与から雇用保険料が天引きされています。
つまり、私立教員は退職後に通常の失業保険(基本手当)を受給することができます。
受給条件
私立教員が失業保険を受給するための条件は、一般の労働者と同じです。
- 離職日以前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上あること
- 会社都合退職(解雇、雇い止めなど)の場合は、離職日以前の1年間に被保険者期間が通算6か月以上あること
- ハローワークに来所し、求職の申し込みを行うこと
- 働く意思と能力があること
基本手当日額の計算方法
基本手当日額は、退職前6か月間の賃金総額(ボーナスを除く)を180で割った「賃金日額」に、所定の給付率(45〜80%)を掛けて算出します。給付率は賃金日額が低いほど高くなる仕組みです。
私立教員の場合の目安を示します。
- 月給25万円の場合:基本手当日額 約4,800円 / 月額換算 約14.4万円
- 月給30万円の場合:基本手当日額 約5,500円 / 月額換算 約16.5万円
- 月給35万円の場合:基本手当日額 約6,000円 / 月額換算 約18.0万円
ただし、基本手当日額には上限があります。30歳以上45歳未満の場合、2025年度の上限額は日額7,845円(月額換算 約23.5万円)です。
受給期間
自己都合退職の場合の所定給付日数は以下のとおりです。
- 被保険者期間1年以上10年未満:90日
- 被保険者期間10年以上20年未満:120日
- 被保険者期間20年以上:150日
会社都合退職の場合は、年齢と被保険者期間に応じて90日から330日まで幅があります。
申請の流れ
私立教員が失業保険を申請する手順は以下のとおりです。
- 退職時に学校法人から「離職票」を受け取る(通常、退職後10日〜2週間程度で届きます)
- 住所地を管轄するハローワークに行き、求職の申し込みと離職票の提出を行う
- 7日間の待機期間を経た後、受給資格が決定される
- 自己都合退職の場合、さらに2か月の給付制限期間がある
- その後、4週間ごとにハローワークに出向いて失業認定を受け、基本手当が支給される
「私立の学校で5年間働いた後に退職しました。失業保険が受け取れることは知っていましたが、実際の手続きや金額がよく分からず不安でした。Re-Careerで具体的な金額の目安や手続きの流れを教えてもらえて、安心して退職に踏み切れました。」
——Re-Career利用者(元私立高校教員・20代男性)
退職金以外にもある!教員が退職後に受け取れるお金
失業保険や失業者の退職手当以外にも、教員が退職後に受け取れる可能性のあるお金があります。退職前にしっかり確認しておきましょう。
退職金
公立教員の退職金は、各自治体の条例に基づいて計算されます。自己都合退職の場合、勤続年数に応じた支給率が適用されます。
公立教員の退職金の目安(自己都合退職の場合)は以下のとおりです。
- 勤続5年:約60〜80万円
- 勤続10年:約200〜300万円
- 勤続15年:約450〜600万円
- 勤続20年:約800〜1,000万円
私立教員の退職金は学校法人ごとに制度が異なります。私学共済に加入している場合は、私学共済からの退職一時金も受け取れる場合があります。退職前に就業規則や退職金規程を確認しておくことが大切です。
傷病手当金
退職前に心身の不調で休職していた場合、健康保険の傷病手当金を受給できる可能性があります。
公立教員の場合、公立学校共済組合から傷病手当金が支給されます。支給額は標準報酬日額の3分の2で、支給期間は最長1年6か月です。退職日までに1年以上の共済組合の加入期間があり、退職時に傷病手当金を受給中(または受給要件を満たしている)であれば、退職後も引き続き受給できます。
私立教員の場合も、健康保険(私学共済または協会けんぽなど)から同様の傷病手当金が支給されます。
教員の場合、精神疾患による休職から退職に至るケースも少なくありません。傷病手当金は退職後の生活を支える重要な収入源になりえますので、必ず確認しましょう。
年金の切り替え
退職後すぐに再就職しない場合、年金制度の切り替えが必要です。
公立教員は共済年金(現在は厚生年金に一元化)から国民年金第1号被保険者への切り替え手続きを行います。退職日の翌日から14日以内に、市区町村の窓口で手続きが必要です。
国民年金の保険料は月額16,980円(2025年度)です。経済的に支払いが困難な場合は、免除制度や猶予制度を利用できます。退職直後は前年の収入で審査されるため、免除が認められにくい場合がありますが、失業による特例免除の制度もありますので、窓口で相談してみてください。
