教員の転職と年金|共済年金から厚生年金に変わるとどうなる?

新川紗世 Re-Career代表

この記事の著者

新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役

元公立中学校英語教員(10年以上)。教員時代に病休を経験し退職。その後、教員専門のキャリア支援会社を設立。著書『「やめたいかも」と一度でも思ったら読む 教員の転職思考法』。スタッフ全員が元教員のプロフェッショナル集団として、延べ1000名以上のキャリア支援に携わる。

教員の転職と年金|共済年金から厚生年金に変わるとどうなる?

「教員を辞めたら年金はどうなるの?」「共済年金から厚生年金に変わると、将来もらえる額は減るの?」――転職を検討する教員から、年金に関する質問は非常に多く寄せられます。

年金制度は複雑で、調べてもよくわからないという声もよく聞きます。しかし、制度の基本を正しく理解すれば、過度な不安を持つ必要はありません。

この記事では、教員の転職と年金について、制度の基本から実際のシミュレーション例まで、できるだけわかりやすく解説します。

※本記事は年金制度の一般的な情報提供を目的としています。個別の年金額や手続きについては、年金事務所や社会保険労務士にご相談ください。

年金制度の基本――公立教員の年金はどうなっている?

日本の年金制度の「2階建て構造」

まず、日本の年金制度の基本を確認しましょう。日本の年金は「2階建て」の構造になっています。

  • 1階部分:国民年金(基礎年金) — 20歳以上60歳未満の全国民が加入。自営業者は自分で保険料を納付(第1号被保険者)、会社員・公務員は給与から天引き(第2号被保険者)、その配偶者は保険料負担なし(第3号被保険者)。
  • 2階部分:厚生年金 — 会社員や公務員が加入。報酬に応じた保険料を納め、報酬に応じた年金を受け取る。

2015年の「被用者年金一元化」とは

かつて、公務員は「共済年金」、会社員は「厚生年金」と別々の制度に加入していました。しかし、2015年10月に「被用者年金の一元化」が実施され、共済年金は厚生年金に統合されました。

一元化のポイント:

  • 2015年10月以降、公務員も「厚生年金」に加入している
  • 保険料率が段階的に統一された(公務員の保険料率は引き上げ、会社員との差が解消)
  • 年金の計算方法も統一の方向へ

つまり、現在の公立教員は「共済年金」ではなく「厚生年金」に加入しています。ただし、2015年9月以前の加入期間については旧共済年金の制度が適用されるため、ベテラン教員ほど「共済年金時代」の加入期間が長くなります。

公立教員の年金の特徴

公立教員の年金には、以下のような特徴があります。

  • 加入先:地方公務員共済組合(一元化後は厚生年金の制度を適用)
  • 保険料:標準報酬月額に保険料率を掛けた額(事業主=自治体と折半)
  • 2階部分に加えて「年金払い退職給付」がある — 旧共済年金の「職域加算」に代わる制度で、公務員の「3階部分」に相当
セカンドキャリア・キャリア検討のイメージ

教員が転職すると年金はどう変わるのか

転職先が民間企業(厚生年金適用事業所)の場合

最も多いパターンです。公立教員を退職して民間企業に就職した場合、年金制度はどう変わるのでしょうか。

変わること:

  • 加入する保険者が変わる(共済組合→日本年金機構)
  • 保険料率が変わる場合がある(ただし一元化により差は縮小)
  • 「年金払い退職給付」の積立が停止する
  • 報酬額が変われば保険料額も変わる

変わらないこと:

  • 厚生年金としての加入期間は通算される
  • 基礎年金(1階部分)の加入期間も途切れない
  • これまで積み立てた年金額がなくなることはない

「教員が転職しても、年金が「ゼロになる」「大幅に減る」ということはありません。加入期間は通算されるため、教員時代に積み立てた分は将来しっかり受け取れます。制度を正しく理解することが、不安を解消する第一歩です。」

——Re-Career キャリアアドバイザーの支援現場より

加入期間の通算について

年金の受給資格を得るには、原則として加入期間が10年(120か月)以上必要です。教員として10年以上勤務していれば、この条件はすでに満たしていることになります。

転職しても加入期間は通算されるため、「教員10年+民間企業15年=25年」のように合算されます。加入期間が長いほど年金額は増えるため、転職後も厚生年金に加入し続けることが重要です。

