教員の副業と確定申告|20万円以下でも住民税の申告は必要。雑所得・普通徴収・兼業許可との違い【元教員が解説】

教員の副業で確定申告が必要になるのは、副業の所得が年間20万円を超えたときです。ただしこの「20万円ルール」は所得税だけの話で、20万円以下であっても住民税の申告は原則として必要になります。

ここが入れ替わったまま1年が過ぎてしまうと、あとから市区町村の窓口で指摘されることがあります。しかも住民税は、勤務先の給与から天引きされる仕組み(特別徴収)と直結しているので、「知られたくない」と思っている方ほど、ここを飛ばすと逆に困ることになります。

もうひとつ、混ざりやすいのが「兼業許可(服務のルール)」と「確定申告(税のルール)」は別々の手続きだという点です。許可を取っても申告義務は消えませんし、申告をしたからといって許可を取ったことにはなりません。手続きの窓口も、根拠になる法律も違います。

この記事では、教員の副業にかかる税金の実務だけを扱います。数字はすべて所得税法・地方税法の条文と、国税庁のタックスアンサーに当たって確認しました。「そもそも副業をしていいのか」「どんな副業なら許可されるのか」という制度そのものは教員の副業は禁止?完全ガイドにまとめてあるので、ここでは要点だけに絞ります。

新川紗世 Re-Career代表

この記事の著者

新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役

公立中学校で11年、私立高校で1年、あわせて12年、英語教員として勤務。教員時代に病休を経験し退職。その後、教員専門のキャリア支援会社を設立。著書『「やめたいかも」と一度でも思ったら読む 教員の転職思考法』。スタッフ全員が元教員のキャリア支援会社を率い、自身も延べ1,000名以上のキャリア支援に携わる。

⏱️ 30秒でわかる結論

教員の副業は「所得税」「住民税」「兼業許可」の3つを別々に処理する

所得税給与1か所・年収2,000万円以下なら、給与・退職所得以外の所得の合計が20万円以下のとき確定申告は不要(所得税法121条1項1号)

住民税20万円ルールはない。副業が雑所得なら、金額にかかわらず市区町村への申告が原則必要(地方税法317条の2第1項)

所得区分教員の副業の多くは「業務に係る雑所得」。青色申告特別控除は事業所得か不動産所得でないと使えない

天引き回避確定申告書で「自分で納付」を選べるのは給与以外の所得の分だけ(地方税法321条の3第2項ただし書)

兼業許可税の申告とは別物。許可基準を設定している自治体は64%で、全国一律ではない(総務省・令和7年6月11日通知)

目次

教員の副業で確定申告が必要になるライン|「20万円」は所得税だけの話

教員の副業と確定申告・住民税・兼業許可の関係を整理したイメージ

まず、混ざりやすい3つを分けます。教員が副業をするとき、性質のまったく違う3つの手続きが同時に走ります。どれか1つをやれば残りも済む、という関係ではありません。

何の話か 判断のライン 根拠 相手先
所得税の確定申告 給与・退職所得以外の所得の合計が20万円を超えると必要 所得税法121条1項1号国税庁 No.1900 税務署
住民税の申告 金額のラインはない。給与以外の所得があれば原則として必要 地方税法317条の2第1項 住んでいる市区町村
兼業許可(服務) 金額とは無関係。報酬を得て事業や事務に従事するなら許可が要る 地方公務員法38条1項教育公務員特例法17条1項 服務を監督する教育委員会(文科省通知)

いちばん多い誤解は、この表の1行目だけを見て「20万円以下だから、全部やらなくていい」と考えてしまうことです。20万円という数字が出てくるのは所得税だけで、住民税にも兼業許可にも、そんな金額のラインはありません。

「20万円以下だから、確定申告も住民税も何もしなくていいんですよね?」
——キャリア相談でよく受ける質問

私自身は、公立中学校で11年、私立高校で1年、あわせて12年、英語の教員として働いていました。教員の給与は住民税が給与から天引きされる仕組み(特別徴収)なので、私自身も、在職中に自分で住民税の額を計算したり、申告書を書いたりした記憶がありません。だからこそ、副業を始めた最初の年に「何を、いつ、どこへ出すのか」でつまずく方が多いのだと思います。