健康保険の選択肢
退職後の健康保険には主に3つの選択肢があります。
1つ目は任意継続です。退職前の健康保険(共済組合や私学共済)に最長2年間継続加入できる制度です。退職日の翌日から20日以内に手続きが必要です。保険料は全額自己負担(在職中は半分が事業主負担でしたが、退職後は全額本人負担)となりますが、扶養家族がいる場合は有利になることがあります。
2つ目は国民健康保険です。市区町村の窓口で加入手続きを行います。保険料は前年の所得に基づいて計算されます。退職直後は前年の収入が反映されるため、保険料が高額になるケースもあります。
3つ目は家族の扶養に入ることです。配偶者が会社員や公務員で健康保険に加入している場合、一定の条件を満たせば扶養に入ることができます。年収が130万円未満(60歳以上は180万円未満)であることが主な条件です。扶養に入れれば保険料の負担がなくなるため、最も経済的な選択肢です。
公立教員が退職後にやるべき手続きチェックリスト
退職後の手続きは多岐にわたります。漏れがないよう、チェックリストとしてまとめました。
退職日まで(在職中)にやること
- 退職手当の見込み額を人事担当者に確認する
- 失業者の退職手当の制度について教育委員会に問い合わせる
- 退職票(離職票に相当する書類)の交付手続きについて確認する
- 共済組合の資格喪失後の健康保険をどうするか検討する(任意継続 or 国民健康保険 or 扶養)
- 任意継続を希望する場合、退職日の翌日から20日以内に手続きが必要であることを把握する
- 退職金の支給時期を確認する(自治体により1〜3か月程度かかる場合あり)
- 傷病手当金の受給要件に該当するか確認する(休職中の場合)
- 住民税の支払い方法を確認する(退職後は普通徴収に切り替わる)
退職後14日以内にやること
- 国民年金への切り替え手続き(市区町村窓口)
- 国民健康保険への加入手続き(任意継続や扶養を選ばない場合)
- 任意継続の手続き(退職日翌日から20日以内)
退職後1か月以内にやること
- 失業者の退職手当の申請手続き(該当する場合)
- 確定申告が必要かどうか確認する(年の途中で退職した場合は必要になることが多い)
- 住民税の納付書が届いたら支払い方法を確認する
退職後の生活費シミュレーション
「実際に退職したら、どのくらいお金がかかるのか」。具体的にシミュレーションしてみましょう。
ここでは、30代前半・単身・月給30万円(手取り約24万円)の公立教員が自己都合退職した場合を想定します。
退職後にかかる主な月額費用
- 家賃:70,000円
- 食費:35,000円
- 水道光熱費:12,000円
- 通信費(スマホ・ネット):8,000円
- 国民健康保険料:約25,000円(前年所得ベース)
- 国民年金保険料:16,980円
- 住民税:約20,000円(前年所得ベース、月割り換算)
- 交通費・日用品・その他:20,000円
- 合計:約207,000円
3か月間の場合
必要な生活費は約62万円です。退職金が支給されるまでの期間や、失業者の退職手当の給付制限期間(自己都合退職の場合は2か月)を考えると、最低でもこの程度の貯蓄は必要です。自己都合退職の場合、退職手当の差額支給が始まるのは待機7日+給付制限2か月の後になるため、約2か月半は無収入になる可能性があります。
6か月間の場合
必要な生活費は約124万円です。転職活動が長引くケースも想定し、6か月分の生活費を確保しておくと安心です。給付制限期間後に失業者の退職手当の差額が支給される場合は、月額約16.5万円程度の収入が見込めるため、実質的な持ち出しは軽減されます。
1年間の場合
必要な生活費は約248万円です。キャリアチェンジに時間をかけたい場合や、資格取得のための勉強期間を設けたい場合は、1年分の生活費を見据えた計画が必要です。退職金と合わせて資金計画を立てましょう。
あくまで概算ですが、退職前に生活費のシミュレーションを行い、必要な貯蓄額を把握しておくことが大切です。漠然とした不安は、具体的な数字に置き換えることで対処可能な課題になります。
「正直、退職後のお金が一番の心配でした。でもRe-Careerのキャリア相談で生活費のシミュレーションを一緒にやってもらい、「このくらいの貯蓄があれば大丈夫」と具体的に分かったことで、ようやく前に進めました。」
——Re-Career利用者(元公立小学校教員・30代男性)