年金額への影響

年金額は「加入期間」と「報酬額」で決まります。転職による年金額への影響を考えるポイントは以下の通りです。

  • 報酬が上がれば年金額も増える — 転職後に年収が上がれば、納める保険料も増え、将来の年金額も増える
  • 報酬が下がれば年金額も減る — 転職後に年収が下がれば、その期間の年金額は教員時代より低くなる
  • 「年金払い退職給付」がなくなる — 公務員の3階部分に相当する「年金払い退職給付」は、民間企業では積立が停止する。ただし、教員時代に積み立てた分は受給できる
  • 企業年金がある場合は上乗せ — 転職先に企業年金(確定拠出年金や確定給付年金)がある場合は、公務員の「年金払い退職給付」に代わる3階部分となる

私立教員の場合はどうなるか

公立教員と私立教員では、加入する年金制度が異なります。

私立教員の年金制度

  • 加入先:日本私立学校振興・共済事業団
  • 制度:厚生年金(2015年一元化後)
  • 特徴:私学共済独自の上乗せ給付がある場合がある

私立教員から民間企業に転職する場合

基本的な考え方は公立教員の場合と同じです。加入期間は通算され、これまでの積立分は保全されます。ただし、私学共済独自の上乗せ給付がある場合は、転職によりその部分の積立が停止します。

公立から私立(またはその逆)への転職

公立教員から私立学校へ、あるいは私立から公立への転職でも、厚生年金としての加入期間は通算されます。2015年の一元化以降、この点での不利益はほぼなくなりました。

退職後の空白期間と国民年金

「空白期間」に注意が必要

教員を退職してから次の就職先が決まるまでに間が空く場合、その期間の年金手続きに注意が必要です。

退職後に就職先が決まっていない場合:

  • 厚生年金の資格を喪失し、国民年金の第1号被保険者になる
  • 退職日の翌日から14日以内に市区町村の窓口で手続きが必要
  • 国民年金の保険料は月額16,980円(令和7年度)を自分で納付

配偶者の扶養に入る場合:

  • 配偶者が会社員や公務員で、自分の年収が130万円未満の見込みであれば、第3号被保険者になれる
  • 第3号被保険者は保険料の負担なし
  • 配偶者の勤務先を通じて手続きを行う

空白期間が年金に与える影響

国民年金の保険料を納めなかった期間(未納期間)があると、将来の年金額が減少します。

  • 基礎年金は「480か月(40年)」加入で満額受給
  • 未納期間があるとその分だけ減額される
  • 1か月の未納で、年間の基礎年金が約1,600円減少

対策:退職後すぐに転職しない場合は、必ず国民年金の手続きを行い、保険料を納めましょう。経済的に厳しい場合は「免除制度」や「猶予制度」を利用できます。

年収1

年金額のシミュレーション例

具体的なイメージを掴むために、いくつかのシミュレーション例を紹介します。

※以下は概算値です。実際の年金額は加入期間・報酬額・制度改正等により異なります。

ケース1:教員30年勤務で定年退職した場合

  • 22歳から教員として勤務、60歳で定年退職(38年間加入)
  • 平均標準報酬月額:約40万円(概算)
  • 基礎年金(1階):約76万円/年(満額に近い額)
  • 厚生年金(2階):約100万円/年(概算)
  • 年金払い退職給付(3階):約15〜20万円/年(概算)
  • 合計:約191〜196万円/年(月額約16万円)

ケース2:教員15年+民間企業15年の場合

  • 22歳から教員として15年間勤務(37歳で退職)
  • 37歳から民間企業で15年間勤務(52歳時点)
  • 教員時代の平均標準報酬月額:約33万円、民間時代:約38万円
  • 基礎年金(1階):約57万円/年(30年加入の場合)
  • 厚生年金(2階):教員期間分 約40万円+民間期間分 約46万円 = 約86万円/年
  • 年金払い退職給付(3階):約8〜10万円/年(教員15年分)
  • 合計:約151〜153万円/年(月額約12.6万円)

ケース3:教員10年+民間企業25年の場合

  • 22歳から教員として10年間勤務(32歳で退職)
  • 32歳から民間企業で25年間勤務(57歳時点)
  • 教員時代の平均標準報酬月額:約30万円、民間時代:約42万円
  • 基礎年金(1階):約66万円/年(35年加入の場合)
  • 厚生年金(2階):教員期間分 約24万円+民間期間分 約85万円 = 約109万円/年
  • 年金払い退職給付(3階):約5〜7万円/年(教員10年分)
  • 合計:約180〜182万円/年(月額約15万円)

