教員が辞める理由ランキングTOP10|元教員107名調査が示す真の原因と給特法改正への示唆
この記事の著者
新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役
元公立中学校英語教員(10年以上)。教員時代に病休を経験し退職。その後、教員専門のキャリア支援会社を設立。著書『「やめたいかも」と一度でも思ったら読む 教員の転職思考法』。スタッフ全員が元教員のプロフェッショナル集団として、延べ1,000名以上のキャリア支援に携わる。
「教員が辞める理由って、結局なんなんだろう?」
給特法改正、35人学級、部活動地域移行──教員の働き方改革が進む中で、それでも教員不足は止まりません。退職教員の本音はどこにあるのか、メディアで語られない「真の理由」は何か。
本記事では、Re-Career独自調査(全国30都道府県・元教員107名)と、キャリア支援1,000名以上の現場知見を組み合わせて、「教員が辞める理由ランキング2026年版」として整理しました。
結論からお伝えすると、教員が辞める理由TOP3は「仕事量」「長時間労働」「家庭との両立」。一般的に語られがちな「給与待遇」は14%にとどまります。退職判断の中心は「お金」ではなく「働き方の構造」にあるという事実が、データから明確に見えてきました。
⏱️ 30秒でわかる結論
教員が辞める理由TOP10(2026年最新):1位は「仕事量57%」、給与は14%。
1位仕事量 57%
2位長時間労働 54%
3位家庭との両立 45%
4位キャリア拡張 39%
5位仕事内容 37%
番外給与待遇は14%にとどまる
調査の概要|元教員107名のリアルから読み解く
本ランキングは、Re-Careerが2026年4〜5月に実施した独自調査「元教員キャリア実態調査2026」の結果に基づきます。
調査の基本情報
- 調査対象:教員を退職した経験を持つ方(公立・私立、常勤・非常勤を問わず)
- 調査方法:Googleフォームによる無記名アンケート
- 有効回答数:107名(全国30都道府県)
- 調査期間:2026年4月〜5月
- 属性:女性63名・男性40名、小学校49名・中学校36名・高校11名・特別支援3名
- 勤続年数:「11〜15年」が最多。中堅・ベテラン層中心
マクロな離職率データはあっても、「退職者本人の声」を体系的に整理したデータはほとんどないのが現状。この空白を埋めるために実施した調査の中から、退職理由(複数選択可)の集計結果を分析します。
教員が辞める理由ランキング TOP10(2026年最新版)
退職理由(複数選択可)の集計結果を、上位10位まで紹介します。
- 1位|仕事量:57%
- 2位|長時間労働:54%
- 3位|家庭との両立:45%
- 4位|キャリア拡張:39%
- 5位|仕事内容:37%
- 6位|体調:36%
- 7位|現場の空気感・閉塞感:23%
- 8位|人間関係:20%
- 9位|管理職への不安:19%
- 10位|制度・評価への不満:19%
このランキングを「働き方系(1〜3位)」「キャリア系(4〜6位)」「組織系(7〜10位)」の3グループに分けて、それぞれの構造を解説します。
【働き方系】TOP1-3|退職理由の「7割」が働き方
ランキング上位3つを占めるのは、いずれも「働く量と時間」に直結する要因。退職理由の約7割が「働き方」に集中している事実が、本調査の最大の発見です。
1位|仕事量 57%|「終わらない業務」
教員の業務は、本来の授業以外に校務分掌(生徒指導・進路指導・人権教育など多種多様)、行事運営、保護者対応、部活動指導、研修受講、書類作成と無数にあります。「いくらやっても終わらない」状態が日常化し、半数を超える57%の退職者が「仕事量」を退職理由に挙げています。
2位|長時間労働 54%|「平日朝7時〜夜9時」の日常
OECD調査では、日本の中学教員の週労働時間は56時間と参加国中最長。「平日朝7時出勤、夜9時退勤、土日も部活」が常態化する中、人間らしい生活を求めて退職する教員が多数。給特法のもとで残業代が発生しない構造も影響しています。
3位|家庭との両立 45%|特に女性教員に深刻