この記事で扱わないこと

税額の具体的な計算や、個別の所得区分の判定は、税務署または税理士にご確認ください。この記事は制度の全体像を整理するものです。

「20万円ルール」の正体|所得税法121条が決めているのは「申告しなくてよい場合」だけ

所得税法121条の20万円ルールを条文から確認するイメージ

「副業20万円以下なら確定申告は不要」という言い方は、正確には少しずれています。所得税法121条の見出しは「確定所得申告を要しない場合」で、この条文が決めているのは「申告しなくてよい場合」だけです。「20万円以下なら申告してはいけない」でも「20万円以下なら課税されない」でもありません。

条文が言っていること

教員の多くが当てはまるのは121条1項1号です。要件を分解すると、次の3つを全部満たしたときに、その年の確定申告書を出さなくてよい、という形になっています。

・その年中に支払を受けるべき給与等の金額が2,000万円以下であること
1か所から給与等の支払を受けていて、その全部について源泉徴収または年末調整がされていること
・その年の給与所得・退職所得以外の所得金額の合計額が20万円以下であること

国税庁のタックスアンサー No.1900(給与所得者で確定申告が必要な人)も、同じ内容を「給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える人」は確定申告をしなければならない、と説明しています。

20万円は「売上」ではなく「所得」

ここを間違えると、必要のない申告をしたり、逆に必要な申告を落としたりします。

副業が業務委託や執筆、教材販売のように雑所得や事業所得になる場合、20万円で見るのは収入から必要経費を引いたあとの金額です(国税庁 No.1500 雑所得)。売上が30万円でも、経費が12万円あれば所得は18万円なので、この号のラインは超えません。

一方、副業がアルバイトなどの給与所得だけの場合は話が変わります。給与を2か所以上から受けている人は121条1項2号イが適用され、「従たる給与等の支払者から支払を受ける給与等の金額」と、給与・退職所得以外の所得金額との合計で20万円を判定します。ここは経費を引く前の収入金額で見ます。同じ20万円でも、中身が違うということです。

いちばん見落とされる例外:確定申告を「する」場合

医療費控除を受けたい、ふるさと納税でワンストップ特例を使わなかった、住宅ローン控除の初年度だった。こうした理由で確定申告書を出すのであれば、20万円以下の副業所得も、その申告書に入れなければなりません。

これは国税庁のNo.1900 質疑応答(確定申告を要しない場合の意義)に、はっきり書かれています。

「この規定は確定申告を要しない場合について規定しているものであり、確定申告を行う場合にも、この20万円以下の所得を申告しなくてもよいという規定ではありません。したがって(中略)例えば、医療費控除の適用を受けるための還付申告を行う場合には、給与所得だけでなく、その20万円以下の所得も併せて申告をする必要があります」

つまり「20万円以下だから書かなくていい」と考えて医療費控除だけを申告すると、それは正しくない申告になってしまいます。申告書を出すなら、全部書く。ここは覚えておいてください。

教員の副業と住民税は別ルート|所得が20万円以下でも申告が必要な理由

住民税の申告書を市区町村へ提出する手続きのイメージ

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

住民税に「20万円ルール」はありません。地方税法317条の2第1項は、市町村民税の納税義務者は3月15日までに申告書を市町村長へ提出しなければならない、と定めています。そのうえで、ただし書で申告が免除される人を挙げています。給与の支払を受けている人のうち免除の対象になるのは、条文の言葉でいうと「前年中において給与所得以外の所得を有しなかつたもの」です(給与支払報告書を提出する義務がある者から給与の支払を受けている人に限られます)。

読み替えると、こうなります。副業で給与以外の所得(雑所得など)が1円でもあれば、この免除には当てはまらないということです。金額のラインは、条文のどこにも出てきません。

3つのパターンで整理する

あなたの状況 所得税の確定申告 住民税の申告 根拠
所得税の確定申告をした(20万円超・または医療費控除などで申告した) する 不要。確定申告書が住民税の申告書とみなされる 地方税法317条の3第1項
副業が雑所得などで、所得が20万円以下。確定申告はしない 不要 必要。市区町村へ住民税の申告書を出す 地方税法317条の2第1項(ただし書に当たらない)
副業がアルバイトなど給与所得だけで、確定申告はしない 不要(従たる給与+他の所得が20万円以下のとき) 原則不要。勤務先が給与支払報告書を市区町村へ出すため 地方税法317条の6第1項/317条の2第1項ただし書

2行目が、いちばん取りこぼされるところです。「所得税の確定申告は要らない」と分かった瞬間に手続きが終わったつもりになってしまい、住民税の申告書を出さないまま年を越してしまう。これが一番多いパターンだと思います。

