校長・教頭の退職金はいくら?教諭との差の出し方と、60歳で校長を降りたときの扱い【公立】
校長・教頭の退職金に全国一律の相場はなく、「退職日の給料月額×支給率+調整額」で決まります。国の制度と文部科学省の統計を使った試算額、教諭との差の出し方、60歳の役職定年で校長・教頭を降りたときの扱いまでを、法律と条例の条文で確認しました。
「校長まで勤めたら、退職金はいくらになるのか」「60歳で役職定年になったら、退職金まで減ってしまうのでは」。管理職の打診を受けたときや、定年が見えてきたときに、気になるところだと思います。
先に結論を書くと、退職手当の額は自治体の条例で決まるので、「校長なら◯千万円」という全国共通の数字はありません。そのかわり、計算の仕組みは条文で確かめられます。この記事では、国の制度(国家公務員退職手当法)と、例として埼玉県・東京都の条例を読み、管理職の退職金がどこで決まるのかを順番に整理します。
対象は公立学校の校長・副校長・教頭の方と、管理職を考えている方です。教員全体の退職金(勤続年数別の早見表)は、別の記事でまとめています。
この記事の著者
新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役
公立中学校で11年、私立高校で1年、あわせて12年、英語教員として勤務。教員時代に病休を経験し退職。その後、教員専門のキャリア支援会社を設立。著書『「やめたいかも」と一度でも思ったら読む 教員の転職思考法』。スタッフ全員が元教員のキャリア支援会社を率い、自身も延べ1,000名以上のキャリア支援に携わる。
⏱️ 30秒でわかる結論
校長・教頭の退職金は「給料月額×支給率+調整額」。額は条例で決まる
計算式退職日の給料月額×支給率(基本額)+調整額。管理職手当は基本額に入らない
試算国の制度と文科省の平均給料月額で、公立小学校の校長の定年退職は約2,457万円(前提つき)
教諭との差給料月額の差×支給率+調整額の差。教諭は教職調整額も基本額の基礎に入る
何年効くか調整額は国・埼玉県は高い順に60月分、東京都は退職前20年の点数の合計
60歳で降任ピーク時特例で、下がる前の期間は下がる前の給料月額で計算。役職定年は国・東京都とも対象
目次
校長・教頭の退職金はいくら?結論:全国一律の相場はなく、条例で決まる

公立学校の教員は地方公務員で、退職手当(いわゆる退職金)は自治体の条例で決まります。市区町村立の小・中学校の先生は都道府県の条例(地方教育行政法 第42条)、政令指定都市立の学校は市の条例です。地方自治法 第204条は、自治体が条例で退職手当を支給できるとし、給料や手当の額と支給方法は条例で定めなければならない、としています。
ですから、ネットで見かける「校長の退職金は◯千万円」という数字は、ある自治体の、ある人の条件で計算した一例です。自分に当てはまるかどうかは、計算の中身を見ないと判断できません。
例として埼玉県「職員の退職手当に関する条例」(埼玉県法規集)は、国の制度と同じ組み立てで、支給率も国と同じ値です。一方、東京都「職員の退職手当に関する条例」は、支給率の表も、調整額の数え方も国と違います。この記事では、この3つ(国・埼玉県・東京都)を並べながら進めます。
この記事でわかること
・退職金の計算式(基本額と調整額)と、管理職で変わる部分
・国の制度と文部科学省の統計を使った、校長・副校長・教頭の試算
・教諭のまま定年を迎えた場合との差の出し方
・60歳で校長を降りたとき(役職定年)の退職金の扱い
・定年前に辞める・希望降任するときに確認したいこと
退職金の計算式:「基本額+調整額」のどこが管理職で変わるか

国家公務員退職手当法 第2条の4は、退職手当の額を「退職手当の基本額」に「退職手当の調整額」を加えた額と定めています。埼玉県の条例も第2条の4で同じ書き方で、東京都の条例も第5条で、基本額に調整額を加える形です。
| 部分 | 決まり方 | 管理職で変わるところ |
|---|---|---|
| 基本額 | 退職日の給料月額 × 支給率(退職理由と勤続年数で決まる) | 給料表の級が上がり、給料月額が上がる |
| 調整額 | 在職した各月の職の「区分」に応じた額(東京都は点数)を積み上げる | 管理職の月は区分が高くなることがある |
