教頭・校長の給料はどう変わる?|管理職手当と教職調整額、在校時間・役職定年まで【元教員監修】

教頭・校長の給料はどう変わる?管理職手当と教職調整額、在校時間・役職定年を元教員が解説

教頭や校長になると、給料はどう変わるのか。管理職手当がつく代わりに教職調整額は止まり、勤務時間の実態も、60歳以降の身分も切り替わります。ただし給料も手当も退職手当も自治体ごとの条例で決まるので、全国で共通する金額というものは存在しません。

この記事では「いくらもらえるか」ではなく「職位が変わると、何がどう切り替わるのか」を軸に整理しました。根拠は給特法・地方公務員法・地方自治法・学校教育法の条文と、文部科学省の全国調査だけです。出典のURLはすべて本文に置いてあります。

私自身は公立中学校で11年、私立高校で1年、英語の教員として勤めました。管理職にはなっていません。ただ、教頭先生がいちばん早く学校に来て、いちばん最後に鍵を閉めていく姿はずっと見てきました。なる/ならない、どちらも正当な選択です。この記事はどちらかを勧めるものではありません。

新川紗世 Re-Career代表

この記事の著者

新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役

公立中学校で11年、私立高校で1年、あわせて12年、英語教員として勤務。教員時代に病休を経験し退職。その後、教員専門のキャリア支援会社を設立。著書『「やめたいかも」と一度でも思ったら読む 教員の転職思考法』。スタッフ全員が元教員のキャリア支援会社を率い、自身も延べ1,000名以上のキャリア支援に携わる。

⏱️ 30秒でわかる結論

管理職になると変わるのは「金額」ではなく、お金の出方・時間の使われ方・60歳以降の身分の3つです。

教職調整額校長・副校長・教頭は支給対象外(給特法第3条第1項)。2026年1月に始まった段階引き上げも及びません

管理職手当地方自治法に手当の種類の定めはありますが、金額も支給方法も条例事項。全国共通の額はありません

在校等時間副校長・教頭は平日が全職種で最長(小11:45/中11:42)。ただし校長は教諭より短い

登用の年齢教頭は平均49.1歳・最多49歳。登用者の41.3%は50〜54歳。40代を過ぎたら終わりではありません

60歳以降管理監督職には勤務上限年齢による降任等の仕組みがある(地方公務員法第28条の2)。年齢も特例も条例

教頭・校長になると、何が変わるのか|先に結論

教頭・校長になると変わる3つのこと(お金・時間・60歳以降の身分)を示すイメージ

「そろそろ管理職選考を受けないか」と言われて困るのは、比較する材料が無いことだと思います。まず結論から置きます。

変わるのは、大きく3つ

変わるもの 何が起きるか 根拠
お金の出方 教職調整額が止まり、管理職手当に切り替わる 給特法第3条第1項/地方自治法第204条第2項
時間の使われ方 時間外勤務を命じられる場面を限定する規定の枠から外れる。実態としても副校長・教頭の在校等時間は全職種で最長 給特法第6条第1項/教員勤務実態調査
60歳以降の身分 管理監督職の勤務上限年齢に達すると、原則として管理監督職以外の職への降任・転任になる 地方公務員法第28条の2

なお給特法第2条第2項の「教育職員」の定義には、校長・副校長・教頭も含まれています。

この記事で「金額」を書かない理由

地方自治法第204条第2項は管理職手当を「条例で支給することができる」手当の一つとして挙げ、同条第3項は「給料、手当及び旅費の額並びにその支給方法は、条例でこれを定めなければならない」と書いています。

つまり管理職手当がいくらなのかも、どう支給されるのかも、自分の自治体の条例を見ないと決まりません。退職手当も同じ条文の中にあります。全国共通の数字は、制度の設計上そもそも存在しないのです。