条例による免除の枠は、住民税がかからない人のためのもの

317条の2第1項のただし書には、もうひとつ免除の枠があります。「所得割の納税義務を負わないと認められる者のうち当該市町村の条例で定めるもの」です。ただしこれは、そもそも住民税の所得割がかからない水準の人を条例で拾うための枠です。給与を受け取っている現職の教員は所得割の納税義務を負いますから、この枠には基本的に当てはまりません。副業で給与以外の所得がある教員は、金額にかかわらず住民税の申告が必要だと考えてください。

「うちの自治体は申告しなくていいらしい」という話を同僚から聞いて、そのまま自分に当てはめるのは危険です。その同僚が、そもそも所得割のかからない水準だっただけかもしれません。手続きの進め方で迷うときの相談先は、住民票のある市区町村の市民税・町民税の担当課です。「給与のほかに雑所得が◯万円あります。住民税の申告書はどこでもらえますか」と電話で聞けば、その場で答えが返ってきます。

住民税の申告でつまずかないための3点

  • 期限は3月15日。所得税の確定申告と同じ日ですが、提出先は税務署ではなく市区町村です
  • 確定申告をしたなら、住民税の申告は要りません。二重に出す必要はありません(地方税法317条の3第1項)
  • 迷ったら、市区町村に電話で確認する。聞くのは「申告が必要かどうか」ではなく、申告書の入手方法と書き方です。給与以外の所得がある以上、申告は必要だと考えて動くほうが安全です

教員の副業収入はどの所得になるか|多くは「業務に係る雑所得」

雑所得と事業所得の区分を国税庁の通達で確認するイメージ

確定申告が必要かどうかを判断する前に、その副業収入がどの所得区分になるかを決める必要があります。ここが決まらないと、20万円を「所得」で見るのか「収入」で見るのかも決まりません。

教員の副業は、多くが「業務に係る雑所得」

国税庁は所得税基本通達35-2(令和4年10月7日改正)で、「業務に係る雑所得」に当たるものを例示しています。その4号がこれです。

「原稿、さし絵、作曲、レコードの吹き込み若しくはデザインの報酬、放送謝金、著作権の使用料又は講演料等に係る所得」
(次に掲げるような所得は、事業所得又は山林所得と認められるものを除き、業務に係る雑所得に該当する)

執筆、教材づくり、講演、研修講師。教員が持っているスキルをそのまま活かす副業は、このリストにほぼそのまま乗ります。原則は雑所得で、事業所得と認められるものだけが例外、という組み立てです。

「事業所得にすれば得」とは限らない

同じ通達の(注)は、事業所得かどうかの判定を次のように示しています。

・事業所得と認められるかどうかは、その活動が社会通念上、事業と称するに至る程度で行われているかで判定する
・その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(収入金額が300万円を超え、かつ事業所得と認められる事実がある場合を除く)は、業務に係る雑所得に該当する

ここまでは、よく引用されます。ただ、国税庁が同時に出した解説には、その先が書かれています。帳簿書類を保存していても、次のような場合は個別に判断するとされているのです。

「例えば、その所得の収入金額が、例年、300万円以下で主たる収入に対する割合が10%未満の場合は、『僅少と認められる場合』に該当すると考えられます」
(※「例年」とは、概ね3年程度の期間をいいます)

教員として働きながらの副業は、多くの場合ここに当たります。教員の給与が主たる収入で、副業の収入がその10%未満なら、帳簿をつけていても事業所得と認められるとは限らないということです。

所得区分で何が変わるか

業務に係る雑所得 事業所得
青色申告特別控除(10万・55万・65万円) 使えない 使える(要件を満たす場合)
赤字と給与所得の損益通算 できない できる
必要経費 計上できる 計上できる
記帳・帳簿の保存 前々年の収入金額が300万円超なら現金預金取引等関係書類の保存が必要 必要

青色申告特別控除は、国税庁 No.207255万円・65万円の控除の要件のひとつに「不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいること」を挙げています。10万円の控除についても、そもそも青色申告ができるのは不動産所得・事業所得・山林所得を生ずべき業務を行う人に限られる(所得税法143条)ため、雑所得では、この入口に立てません。損益通算についても、所得税法69条1項が対象にしているのは不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の4つで、雑所得は入っていません。国税庁 No.1500も注意事項として「雑所得の金額の計算上生じた損失の金額は、他の所得の金額と損益通算はできません」と明記しています。