基本額:退職日の給料月額×支給率
国の制度で、勤続25年以上で定年退職した場合の支給率は、勤続年数の区切りごとの割合を合計して求めます(第5条)。そのうえで当分の間の措置として、勤続35年以下の人は計算した額に100分の83.7を掛け(附則第6項)、勤続が35年を超える定年退職などは35年として計算します(附則第8項)。
その結果、定年退職の支給率は勤続35年以上で47.709が上限になります。埼玉県の条例も同じ率です(第5条、附則第22項・第24項)。
ここで大事なのは、基準が「退職日の給料月額」だという点です。校長を1年務めても10年務めても、退職日の給料月額が同じなら基本額は同じです(役職定年などで給料月額が下がった場合は、5章の特例があります)。
管理職手当は基本額に入らない
管理職手当は、地方自治法 第204条第2項で、給料とは別の「手当」として挙げられています。退職手当の基本額の基準は給料の月額(国の法律では「俸給月額」、埼玉県の条例 第3条では「給料…の月額」)なので、管理職手当そのものは基本額に入りません。
教職調整額は、教諭には入り、校長・副校長・教頭には無い
逆に、教諭の側には基本額を押し上げる要素があります。給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法) 第3条第1項は、教育職員(校長・副校長・教頭などを除く)に教職調整額を支給するとし、同条第3項第1号で、退職手当を給料を基礎に計算するときは「給料の額に教職調整額の額を加えた額」を基礎にすることを条例で定める、としています。
教職調整額は給料月額の4%でしたが、2026年1月から5%になり、以後毎年1%ずつ上がって、2031年1月から10%になります(給特法 附則第2項。2030年は9%)。管理職になると教職調整額はなくなるので、教諭との差を考えるときに効いてきます(3章で計算します)。
調整額:各月の区分を積み上げる
調整額は、在職した各月に、その月の職の区分に応じた額を割り当てて積み上げる仕組みです。区分は、職制上の段階や職務の級などを考えて決めることになっています(国 第6条の4第3項。埼玉県の条例 第7条の4第3項では人事委員会規則で定める)。
例として埼玉県の規則では、小・中学校の校長は第4号、副校長・教頭は第5号です。教諭は経験年数などで第5号〜第8号などに分かれるので、管理職の区分は教諭より高いか、同じです。何年分を数えるかは国と東京都で大きく違うので、4章で比べます。
【試算】校長・副校長・教頭の退職金はいくら?(国の制度・埼玉県の区分で計算)

全国一律の相場はないと書きましたが、公表されている数字だけで試算することはできます。前提は次のとおりです。
・給料月額:文部科学省「学校教員統計調査(令和4年度)」(e-Stat)の、公立学校の職名別・平均給料月額(令和4年9月分の本俸。諸手当と調整額は含まない)
・支給率:国の制度で勤続35年以上の定年退職(47.709。埼玉県の条例も同じ)
・調整額:埼玉県の区分で、60月すべてがその職だった場合(小・中学校の校長は第4号 54,150円、副校長・教頭は第5号 43,350円、高校の校長は第4号〜第3号 59,550円)
公立学校の職名別・平均給料月額
| 職名 | 小学校 | 中学校 | 高等学校 |
|---|---|---|---|
| 校長 | 446,800円 | 444,800円 | 469,500円 |
| 副校長 | 438,800円 | 427,600円 | 447,300円 |
| 教頭 | 426,000円 | 425,100円 | 444,800円 |
| 教諭 | 307,600円 | 320,900円 | 346,700円 |
出典:文部科学省「学校教員統計調査(令和4年度)」小学校・中学校・高等学校の表「給料月額別 職名別 教員構成」のうち公立の平均給料月額(千円単位の値を円に換算)。令和4年9月分の給料(本俸)で、諸手当と調整額は含まない。
校長・副校長・教頭の退職金の試算(定年退職)
| 職名 | 小学校 | 中学校 | 高等学校 |
|---|---|---|---|
| 校長 | 約2,457万円 | 約2,447万円 | 約2,565万〜2,597万円 |
