「先生が嫌なんじゃない、この働き方が無理なんだ」16年間の葛藤の先に見つけた、自分の本音
あやこさん(石川県・38歳・小学校教員・R7年度末退職)
石川県で16年間、小学校教員として働き続けてきた 、あやこさん(38歳)。今年3月いっぱいで退職を予定している。産育休を合わせると約6年間の休職期間を挟みながらも教壇に立ち続けてきた彼女が、退職を決意するまでには、長い葛藤の日々があった。「やめたい」という言葉が、ある日突然、校長先生の前でポロっとこぼれ落ちるまで…。
先生を目指したきっかけ
— 新川:
まず、先生になろうと思ったきっかけを教えていただけますか?
— あやこさん:
小学校1年生と6年生のときの担任の先生、それから高校のときの先生が、人として本当に素敵で。親以外の大人で初めて「こんな大人になりたい」と憧れた人たちでした。それがきっかけです。
— 新川:
ほかに迷いはなく、ストレートに教員の道へ?
— あやこさん:
一瞬、ほかの職業も考えましたが、当時は他の仕事をよく知らなかったですし、親も公務員ばかりだったので、自然とこの道に。あとは、子どもが好きだったということも大きいです。弟が可愛かったのもあって、小さい子どもと関わりたいという気持ちがずっとありました。
「親以外で初めて「こんな大人になりたい」と思えた先生に出会えたことが、すべての始まりでした」
仕事の喜びと、育休を挟んだ変化
— 新川:
16年間続けてきた中で、「この仕事を選んでよかった」と感じる瞬間はどんなときでしたか?
— あやこさん:
子どもたちの純粋さに触れる瞬間ですね。できなかったことができるようになる場面とか、何かを乗り越えるのを見守れたときとか。本当に小さなことでも、そういう瞬間がやっぱり一番だと思います。
— 新川:
産育休は合計6年ほど取られたとのことでしたが、復帰後に気持ちの変化はありましたか?
— あやこさん:
1人目の育休明けに戻ったときは、また社会と繋がれる、自分で稼げる嬉しさがあって、やめようなんて全然思っていませんでした。でも2人目妊娠中に担任外で復帰して、担任じゃない形での子どもとの関係づくりの難しさを感じました。そのままコロナも重なって2年半ほど育休を取り、フルで担任として戻ったときに、本当に壊されたというか……。
— 新川:
壊された、というのは?
— あやこさん:
やることが多すぎて、昔みたいに全部完璧にやりたいのに、どこで手を抜けばいいかもわからない。育児と仕事でとにかく忙しくて、体調不良も続いて。しかも子どもが生まれたことで、保護者の気持ちにより寄り添えるようになったぶん、やりたいことはどんどん増えるのに、物理的な時間は全然ない。そのギャップがしんどかったです。
「やりたい気持ちは増えているのに、時間は全然ない。そのギャップに、どんどん追い詰められていきました」
「やめます」が口をついて出た日

— 新川:
退職を意識し始めたのは、いつ頃のことでしたか?
— あやこさん:
はっきり意識したのは2年前です。それ以前の3年前ごろは、記憶がないくらい必死で、「この働き方は無理だ、私死ぬ」くらいには思っていたんですが、考える余裕もなかった。先生が嫌なんじゃなくて、この働き方が続けられないって。
— 新川:
退職の意思が明確になったのは?
— あやこさん:
2年前に、校長先生との面談で「来年はどのクラスを持ちますか」みたいな話になったとき、自分でも意図せず「やめます」って言ってたんです。脳をスルーして出てしまったような感覚で、あれ、今言っちゃった、みたいな(笑)。
— 新川:
それだけ追い詰められていた、ということでしょうね。
— あやこさん:
校長先生がすごく焦ってくださって、育児時短制度を使えるよと教えてくださったんです。「やめるのはいつでもできるから、まずこれを使って」と言われて、そこからは時短で続けてきました。
「「やめます」が脳をスルーして口から出た瞬間、初めて自分の本音と向き合えた気がしました」
SSとの出会い
— 新川:
SSを知ったのはどんなきっかけでしたか?
