教員の非常勤講師×副業という新しい働き方|収入と自由を両立する方法
この記事の著者
新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役
元公立中学校英語教員(10年以上)。教員時代に病休を経験し退職。その後、教員専門のキャリア支援会社を設立。著書『「やめたいかも」と一度でも思ったら読む 教員の転職思考法』。スタッフ全員が元教員のプロフェッショナル集団として、延べ1000名以上のキャリア支援に携わる。
教員の非常勤講師×副業という新しい働き方|収入と自由を両立する方法
「教員の仕事は好き。でも、フルタイムの激務には限界を感じている」——そんな先生に知っていただきたい働き方があります。
それが、非常勤講師をしながら副業を行う「ハイブリッド型」の働き方です。
教壇に立つ喜びを手放さず、自分の時間も確保しながら、新しい収入源を育てていく。この記事では、非常勤講師×副業という選択肢の具体的な進め方を、収入シミュレーションや確定申告の知識まで含めて詳しく解説します。
ハイブリッド型の働き方とは
ハイブリッド型とは、非常勤講師として教壇に立ちながら、空いた時間で副業やフリーランスの仕事を行う働き方のことです。
常勤教員との違い
常勤教員は週5日フルタイム勤務で、校務分掌、部活動、保護者対応など多岐にわたる業務を担います。一方、非常勤講師は授業のコマ数のみの契約です。担任を持たず、部活動の義務もなく、校務分掌も最小限。つまり、授業以外の時間を自由に使えるのが最大の特徴です。
なぜ今、この働き方が注目されているのか
- 教員の長時間労働問題が社会的に認知され、柔軟な働き方への関心が高まっている
- リモートワーク可能な仕事が増え、副業の選択肢が広がっている
- 非常勤講師の需要は全国的に高く、人材不足で条件が改善傾向にある
- 「教壇に立ちたいが、フルタイムは辛い」という教員のニーズに合致している

非常勤講師の待遇|時給とリアルな収入
非常勤講師の待遇について、具体的な数字で把握しておきましょう。
時給の目安
非常勤講師の時給は自治体や学校種によって異なりますが、おおよその目安は以下のとおりです。
- 公立小中学校:時給2,500〜3,200円程度
- 公立高校:時給2,800〜3,500円程度
- 私立学校:時給3,000〜4,000円程度(学校により差が大きい)
- 大学・専門学校:1コマ(90分)8,000〜15,000円程度
ここでいう時給には、授業準備の時間は含まれていないことに注意が必要です。実質的な時給は、準備時間を含めると上記の60〜70%程度になると考えておきましょう。
複数校の掛け持ちパターン
非常勤講師は、複数の学校で勤務することが可能です。たとえば、A校で週8コマ、B校で週6コマといった掛け持ちで、効率的に収入を確保できます。
「非常勤講師の掛け持ちは、移動時間も考慮して計画を立てることが大切です。近隣の学校をうまく組み合わせることで、時間のロスを最小限に抑えられます」
——Re-Careerキャリア相談実績より
社会保険・福利厚生について
非常勤講師の注意点として、勤務時間が一定以下の場合、社会保険(健康保険・厚生年金)の対象外となることがあります。その場合は国民健康保険と国民年金に自分で加入する必要があります。
- 週20時間以上の勤務:社会保険加入の可能性あり(勤務先の規模による)
- 週20時間未満の勤務:国保・国民年金に自分で加入
非常勤講師と組み合わせられる副業
非常勤講師の空き時間を活用して、どのような副業ができるのでしょうか。教員経験を活かせる代表的な副業を紹介します。
副業1:Webライター・教育コンテンツ制作
教員としての専門知識を活かして、教育系メディアの記事執筆や教材コンテンツの制作を行う仕事です。
- 想定収入:月5〜15万円(稼働時間による)
- 必要スキル:文章力(教員なら基礎は十分)、SEOの基礎知識
- 始め方:クラウドソーシングサイトへの登録、教育系メディアへの直接応募
副業2:オンライン家庭教師・コーチング
オンラインで生徒に個別指導やコーチングを行う仕事です。教員免許と実績が信頼の証となり、高単価で受注しやすい分野です。