「◯万円上がります」と書いてある記事を見たら

  • どの自治体の条例の話かが書いてあるか確認してください
  • 書いていなければ、どこか1つの自治体の数字か、出典の無い数字です

当サイトは裏が取れない数字を書きません。代わりに「自分の数字を出す手順」を次の章に置いています。

この記事の読み方

・打診を受けて迷っている方:第2章 → 第4章 → 第7章 → 第8章
・選考を受ける方:第5章 → 第6章/すでに教頭・校長でしんどい方:第4章 → 第9章
・退職金の金額:教員の退職金はいくら?勤続年数別の手取り早見表と50代早期退職の注意点/キャリア全体:教員のキャリアプラン完全ガイド|5つの選択肢×年代別戦略と後悔しない設計法

お金はどう変わるか|教職調整額が止まり、管理職手当に切り替わる

教職調整額と管理職手当の切り替わりを表すイメージ

管理職になると給料の「出どころ」が変わります。上がるか下がるかではなく、何という名前のお金が、どの根拠で出るかが入れ替わります。

給特法は「校長、副校長及び教頭」を除くと書いている

教職調整額の根拠は、公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)第3条第1項です。

教育職員(校長、副校長及び教頭並びに指導改善研修被認定者(略)を除く。以下この項及び次項において同じ。)には、その者の給料月額の百分の十(幼稚園の教育職員にあっては、百分の四)に相当する額を基準として、条例で定めるところにより、教職調整額を支給しなければならない。

第2条第2項の「教育職員」には校長・副校長・教頭も入っているのに、第3条第1項の括弧書きでわざわざ外しています。教頭になった時点で、教職調整額は止まります。

2026年1月に始まった段階引き上げも、管理職には及ばない

本則は「百分の十」ですが、すぐ10%になるわけではなく、附則第2項に読み替えの表が置かれています。

期間(各年1月1日〜12月31日) 教職調整額の率
令和8年(2026年) 百分の五(5%)
令和9年(2027年) 百分の六(6%)
令和10年(2028年) 百分の七(7%)
令和11年(2029年) 百分の八(8%)
令和12年(2030年) 百分の九(9%)
令和13年(2031年)1月1日以降 読み替えが終わり、本則の百分の十(10%)

※令和8年〜令和12年の行は給特法附則第2項(e-Gov)の読み替え表そのもの。令和13年以降の行は、読み替え表が令和12年で終わることから本則第3条第1項の「百分の十」に戻る、という帰結です。2026年9月時点の率は5%です。

大事なのは、この表が効くのは第3条第1項の「百分の十」という字句に対してだけだということ。第3条第1項はそもそも管理職を除いているので、引き上げは管理職には及びません。教職調整額そのものの仕組みは給特法改正で教員の給料は本当に上がるのか|2026年スタートの段階引き上げと残業代の真実で詳しく書いています。

代わりに出るのが管理職手当

根拠は地方自治法第204条第2項。扶養手当や時間外勤務手当などと並んで「管理職手当」が列挙されています。ただし条文が定めているのは「そういう名前の手当を条例で出せる」ということだけで、金額も支給の区分も、すべて各自治体の給与条例・規則の側にあります。同じ「中学校の教頭」でも、県が違えば額は違います。

もうひとつ、枠から外れるもの

意外と知られていないのが給特法第6条第1項です。時間外勤務を命じられる場合を「政令で定める基準に従い条例で定める場合に限る」と限定した、いわゆる超勤4項目の根拠にあたります。その括弧書きは「教育職員(管理職手当を受ける者及び指導改善研修被認定者を除く。以下この条において同じ。)」。管理職手当を受けている人は、この限定の枠の外に置かれています。第3条が職名で除いているのに対し、第6条は手当の有無で除いている点も、条文を読むとわかります。

結局、上がるのか下がるのか

全国共通の答えはありません。教職調整額(いまは5%)が消え、管理職手当が付き、級も号給も変わるので、結果は自治体と個人の事情で変わります。ただ自分の自治体の条例を見れば答えは出ます。

自分の自治体の「本当の数字」を出す手順

  • 「◯◯県 職員の給与に関する条例」で検索する(多くの自治体が例規集をWebで公開しています)
  • 管理職手当の条文(別に規則があることも)で職ごとの区分と額を確認する
  • 教育職給料表で、いまの級・号給と管理職の級を見比べ、教職調整額が消える分を引く
  • わからなければ教育委員会の給与担当に聞くのがいちばん早いです