| 副校長 | 約2,354万円 | 約2,300万円 | 約2,394万円 |
| 教頭 | 約2,293万円 | 約2,288万円 | 約2,382万円 |
計算:平均給料月額 × 47.709 + 調整月額 × 60月。例:小学校の校長は 446,800円 × 47.709 = 約2,132万円、54,150円 × 60月 = 約325万円、合計約2,457万円。高校の校長は、埼玉県の規則で第3号になるのは高校・特別支援学校の校長のうち人事委員会が定める者だけなので、第4号(約325万円)〜第3号(約357万円)の幅で示した。
埼玉県の中でも、さいたま市立の学校は市の規則により、小・中学校も含めて校長は第3号、副校長・教頭は第4号です(いずれも県の区分より1段上)。その場合、小・中学校の校長の調整額は約357万円で上の表より約32万円多く、副校長・教頭は約325万円で約65万円多くなります。
この試算の読み方(3つの注意)
・平均給料月額は、その職にいる全員の平均で、退職日の給料月額そのものではありません。同じ校長でも、号給によって給料月額は違います
・2022年9月時点の本俸なので、その後の給与改定は反映していません
・東京都のように、支給率の表も調整額の数え方も国と違う自治体では、この試算は当てはまりません
数字の「桁」をつかむための目安として使い、自分の数字は次の章の手順で出してみてください。
教頭・校長と教諭の退職金の差の出し方:「給料月額の差×支給率+調整額の差」

「教頭(校長)になったら、退職金はいくら増えるのか」。これを前の章の平均給料月額の差で計算すると、昇任の効果以外の違い(年齢や経験年数の違い)まで混ざってしまいます。
比べるべきなのは、「自分が教諭のまま定年を迎えた場合」と「管理職で定年を迎えた場合」です。次の3つのステップで出せます。
ステップ1:退職日の給料月額の差を出す(教職調整額を忘れない)
教諭のまま勤めた場合と、管理職になった場合の、それぞれの退職日の給料月額の見込みを出します。いまの級と号給から、学校の事務職員や教育委員会の給与担当に聞くのが確実です。
ここで忘れやすいのが教職調整額です。1章のとおり、教諭は退職手当の基本額を「給料+教職調整額」を基礎に計算します(給特法 第3条第3項第1号)。管理職には教職調整額がありません。
ステップ2:差に支給率を掛ける
仮に、教諭のままなら退職日の給料月額が40万円、校長なら45万円だったとします。2026年に定年退職する教諭は、教職調整額(5%)を加えた42万円が基礎になります。
| 項目 | 教諭のまま | 校長 |
|---|---|---|
| 退職日の給料月額 | 40万円 | 45万円 |
| 教職調整額(2026年は5%) | 2万円 | なし |
| 基本額の基礎 | 42万円 | 45万円 |
| 基本額(× 47.709) | 約2,004万円 | 約2,147万円 |
数字は計算の手順を示すための仮の値です。支給率は国の制度(埼玉県の条例も同じ)で勤続35年以上の定年退職。
給料月額の差は5万円でも、教職調整額を入れると基礎の差は3万円になり、基本額の差は約143万円です。教職調整額が10%になる2031年以降に定年を迎える場合は、同じ条件で教諭の基礎が44万円になり、差は1万円、基本額の差は約48万円まで縮まります。
ステップ3:調整額の差を足す
調整額は、管理職の月と教諭の月で区分が違う分だけ差がつきます。国の制度・埼玉県の条例では高い順に60月分を数えるので、差の目安は「(管理職の区分の月額 − 教諭のときの区分の月額)× 60月」です。
埼玉県教職員互助会の退職手当資料(PDF)の区分表では、教諭(2級)は経験年数(資料の表記は「大卒経験」)などによって第5号〜第8号に分かれます。小・中学校の校長(第4号 54,150円)と比べると、教諭が第5号(43,350円)なら60月分の差は約65万円、第6号(32,500円)なら約130万円です。
一方、教頭(第5号)は、この区分表では「2級で大卒経験36年超」の教諭と同じ区分です。教頭になっても調整額の単価が変わらない人もいる、ということです。
差の出し方(国の制度と同じ仕組みの自治体の場合)
