「5年後もここにいる?」と聞かれた瞬間、即答で「絶対いない」と思った——29年目の決断

たかまゆさん(新潟市・50代・中学校英語28年・小学校1年・R7年度末退職)

新潟市在住の たかまゆさん(50代)は、中学校で英語を28年、小学校で1年、計29年間教壇に立ち続けた。「公務員であること」への強いこだわりを親から受け継ぎ、疑わずに走り続けてきた。ところが2年前、体が動かなくなるほどの体調不良に見舞われ、はじめて自分と向き合う時間を持った。「5年後もここにいますか?」という問いに、即座に「絶対いない」と答えた瞬間——そこからすべてが変わり始めた。今春、自宅で英語教室を開業した たかまゆさんの話。

英語・子ども・公務員——3つが重なって選んだ道

新川: 
教員を目指したきっかけを教えてもらえますか?

たかまゆさん: 
子どもと一緒に学べる職業ということで選びました。もともと英語が好きで、英語を専攻していたんですが、親が公務員志向がとても強くて。英語が好き、子どもが好き、公務員という3つが重なるところはここだ!ということで教員になりました。強い熱意というよりは、自然にたどり着いた感じです。就職活動も他はしませんでした。

新川: 
教員になってから、やりがいを感じていた瞬間はどんな時でしたか?

たかまゆさん: 
英語の授業をしていて子どもたちの笑顔を見られる瞬間が一番幸せでした。自分も一緒に楽しめる瞬間が好きでしたね。英語がベースにあるので、授業だけは本当に楽しかったです。

「英語の授業で子どもたちの笑顔を見る瞬間が、一番幸せでした。授業だけは本当に楽しかったです」

体が動かなくなった夏——慢性化していた不調に気づいた日

新川: 
変化が生じたのはどのタイミングでしたか?

たかまゆさん: 
2年前の夏に体調を崩して、1ヶ月お休みをいただきました。そこで初めて自分と向き合った時に、授業の楽しさが持てなくなっていたことに気づいて。英語の授業というよりも、保護者の要求に応え、子どもたちに気を遣い、勤務時間が終わってからも連絡に追われ、会議が続く——そういう状態が自分の描いていた教員像とは全く違うところにあって、そこで無理をして体に来たんだろうなと思いました。

新川: 
体調不良はずっと続いていたんですか?

たかまゆさん: 
慢性化していたんですよね。今はお腹も空くし、朝もよしやるぞって起きられるんですが、その状態がこんなに違うんだと驚くほど、ずっと不調でした。それが当たり前だと思って蓋をしていたんですが、ある朝起きようと布団から出ようとした際に、体が動かなくなったんです。

— 新川: 
それは相当しんどい状態でしたね。

たかまゆさん: 
本当に。でもそのサインがなかったら、もっとひどい状態になっていたと思います。気持ちも病んでいたかもしれない。体調を崩したことに感謝しているくらいです。

「体が動かなくなったその朝、はじめて自分に蓋をしていたことに気づきました。あのサインがなければ、もっとひどい状態になっていたと思います」

「5年後もここにいますか?」——即答で「絶対いない」

新川: 
SSを知ったのはどんなきっかけでしたか?

たかまゆさん: 
お休みをいただいて健全な気持ちで自分と向き合った時に、インスタのリールで「5年後あなたはそこで同じ仕事をしていられますか?」という問いが流れてきて。それを見た瞬間、5年後絶対いない、無理、嫌だってもう即答で思ったんです。それがきっかけでした。

新川: 
迷いはありましたか?

たかまゆさん: 
迷いはすごくありましたよ。28年もここに浸かっていた上に、公務員志向の強い親にずっと言われてきたので、やめるなんてできないと思っていました。でもそのリールがまた流れてきて「そう思っていませんか」と言うんです。まるで私のために流れてきているようで、もう本当に救われた感じがしました。

「5年後を想像した瞬間、即答で「絶対いない」と思った。そのリールが私のために流れてきているようで、本当に救われた気がしました」

自分と向き合うことが怖かった

新川: 
プログラムを受けることへの印象はどうでしたか?

たかまゆさん: 
怖かったです。自分と向き合うということをしてこなかったし、向き合うと何か崩れると思っていたんだと思います。向き合って言語化したら今の生活を離れるんだろうなと分かっていたから、できないという気持ちの方が強かった。

新川: 
それでも受けることにしたのはなぜですか?

