塾講師からの転職先|学校の先生になる道(講師登録・特別選考)と異業種、教員免許の有無で変わる選択肢

塾講師からの転職先|学校の先生になる道と異業種、教員免許の有無で変わる選択肢

塾講師・予備校講師からの転職先は、学校の先生になる道と異業種の2つに大きく分かれます。学校の先生を目指すなら、教員免許の有無で進み方が変わります。講師登録と採用試験の特別選考、免許の取り方を、法律の条文と自治体の要項で元教員が確かめました。

「塾講師 転職」で調べると、異業種の職種名が並ぶ記事がたくさん出てきます。一方で、「塾の先生から学校の先生へ」という道を、講師登録や特別選考のしくみまで書いたものは多くありません。この記事では、その道と異業種の道を、同じ地図の上に並べます。

塾に残るのも、学校へ移るのも、教育の外へ出るのも、どれも正解になりえます。まずは選択肢を正しく知ってから決めてほしいと思い、学校で教えてきた元教員として書きました。

新川紗世 Re-Career代表

この記事の著者

新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役

公立中学校で11年、私立高校で1年、あわせて12年、英語教員として勤務。教員時代に病休を経験し退職。その後、教員専門のキャリア支援会社を設立。著書『「やめたいかも」と一度でも思ったら読む 教員の転職思考法』。スタッフ全員が元教員のキャリア支援会社を率い、自身も延べ1,000名以上のキャリア支援に携わる。

⏱️ 30秒でわかる結論

塾講師の転職先は「学校の先生」か「異業種」。学校なら、まず教員免許の有無を確認する

免許あり講師登録(常勤講師・非常勤講師)から始めるか、教員採用試験を受ける。窓口と要件は自治体ごとに違う

特別選考教職経験を加味する特別の選考は68自治体すべてで実施(文部科学省)。ただし塾での勤務がどの区分に当たるかは要項しだい

免許なし大学で単位を修得、教員資格認定試験、特別免許状、臨時免許状、特別非常勤講師の5つの道。どれも「塾講師なら使える」ものではない

異業種教材制作・EdTech・教育系企業・研修講師など。塾での経験を応募先の言葉に置き換えるのがカギ

決める前に免許の有効性、年齢の条件、登録の窓口、給与の決まり方を確かめる

塾講師からの転職先は「学校の先生」と「異業種」の2つ

二股に分かれた道(学校の先生と異業種、2つの転職先のイメージ)

塾講師・予備校講師からの転職先は、大きく分けると2つです。ひとつは学校の先生になる道、もうひとつは教育業界やそれ以外の企業へ移る道です。

学校の先生を目指す場合は、教員免許を持っているかどうかで、最初の一歩がまったく変わります。まず全体を表で見てください。

方向 主な選択肢 最初にすること
学校の先生(教員免許あり) 常勤講師・非常勤講師として講師登録/教員採用試験(一般選考・特別選考) 免許状が今も有効かを確かめ、働きたい自治体の講師登録の窓口を探す
学校の先生(教員免許なし) 大学で単位を修得/教員資格認定試験/特別免許状/臨時免許状/特別非常勤講師 目指す校種・教科で、どの道が使えるかを確かめる
異業種 教材制作、EdTech、教育系企業、企業の研修講師・人材育成など 塾で身につけた経験を、応募先の言葉に置き換える

この記事は「塾から外へ出る」方向の話です。反対に、学校の先生が塾・予備校へ移る方向については、教員から塾・予備校講師への転職|教え続けたい人の選択肢で書いています。塾と学校の違いを、教員の側から見た話として合わせて読むと、両方の世界が立体的に見えてくると思います。

なお、転職しないという選択も、もちろんあります。塾で教えることが好きで、いまの職場を続けたいなら、それも立派な選択です。この記事は「辞めるべき」と背中を押すためのものではなく、選べる道を並べるためのものです。

塾講師と学校の先生の違い|教員免許と仕事の範囲

学校の校舎

学校の先生には教員免許が必要。塾講師には求められていない

教育職員免許法 第3条第1項は、「教育職員は、この法律により授与する各相当の免許状を有する者でなければならない」と定めています。ここでいう「教育職員」は、学校教育法第1条に定める学校(幼稚園・小学校・中学校・義務教育学校・高等学校・中等教育学校・特別支援学校)と幼保連携型認定こども園の教員で、講師も含まれます(第2条第1項)。

公立か私立かは関係ありません。私立中学校・私立高校の先生にも、教員免許が必要です。講師についても「各相当学校の教員の相当免許状を有する者」を充てると定められています(第3条第2項)。

一方、学習塾や予備校は、学校教育法第1条の「学校」ではありません。そのため、塾講師は教育職員免許法の対象外で、教員免許がなくても働けます。塾から学校へ移るときに最初にぶつかるのが、この違いです。

学校の先生の仕事は「授業」だけではない

もうひとつの違いは、仕事の範囲です。たとえば東京都教育委員会「令和8年度採用 東京都公立学校臨時的任用教員・時間講師採用候補者選考実施要項」は、常勤の講師にあたる「臨時的任用教員」について、「勤務時間や職務内容は正規教員と同様で、授業を行うだけでなく学級担任や校務分掌も担当します」と書いています。同じ要項は、時間講師(非常勤講師)の職務内容を「授業、授業の実施に付随する業務、研修」としています。