教員の退職とお金に関するよくある質問
Q. 公立教員が自己都合退職した場合、退職手当は減額されますか?
はい。自己都合退職の場合、定年退職や勧奨退職と比べて退職手当の支給率は低くなります。ただし、勤続年数に応じた退職手当は支給されますので、金額の見込みを事前に確認しておきましょう。
Q. 退職後すぐに転職した場合、失業者の退職手当はもらえますか?
退職後すぐに再就職した場合は、失業者の退職手当は支給されません。この制度はあくまで「失業している期間」に対する給付です。ただし、再就職までに空白期間がある場合は、その期間に応じて受給できる可能性があります。
Q. 非正規(臨時的任用教員・常勤講師)の場合はどうなりますか?
臨時的任用教員や常勤講師の場合、任用形態によって取り扱いが異なります。公立学校の場合でも、任期付き採用で雇用保険に加入しているケースがあります。自分が雇用保険に加入しているかどうか、給与明細で雇用保険料が天引きされているかを確認してください。
Q. 教員を辞めてフリーランスになる場合も失業手当はもらえますか?
フリーランスとして開業届を出すと、「失業状態」ではなくなるため、基本手当の受給資格を失います。ただし、開業準備期間中はまだ受給できるケースもあります。ハローワークや教育委員会に個別に相談することをおすすめします。
筆者・新川紗世からのメッセージ
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
私自身も教員を退職したときに、お金のことがとても不安でした。「失業保険がもらえない」という情報だけが先行して、頭の中が真っ白になったことを覚えています。
でも、一つひとつ制度を調べ、自分が受け取れるお金や手続きの全体像が見えてきたとき、不安は確実に小さくなりました。漠然とした恐怖は、情報を得ることで「対処できる課題」に変わります。
Re-Careerでは、キャリアの相談だけでなく、退職前後のお金や手続きについても一緒に考えるサポートを行っています。サポーターは全員が元教員ですから、「教員を辞めるときの不安」を本当の意味で理解しています。
一人で抱え込まず、まずは気軽に相談してみてください。あなたの「次のキャリア」を、私たちと一緒に考えていきましょう。
まとめ:教員の退職後のお金、知っておくべきポイント
この記事のポイントを整理します。
- 公立教員は雇用保険の適用対象外のため、一般的な失業保険(基本手当)は受給できない
- ただし、公立教員には「失業者の退職手当」という代替制度があり、退職手当と基本手当相当額の差額が支給される場合がある
- 私立教員は雇用保険に加入しているため、通常の失業保険を受給できる
- 退職金、傷病手当金、年金の切り替え、健康保険の選択など、退職後に関わるお金は失業保険だけではない
- 退職前に生活費のシミュレーションを行い、必要な貯蓄額を具体的に把握しておくことが重要
- 手続きには期限があるものが多いため、退職前からチェックリストを用意して計画的に進める
お金の不安は、正確な情報と具体的な計画があれば必ず軽減できます。この記事が、あなたの退職後の生活設計の一助になれば幸いです。