女性教員の58.7%が「両立困難」を退職理由に挙げています(クロス分析より)。育児・介護・自分の健康と教員業務の両立が物理的に不可能なケースが多発。「家族のために辞める」のではなく「家族と過ごす時間を取り戻すために辞める」のがリアル。
「土日のたびに部活で家にいない父親に、子どもが「パパは仕事の人」と言うようになった。これは違うと思って辞めた。」
——40代・元中学校教諭・男性(自由記述より要約)
【キャリア系】TOP4-6|「次の自分」を求めて辞める教員も多い
働き方の限界だけでなく、「他にやりたいことが見えた」という前向きな退職理由も上位を占めます。
4位|キャリア拡張 39%|前向きな退職
「教員以外のキャリアを試したい」「教育の別の角度に挑戦したい」「専門性を深めたい」──こうした前向きな退職理由が4位。本調査では退職後にフリーランス・民間・公務員行政職など多様な進路に進む人が多く、教員を辞めることが「次のキャリアの始まり」になっています。
5位|仕事内容 37%|「やりがいの変質」
授業だけでなく、書類作成・会議・保護者対応・部活など、「本来やりたかった教育」とは違う仕事が増えたという声。教員になった原点と現実のギャップが、退職判断に影響しています。
6位|体調 36%|健康を損なう前に動く
体調不良が退職理由の上位に来るのは、教員の労働強度の高さの証拠。実際、本調査では「教員時代に病気休職経験あり」が28%。退職者の3人に1人近くが病気休職を経験しています。
【組織系】TOP7-10|「組織の構造」が辞める背中を押す
個人の業務量・時間だけでなく、学校組織の構造に対する不満も約2割の退職者に共通。
7位|現場の空気感・閉塞感 23%
学校現場の「閉鎖性」「変化のなさ」に疲弊する声。新しい提案が通らない、前例踏襲が当たり前、自由な意見が言いにくい──こうした空気感が退職判断に。
8位|人間関係 20%
同僚との関係、管理職との関係、保護者との関係。特に「合わない人と毎日顔を合わせ続ける」のは教員特有のストレス。
9位|管理職への不安 19%
「管理職になりたくない」「管理職が機能していない」「管理職になっても解決しない」という声。教員のキャリアの天井としての管理職が魅力的でないという問題。
10位|制度・評価への不満 19%
評価制度の不透明さ、頑張りが報われない構造、年功序列的な昇給などへの不満。「成果と給与が連動しない」感覚が辞める背中を押します。
「管理職を見て「あの人みたいになりたい」と思える人がいなかった。それが致命的だったかもしれない。」
——40代・元小学校教諭・女性(自由記述より要約)
「給与待遇」は14%にとどまる|給特法改正への示唆
本調査で最も重要な発見の一つが、「給与待遇」を退職理由として挙げた人が14%にとどまった点です。
給与は退職判断の中心ではない
2024年成立の給特法改正で、教職調整額が4%→最大10%へ段階引き上げが決まりました。月給35万円のモデルでは、最終的に月21,000円・年35万円程度の増加が見込まれます。
処遇改善は教員の士気・生活の質を上げる重要な施策。でも、本調査が示すのは「給与改善だけでは退職は止まらない」という冷徹な現実です。
必要なのは「働き方の構造改革」
退職理由TOP3が「仕事量・長時間労働・家庭両立」である以上、業務量そのものの削減・長時間労働の構造的是正・柔軟な働き方が本質的な解決策。給与改善と並行して、この構造改革が進まない限り、教員不足は止まりません。
関連:給特法改正で教員の給料は本当に上がるのか|2026年スタートの段階引き上げと残業代の真実
男女別|退職理由には明確な男女差
退職理由を性別ごとに集計すると、明確な男女差が現れます。
女性教員の退職理由TOP4
- 長時間労働 68.3%
- 仕事量 63.5%
- 家庭との両立 58.7%
- 体調 46.0%
→ 「現状の働き方が続けられない」(防御的退職)のパターン
男性教員の退職理由TOP5
- 仕事量 45.0%
- キャリア拡張 45.0%
- 仕事内容 37.5%
- 長時間労働 32.5%
- 現場の空気感 30.0%
→ 「他にやりたいことが見えた」(攻撃的退職)の傾向が女性より強い
女性は「家庭・健康」が中心、男性は「キャリア・組織」が中心、という構造的な違いが見えます。
年代別|20代〜50代以上で違う退職理由の傾向