「副業で赤字が出たら、教員の給与の税金が戻ってくると聞きました」
——キャリア相談でよく受ける質問

この質問には、雑所得であれば「戻りません」とお答えすることになります。「開業届を出せば事業所得になる」という説明を見かけますが、開業届は所得区分を決める書類ではありません。判定するのは、あくまで活動の実態です。

なお記帳義務については、国税庁 No.1500が、令和4年分以後の所得税について「その年の前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える方は、現金預金取引等関係書類を保存する必要があります」、また「その年の前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が1,000万円を超える方が確定申告書を提出する場合には、総収入金額や必要経費の内容を記載した書類(収支内訳書など)の添付が必要になります」としています。逆に、その年の前々年分の収入金額が300万円以下の方には、その年に収入した金額と支出した費用の額で計算できる現金主義の特例があります(確定申告書にこの特例を受ける旨の記載が必要です)。詳しくは国税庁「個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」にまとまっています。

副業の種類別|教員の確定申告 早見表

副業の種類ごとに所得区分と確定申告の要否をまとめた早見表のイメージ

教員がよく選ぶ副業を、税の扱いで並べ直しました。所得区分は「契約の名前」ではなく「契約の実態」で決まります。同じ「オンライン家庭教師」でも、雇用されているのか、業務委託なのかで、扱いはまったく変わります。

副業の例 想定される所得区分 源泉徴収 20万円の見方
塾・予備校でのアルバイト(雇用契約) 給与所得 あり 従たる給与の収入金額+他の所得で判定
オンライン家庭教師(業務委託) 業務に係る雑所得 契約による 収入−必要経費の所得で判定
執筆・原稿料・講演料・研修講師 業務に係る雑所得(通達35-2⑷) あり(10.21%・支払者が源泉徴収義務者の場合) 収入−必要経費の所得で判定
教材・note等のコンテンツ販売 業務に係る雑所得 なし 収入−必要経費の所得で判定
地域クラブ活動での部活動指導(兼職兼業) 雇用なら給与所得/委託なら雑所得 契約による 契約形態で変わる
株式・投資信託(特定口座・源泉徴収あり) 譲渡所得・配当所得 あり 申告不要を選べば、20万円の判定に含めない
不動産の賃貸 不動産所得 なし 収入−必要経費の所得で判定

原稿料・講演料の源泉徴収は、国税庁 No.2795が「100万円以下 A×10.21%/100万円超 (A−100万円)×20.42%+102,100円」と定めています。あらかじめ引かれているので、確定申告をすると納めすぎた分が戻ってくることがあります。「申告=必ず納税」ではありません。

株式や投資信託については、特定口座(源泉徴収あり)で確定申告をしないことを選択した所得は、20万円を判定するときの「各種の所得金額」に含まれません(国税庁 No.1900)。所得区分そのものの全体像は国税庁 No.1300 所得の区分のあらましが一覧になっています。

必要経費として何を入れられるか

所得税法37条1項は、必要経費を「総収入金額を得るため直接に要した費用」と「その所得を生ずべき業務について生じた費用」としています。副業のために買った書籍、通信費、機材、交通費などが該当しうる、という考え方です。

注意が必要なのは、生活と共用しているものです。所得税法45条1項1号は家事上の経費とこれに関連する経費を必要経費に算入しないと定めており、国税庁 No.2210は家事関連費について「取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます」としています。

自宅の通信費や電気代をまるごと経費にすることはできない、という意味です。どの範囲まで区分できるかは実態によるので、金額が大きくなってきたら税務署か税理士に確認してください。なお同じNo.2210に「所得税や住民税は必要経費になりません」とも書かれています。

教員の副業 確定申告の実務4ステップ|年末調整では終わらない

確定申告を4つのステップで進める手順のイメージ

教員も、秋から冬にかけて扶養控除等申告書や保険料控除申告書を勤務先に出して、年末の給与で年末調整を受けます。ここで所得税の精算が終わるので、「もう終わった」と感じてしまうのですが、年末調整には副業の所得は入っていません。

所得税法190条は、年末調整を「給与所得者の扶養控除等申告書を提出した居住者」に対して、「その提出の際に経由した給与等の支払者」が行う手続きとして定めています。精算されるのは、その支払者が払った給与だけです。副業の雑所得も、他社からの報酬も、勤務先は把握していませんし、精算もできません。