たかまゆさん: 
体も心もいっぱいで、何か変えない限り悪化していくという確信がありました。だから怖くてもやってみようと。4ヶ月間、本当に泣きそうになりながらも支えていただきながらやりました。

「公務員縛り」が取れた——私は私でいい

新川: 
プログラムを通じて、一番大きかった変化は何ですか?

たかまゆさん: 
ざっくり言うと、公務員縛りが取れました。私は私でいいんだ、という感覚を初めて持てた。公務員として、教員としての殻が剥がれて、自分自身として立てた感じです。それともう一つ、プログラムの中でいっぱい言語化するじゃないですか。その言語化したことが、コーチに「あなたが書いた通りになっているじゃない、今」と言ってもらえた時に、すごく自信になりました。

新川: 
自分が言葉にしたことが現実になったということですね。

たかまゆさん: 
自分が思って、口にして、言語化したことがこんな風に行動に繋がって変えられるんだという気づきが、今の私のベースになっています。それで行けると思えたんです。

「公務員縛りが取れた。私は私でいいんだ、という感覚を初めて持てた瞬間でした」

迷いなく、7月に「やめます」を言いに行った

新川: 
退職を伝えるのに迷いはありましたか?

たかまゆさん: 
全然迷いがなかったです。自分でもびっくりするくらい。半年早くやめると退職金に少し差が出るという制度があって、それを知った瞬間に7月にすぐ言いに行きました。周りの人の方がびっくりしていましたね(笑)。

新川: 
その決断の速さはどこから来たと思いますか?

たかまゆさん: 
その前にちゃんと向き合っていたからだと思います。あれがなかったら、たぶんまだダラダラ続けていたかもしれない。今は学校を見ても何の感情もないくらい、気持ちが整っています。

自宅英語教室を開業——シャボン玉と虹色の未来

新川: 
これからについて聞かせてください。

たかまゆさん: 
今年4月から自宅で英語教室を始めました。幼稚園から小学生をメインにしながら、大人の方も受け入れています。5年後、10年後のスパンで生徒さんを増やしていけたらと思っています。小人数で、あたたかい雰囲気の中で英語を好きになってもらえるような場所にしたいです。

新川: 
5年後を想像するとどんな気持ちになりますか?

たかまゆさん: 
もうシャボン玉と虹色が見えます(笑)。以前の5年後のイメージは、髪もボサボサで暗くて糸も切れそうな自分だったのに、今は真逆。楽しいです、本当に。

「5年後を想像すると、シャボン玉と虹色が見えます。以前の暗いイメージとは、もう真逆です」

悩んでいる先生へ

新川: 
やめたくても踏み出せない先生たちへ、一言いただけますか?

たかまゆさん: 
自分がやりたいと思う気持ちを大切にしてほしいです。今はいろんなことに追われて、自分のやりたいことは後回しになっていると思う。でもそれは、自分にとっても良くないし、子どもや保護者にとっても本当は良くないんだと思います。経済的なことなど考えることはあるかもしれないけれど、自分のやりたいことと向き合って、それをやることが自分にとっても周りにとっても幸せだと、今は心からそう思っています。

「自分のやりたいことをやることが、自分にとっても周りの人にとっても幸せなんだと、今は心からそう思っています」

編集後記

たかまゆさんのインタビューで一番印象的だったのは、「シャボン玉と虹色が見えます」という言葉だ。以前の5年後のイメージが「髪もボサボサで暗くて糸が切れそう」だったというのと、あまりにも対照的で、その変化の大きさが一言でわかった。

「公務員縛りが取れた」という言葉も、29年間の背景を知ると重く響く。親から受け継いだ価値観が自分の中で当たり前になっていて、それを疑うことすらできなかった。体が動かなくなったあの朝が、そのループを断ち切るきっかけになったのだと思う。

自宅の英語教室で子どもたちの笑顔を見ながら、今春から新しいスタートを切った たかまゆさん。教員としてずっと大切にしてきた「英語が好きになってほしい」という気持ちが、形を変えて続いている。そのことがとても清々しく感じられた。

取材・文:新川(Re-Career株式会社 代表取締役)