退職理由は年代によっても傾向が異なります。Re-Career独自調査のクロス分析から、年代別の特徴を整理します。
20代教員の退職理由|「ミスマッチ」と「キャリア拡張」
20代は「教員に向いていないかも」「他にやりたいことが見えた」という早期離職パターン。「仕事内容」「キャリア拡張」が上位に来ます。新卒1-3年での退職が多い傾向。
30代教員の退職理由|「両立」と「働き方の限界」
30代の退職理由TOP3は「家庭との両立」「長時間労働」「仕事量」。結婚・出産・育児のライフイベントと教員業務の両立困難が顕在化する世代。本調査の納得度(後悔していない率)も30代が89.4%と最高で、「決めるなら今」と動ける年代であることが見えます。
40代教員の退職理由|「健康」と「組織への不安」
40代は「体調」「現場の空気感」「制度・評価への不満」が増える年代。長年蓄積した疲労が体に出始める時期+管理職を見据えたキャリア再考のタイミングが重なります。
50代以上教員の退職理由|「定年前リタイア」と「次の人生」
50代以上は定年・任期満了が近い世代で、「キャリア拡張」「健康」「家族介護」などが退職理由に。早期退職して次のセカンドキャリアを始めるパターンが目立ちます。
「30代で辞めた人と50代で辞めた人、理由は違うけど、共通して言えるのは「自分の人生を取り戻したい」だった。」
——40代・キャリア支援者
校種別|小中高で違う退職理由
校種別に退職理由TOP5を見ると、義務教育段階(小・中)と高校で構造が異なることがわかります。
小学校教員|「学級担任の重さ」が中心
仕事量・長時間労働・家庭両立・体調・仕事内容がTOP5。「学級担任ほぼ100%」「保護者対応の濃さ」「行事ラッシュ」が背景。
中学校教員|「部活動の重さ」が加わる
小学校とほぼ同じ傾向に、「部活動指導」が長時間労働の主因として加わる。
高校教員|「キャリア拡張」がトップ
高校では「キャリア拡張」がTOP1。「次の挑戦」を求めて退職する傾向が、小中より明確。専門教科の高度化や社会的視点の広さが影響していると考えられる。
セルフチェック|あなたの退職理由はどのタイプ?
自分の退職理由がランキングのどこに該当するかを整理する、セルフチェックリストです。
✅ あなたの退職理由はどれ?(複数該当OK)
- 【働き方系】定時退勤できない/土日休めない/持ち帰り仕事が多い
- 【家庭系】子育てと両立できない/介護と両立できない/自分の健康時間がない
- 【キャリア系】他にやりたいことがある/教員以外の道を試したい/専門性を深めたい
- 【人間関係系】同僚・管理職と合わない/保護者対応が辛い/派閥に疲れる
- 【組織系】学校の文化に違和感/変わらない制度に絶望/評価が不透明
3つ以上当てはまる「系」が、あなたの主要な退職理由。それに合った選択肢を探すと後悔しにくいです。
タイプ別|あなたに合う選択肢
セルフチェックの結果から、自分に合う選択肢を見つけましょう。
働き方系タイプ|まず試すべき選択肢
- 休職(最大3年)で立て直し
- 配置転換(担任→専科・少人数指導)で負担減
- 時短勤務・部分休業の活用
- 異動希望(働き方の違う学校へ)
- → それでもダメなら教員以外の道へ
家庭系タイプ|時間を取り戻す選択肢
- 育休3年フル取得
- 時短勤務(子小学校入学前まで)
- 部分休業(子小学校3年生まで)
- 非常勤・パートへの切り替え
- → 家族と過ごす時間を最優先にした働き方へ
キャリア系タイプ|「次の自分」を探す選択肢
- 大学院進学・専門資格取得(学び直し)
- 教育業界(EdTech・教材・学習塾)への転身
- 民間企業(人材・コンサル・SaaS)への異業種転職
- 独立・起業・フリーランス
人間関係系・組織系タイプ|環境を変える選択肢
- 異動(別の学校へ)
- 校種転換(小→中/中→高)
- 私学・通信制・特別支援への転身
- 教育委員会・行政職への異動
- → それでもダメなら異業種転職
退職を考える教員へ|本調査が示すメッセージ
「自分はなぜ辞めたいのか」を整理するための、本調査からのメッセージ3つです。
① 「給与の問題」と「働き方の問題」を切り分ける