ステップ1:1年分(1月1日〜12月31日)の記録を集める

副業の入金がわかるもの(振込明細、支払調書、プラットフォームの売上レポート)と、経費のレシート・領収書をそろえます。年度(4月〜3月)ではなく暦年(1月〜12月)で区切るところが、学校の感覚とずれるポイントです。

ステップ2:所得区分を確定させ、20万円を超えるか判定する

雑所得・事業所得なら「収入−必要経費」、副業が給与所得なら「収入金額」で見ます。ここで20万円を超えていれば所得税の確定申告へ、超えていなければ住民税の申告へ進みます。医療費控除やふるさと納税で確定申告をするなら、20万円以下でも申告書に入れます。

ステップ3:確定申告書をつくる(2月16日〜3月15日)

国税庁 No.2024は「翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告を行い、所得税を納付することになっています」としています。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で画面の案内に沿って入力すれば、税額は自動計算され、e-Taxまたは印刷して郵送で提出できます。3月は学年末で学校がいちばん動く時期なので、2月中に手をつけることを強くおすすめします。

ステップ4:住民税の徴収方法を選ぶ(ここを飛ばさない)

確定申告書の第二表には「住民税・事業税に関する事項」という欄があり、給与・公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法を「特別徴収」か「自分で納付」から選べるようになっています。ここを空欄のまま出すと、次の章で説明する結果になります。

所得税の確定申告をしない場合は、市区町村へ出す住民税の申告書のほうに同じ選択欄があります。確定申告書でこの欄が使えるのは、地方税法317条の3第1項によって確定申告書が住民税の申告書とみなされるからです。同条3項は、確定申告書を提出する者は市町村民税の賦課徴収につき必要な事項を付記しなければならない、とも定めています。

教員のスケジュール感で置き直すと

  • 1月:源泉徴収票を受け取る。副業の1年分の記録をそろえる
  • 2月:所得区分を決め、確定申告書を作る(16日から受付)。学年末の忙しさが本格化する前に
  • 3月15日:所得税の確定申告と住民税の申告、どちらも期限
  • 5〜6月:住民税の税額決定通知が届く。ここで初めて「反映され方」がわかる

3月15日が土日にあたる年は期限が翌開庁日になります。その年の国税庁の案内で必ず確認してください。

住民税の徴収方法|「自分で納付」を選べるもの・選べないもの

住民税の特別徴収と普通徴収の選び方を確認するイメージ

「副業が勤務先に知られるのは住民税から」という話は、噂ではなく地方税法に仕組みとして書かれています。まず、そこを正確に押さえます。

なぜ給与の支払者に情報が届くのか

地方税法321条の3第1項は、給与所得者について、その年度の前年中の給与所得に係る所得割額と均等割額特別徴収(給与からの天引き)で徴収すると定めています。条文が天引きの対象として定めているのは、あくまで給与にかかる分の住民税です。そして321条の4第1項後段は、市町村長が特別徴収税額を「当該特別徴収義務者及びこれを経由して当該納税義務者に通知しなければならない」としています。同条2項により、この通知は当該年度の初日の属する年の5月31日までに行われます。

特別徴収義務者は、給与を支払っている側です。つまり通知は、本人に直接ではなく給与の支払者を経由して届く仕組みになっています。これが「住民税の額が変わると気づかれる」と言われる根拠です。

「自分で納付」を選べる範囲には、条文上の限界がある

321条の3第2項の本文は、給与所得者に給与以外の所得がある場合、市町村は条例の定めるところによって、その分の所得割額を特別徴収に加算できる、としています。そして、そのただし書がこう続きます。

「ただし、第三百十七条の二第一項の申告書に給与所得以外の所得に係る所得割額を普通徴収の方法によつて徴収されたい旨の記載があるときは、この限りでない」

これが、確定申告書第二表の「自分で納付」にチェックを入れる行為の法的な根拠です。ただし、条文をよく読むと、選べる対象が限定されています。

副業の所得区分 「自分で納付」を選べるか 理由
雑所得・事業所得・不動産所得など給与以外 選べる 321条の3第2項ただし書の対象が「給与所得以外の所得に係る所得割額」だから
アルバイトなど給与所得 選べない 給与所得に係る所得割額は321条の3第1項で特別徴収と定められているから