退職金の差 =(管理職の退職日の給料月額 − 教諭のままの給料月額 ×(1+教職調整額の率))× 支給率 + 調整額の差
支給率・調整額の区分と月額・教職調整額の率は、退職手当の条例を定める自治体(市区町村立の小・中学校なら都道府県、政令指定都市立なら市)の条例と規則で確かめてください。
管理職を何年務めると効く?調整額は国・埼玉県は60月、東京都は20年

基本額は退職日の給料月額で決まるので、校長を務めた年数そのものは基本額に反映されません。年数が効くのは調整額です。そして、何年分を数えるかが、国と東京都で大きく違います。
国の制度・埼玉県:高い区分から60月分
国家公務員退職手当法 第6条の4第1項は、在職した各月の調整月額のうち額の多いものから順位を付け、第1順位から第60順位までを合計する、と定めています。埼玉県の条例も第7条の4で同じ60月の仕組みです。
60月分がそろった後は、より高い区分の月が加わらない限り、在職が長くなっても調整額は増えません。たとえば校長を5年(60月)務めれば、60月すべてが校長の区分になります。校長が3年なら、36月が校長の区分で、残りの24月はその次に高い区分(教頭のときの月など)で数えます。
東京都:退職前20年の点数を合計
東京都「職員の退職手当に関する条例」は、退職の日の属する月の末日から20年前までの期間(調整額期間)の各月について、区分ごとの点数を合計し、1点につき1,100円を掛けます(第7条・第8条)。点数は区分に応じて10点〜70点で、どの職をどの区分にするかは東京都規則で定めます。
60月の上限はありません。20年の範囲内で、校長の区分にいた月が多いほど調整額が増えていきます。「5年で頭打ち」は東京都には当てはまりません。なお、休職・育児休業などで職務に従事しなかった月は、規則の定めにより調整額期間から除かれます(第8条第3項)。
| 国の制度・埼玉県 | 東京都 | |
|---|---|---|
| 数える期間 | 在職期間の各月から、額の高い順に60月 | 退職前20年の各月 |
| 計算 | 区分ごとの調整月額の合計 | 区分ごとの点数の合計 × 1,100円 |
| 上限 | 60月(5年)分 | 60月の上限なし(20年の範囲) |
| 条文 | 国 第6条の4、埼玉県 第7条の4 | 第7条・第8条 |
自分の自治体がどちらの仕組みか(あるいは別の仕組みか)は、「職員の退職手当に関する条例」の調整額の条文で確かめられます。
60歳で校長を降りたら退職金はどうなる?役職定年とピーク時特例

役職定年(管理監督職勤務上限年齢)とは
地方公務員法 第28条の2は、管理監督職(管理職手当を支給される職員の職と、これに準ずる職で条例で定める職)に就いている職員が「管理監督職勤務上限年齢」に達したら、その翌日から最初の4月1日までの間に、管理監督職以外の職へ降任(または降給を伴う転任)をする、と定めています。いわゆる役職定年です。
上限年齢は条例で定めることになっていて、東京都「職員の定年等に関する条例」は原則60歳(第7条)です。国の職員も60歳で、総務省「定年引上げの実施に向けた質疑応答(第8版)」は、管理監督職の職員は60歳に達した日の翌日から次の4月1日までの間に降任などをされる、と説明しています。教員の定年と役職定年の全体は、教員の定年は何歳?55歳・60歳・65歳で変わる給料と再任用で整理しています。
管理職を降りると給料表の級が下がります。また、60歳に達した後の最初の4月1日からは給料月額を7割にする措置があります(国の給与法 附則第8項、東京都の学校職員の給与に関する条例 付則第9項)。ただし国・東京都・埼玉県とも、役職定年で降任した人には、降任前の給料月額の7割に届かない分を差額として支給する規定があり(国の給与法 附則第10項、東京都の同条例 付則第12項、埼玉県の学校職員の給与に関する条例 附則第10項。降任後の級の最高号給が上限)、国と埼玉県ではこの差額も退職手当の基礎の給料月額に含めます(総務省Q&A 問18-3、埼玉県の退職手当条例 附則第33項)。管理職の給料そのものの話は、教頭・校長の給料はどう変わる?|管理職手当と教職調整額、在校時間・役職定年まででまとめています。