シミュレーションから見えること

  • 教員を辞めても、転職先で厚生年金に加入し続ければ年金額への影響は限定的
  • 転職先での報酬が高ければ、トータルの年金額が教員一筋の場合を上回ることもある
  • 空白期間を作らないことが、年金額を最大化するポイント
  • 「年金払い退職給付(3階部分)」は教員期間に応じた額になるが、企業年金で補える可能性がある

「年金は「教員を辞めたら損をする」というものではありません。大切なのは、厚生年金への加入期間をできるだけ長くし、空白期間を作らないことです。」

——Re-Career株式会社 キャリア支援実績より

年金以外に確認すべきお金の制度

転職を検討する際は、年金だけでなく以下の制度についても確認しておきましょう。

健康保険の切り替え

  • 退職後は「任意継続被保険者」(最大2年間、在職時と同じ健康保険を継続)か「国民健康保険」に加入
  • 任意継続は保険料が全額自己負担(在職時は折半)になる点に注意
  • 配偶者の扶養に入る選択肢もある(年収130万円未満が条件)

退職金と確定拠出年金

  • 教員時代の退職金は退職時に一括受給
  • 転職先に確定拠出年金(企業型DC)がある場合は、iDeCo(個人型)からの移換が必要な場合がある
  • 退職後にiDeCoを始めることで、税制優遇を受けながら老後資金を準備できる

雇用保険(失業保険)

  • 公務員は雇用保険に加入していないため、退職後に失業手当は受給できない
  • ただし、国家公務員退職手当法に基づく退職手当が失業手当に相当する役割を果たす
  • 転職先の民間企業では雇用保険に加入するため、その後の退職時には失業手当を受給できる可能性がある
前向き2

筆者メッセージ

年金のことを調べ始めると、制度が複雑で「やっぱりよくわからない」「不安が増した」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、ここで一つお伝えしたいのは、「制度を知ること自体が不安を減らす第一歩」だということです。

転職相談に来られる教員の多くは、最初は「年金が大幅に減るのではないか」と心配されています。しかし、実際にシミュレーションをしてみると「思ったほど影響は大きくない」と安心される方がほとんどです。

年金制度は確かに複雑ですが、基本的な仕組みさえ押さえておけば、過度に恐れる必要はありません。大切なのは、「なんとなく不安」のまま立ち止まるのではなく、具体的な数字を確認して「見える化」することです。

年金のことで転職をためらっているなら、まずは「ねんきんネット」で自分の見込み額を確認するところから始めてみてください。

転職を考える前に押さえておきたい「年金の基礎用語」

年金制度の話には専門用語が多く、調べれば調べるほど混乱してしまう方も多いと思います。ここでは、教員から民間企業への転職を考えるうえで最低限知っておきたい用語を整理します。

老齢基礎年金

20歳から60歳までの40年間、国民年金に加入していた人が65歳から受け取れる年金です。教員も民間企業の会社員も全員が加入しています。満額で年間約78万円(2026年度時点)。これが日本のすべての年金制度の「土台」になります。

老齢厚生年金

会社員や公務員が加入する厚生年金から支給される年金で、給与の額と加入期間に応じて受給額が変わります。教員時代に加入していた共済年金(旧制度)も、2015年の一元化以降は厚生年金に統合されています。

職域加算(経過的職域加算)

2015年の一元化前に共済年金に加入していた公立教員には、「職域加算」と呼ばれる上乗せ部分があります。これは厚生年金にはない公務員独自の優遇措置でしたが、現在は新規加入分には適用されません。ただし、過去に加入していた期間分は経過措置として受け取れます。

年金払い退職給付

2015年以降、職域加算に代わって導入された制度です。一元化後の公務員に対する独自の上乗せ部分として、掛金の一部が積み立てられて退職後に受け取れます。教員から転職する場合、この積立分も忘れずに確認しておきましょう。

「私の場合、年金はどう変わる?」を自分で計算する方法

年金額のシミュレーションは「日本年金機構のねんきんネット」を使うと、自分のこれまでの加入記録に基づいた将来の年金見込み額を確認できます。教員から転職を考えている方は、必ず一度はチェックしておきましょう。