「住民税を「自分で納付」にすれば、学校には絶対に知られないんですか?」
——キャリア相談でよく受ける質問

正直にお答えすると、「絶対」とは言えません。理由は3つあります。

ひとつめ。副業がアルバイト(給与所得)なら、そもそも選べません。ふたつめ。321条の3第2項の本文が「当該市町村の条例の定めるところによつて」となっているとおり、運用は市区町村ごとに違います。みっつめ。給与支払報告書や特別徴収税額の通知のやりとりは、本人の希望とは別に、法律で定められた手続きとして毎年動いています。

そのうえで申し上げたいのは、順番の問題だということです。兼業許可を取ってから始めていれば、住民税に反映されること自体は困りごとになりません。「知られない方法」を探すより先に、許可の可否を確認する。これがいちばん確実で、あとから困らないやり方だと思います。

なお321条の3第3項には、特別徴収になったあとでも、やむを得ない事情があると認められる場合には普通徴収に切り替える申出ができる旨が定められています。実際の運用は市区町村ごとに違うので、条文を確認したうえで担当課に相談してください。

申告しなかったらどうなるか|無申告加算税と、服務上の問題

申告を忘れた場合の無申告加算税と服務上のリスクを考えるイメージ

申告を忘れた、または意図的に出さなかった場合に何が起きるか。税の問題と、服務の問題は別々に起きます。混ぜずに整理します。

税:無申告加算税と延滞税

国税庁 No.2024(確定申告を忘れたとき)によると、期限後申告になった場合の無申告加算税は次のとおりです(令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するもの=令和5年分以降)。

どの段階で申告したか 無申告加算税の割合
税務署の調査の事前通知に、自主的に期限後申告した 納付すべき税額の5%
調査の事前通知、調査による決定を予知する前に申告した 50万円までの部分 10%/50万円超300万円までの部分 15%/300万円超の部分 25%
調査を受けたに申告した、または決定を受けた 50万円までの部分 15%/50万円超300万円までの部分 20%/300万円超の部分 30%

同じページには、期限後申告であっても「その期限後申告が、法定申告期限から1か月以内に自主的に行われていること」など一定の要件をすべて満たす場合には無申告加算税はかからない、とも書かれています。気づいたらすぐ出すほうが、明らかに有利だということです。これとは別に延滞税もかかります。延滞税の割合は年によって変わるので、国税庁の最新の案内で確認してください。

住民税については、申告しなかったからといって課税されないわけではありません。市区町村は給与支払報告書などの課税資料をもとに税額を決める仕組みなので、資料が届いていれば、申告がなくても課税されます。あとから所得が把握されて、過年度分をさかのぼって課税されることもあります。

服務:これは税とは別の話

地方公務員法38条1項は、職員は任命権者の許可を受けなければ営利企業を営むことを目的とする会社等の役員等を兼ね、自ら営利企業を営み、または報酬を得ていかなる事業・事務にも従事してはならない、と定めています。許可を受けずに副業をしていた場合、同法29条1項1号の「この法律……に違反した場合」に当たり、戒告・減給・停職・免職の懲戒処分の対象になりえます。

「兼業許可は取りました。これで税金のほうも大丈夫ですよね?」
——キャリア相談でよく受ける質問

大丈夫ではありません。許可は服務の話、申告は税の話です。許可を取っていても所得があれば申告義務は発生しますし、逆にきちんと申告していても、無許可であれば服務上の問題は残ります。2つとも必要だと考えてください。

兼業許可(服務)と確定申告(税)は別の手続き|要点だけ

兼業許可を出す教育委員会と税務署・市区町村の役割の違いのイメージ

制度そのものは別記事に譲りますが、税の話をするうえで最低限おさえておきたい点だけ書いておきます。

公立学校の教員は「原則禁止」ではなく「許可制」

地方公務員法38条1項は「任命権者の許可を受けなければ……従事してはならない」という書き方です。全面的に禁止しているのではなく、許可があれば従事できるという構造になっています。

加えて、教育公務員特例法17条1項は、教育公務員は「教育に関する他の職を兼ね、又は教育に関する他の事業若しくは事務に従事することが本務の遂行に支障がないと任命権者(県費負担教職員については市町村の教育委員会)において認める場合には、給与を受け、又は受けないで、その職を兼ね、又はその事業若しくは事務に従事することができる」と定めています。

文部科学省が令和3年2月17日付で出した「学校の働き方改革を踏まえた部活動改革について」を受けた公立学校の教師等の兼職兼業の取扱い等について(通知)も、「地方公務員である公立学校の教師は……地方公務員法第38条や教育公務員特例法第17条等の規定に基づき、服務を監督する教育委員会の許可を得た場合には、営利企業等に従事することが可能である」と明記しています。関連する通知類は文部科学省「教師等の兼職兼業について」のページにまとめられています。