手当の額は年度で改定されます。必ず「現在施行されている」条例を見てください。

退職金はどう変わるか|効くのは「最後の給料月額」と「勤続年数」

退職金の考え方を整理するイメージ

「教頭になったら退職金はいくら増えるのか」。この記事では金額を書きません。退職手当の額と支給方法も条例事項だからです(地方自治法第204条第3項)。

効くのは「最後の給料月額」と「勤続年数」、そして調整額

退職手当の基本になるのは、多くの自治体で退職する日の給料月額と勤続年数です。極端に言えば、校長を1年で退職しても10年務めても、退職日の給料月額が同じなら基本の額は同じになります。

「早く管理職にならないと退職金で損をする」と語られがちですが、基本額に効くのは「いつ、どの給料月額で辞めるか」のほうです。ただし退職手当には基本額とは別に調整額があり、在職した各月の職位(職員の区分)に応じた額を積み上げるので、管理職として在職した月数はここで効きます。国の制度(国家公務員退職手当法第6条の4)では高い順に60月(5年)分までを合計しますが、東京都のように退職前20年間の各月を点数で合計する自治体もあり、何年分まで効くかは条例で違います。詳しくは退職金の主記事にまとめています。なお管理職手当は「手当」であって「給料月額」ではありません。条例を読むときに迷いやすい区別です。

金額の話は、この記事ではなくこちらへ

勤続年数別の早見表、額面と手取りの違い、税金の計算、50代で早期退職した場合の注意点は、退職金の主記事にあります。

👉 教員の退職金はいくら?勤続年数別の手取り早見表と50代早期退職の注意点

年金のほうが気になる方は、教員の年金は月いくら?試算15〜17万円の内訳と、共済年金の一元化で変わったこともあわせてどうぞ。

時間はどう変わるか|副校長・教頭の在校等時間は全職種で最も長い

副校長・教頭の在校等時間が最も長いことを示す学校のイメージ

時間は全国調査の数字がそのまま使えます。文部科学省の「教員勤務実態調査(令和4年度)の集計(確定値)」(令和6年4月4日公表)の、10月・11月の集計結果です。

平日の在校等時間(令和4年度・1日当たり)

職種 小学校 中学校 高等学校(参考値)
校長 10:23 10:09 9:37
副校長・教頭 11:45 11:42 10:56
教諭 10:45 11:01 10:06
講師 10:18 10:27 9:53
養護教諭 9:53 9:53 9:19

土日の在校等時間(令和4年度・1日当たり)

職種 小学校 中学校 高等学校(参考値)
校長 0:49 1:07 1:37
副校長・教頭 0:59 1:16 1:18
教諭 0:36 2:18 2:14
講師 0:20 1:53 2:10
養護教諭 0:22 0:29 0:34

※出典:文部科学省「令和4年度教員勤務実態調査集計結果(確定値)概要」6ページ。高等学校は「参考値」。原典の注により「教諭」には主幹教諭・指導教諭が含まれ、時間は小数点以下を切り捨てています。

「在校等時間」は残業時間のことではない

在校等時間は残業時間ではありません。同じ調査の用語の定義(42ページ)によれば、在校している時間を基本に、校外での職務などを加え、勤務時間外の自己研鑽・業務外の時間と休憩時間を除いた時間のこと。所定の勤務時間も丸ごと含まれています。それでも同じ物差しで測った結果、副校長・教頭が全職種でいちばん長いという事実は動きません。

「担任を持たない=早く帰れる」ではない

管理職になると授業も担任も外れるので余裕ができると思われがちですが、小学校では副校長・教頭(11:45)が教諭(10:45)より1時間長い。一方で土日は向きが逆転し、中学校では教諭2:18に対して副校長・教頭は1:16です。管理職になると、土日は短くなり、平日が長くなる——中学校の数字はそう読めます。

校長と教頭は、別の仕事だと考えたほうがいい

この表でいちばん見落とされやすいのがここです。校長は、教諭より在校等時間が短い。小学校で校長10:23に対し教諭10:45、中学校で校長10:09に対し教諭11:01。差はわずかですが向きは明確です。