ステップ1:ねんきんネットに登録する

マイナンバーカードを使えば、即座に登録・ログインできます。マイナンバーがなくても、ハガキでアクセスキーを取得して登録することも可能です。

ステップ2:「年金見込額試算」を使う

登録後、メニューから「年金見込額試算」を選びます。ここで「現在のまま教員を続けた場合」「○歳で転職した場合」といった複数のシナリオを試算できます。転職の意思決定の重要な材料になります。

ステップ3:転職後の収入を入力して比較する

転職後の想定年収を入力すると、その年収が将来の年金額にどう影響するかが計算されます。「年収が一時的に下がっても、長期的にはどの程度の影響があるのか」を数字で把握できるのは大きな安心材料です。

転職タイミングと年金への影響――よくある3つのパターン

パターン1:30代で転職(教員10年+民間20年程度)

このパターンでは、転職後の民間企業での加入期間が長くなるため、結果的にはバランスの取れた年金額になります。教員時代の職域加算分は経過措置で受け取れますし、転職先で長期勤続できれば民間企業での厚生年金額も十分に蓄積されます。年金面での不利は最小限に抑えられるパターンです。

パターン2:40代で転職(教員20年+民間20年程度)

もっとも判断が難しいのがこのパターンです。教員時代の年金額はそれなりに蓄積されていますが、転職後の年収が下がると厚生年金の積立額も減少します。一方で、教員を続けることでの心身への負担を考えると、年金額の多寡だけで判断すべきではありません。Re-Careerでは「年金の数字」と「健康・生活の質」のバランスを一緒に考えるサポートをしています。

パターン3:50代で転職(教員30年+民間10年未満)

50代での転職では、すでに教員としての年金がある程度確定しているため、転職後の年金への影響は限定的です。むしろ、退職金の減額や転職後の収入下落への備えのほうが重要になります。早期退職割増制度や、退職金共済の受け取り方なども含めて、総合的にライフプランを組み直すことが大切です。

知っておきたい年金の「落とし穴」

落とし穴1:「転職タイミングの月」によって損する場合がある

退職する月によっては、その月の社会保険料が二重に引かれるケースがあります。月末1日前に退職すると、その月分の保険料が会社負担にならず、自分で全額払うことになる場合も。退職日の選び方にも要注意です。

落とし穴2:「妻(または夫)の年金」も忘れずに確認

配偶者が「第3号被保険者」(扶養に入っている人)の場合、本人が転職すると配偶者の年金資格にも影響が出ることがあります。世帯全体の年金見込み額を確認しておきましょう。

落とし穴3:「ねんきん定期便」を放置していると気づかない誤りも

毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」を捨ててしまっている方は多いですが、過去の加入記録に誤りがあるケースも実際に存在します。転職を考えるタイミングで、一度しっかり確認する価値があります。

「年金の話は『よく分からないから後回し』にしてきましたが、転職を考え始めて初めてねんきんネットを見ました。数字で見えると、漠然とした不安が『具体的な計算』に変わって、判断しやすくなりました。」

——Re-Careerキャリア相談利用者(35歳・元中学校教員)

専門家に相談すべきタイミング

年金や退職金は、自分一人で完璧に判断するのが難しい領域です。以下のようなタイミングでは、専門家に相談することをおすすめします。

  • 40代以降で転職を真剣に検討するとき(年金額への影響が大きくなる年代)
  • 退職金が1,000万円以上になりそうなとき(受け取り方で税金が大きく変わる)
  • 住宅ローンや教育費との兼ね合いで悩んでいるとき
  • 配偶者の年金や健康保険の扶養との関係を整理したいとき

相談先としては、ファイナンシャルプランナー(FP)、社会保険労務士、税理士などが挙げられます。Re-Careerでも、必要に応じてこれらの専門家と連携した支援を行っています。

まとめ

  • 2015年の被用者年金一元化により、公務員も会社員も同じ「厚生年金」に加入している
  • 教員から民間企業に転職しても、加入期間は通算される。年金がゼロになることはない
  • 年金額は「加入期間」と「報酬額」で決まる。転職先の年収次第では年金額が増えることもある
  • 公務員の「年金払い退職給付」(3階部分)は教員期間分のみとなるが、企業年金で補える可能性がある
  • 退職後の「空白期間」は年金額の減少につながるため、国民年金の手続きを忘れずに
  • 「ねんきんネット」で自分の年金見込み額を確認することが、不安解消の第一歩
Re-Career代表 新川紗世
元教員が運営するキャリア支援

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