この「服務を監督する教育委員会」という言い方の根拠は地方教育行政の組織及び運営に関する法律43条1項です。同項は「市町村委員会は、県費負担教職員の服務を監督する」と定めています。公立の小中学校の教員(県費負担教職員)は、任命権者が都道府県の教育委員会、服務を監督するのが市町村の教育委員会という二層構造になっています。どちらの窓口に出すのかは自治体によって案内が違うので、勤務先の管理職か市町村の教育委員会に確認してください。

許可の基準は、全国一律ではない

総務省が令和7年6月11日に出した通知(総行公第72号「営利企業への従事等に係る任命権者の許可等に関する留意事項について」)は、フォローアップ調査の結果として「兼業許可に係る基準を設定している地方公共団体は、都道府県及び市区町村のうち64%となっており、前回調査(令和元年度)から25ポイント増加した」と報告しています。また、基準を庁内外に公表している団体は56%で、前回調査から21ポイント増加した、としています。

裏を返せば、36%の自治体には明文の許可基準がなく、44%は基準を公表していないということです。「ネットで見た基準」を自分の自治体に当てはめることはできません。確認先は、自分の服務を監督している教育委員会です。

なお同じ通知は、地方公務員については「一律にこれを禁止するのではなく、基本的原則を満たす場合においては、各任命権者の判断において、営利企業の従業員との兼業を認めることが可能である」ともしています。ここは国家公務員と地方公務員で扱いが違うところです。

非常勤講師は、そもそも許可制の対象から外れることがある

地方公務員法38条1項には、ただし書があります。非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員および同法22条の2第1項2号に掲げる職員を除く)については、この限りでない、というものです。また教育公務員特例法17条2項は、17条1項の規定は「非常勤の講師(地方公務員法22条の4第1項に規定する短時間勤務の職を占める者及び同法22条の2第1項2号に掲げる者を除く)」については適用しないとしています。同じ「非常勤講師」でも、任用の根拠条文によって結論が変わるということです。

任用区分によって結論が変わるので、非常勤講師・会計年度任用職員の副業のほうで確認してください。ただし、税の扱いは任用区分にかかわらず同じです。許可が要らない立場であっても、所得があれば申告義務は発生します。

私立学校の教員は地方公務員ではないので、38条も17条も適用されません。判断のもとになるのは学校法人の就業規則です。この場合も税のルールはまったく同じで、20万円の判定も住民税の申告も、公立と変わりません。制度面は教員の副業は禁止?完全ガイドにまとめています。

よくある質問

Q. 副業の所得が20万円以下なら、本当に何もしなくていいのですか?

A. いいえ。20万円以下で不要になるのは所得税の確定申告だけです(所得税法121条1項1号)。住民税にはこのラインがなく、地方税法317条の2第1項のただし書で申告を免除されるのは「前年中において給与所得以外の所得を有しなかつた」人です。副業が雑所得なら、この免除には当たりません。同じただし書には「所得割の納税義務を負わないと認められる者のうち当該市町村の条例で定めるもの」という枠もありますが、これはそもそも所得割がかからない水準の人を対象にしたものです。給与のある現職の教員は所得割の納税義務を負うため基本的に当てはまらず、金額にかかわらず市区町村への住民税の申告が必要とお考えください。

Q. 20万円は「売上」ですか、それとも「利益」ですか?

A. 副業が雑所得や事業所得なら、収入から必要経費を引いたあとの所得金額で判定します。副業がアルバイトなどの給与所得の場合は所得税法121条1項2号イが適用され、「従たる給与等の金額」=経費を引く前の収入金額と、給与・退職所得以外の所得金額との合計で見ます。同じ20万円でも、中身の見方が変わります。

Q. 医療費控除やふるさと納税で確定申告をします。20万円以下の副業も書くのですか?

A. 書きます。国税庁のNo.1900の質疑応答は「この規定は確定申告を要しない場合について規定しているものであり、確定申告を行う場合にも、この20万円以下の所得を申告しなくてもよいという規定ではありません」としています。医療費控除の還付申告をする場合には、給与所得だけでなく20万円以下の所得も併せて申告する必要がある、と明記されています。