退職手当の基本額は「退職日の給料月額」が基準でした。そのままだと、降りたあとの低い給料月額で計算されてしまいます。そこで置かれているのが、ピーク時特例です。
ピーク時特例:下がる前の期間は、下がる前の給料月額で計算
国家公務員退職手当法 第5条の2(東京都の条例では第6条の2、埼玉県の条例では第5条の2)は、給料表の改定(減額改定)以外の理由で給料月額が下がったことがある人について、基本額を次の2つの合計にします。
・①下がる前の給料月額 × 下がる日の前日までの勤続年数で計算した支給率
・②退職日の給料月額 × (全期間で計算した支給率 − ①の支給率)
60歳での役職定年による降任は、国の制度でも東京都でも、この特例の対象です。総務省「定年引上げの実施に向けた質疑応答(第8版)」も、定年引上げに伴う俸給月額の減額はピーク時特例の適用対象とし、地方は国の取扱いを踏まえて条例で定めるよう求めています(問18-3)。
ただし東京都では、特例の対象が「55歳に達した年度の翌年度以降」の減額に限られ、分限処分による降任・降給などは対象外です(東京都「職員の退職手当に関する条例施行規則」 第6条・第7条)。条件は条例や規則で違うので、「降任の前に辞めないと退職金が減る」とも「減らない」とも、一律には言えません。
計算例:国の制度(埼玉県の条例も同じ支給率)の場合
仮に、給料月額45万円の校長が、勤続37年で迎えた60歳の役職定年で降任し、給料月額が30万円になったあと、62歳の定年で退職した(勤続39年)とします。
| 計算 | 金額 |
|---|---|
| 特例がないとした場合:30万円 × 47.709 | 約1,431万円 |
| 特例の①:45万円 × 47.709(降任の前日までの勤続37年。35年以上なので上限の率) | 約2,147万円 |
| 特例の②:30万円 × (47.709 − 47.709) | 0円 |
| 基本額(①+②) | 約2,147万円 |
数字は仕組みを示すための仮の値です。
このケースでは、降任の前日までに勤続35年を超えているので、①の時点で定年退職の支給率が上限に達しています。そのため②は0になり、基本額は「校長だったときの給料月額 × 47.709」と同じになります。降任の前日までの勤続が35年に届いていない場合は、②の部分(退職日の給料月額 × 残りの率。国と埼玉県では、上の差額を含んだ額です)が足されます。
調整額も、国の制度・埼玉県の条例では高い区分の60月を数えるので、校長の月が60月あれば、降任後の月は数に入りません(埼玉県の小・中学校の校長なら約325万円のまま)。
東京都は、支給率の表も基本額の上限も国と違う(第6条)ので、上の計算例はそのまま当てはまりません。調整額については、役職定年で降任した人について、「退職の日から遡る20年」と「降任の日の前日から遡る20年」のそれぞれで点数を計算し、多い方を使う特例があります(東京都「職員の退職手当に関する条例」 第8条の2)。
役職定年の前に確認しておきたいこと
・自分の自治体の条例にピーク時特例があるか。対象になる時期と事由(東京都は55歳以降の減額に限るなど)
・降任の前日までの勤続年数(国と同じ支給率の自治体なら、35年に届いているか)
・調整額の数え方(高い順の60月か、退職前20年か、役職定年の特例があるか)
・聞く先:教育委員会の退職手当の担当、学校の事務職員
定年前に辞める・希望降任する場合に確認したいこと

60歳を過ぎてから、定年前に自分で辞める場合
国の制度では、勤続25年以上の人が60歳に達した日以後に、非違によることなく退職した場合、当分の間、定年退職と同じ第5条の支給率で基本額を計算します(国家公務員退職手当法 附則第13項)。埼玉県の条例にも同じ規定があります(附則第35項)。
定年が62歳・63歳と延びていても、こうした規定を置く自治体なら、60歳以降は自分で辞めても定年退職と同じ支給率です。
東京都の条例は、自己都合の退職でも支給率を下げない代わりに、自己都合退職には調整額を支給しません(第5条第2項・第6条)。自分の自治体の扱いは、教育委員会の退職手当の担当に確認してください。
60歳より前に自分で辞める場合