この調査で最も長いのは副校長・教頭であって、校長ではありません。いちばん時間的にきついのは、通過点である教頭のときという読み方になります(第5章のとおり、校長になった人の77%は教頭・副校長からの登用です)。管理職になるかを考えるときは「教頭の数年をどう乗り切るか」に置き換えたほうが判断しやすいかもしれません。

管理職も、業務量管理・健康確保措置の対象に含まれる

文部科学大臣が指針を定める第7条は2020年4月から、教育委員会がその指針に即して業務量管理・健康確保措置実施計画をつくり毎年度その実施状況を公表する第8条は、2025年の給特法改正(令和7年法律第68号)で新設されて2026年4月から施行されています。

ここでの「教育職員」には、第3条第1項や第6条第1項のような除外の括弧書きが付いていません。第2条第2項の定義がそのまま使われ、そこには校長・副校長・教頭が含まれています。管理職も、業務量を管理される側に入っているという建て付けです。

何歳で、どれくらいの人が教頭・校長になっているのか

教頭・校長の登用年齢と人数のデータを示すイメージ

「もう40代後半だから、声がかからなければ終わりだろうか」。よく聞く不安ですが、年齢分布を見ると多くは誤解だとわかります。

登用されたときの年齢(令和6年4月1日現在)

職 新たに登用された人数 登用時の平均年齢 最も多かった年齢
校長 5,382人 54.2歳 56歳
副校長 882人 51.0歳 50歳
教頭 6,117人 49.1歳 49歳
年齢 教頭に登用された人 校長に登用された人
30代 56人(0.9%) 0人(0.0%)
40〜44歳 720人(11.8%) 11人(0.2%)
45〜49歳 2,343人(38.3%) 283人(5.3%)
50〜54歳 2,526人(41.3%) 2,343人(43.5%)
55歳以上 472人(7.7%) 2,745人(51.0%)
合計 6,117人 5,382人

※出典:文部科学省「令和5年度公立学校教職員の人事行政状況調査」5-4 校長・副校長・教頭の年齢別登用状況の推移(全学校種計・令和6年4月1日現在。調査全体)。

教頭登用者の41.3%は、50〜54歳

教頭になった人で最も多い層は50〜54歳(41.3%)、次が45〜49歳(38.3%)。40代前半までは合わせても12.7%です。「40代のうちに声がかからなければ手遅れ」という事実はありません。30代で教頭になった人も令和6年に56人います。校長は55歳以上の登用が51.0%、最多年齢は56歳で、教頭(最多49歳)との間に7年ほどの間隔があります。

どこから教頭・校長になっているのか

登用直前の職 教頭になった人(6,117人) 校長になった人(5,382人)
教諭 2,678人 1人
主幹教諭 1,603人 —
指導教諭 102人 —
教育委員会事務局職員 1,667人 1,184人
教頭 — 3,497人
副校長 — 651人

※出典:文部科学省同調査 5-6 校長等登用者の直前の職(令和7年12月22日更新)。主な職のみ抜粋。

校長になった5,382人のうち、直前が教頭は3,497人、副校長は651人。合わせて77%です。目を引くのが教育委員会事務局職員で、教頭になった1,667人(27%)、校長になった1,184人(22%)が、直前は指導主事などとして教育委員会にいました。学校を出て行政に回る期間も、管理職への道の一部です。

いま、何人いるのか

職 人数(令和7年4月1日現在)
校長 31,027人
副校長 3,897人
教頭 31,656人
管理職総数 66,580人
主幹教諭 22,185人
指導教諭 2,870人

※出典:文部科学省「令和6年度公立学校教職員の人事行政状況調査」5-1 校長等人数(令和7年4月1日現在。調査全体)。

高等学校・中等教育学校は校長3,398人に対し教頭4,503人、特別支援学校は校長992人に対し教頭1,468人。教頭が複数いる学校があることが表れています。

女性の割合は、5年で確実に上がっている

校種 校長 (新たに登用された人) 教頭 (新たに登用された人)
小学校 28.3% 32.0% 32.8% 38.0%
中学校・義務教育学校 12.4% 15.5% 20.2% 22.4%
高等学校・中等教育学校 12.0% 16.6% 16.6% 21.3%
特別支援学校 32.8% 33.9% 38.2% 46.1%
合計 22.2% 26.0% 27.3% 31.5%