Q. 住民税を「自分で納付」にすれば、勤務先には知られませんか?

A. 「絶対に知られない」とは言えません。確定申告書で「自分で納付」を選べる根拠は地方税法321条の3第2項ただし書ですが、対象は給与所得以外の所得に係る所得割額に限られます。副業がアルバイト(給与所得)なら選べません。また同項本文は「当該市町村の条例の定めるところによつて」と定めており、運用は市区町村ごとに異なります。兼業許可を先に取っておくことが、いちばん確実な備えになります。

Q. 副業を青色申告にして、65万円の控除を受けられますか?

A. 所得区分が事業所得または不動産所得でなければ使えません。国税庁No.2072は、55万円・65万円の青色申告特別控除の要件として「不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいること」を挙げています。教員の副業の多くは所得税基本通達35-2の例示(原稿料・講演料等)に当たり、原則は業務に係る雑所得です。国税庁の解説は、帳簿書類を保存していても収入が例年300万円以下で主たる収入に対する割合が10%未満なら「僅少と認められる場合」に該当すると考えられる、としています。

Q. 副業で赤字が出たら、教員の給与にかかった税金は戻ってきますか?

A. 雑所得であれば戻りません。所得税法69条1項の損益通算の対象は、不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の4つで、雑所得は含まれていないためです。事業所得と認められる場合は損益通算ができますが、その判定は開業届の有無ではなく活動の実態で行われます。

Q. 非常勤講師も、正規の教員と同じルールですか?

A. 税のルールは同じです。任用区分にかかわらず、所得があれば所得税・住民税の申告義務は同じように発生します。違うのは服務のほうで、地方公務員法38条1項のただし書は、非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員および同法22条の2第1項2号に掲げる職員を除く)については許可制の適用がないとしています。教育公務員特例法17条2項も、17条1項の規定は「非常勤の講師(地方公務員法22条の4第1項に規定する短時間勤務の職を占める者及び同法22条の2第1項2号に掲げる者を除く)」については適用しないとしています。どちらの条文にも除外の括弧書きがあるため、同じ「非常勤講師」でも任用の根拠によって結論が変わります。辞令と任用の根拠条文でご確認ください。

Q. 兼業許可を取らずに副業を始めてしまいました。確定申告をするとバレますか?

A. 確定申告そのものが勤務先に通知される仕組みはありませんが、住民税は別です。地方税法321条の4第1項後段により、市町村長は特別徴収税額を「特別徴収義務者及びこれを経由して納税義務者に通知」することとされており、同条2項でこの通知は5月31日までに行われます。給与の支払者を経由する仕組みなので、金額の変動が見える可能性はあります。ただ、より重要なのは、無許可の兼業は地方公務員法38条1項に反し、同法29条1項1号の懲戒処分の対象になりうるという点です。申告を避けても服務の問題は解決しません。まずは服務を監督する教育委員会に相談してください。

まとめ

  • 「20万円以下なら確定申告は不要」は所得税だけの話。根拠は所得税法121条1項1号で、給与1か所・年収2,000万円以下という前提つきです
  • 住民税に20万円ルールはない。地方税法317条の2第1項ただし書で免除されるのは「給与所得以外の所得を有しなかつた」人なので、副業が雑所得なら申告が原則必要です
  • 所得税の確定申告をしたなら、住民税の申告は要りません(地方税法317条の3第1項)。二重に出す必要はありません
  • 20万円は、雑所得・事業所得なら「収入−必要経費」。副業がアルバイトなら「収入金額」で見ます
  • 医療費控除やふるさと納税で確定申告をするなら、20万円以下の副業所得も申告書に入れます(国税庁No.1900 質疑応答)
  • 教員の副業の多くは「業務に係る雑所得」。青色申告特別控除は使えず、赤字の損益通算もできません
  • 「自分で納付」を選べるのは給与以外の所得の分だけ。副業がアルバイトなら選べません(地方税法321条の3第2項ただし書)
  • 期限後申告は、自主的に出せば無申告加算税5%。気づいた時点ですぐ出すほうが有利です(国税庁No.2024)
  • 兼業許可と確定申告は別の手続き。許可基準を設定している自治体は64%で、全国一律ではありません(総務省・令和7年6月11日通知)
  • 迷ったら、税は税務署か市区町村、服務は自分の教育委員会。とくに兼業許可の基準は自治体ごとに違うので、ネットの一般論で自分の自治体を判断しないでください




Re-Career代表 新川紗世
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