国の制度(埼玉県の条例も同じ値)では、60歳より前の自己都合退職は第3条の支給率になり、定年退職より低くなります。勤続35年なら自己都合は39.7575、定年は47.709で、給料月額45万円なら基本額の差は約358万円です。
調整額は、国の制度では自己都合退職でも勤続25年以上なら減額されません(勤続9年以下は支給なし、10〜24年は半額。第6条の4第4項)。東京都は前のとおり、自己都合退職には調整額を支給しません。
また国の制度と埼玉県の条例には、勤続20年以上で一定の年齢以上の人が、定年より一定期間前までに、早期退職の募集への応募(国)や勧奨(埼玉県)などの理由で退職した場合に基本額を上乗せする特例もあります(国・埼玉県とも第5条の3)。対象の年齢や期間は政令・規則で決まるので、募集や勧奨があるときは条件をよく確認してください。
希望降任(自分から校長・教頭を降りる)場合
自治体によっては、本人の希望で管理職から降りる制度があります。たとえば福島県教育委員会の人事事務の手引きには、校長降任・教頭降任の「降任希望願」の様式があります。
退職金への影響は、5章のピーク時特例の範囲で決まります。国の制度は減額の時期を年齢で区切りませんが、東京都は55歳に達した年度の翌年度以降の減額に限るため、それより前に希望降任した場合は特例の対象外です。埼玉県の条例の第5条の2は、国と同じく時期を区切る書き方になっていません。調整額は、国・埼玉県では降りる前の高い区分の月が60月の中に残ります。
税金:勤続38年なら退職所得控除は2,060万円
退職手当には所得税がかかりますが、退職所得控除があります(所得税法 第30条)。控除額は、勤続20年以下なら40万円 × 勤続年数、20年を超えると800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)で、勤続38年なら2,060万円です。控除を超えた部分の2分の1が退職所得になります。
2章で試算した小学校の校長(約2,457万円)で勤続38年なら、控除を超える約397万円の2分の1、約198万円が退職所得です。手取りの計算は、教員全体の退職金の記事で解説しています。
管理職になる・続ける・降りる:退職金だけで決めないために

私立高校で1年、公立中学校で11年勤め、2020年に退職しました。そのうえで、相談の場では、管理職試験を勧められて迷っている方のお話を伺うことがあります。
退職金の差は、計算すれば数字で出ます。ただ、その差をどう評価するかは人によって違います。管理職の打診を受けたときや、役職定年が近づいたときに、数字を知らないまま「なんとなく」で決めてほしくない。それが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。
当社の元教員キャリア実態調査2026(元教員107名が回答)では、管理職の経験があると答えた方が7名いました。その方たちの自由記述から紹介します。
「職場に子供がいる職業は他にはない。できるだけ続けてほしい。」
——50代以上・管理職経験あり・元小学校教員・男性(元教員キャリア実態調査2026 自由記述)
「自分の適性やライフスタイル、またはライフステージなど、様々なことが絡むので、みんながみんな嫌になったら辞めればいい、と思えるわけではないと思いますが、自分の人生や居場所を自分で決める権利と力は全員がもっていると思います。」
——50代以上・元副校長(義務教育学校)・女性(元教員キャリア実態調査2026 自由記述)
「学校外の方々とつながりを作っておくことが大切です。このことがきっと将来のキャリアに活きてくるはずです。そのためにも積極的に学校の外に出て活動してみてください。」
——50代以上・管理職経験あり・元小学校教員・男性(元教員キャリア実態調査2026 自由記述)
「折を見て、自分を守る、育てるための勉強なり資格習得なりをされることを薦めます。」
——50代以上・管理職経験あり・元中学校教員・男性(元教員キャリア実態調査2026 自由記述)
管理職を目指す道も、目指さない道も、役職定年まで務める道も、途中で降りる道も、定年前に次の仕事へ進む道も、どれも本人が選んでいい道です。延べ1,000名以上のキャリア支援に携わってきた元教員として、どの道を選ぶにしても、制度を知ったうえで選んでほしいと思っています。