※出典:文部科学省「令和5年度公立学校教職員の人事行政状況調査」5-5 校長・副校長・教頭に占める女性の割合の推移(令和6年4月1日現在)。原典の注に「( )は新たに登用された者に占める女性の割合」とあります。

ポイントは、どの校種でも「新たに登用された人」のほうが在職者より高いことです。合計では在職の校長に占める女性が22.2%、新しく校長になった人では26.0%。令和2年4月1日時点では16.3%でした。校種差はまだ大きく、中学校の校長は12.4%、高校は12.0%、特別支援学校は32.8%です。

管理職選考は、自治体ごとにまったく違う

管理職選考の受験資格が自治体ごとに異なることを示すイメージ

「教頭になるには◯年の経験が必要」という全国共通の基準は存在しません。正確には2種類の「資格」が別にあります。法令が定める校長・教頭の資格は全国共通。一方各教育委員会が定める管理職選考試験の受験資格は、67の教育委員会ごとにバラバラです。

法令が定める資格は、全国共通

学校教育法施行規則第20条は、校長の資格を次のいずれかに該当する者としています。

・教諭の専修免許状または一種免許状(高校・中等教育学校は専修免許状)を持ち、かつ「教育に関する職」に5年以上あったこと
・「教育に関する職」に10年以上あったこと

そして同規則第23条が「前三条の規定は、副校長及び教頭の資格について準用する」としています。教頭も校長も、法令上の資格要件は同じです。

選考試験の受験資格は、教育委員会ごとにまったく違う

文部科学省は47都道府県と20指定都市、計67の教育委員会について受験資格を公表しています。令和7年4月1日現在の一覧から、義務教育諸学校の校長・教頭の年齢制限だけを抜き出します。

教育委員会 義務教育諸学校の校長 義務教育諸学校の教頭(副校長含む)
北海道 60歳未満 60歳未満
青森県 40歳以上58歳未満 38歳以上
岩手県 制限なし 45歳以上
秋田県 45歳以上 38歳以上
埼玉県 43歳以上56歳以下 35歳以上55歳以下
千葉県 57歳以下 57歳以下
東京都 59歳未満 (A選考)44歳未満/(B選考)39歳以上54歳未満ほか/(C選考)50歳以上60歳未満
熊本市 制限なし 制限なし

※出典:文部科学省「令和6年度公立学校教職員の人事行政状況調査」5-3 管理職選考試験の受験資格(年齢制限・経験年数)(令和7年4月1日現在)より抜粋。東京都のA〜C選考は、原典の注に「A選考…若手登用、B選考…中堅登用、C選考…ベテラン登用」とあります。

年齢の下限を置く県があり(青森県は校長40歳以上、岩手県は教頭45歳以上)、上限も幅があります。「制限なし」の教育委員会もあります。全国共通の数字を書くのは不可能だとわかると思います。

経験年数の要件も、県ごとに別もの

教育委員会 義務教育諸学校の校長 義務教育諸学校の教頭(副校長含む)
北海道 教頭経験2年以上 (副校長)教頭経験2年以上/(教頭)主幹教諭、中堅教諭等資質向上研修を修了している者
青森県 教職経験10年以上・教頭経験2年以上 教職経験10年以上
秋田県 制限なし 教諭経験15年以上
熊本市 教頭経験3年以上・教職経験15年以上 教職経験10年以上

同じ資料の注には「−」は、管理職選考試験を実施していない場合を表すとあり、県立学校の校長が「−」の教育委員会もあります。さらに「各教育委員会が定める管理職選考試験実施要項等には、その他特例が定められている場合がある」とも。この全国一覧ですら要約で、最終的な答えはあなたの自治体の要項の中にしかありません。

自分が受けられるのかを確かめる3ステップ

  • 自分の教育委員会の管理職選考実施要項を探す(校内配布か、教育委員会のサイトにあります)
  • 無ければ教頭先生か教育委員会の人事・教職員課へ。「受けるかは決めていないが要項を見たい」で大丈夫です
  • 他県と比べたいときは文部科学省の全国一覧(5-3・5-4)を見る