— あやこさん:
時短になって少し時間が生まれたので、「教員退職」「元教員 現在」といったキーワードで検索するようになって。そこで紗世さんを見つけました。
— 新川:
最初はどんな印象でしたか?
— あやこさん:
ちょうどその前に、すぐ稼げますみたいなオンライン講座にお金だけ払って終わった経験があって、正直オンラインに対して半信半疑でした。でも個別セッションを受けてみたら、すごく熱心に話を聞いてくれて、信頼できそうだなというのが最初の印象でした。
— 新川:
4ヶ月のプログラムに参加を決めた理由は?
— あやこさん:
セッションの中で「お金の不安がなくなったらすぐやめるんですか?」と聞かれて、やめたいやめたいとは言っていたのに、「やめます」と、とっさに言えなかったんです。自分の本当の気持ちが自分でもわかっていないと初めて気づいて。このまま誰かに頼らなければ、一生自分に向き合えないなと思って、受けることを決めました。
プログラムで変わったこと
— 新川:
SSを受けて、一番変化を感じたことは何ですか?
— あやこさん:
自分の内面に向き合うこと、考えたことを言語化すること、それを全然やってこなかったから、最初はすごく時間がかかりました。でも少しずつ、自分で考えて、自分で決めて、決めたことを実行するというサイクルができるようになってきた気がします。
— 新川:
退職の最終決断も、その延長線上にあった感じですか?
— あやこさん:
プログラム最後のコーチングの直前まで、まだ迷っていたんです。でも「なんでやめることにしたんでしたっけ」と本心を引き出してもらって、ようやく決断できました。決めてからは、なんであんなに悩んでいたんだろうというくらい、すっきりしました。
「決めたからこそ、行動がどんどん進みました。決めることの大切さを、体で実感しています」
これからのこと

— 新川:
退職後はどんなことを考えていますか?
— あやこさん:
SSで見つけた自分の価値観を体現する方法として、ずっと興味があったアロマトリートメントで疲れている女性を癒したいというのが一つあります。リアルで人と関わる仕事がしたくて。あとは子どもとの関わりも、学校という場にこだわらない形で探していけたらと思っています。
— 新川:
学校にこだわらなくていい、という発想はどこから生まれたんですか?
— あやこさん:
担当コーチとの対話の中で、視野が広がった感覚がありました。子どもと関わる方法は学校だけじゃないんだなって。
悩んでいる先生へ
— 新川:
今も悩み続けている先生たちへ、一言いただけますか?
— あやこさん:
1人で悩み続けるのは、じつはすごく疲れることだと思うんです。もし何も変わっていかないなと感じているなら、ちょっと怖くても、周りに頼ってみるという小さな一歩を踏み出してみてほしいです。何か変わる気がするから。
「1人で悩み続けることにも、じつは疲れている。怖くても、誰かに頼ってみることが、変化の第一歩になると思います」
編集後記
「先生が嫌なわけじゃない。この働き方が無理なんだ」あやこさんの言葉は、多くの先生の胸に刺さるのではないだろうか。子どもへの愛情はあるのに、自分の体と心が限界を超えていく。その葛藤は、仕事への誠実さの裏返しでもある。
「やめます」が脳をスルーして出た瞬間の話は、特に印象的だった。意識より先に本音が声になった。それほど彼女の心が悲鳴を上げていたということだろう。
そして今、退職という決断をしたあやこさんは、迷っていた頃よりもずっと軽やかに見える。決断することで初めて動き出せる、ということをインタビュー越しにも感じた。アロマトリートメントで女性を癒す仕事、そして子どもとの新しい関わり方、これからの彼女の歩みが楽しみでならない。
取材・文:新川紗世(Re-Career株式会社 代表取締役)