- 想定収入:月5〜20万円(生徒数による)
- 必要スキル:指導力(教員経験がそのまま活きる)、オンラインツールの操作
- 始め方:オンライン家庭教師プラットフォームへの登録、SNSでの集客
副業3:研修講師・セミナー講師
企業や団体向けの研修やセミナーで講師を務める仕事です。プレゼンテーション力と教える技術を持つ教員は、この分野で高い評価を受けます。
- 想定収入:1回3〜10万円(案件による)
- 必要スキル:専門知識、ファシリテーション力
- 始め方:講師派遣会社への登録、知人からの紹介
副業4:教育系SNS運用・情報発信
教員としての知識や経験をSNSやブログで発信し、広告収入やアフィリエイト収入を得る方法です。
- 想定収入:月0〜30万円(フォロワー数と運用歴による。最初の半年は収益ゼロ覚悟)
- 必要スキル:継続力、SNSマーケティングの基礎
- 始め方:InstagramやYouTubeでの教育コンテンツ発信

収入シミュレーション|3つのモデルケース
非常勤講師×副業の収入を、具体的なモデルケースで見てみましょう。
モデルケース1:安定重視型
- 非常勤講師:公立中学校で週16コマ(月収約22万円)
- 副業:Webライティング(月5万円)
- 月収合計:約27万円(年収約324万円)
社会保険は学校の非常勤講師として加入。副業の収入を少しずつ伸ばしていくスタイルです。
モデルケース2:バランス型
- 非常勤講師:私立高校で週12コマ(月収約20万円)
- 副業:オンライン家庭教師(月10万円)+ ライティング(月3万円)
- 月収合計:約33万円(年収約396万円)
教える仕事の比率を高く保ちつつ、複数の収入源を持つバランスの良いスタイルです。
モデルケース3:副業成長型
- 非常勤講師:公立高校で週8コマ(月収約12万円)
- 副業:研修講師(月8万円)+ オンラインコーチング(月10万円)+ コンテンツ制作(月5万円)
- 月収合計:約35万円(年収約420万円)
非常勤講師の比率を抑え、副業に時間を多く割くことで将来的な独立を見据えたスタイルです。
「ハイブリッド型の働き方で大切なのは、最初から完璧を目指さないことです。まずは非常勤講師で生活の基盤を作り、副業は小さく始めて徐々に育てていくのが現実的です」
——筆者(新川紗世)
確定申告の基礎知識
非常勤講師×副業の働き方をする場合、確定申告は避けて通れません。最低限知っておくべきポイントを整理します。
確定申告が必要なケース
- 副業の所得(収入から経費を引いた額)が年間20万円を超える場合
- 非常勤講師として2ヶ所以上の学校から給与を受けている場合
- 非常勤講師の給与以外に、フリーランス報酬がある場合
押さえておくべき基本事項
- 経費の記録:副業に関する経費(書籍代、通信費、PC関連費用など)は領収書を保管する
- 開業届の提出:副業を継続的に行う場合は、税務署に開業届を提出すると青色申告特別控除(最大65万円)が使える
- 帳簿の記録:会計ソフト(freee、マネーフォワードなど)を活用して日々の収支を記録する
- 確定申告の時期:毎年2月16日〜3月15日が申告期間
注意点
確定申告は複雑に感じるかもしれませんが、会計ソフトを使えば大部分は自動化できます。初年度は税理士に相談して基本的な仕組みを理解しておくと安心です。

筆者メッセージ
非常勤講師×副業という働き方に興味を持っている先生方へ。
「教壇に立ちたい気持ちはあるけれど、フルタイムの教員は辛い」——この気持ちは、わがままでも甘えでもありません。むしろ、自分の心と体を大切にしながら教育に関わり続けるための、とても合理的な選択肢です。
私たちRe-Careerに相談に来る方の中にも、このハイブリッド型を選んで、教員時代よりも生き生きと働いている方がたくさんいます。
大切なのは、一歩を踏み出すことです。まずは非常勤講師の求人を調べてみる、興味のある副業について情報収集してみる。その小さな一歩が、新しい人生の扉を開きます。
ハイブリッド型ワーカーの時間管理術