要項は毎年度更新されます。数年前に見た記憶で判断しないほうが安全です。

60歳以降|役職定年(管理監督職勤務上限年齢)を先に知っておく

60歳以降の役職定年の仕組みを確認するイメージ

管理職になるかを考えるときにいちばん抜け落ちやすいのが60歳以降です。「校長として定年まで」の前提で生涯収入を組んでいると、前提が崩れることがあります。

管理監督職には、勤務上限年齢による降任等の仕組みがある

地方公務員法第28条の2第1項は、管理監督職を占める職員がその職に係る管理監督職勤務上限年齢に達したとき、任命権者は異動期間に管理監督職以外の職などへ降任または転任(降給を伴う転任に限る)をするものとする、と定めています。一般に「役職定年」と呼ばれるのがこれです。

ここでいう「管理監督職」は、同じ条文の括弧書きで「地方自治法第204条第2項に規定する管理職手当を支給される職員の職及びこれに準ずる職であつて条例で定める職」と定義されています。どの職が管理監督職にあたるかは、この定義に沿って条例で決まるという構造です。

上限年齢も、延長の特例も、条例で決まる

条文は年齢を書いていません。第28条の2第2項が「前項の管理監督職勤務上限年齢は、条例で定めるものとする」としているからです。例外もあります。第28条の5は、その職員が降任等すると公務の運営に著しい支障が生ずると認められるとき、または欠員の補充が困難で著しい支障が生ずると認められるとき(第1項第1号・第2号)、条例で定めるところにより異動期間を1年を超えない範囲で延長できるとし(第1項)、さらに延長する場合も第2項ただし書により通算3年を超えられないとしています。

知りたいこと 法律に書いてあるか どこを見ればわかるか
そういう仕組みがあるか 書いてある 地方公務員法第28条の2第1項
どの職が対象か 定義のみ 同項の括弧書き+自治体の条例
何歳で降任になるか 書いていない 自治体の条例(同条第2項)
延長できるか、何年か 枠組みのみ(第1項・第2項の延長は通算3年が上限) 自治体の条例(第28条の5)

「61歳で必ず降任になります」「校長は特例で最長5年延長できます」といった説明を見ても、そのまま自分に当てはめないでください。年齢も特例も、あなたの自治体の条例次第です。

「校長で定年まで」を前提に生涯収入を組まない

お伝えしたいのは、管理職になったあと、60歳前後でもう一度、身分が動く可能性があるという一点です。管理職手当が付く職から降りれば収入は変わります。退職手当は退職日の給料月額が基本ですが、降任などで給料月額が下がった場合に、下がる前の期間を下がる前の給料月額で計算する特例(いわゆるピーク時特例。国家公務員退職手当法第5条の2、東京都の条例では第6条の2)があります。60歳での役職定年による降任は、国の制度でも東京都でもこの特例の対象です。ただし東京都では対象が55歳に達した年度の翌年度以降の減額に限られるなど、条件は条例で違うので、「降任の前に辞めないと退職金が減る」とも「減らない」とも一律には言えません。打診の段階で60歳以降まで含めた見取り図を描く価値があります。定年引き上げや再任用そのものは50代教員の定年後セカンドキャリア|退職前に始める準備チェックリスト、年金は教員の年金は月いくら?試算15〜17万円の内訳と、共済年金の一元化で変わったことにまとめてあります。

「管理職にならない」という選択について

管理職になる・ならないの選択を表すイメージ

ここからが、いちばん書きたい章です。

ならないことは、逃げでも脱落でもない

打診を断ると「やる気がない」と思われるのでは、と心配される方がいます。でも令和6年に新しく教頭になった人は全国で6,117人。公立学校で働く教員の数を考えれば、管理職にならないほうがはるかに多数です。多数派を「脱落」とは呼びません。

ならない側に残るもの

・教職調整額が残る。しかも2026年1月から毎年1%ずつ上がり、2031年1月には給料月額の10%になります(給特法附則第2項)
・時間外勤務を命じられる場面を限定する規定の枠の中にいる(給特法第6条第1項)
・授業と担任が残る。子どもと直接関わる時間は、管理職になるといちばん減ります
・平日の在校等時間は、副校長・教頭より短い(令和4年度調査)