定年後の働き方の準備は50代教員の定年後セカンドキャリア|退職前に始める準備チェックリスト、年金の見込みは教員の年金は月いくら?で整理しています。
自分の数字を確かめる先
・学校の事務職員:いまの給料月額(級・号給)と、定年時の見込み
・教育委員会の退職手当の担当:支給率、調整額の区分、ピーク時特例の扱い
・都道府県の例規集(政令指定都市立の学校は市、市区町村立の高校はその市区町村):「職員の退職手当に関する条例」と、区分を定める規則
よくある質問
Q. 校長の退職金はいくらですか?
A. 全国一律の相場はなく、自治体の条例で決まります。国の制度(埼玉県の条例も同じ支給率)で、文部科学省「学校教員統計調査(令和4年度)」の公立小学校の校長の平均給料月額446,800円に定年退職の支給率47.709を掛け、埼玉県の区分で小・中学校の校長の調整額60月分(約325万円)を足すと、約2,457万円です。東京都のように仕組みが違う自治体もあります。
Q. 教頭の退職金は教諭とどれくらい違いますか?
A. 差は「退職日の給料月額の差×支給率+調整額の差」で出します。教諭は教職調整額(2026年は給料月額の5%)を加えた額が基本額の基礎になり、教頭には教職調整額がないので、給料月額の差ほどは開きません。埼玉県の区分では教頭は第5号で、経験の長い教諭と同じ区分のため、調整額の差がつかない場合もあります。
Q. 60歳の役職定年で校長を降りると、退職金は減りますか?
A. 給料月額が下がる前の期間は下がる前の給料月額で計算するピーク時特例があり、60歳での役職定年による降任は、国の制度でも東京都でも対象です。ただし東京都では55歳に達した年度の翌年度以降の減額に限られるなど、条件は条例で違います。国と同じ支給率の自治体で、降任の前日までに勤続35年以上なら、基本額は降任前の給料月額で計算した額と同じになります。
Q. 校長を何年務めれば退職金に反映されますか?
A. 基本額は退職日の給料月額で決まるので、校長を務めた年数そのものは反映されません。年数が効くのは調整額で、国の制度と埼玉県の条例では、額の高い月から60月(5年)分を数えます。東京都は退職前20年の各月の点数を合計する仕組みで、60月の上限はありません。
Q. 定年前に自分から辞めると、校長の退職金は減りますか?
A. 国の制度では、勤続25年以上で60歳以後に非違なく退職すれば、定年前でも定年退職と同じ支給率です(国家公務員退職手当法附則第13項。埼玉県の条例は附則第35項)。60歳より前の自己都合退職は支給率が下がり、勤続35年なら定年の47.709に対して39.7575です。東京都は自己都合を理由に支給率を下げない代わりに、自己都合退職には調整額を支給しません。
Q. 管理職手当は退職金に入りますか?
A. 入りません。退職手当の基本額は給料月額を基礎に計算し、管理職手当は地方自治法で給料とは別の手当として定められています。一方、教諭の教職調整額は、給特法により退職手当の算定の基礎に加えることになっており、校長・副校長・教頭には教職調整額がありません。
まとめ
・校長・教頭の退職金は「退職日の給料月額×支給率+調整額」。全国一律の相場はなく、条例で決まる
・国の制度と文科省の平均給料月額で試算すると、公立小・中学校の校長は約2,450万円前後、教頭は約2,290万円前後(埼玉県の区分で60月すべてその職・定年退職の前提)
・管理職手当は基本額に入らない。教諭は教職調整額が基礎に入るので、差は給料月額の差ほど開かない
・調整額は、国・埼玉県は高い順に60月分、東京都は退職前20年の点数の合計
・60歳の役職定年で降りても、ピーク時特例で下がる前の期間は下がる前の給料月額で計算(国・東京都とも対象。東京都は55歳以降の減額に限るなど条件つき)
・60歳以降の退職は、国の制度・埼玉県では定年前でも定年と同じ支給率。60歳前の自己都合は支給率が下がる
・自分の数字は、事務職員・教育委員会・例規集で確かめる。そのうえで、なる・続ける・降りる・辞めるを選べばいい