塾でも、授業のほかに面談や教室運営を担っている方もいると思います。学校の常勤の先生の場合は、そこに学級担任、校務分掌(学校の運営を分担する係の仕事)、生徒指導、保護者との連絡、行事の運営などが加わります。「教える」の部分は塾での経験がそのまま生きる一方で、それ以外の仕事の比重が大きいことは、知っておいて損はありません。

私自身、教員としての最初の1年は私立高校の非常勤講師で、その後は公立中学校の教諭として11年、英語を教えました。同じ「学校の先生」でも、非常勤講師と教諭では担う仕事の範囲が違います。塾から学校へ移る場合も、最初にどの立場で入るかによって、毎日の仕事の中身が変わります。

「やらなくてもいい仕事がやるべき仕事になってしまっているのが教員の実態だと思います。」
——30代・中学校・教諭で退職(その後、正規教員として復帰)・男性(元教員キャリア実態調査2026)

「子どもと関わることが大好きで、教員は天職だと思っていましたが、年齢とともに、学校運営の比重が多くなり、気持ちも肉体もバランスを取ることの難しさを感じるようになり、退職を意識するようになりました。」
——50代以上・特別支援学校・教諭で退職・女性(元教員キャリア実態調査2026)

ここで紹介した声は、Re-Careerが2026年2月〜5月に元教員107名に記名式で行った「元教員キャリア実態調査2026」の自由記述からの抜粋です(調査の全体は元教員107名のリアル【元教員キャリア実態調査2026】にまとめています)。学校の仕事の重さと、教える仕事の喜びの両方が見えると思います。

教員免許を持っている塾講師が学校の先生になる道|講師登録から始める

講師登録までの流れを付箋で整理するイメージ

教員免許をお持ちの塾講師の方は、学校の先生になる道がいちばん近くにあります。進み方は大きく、講師として学校で働き始めるか、教員採用試験を受けて正規の教員を目指すかの2つです。

まず、免許状が今も有効かを確かめる

大学で免許を取ったあと、学校で働かずに塾で教えてきた方は、まず免許状の扱いを確認してください。教員免許更新制は2022年7月1日に廃止(発展的解消)されました(文部科学省「教員免許更新制」)。

2022年7月1日の時点で有効だった普通免許状・特別免許状(休眠状態のものを含む)は、手続きなしで有効期間の定めがないものになりました(令和4年法律第40号附則第3条ほか)。2009年3月31日以前に初めて免許状を授与された方で、更新制の期限の日に教員として働いていなかった方は「休眠」の扱いで、手続きなしでそのまま使えます。

一方、2009年3月31日以前に初めて授与された方でも、2022年6月30日以前の期限の日に教員として在職していた方(講師や、休職・産休・育休中の方を含む)は、更新(修了確認)の手続きを済ませていなければ免許状は失効しています。また、2009年4月1日以降に初めて授与された免許状(新免許状)は、有効期間の満了日が2022年6月30日以前だった場合、失効しています。失効していても、授与を受けた都道府県の教育委員会へ再授与を申請すれば、有効期限のない免許状を受け取れます(ごく一部の例外を除く)。必要な書類・手数料・期間は都道府県によって違います。

自分の免許状がどちらに当たるか分からない、免許状が見当たらない、という場合は、授与を受けた都道府県の教育委員会で「授与証明書」を取ると確かめられます。

講師には「常勤講師」と「非常勤講師」がある

公立学校の講師は、法律上おおむね2つの任用に分かれます。フルタイムで担任も持つことがある常勤講師は、欠員の補充などでは「臨時的任用」(地方公務員法 第22条の3)で任用され、任期は6月以内、更新は1回までです。育児休業の代替の場合は、別の法律(地方公務員の育児休業等に関する法律 第6条)による任用となり、任期は育児休業の期間を上限に決まります(臨時的任用の場合は1年まで)。授業を担当する非常勤講師は、主に「会計年度任用職員」(同法 第22条の2第1項第1号)として任用され、任期はその会計年度の末日までの範囲で決まります。

東京都の例では、東京都教育委員会「令和8年度採用 東京都公立学校臨時的任用教員・時間講師採用候補者選考実施要項」で、時間講師(非常勤講師)を「地方公務員法第22条の2第1項第1号に基づく会計年度任用職員」と明記しています。応募資格は、臨時的任用教員(教諭)が応募する校種・教科の普通免許状か特別免許状、時間講師が普通免許状・臨時免許状・特別免許状などの教員免許状です。

塾で夜や土日に授業を続けながら、平日の日中に非常勤講師として学校で教える、という組み合わせも、勤務時間が重ならなければ考えられます。ただし、非常勤講師の任用条件や、塾側の兼業の規定はそれぞれ確かめる必要があります。