教職調整額の段階引き上げは、管理職にならない人にだけ効く制度変更です。

ただし「ならない」を選ぶ場合でも、60歳以降の働き方は別途考える必要があります。役職定年は管理職の話ですが、定年そのものの引き上げは全員に関係します(50代教員の定年後セカンドキャリア|退職前に始める準備チェックリスト)。

この記事は、どちらも勧めていません

私は、管理職を目指すことをすばらしいとも、管理職は損だとも思っていません。学校を良くしたいから管理職になる人がいて、子どもの隣にいたいからならない人がいる。どちらも理由として十分です。

困るのは「よくわからないまま流されて決めた」という状態だけだと思います。制度を知り、自分の自治体の条例を見て、そのうえで断るなら、それは立派な意思決定です。私自身は教員を辞めましたが、いま振り返って思うのは、選択肢を並べてから選んだかどうかが、あとの納得感を決めるということです。辞めるのが正解でも、続けるのが正解でもありません。選択肢を持つことが正解だと思っています。

すでに教頭・校長で、しんどいとき

管理職として悩んだときに相談することを表すイメージ

最後に、すでに教頭・校長で、しんどい方に向けて書きます。

まず、在校等時間の事実を見てください

副校長・教頭の平日の在校等時間は、小学校11:45、中学校11:42、高校10:56。全職種でいちばん長い数字です。

「自分の要領が悪いせいだ」と思う必要はありません。全国の副校長・教頭を同じ物差しで測った結果が、この順番でした。個人の問題ではなく職の構造です。自分の自治体の業務量管理・健康確保措置実施計画(給特法第8条)に何が書いてあるかを、確認しておくと材料になります。

降りるという選択肢について

自治体によっては、管理職から教諭に戻ることを本人が申し出られる制度があります。ただし制度の有無も、名称も、要件も自治体ごとに違い、全国でどれくらい使われているかを示す一次情報は確認できませんでした。ここでは「制度がある自治体がある」以上は書きません。教育委員会の人事担当に聞くのが確実です。なお役職定年は本人の希望とは別に動く仕組みなので、分けて考えてください。

学校の外に持ち出せるもの

学校教育法第37条は、校長を「校務をつかさどり、所属職員を監督する」(第4項)、教頭を「校長を助け、校務を整理し、及び必要に応じ児童の教育をつかさどる」(第7項)と定めています。学校の外の言葉に置き換えると、次のようになります。

学校の中での経験 外から見たときの呼び名
職員会議の運営、校務分掌の割り振り 組織運営・部門マネジメント
教育委員会・保護者・地域との調整 対外折衝・ステークホルダー対応
人事評価、面談、育成 人材マネジメント・評価者経験
予算の執行、備品・施設の管理 予算管理・資産管理
事故・トラブル発生時の対応と報告 危機管理・インシデント対応
学校経営計画の策定と進捗管理 計画策定・進捗管理

「管理職になったせいでつぶしが効かなくなった」と言われますが、組織を運営した経験という意味ではむしろ逆です。外に出ることを考える場合は40代教員の転職完全ガイド|20年経験を活かす8職種と成功パターン・お金の壁5つ、50代で定年後を見据える場合は50代教員の定年後セカンドキャリア|退職前に始める準備チェックリスト、上司との関係で困っている場合の相談先は教員のパワハラ、どこに相談する?校長・教育委員会・外部窓口の使い分けと10選に窓口を並べてあります。

制度の話ではありませんが——教頭・校長は、学校の中で相談相手がいちばん少ない職だと思います。職員には弱音を吐けず、教育委員会には評価される立場で、帰る時間も遅い。私が教員だったころ、教頭先生が誰かに相談している姿を見た記憶がありません。しんどいなら、それは職の構造から来ているもので、あなたが弱いからではありません。

よくある質問

Q. 教頭になると、給料はどれくらい上がりますか?

A. 全国共通の答えはありません。管理職手当の額も支給方法も、地方自治法第204条第3項により各自治体の条例で定めることになっているためです。同時に教職調整額(給料月額の5%)が止まるので、差し引きは自治体と個人の級・号給で変わります。自治体の給与条例と管理職手当の規則を見れば正確な額が出ます。