非常勤講師と副業を組み合わせる働き方では、「時間の主導権を自分で握る」ことが成功の鍵です。教員時代の「他人に時間を奪われる感覚」から抜け出すために、いくつかの時間管理の工夫を紹介します。
① 週単位でのタイムブロック
1週間のスケジュールを「非常勤の授業」「副業」「自分の時間」「家族の時間」の4ブロックに分けて、カレンダーに最初から色分けして入れておく方法です。空き時間を「ついでに何かする」ではなく、「自分で決めた目的」に使えるようになります。
② 「集中時間」と「ゆるめ時間」を分ける
副業の中でも、集中力が必要な作業(執筆・企画など)と、軽めの作業(メール返信・SNS発信など)を分けて配置します。朝の時間に重い作業、夜にゆるめの作業を入れると、無理なく進められます。
③ 「予定なし日」を週1日確保する
これが意外と大切です。「何も予定を入れない日」を週に1日作ることで、心身のメンテナンスができ、突発的な仕事にも柔軟に対応できます。
非常勤講師と組み合わせるおすすめ副業3つ
① オンライン家庭教師・個別指導
教員経験がそのまま活きる王道の副業です。時給は2,000〜5,000円と高単価で、夜の時間や週末に効率よく稼げます。プラットフォーム(マナリンクなど)に登録すれば、自分から営業しなくても生徒が集まります。
② 教育系Webライター
教員の専門性を活かして、教育・子育て系の記事を執筆する副業です。1記事5,000〜20,000円が相場で、在宅で完結できるのが魅力です。
③ 教材開発・添削
教育会社の教材作成や、添削指導の仕事です。長期契約になりやすく、安定収入を得られるのが特徴です。週末だけの稼働でも月3〜5万円の収入になります。
始める前に必要な5つの準備
① 副業ルールの確認
非常勤講師の身分(公立か私立か)によって、副業のルールが異なります。必ず勤務先の就業規則を確認してから始めてください。
② 開業届の提出
副業収入が安定してきたら、税務署に「個人事業の開業届」を提出しておくと、確定申告で青色申告が使えるようになります。最大65万円の控除が受けられるため、節税効果は大きいです。
③ 経費と収入を分けて記録
毎月の収入と経費を、専用の家計簿アプリ(freee、マネーフォワードなど)で管理しましょう。確定申告の時に慌てなくて済みます。
④ 健康保険・年金の見直し
非常勤講師でも社会保険に加入できる場合がありますが、勤務時間によって変わります。国民健康保険と社会保険のどちらが得かを計算して選びましょう。
⑤ 「やめどき」の基準を決める
体調を崩したり、副業の収入が不安定だったりした場合の「撤退ライン」を最初に決めておきます。「3ヶ月連続で月5万円を下回ったら見直す」など、数字で決めておくと判断がブレません。
ハイブリッド成功事例3つ
「公立小学校を退職して、非常勤講師+オンライン家庭教師で月25万円稼いでいます。教員時代より収入は少し下がりましたが、自由時間が3倍になりました。子育てとの両立がしやすくなったのが何より大きいです。」
——元小学校教員(30代女性)
「私立高校の非常勤として週3日教えながら、Webライターとして月10〜15万円を稼いでいます。トータル収入は教員時代と同等ですが、満員電車での通勤が減り、ストレスは激減しました。」
——元高校教員(40代男性)
「中学校の非常勤+教材開発の副業で生計を立てています。最初は不安でしたが、3年経った今は教員時代より月収が上がっています。何より『自分で仕事を選べる』感覚が嬉しいです。」
——元中学校教員(30代男性)
よくある質問(Q&A)
Q1. 副業がバレることはありますか?
住民税の通知でバレるケースが代表的です。確定申告時に「住民税を自分で納付」を選択すれば、勤務先には通知が行きません。ただし公立教員は副業自体が原則禁止なので、ルールを必ず確認してください。
Q2. 非常勤講師の収入だけでは生活が厳しいのですが…
非常勤講師の収入は、地域・科目・担当コマ数によって異なりますが、単独で生計を立てるのは多くの場合厳しいです。だからこそ、副業との組み合わせ(ハイブリッド型)が現実的な選択肢になります。
Q3. 確定申告は難しくないですか?
