教員から起業する方法|元教員の起業事例とスモールビジネスの始め方
この記事の著者
新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役
元公立中学校英語教員(10年以上)。教員時代に感じた「このままでいいのか」という想いを原点に、教員専門のキャリア支援会社を設立。延べ500名以上の教員のキャリア相談に対応。
「教員を辞めて、自分でビジネスを始めたい」——そんな想いを持つ先生は少なくありません。教員として培った指導力・計画力・コミュニケーション力は、実はビジネスの世界でも大きな武器になります。
この記事では、教員から起業した実例やスモールビジネスの始め方、リスクを抑えた独立の方法をお伝えします。「辞めるか続けるか」の二択ではなく、副業から始める選択肢も含めて考えてみましょう。
教員のスキルがビジネスで活きる理由

教員は日々、30〜40人の生徒を相手にプレゼンテーションをし、保護者対応で交渉力を磨き、行事の企画運営でプロジェクトマネジメントを実践しています。これらは起業に直結するスキルです。
特に「分かりやすく伝える力」は、マーケティングやセールスにおいて非常に重要。教材を工夫してきた経験は、商品・サービスの設計力に直結します。
私自身も教員時代に培った「人の悩みに寄り添う力」が、キャリア支援会社の立ち上げに大きく役立ちました。「ビジネス経験がない」と思い込んでいる先生が多いですが、教員としての経験はビジネスの土台そのものです。
教員経験が活きる起業分野
教員のバックグラウンドが特に活きるのは以下の分野です。
- 教育系サービス:学習塾、オンライン家庭教師、教材開発、EdTechスタートアップ
- コンサルティング・コーチング:キャリアコーチ、学習コンサルタント、研修講師
- コンテンツビジネス:教育系YouTuber、ブログ運営、オンラインコース販売
- 地域密着型サービス:学童保育、放課後デイサービス、地域の学び場運営
元教員の起業事例3選

事例①:オンライン学習塾を開業したAさん
Aさん(30代・元中学校数学教員→オンライン塾経営)は、教員7年目で独立を決意。在職中に副業として週末にオンライン個別指導を始め、生徒が20名を超えた段階で退職しました。
「教員時代の授業準備のスキルがそのまま教材づくりに使えました。最初は週末だけの副業でしたが、口コミで生徒が増えて、気づけば本業より収入が上回っていたんです。」
——Aさん(30代・元数学教員→オンライン塾経営)
現在は講師を3名雇用し、月商は教員時代の給与の2倍以上。「教えることが好き」という原点を活かした起業の成功例です。
事例②:企業研修講師に転身したBさん
Bさん(40代・元高校国語教員→研修講師)は、「伝える力」を武器に企業向け研修講師として独立。プレゼンテーション研修やコミュニケーション研修を中心に、年間50社以上の研修を担当しています。
教員時代に磨いた「飽きさせない授業づくり」のノウハウは、企業研修の世界でも高く評価されています。
事例③:教育系コンテンツで起業したCさん
Cさん(30代・元小学校教員→教育系インフルエンサー)は、教員時代にSNSで授業のアイデアを発信。フォロワー5万人を超えた段階で独立し、現在はオンラインコースの販売と書籍執筆で生計を立てています。
リスクを抑えた起業の進め方

起業と聞くと「一か八かの賭け」というイメージを持つ方もいますが、リスクを最小限に抑えて始める方法はたくさんあります。
ステップ1:副業から小さく始める
いきなり退職するのではなく、まずは副業として始めましょう。公務員の副業規定には注意が必要ですが、以下は比較的始めやすい方法です。
- ブログ・SNS発信:情報発信は「副業」に該当しないケースが多い
- スキルの棚卸し:自分の強みを言語化し、サービスの形を考える
- モニター募集:退職後すぐに始められるよう、在職中にサービス設計を固める
ステップ2:退職前の資金準備
起業資金として最低6ヶ月分の生活費は確保しておきましょう。教員の退職金も活用できますが、全額を事業資金に充てるのはリスクが高いです。
また、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」など、低金利で借りられる制度もあります。事前に情報収集しておくと安心です。
ステップ3:開業届と最低限の法的手続き
個人事業主として始めるなら、開業届の提出が最初のステップ。税務署に届け出るだけで完了します。青色申告の届出も同時に行えば、最大65万円の控除が受けられます。
教員起業で陥りやすい落とし穴

私がキャリア支援をする中で、起業を目指す教員がつまずきやすいポイントがあります。
- 完璧を求めすぎる:教員は「準備を万全にしてから」と考えがちですが、ビジネスは「走りながら修正」が基本
- 価格設定が安すぎる:「お金をもらうのが申し訳ない」と感じて低価格にしがち。適正な対価を設定することが持続の鍵
- 一人で抱え込む:教員時代のクラス担任の癖で、すべて自分でやろうとする。外注やパートナーの活用が大切
- 集客の仕組みがない:良いサービスを作っても、お客さんに届かなければ意味がない。集客導線を最初に設計する
「完璧な準備なんてないんだと気づくまで、半年間動けませんでした。小さく始めて、お客さんの反応を見ながら改善していくことが大事だと実感しています。」
——Dさん(30代・元中学校理科教員→EdTech起業)
起業前に知っておきたい「お金」のリアル
起業後の収入は不安定になりがちです。教員時代のように毎月決まった額が振り込まれるわけではありません。私が支援してきた方の中でも、「最初の半年は収入ゼロだった」という方は珍しくありません。
だからこそ、事前の資金計画が重要です。具体的には以下を準備しましょう。
- 生活費6ヶ月分の貯蓄(最低でも150万円程度)
- 事業開始に必要な初期費用の見積もり
- 退職金の使い道の優先順位付け
- 配偶者がいる場合は家計の役割分担の話し合い
起業は夢のある選択ですが、お金の準備が不十分だと、焦りから良い判断ができなくなります。冷静にビジネスに向き合うためにも、金銭的な安全網を作ってから動き出すことをおすすめします。
教員が起業前にやっておくべき「3つの棚卸し」
私が起業相談を受けるときに必ずお願いしているのが、「3つの棚卸し」です。この作業をするだけで、自分のビジネスの方向性がグッと明確になります。
① スキルの棚卸し:教員時代に習得した知識・スキルをすべて書き出す。教科の専門知識だけでなく、PC操作、資料作成、時間管理、チーム運営なども含めて。
② 人脈の棚卸し:元同僚、保護者、教え子の保護者、研究会で知り合った先生など、連絡が取れる人をリストアップ。最初のお客様は既存の人脈から生まれることがほとんどです。
③ 興味関心の棚卸し:「お金にならなくてもやっていて楽しいこと」を書き出す。起業は長く続けてこそ成功するもの。情熱を持てる分野を選ぶことが、挫折しないための秘訣です。
「最初は「何で起業しよう」と悩んでいましたが、棚卸しをしたら「教員時代に独自に作っていた学習プリントの販売」という答えが自然と出てきました。今はダウンロード型の教材販売で月20万円の副収入を得ています。」
——Eさん(30代・元小学校教員→教材販売業)
まとめ
教員から起業する道は、決して特別なことではありません。教壇で培ったスキルは、ビジネスの世界でも十分に通用します。
大切なのは、「辞めるか辞めないか」ではなく、自分の可能性を広げる選択肢として起業を知っておくこと。副業から小さく始めて、手応えを感じてから本格的に動き出す——そんな堅実なアプローチが、教員出身の起業家には向いています。
一人で悩まず、まずは情報収集から始めてみませんか?