Q. 校長の退職金はいくらですか?

A. 退職手当の額と支給方法も条例で定めることになっており(地方自治法第204条第3項)、全国共通の相場はありません。仕組みと勤続年数別の目安は当サイトの退職金の記事にまとめています。基本額は退職日の給料月額と勤続年数で決まるのが原則です。降任などで給料月額が下がった場合に、下がる前の期間を下がる前の額で計算する特例(ピーク時特例)もありますが、国の制度は減額の時期を問わないのに対し、東京都は55歳に達した年度の翌年度以降の減額に限るなど、対象は条例で違います。別に加算される調整額は在職した各月の職位に応じた額を積み上げる仕組みで、国の制度では高い順に60月(5年)分まで、東京都は退職前20年間の各月を合計するなど、「校長を何年務めたか」がどこまで効くかも条例で違います。

Q. 教頭になると、教職調整額はどうなりますか?

A. 支給対象外になります。給特法第3条第1項は、教職調整額を支給する「教育職員」から「校長、副校長及び教頭」を明示的に除いています。2026年1月に始まった段階引き上げ(5%から毎年1%ずつ上がり2031年1月に10%)も、この条文の率を読み替えるものなので管理職には及びません。

Q. 何歳までに教頭にならないと、間に合いませんか?

A. 「間に合わない」という事実は統計からは読み取れません。文部科学省の人事行政状況調査(令和6年4月1日現在)では、その年に教頭に登用された6,117人のうち最も多いのは50〜54歳で41.3%、次が45〜49歳で38.3%。平均年齢は49.1歳、最も多い年齢は49歳でした。

Q. 管理職選考は何歳から受けられますか?何年の経験が必要ですか?

A. 自治体ごとに違います。令和7年4月1日現在の全国一覧では、義務教育諸学校の教頭選考の年齢制限が、青森県は38歳以上、岩手県は45歳以上、埼玉県は35歳以上55歳以下、熊本市は制限なし、と分かれています。自分の教育委員会の実施要項を確認してください。

Q. 60歳を過ぎても、校長を続けられますか?

A. 条例次第です。地方公務員法第28条の2は、管理監督職の勤務上限年齢に達した職員を管理監督職以外の職へ降任・転任させる仕組みを定めていますが、その上限年齢は同条第2項により条例事項です。第28条の5の延長の特例も条例で定めるところによるもので、第1項・第2項による延長は通算3年を超えられません(第3項・第4項の特定管理監督職群には、この3年の上限は置かれていません)。

Q. 管理職になると、残業代は出るようになりますか?

A. 給特法第6条第1項は、時間外勤務を命じられる場合を「政令で定める基準に従い条例で定める場合に限る」と限定していますが、その括弧書きで「管理職手当を受ける者」を除いており、管理職はこの限定の枠の外です。ただし「残業代が出る」という意味ではありません。どの手当がどう支給されるかは、各自治体の給与条例によります。

まとめ

  • 変わるのはお金の出方・時間の使われ方・60歳以降の身分の3つ。金額そのものではありません
  • 教職調整額は止まります(給特法第3条第1項)。2026年1月に始まった5%→10%の段階引き上げも管理職には及びません
  • 管理職手当は額も支給方法も条例事項(地方自治法第204条第2項・第3項)。全国共通の額はありません
  • 退職金も条例事項。基本額は「いつ、どの給料月額で辞めるか」で決まり、職位は調整額を通じて効きます
  • 副校長・教頭の平日の在校等時間は全職種で最長(小11:45/中11:42)。ただし校長は教諭より短い
  • 教頭登用の平均は49.1歳。登用者の41.3%は50〜54歳で、校長の77%は教頭・副校長からの登用です
  • 管理職選考の受験資格は67の教育委員会でバラバラ。下限を置く県も、制限なしの市もあります
  • 60歳以降は役職定年がある(地方公務員法第28条の2)。年齢も延長の特例も条例です
  • なる/ならない、どちらも正当な選択です。困るのは「流されて決めた」状態だけだと思います




Re-Career代表 新川紗世
元教員が運営するキャリア支援

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