会計ソフト(freee、マネーフォワードなど)を使えば、初心者でも問題なく申告できます。月1,000〜2,000円程度のソフト代で済むので、自分でやるのが一番おすすめです。
Q4. 何歳までこの働き方を続けられますか?
非常勤講師と副業の組み合わせは、60代・70代でも続けている方がいます。年齢に縛られない働き方なので、長く続けやすいのが大きな魅力です。
ハイブリッド型ワーカーの落とし穴と対処法
非常勤×副業の働き方は自由度が高い反面、いくつかの落とし穴があります。事前に知っておけば回避できるものばかりです。
落とし穴1:収入の不安定さに耐えられない
正規教員時代の「毎月決まった額が振り込まれる安心感」を手放すのは、想像以上に心理的ハードルが高いものです。3ヶ月分の生活費を貯金として確保してから始めることで、不安を大きく減らせます。
落とし穴2:オンとオフの境界が曖昧になる
在宅で副業をしていると、「いつでも仕事ができる」が「いつまでも仕事から離れられない」に変わってしまうことがあります。明確な「終業時刻」を自分で決めておくことが必須です。
落とし穴3:社会的なつながりが減る
正規教員時代は、職員室で自然と人と話す機会がありましたが、ハイブリッド型になると「誰とも話さない日」が出てきます。意識的に人と会う予定を週に2〜3回入れるなど、工夫が必要です。
落とし穴4:自己投資を怠る
収入が不安定な分、「お金がない=自己投資できない」と考えてしまう方がいます。しかし、本やセミナーへの投資は将来の収入につながる種まきです。月の収入の5〜10%を学びに使う習慣を持ちましょう。
3年後の自分をデザインする
非常勤×副業の生活を始めるなら、漠然と「自由になりたい」だけでなく、「3年後にどんな自分になっていたいか」を具体的に描くことが大切です。
収入の3年後
1年目は試行錯誤の時期、2年目で安定の兆し、3年目で軌道に乗る――このペースが現実的です。「3年目に月収20〜30万円」を最初の目標に置くと、無理のない計画が立てられます。
スキルの3年後
「3年後にどんなスキルを持つ自分でありたいか」を考えます。新しいスキルを1つ身につけることを毎年の目標にすると、3年後には大きく変わった自分に出会えます。
働き方の3年後
3年後、ハイブリッド型のままがいいのか、独立に舵を切るのか、再就職を選ぶのか――選択肢を狭めずに、その時の自分が選べる状態を作ることが大切です。
「非常勤と副業のハイブリッドを始めて3年が経ちました。最初は不安でしたが、今では自分の人生を自分でデザインしている実感があります。教員時代には味わえなかった『自由と責任』の両方を、心から楽しんでいます。」
——元中学校教員(40代女性)
ハイブリッド型で成功する人の3つの共通点
Re-Careerの相談者の中で、非常勤×副業のハイブリッド型で成功している方々には、共通する特徴があります。これからこの働き方を目指す方に参考にしてほしいポイントです。
① 「完璧主義」を手放している:すべてを完璧にこなそうとせず、「7割できればOK」と割り切れる方が長続きします。教員時代の完璧主義を持ち込むと、自分を追い詰めてしまうのです。
② 小さく始めて、大きく育てる:最初から月20万円を目指すのではなく、まず月3万円を達成してから徐々に広げる――この段階的なアプローチができる方が、結果的に長く続けています。
③ 学び続ける姿勢を持っている:「非常勤だから安定」ではなく、常に新しいスキルや知識を学び続ける方が、チャンスを掴んでいます。変化を恐れず、楽しめる姿勢が何より大切です。
この3つを意識して日々の小さな選択を積み重ねれば、3年後には自分でも驚くような変化が訪れるはずです。
まとめ
- 非常勤講師×副業のハイブリッド型は、教壇に立ちながら時間と収入の自由を得られる働き方
- 非常勤講師の時給は2,500〜4,000円程度。複数校の掛け持ちで収入を調整できる
- 教員経験を活かせる副業には、ライター、オンライン教育、研修講師、SNS発信がある
- 収入シミュレーションでは、月27〜35万円程度が現実的なラインとなる
- 確定申告は必須。会計ソフトを活用し、初年度は税理士に相談するのがおすすめ