「給料が低いから辞めたい」と感じている人も、本当の理由は「給料に見合わない働き方」かもしれません。給特法改正で給与は上がりますが、働き方そのものが変わらなければ退職判断は変わらないことを、自分の中でも整理しておきましょう。
② 「あなたの理由」がランキングのどこか確認する
本ランキングTOP10のうち、自分に当てはまるのはどれですか?2-3つに絞れたら、自分の退職理由を「言語化」できたサイン。次は「その理由を解消できる選択肢」を探す段階に進めます。
③ 「自分だけじゃない」と知る
「辞めたい」と感じる自分が変ではなく、退職した107名が同じ理由で辞めているという事実は、心理的な救いになります。一人で抱え込まず、データに裏付けられた現実として受け止めてください。
「「自分が弱い」と思って苦しんでいたが、調査データを見て「みんな同じ理由で辞めてる」と気づいたら気持ちが軽くなった。」
——30代・元小学校教諭・女性(自由記述より要約)
退職した教員が後から振り返って「これが本当の理由だった」と気づく3つのパターン
Re-Careerに相談に来る元教員の多くが、退職後に「実は本当の退職理由はあれだった」と振り返ります。本人ですら退職時には気づいていなかった「真の理由」のパターンを3つ紹介します。
パターン①|「仕事量」と思っていたが、実は「自分らしさを失っていた」
表面的には仕事量がしんどくて辞めた人が、振り返ると「自分の人生の主導権を取り戻したかった」と気づくケース。仕事量=外的要因に見えて、実は内面的なアイデンティティの問題だった。
パターン②|「家庭との両立」と思っていたが、実は「自分のための時間がなかった」
家庭との両立を理由に退職した女性教員が、辞めて気づくのが「子どもや夫のためだけでなく、自分のために時間を使いたかった」こと。「家族のために」が「自分のために」を覆い隠していた。
パターン③|「キャリア拡張」と思っていたが、実は「今の組織から逃げたかった」
前向きな理由として「キャリア拡張」を挙げた人が、振り返ると「組織への不満」が本当の動機だったと気づくケース。前向きな理由で自分を納得させていた。
「辞めた直後は「仕事量がしんどかった」と言っていた。でも1年経って気づいたのは「自分の人生を生きたかった」だった。」
——38歳・元小学校教諭・女性(Re-Career相談より要約)
退職理由を整理した後の3つの選択肢
「自分の退職理由」を整理したら、次は「どんな選択肢があるか」のフェーズ。Re-Careerでは、退職検討中の教員に3つの選択肢を提示しています。
選択肢①|辞めずに環境を変える
休職・配置転換(担任→専科/少人数指導)・異動・働き方変更(時短・分掌軽減)など、「教員を辞めずに環境を変える」選択。退職理由が「現職場の問題」だけなら、これで解決する可能性も。
選択肢②|教員以外の道(教育業界に残る)
EdTech企業・学習塾・教材会社・大学・NPOなど、「教員は辞めるが教育には関わる」選択。教員時代のスキルを活かしながら、働き方を変えられる現実的な選択肢。
選択肢③|完全異業種への転職
人材・コンサル・SaaS・行政職など、「教育の世界を一度離れる」選択。本調査では退職者の約4割が教育業界外に転職しており、想像以上にハードルは低い。
関連:教員のキャリアプラン5つの選択肢|管理職・教委・民間・独立・学び直し
調査レポート全文&シリーズ記事
📊 元教員キャリア実態調査2026|シリーズ全9本
本記事はランキング特化版です。各テーマの詳細解説はシリーズ記事へ。
まとめ|「自分の退職理由」を言語化することから始めよう
教員が辞める理由TOP3は「仕事量」「長時間労働」「家庭との両立」。給与は14%にとどまり、退職判断の中心は「働き方の構造」にあるのがデータの示す事実です。
本記事のポイント:
- TOP3は働き方系(仕事量57%・長時間労働54%・家庭両立45%)
- キャリア系(4-6位)に「前向きな退職」も多数
- 給与待遇は14%にとどまり、給特法改正だけでは退職は止まらない
- 男女・校種で退職理由の構造が異なる
- 「自分の退職理由」を言語化することが、後悔しない選択の第一歩
退職を考える教員も、続けたい教員も、本ランキングが「自分の現在地」を確認する材料になればうれしいです。Re-Careerは、辞める/続ける/変えるのどの選択でも、データと当事者目線で伴走します。