講師登録の窓口は、自治体ごとに違う

公立学校で講師として働く入口のひとつが、教育委員会の「講師登録」(名簿への登載)です。ところが、この窓口は全国で統一されていません。都道府県の教育委員会が受け付けるもの、市区町村の教育委員会が受け付けるもの、東京都のように名簿に載るための選考を行うものなど、自治体ごとに仕組みが違います。

当社(Re-Career株式会社)が運営する学校ではたらく(講師登録・会計年度任用職員の窓口まとめ)では、各自治体の公式ページで確認できた講師登録・会計年度任用職員の窓口を、都道府県・市区町村ごとにまとめています。住んでいる地域で「どこに申し込めばいいか」を探すときの入口として使ってください(一部の詳細は無料登録でご覧いただけます)。

講師の働き方やその先のキャリアについては、臨時的任用教員(臨任)のキャリア戦略|正規登用 or 転職?でも詳しく書いています。

講師経験は、その後の採用試験で扱われることがある

東京都教育委員会「令和8年度採用 東京都公立学校臨時的任用教員・時間講師採用候補者選考実施要項」には、「臨時的任用教員として一定期間任用された者は、その職務経験を基に翌年度以降の教員採用選考において選考方法の一部が免除となる場合があります」とあります。塾から学校へ移るとき、まず講師として学校で働き、その経験を採用試験に生かす、という順番が選べる自治体もあるということです。条件は自治体ごとの要項で確認してください。

教員採用試験の特別選考|塾講師の経験はどう扱われる?

面接のイメージ

教員採用試験には、一般の選考のほかに、経験や資格を持つ人向けの「特別の選考」があります。塾講師の方がいちばん気になるのは、「塾で教えてきた経験は評価されるのか」だと思います。

全国の実施状況(文部科学省の集計)

文部科学省「令和7年度(令和6年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況等のポイント」によると、68の自治体(都道府県・政令指定都市など)のうち、教職経験を加味した特別の選考は68自治体すべてで、民間企業等勤務経験を加味した特別の選考は60自治体で実施されています(令和7年度採用の選考。「特別の選考」には、一部試験免除・加点・特別免許状を活用した選考などを含みます)。

同じ資料は、採用者のうち採用前の職が「国公私立学校の教員」だった人(教職経験者)が44.8%、「教職以外の継続的な雇用に係る勤務経験」があった人(民間企業等勤務経験者。いわゆるアルバイトの経験は除く)が4.2%だったとしています。

ここで注意したいのは、採用者の内訳の集計での「教職経験者」の定義です。国公私立学校の教員であった者とされていて、学習塾での勤務はこの定義に含まれていません。塾での指導経験がどの区分として扱われるかは、全国で決まっているわけではなく、自治体ごとの実施要項の書き方で決まります。

例:東京都の特例選考(令和8年度実施・9年度採用)

具体例として、東京都教育委員会「令和8年度東京都公立学校教員採用候補者選考(9年度採用)実施要綱」を見てみます。塾講師の方に関係しそうなのは、次の2つの区分です。

区分 主な要件(要綱の記載) 第一次選考
特例選考④ 国公立学校における臨時的任用教員等経験者 令和5年4月1日から令和8年3月31日までの3年間に、国公立学校で臨時的任用教員等(常勤と同様の勤務形態)として12か月以上の勤務経験がある 専門教養・論文(教職教養は免除)
特例選考⑥ 社会人経験者 民間企業、官公庁、国公私立学校等で、令和8年3月31日までに通算2年以上の勤務経験がある(常勤か非常勤〈アルバイト、パート〉かは問わない) 教職教養・専門教養・論文(一般選考と同じ)

特例選考④は、学校で常勤の講師として働いた経験が条件です。塾での勤務はここには入りません。つまり東京都の場合、「講師として学校で1年以上働く → 特例選考④で受ける」という順番をとると、第一次選考の教職教養が免除になります。

特例選考⑥は、勤務先が「民間企業、官公庁、国公私立学校等」と幅広く書かれています。ただ、要綱に学習塾を名指しした記載はありません。ご自身の勤務歴が当たるかは、申し込む前に東京都教育委員会に確認してください。

もうひとつ大事なのは、特例選考⑥は試験が軽くなる区分ではないことです。第一次選考の内容は一般選考と同じです。違いは年齢の条件で、一般選考が「昭和62年4月2日以降に出生」した人を対象にしているのに対し、特例選考は「昭和40年4月2日以降」に生まれた人が受けられます(スポーツ・文化・芸術分野の特例選考⑦を除く)。なお、平成14年4月2日以降に生まれた人が特例選考⑥に申し込むと、一般選考に変更されます。さらに⑥には、教員免許を持っていない人が受験して、免許を取るまで名簿の登載期間を延ばせる制度があります(次の章で説明します)。

このように、「特別選考」という名前でも、中身は区分ごとにまったく違います。ほかの自治体の特別選考は、学校ではたらく「教員採用試験の特別選考 自治体一覧」で、各教育委員会の実施要項をもとに区分ごとに整理しています。受けたい自治体の区分と締切を確かめるときに使ってください。

教員免許を持っていない塾講師が学校で教えるには|5つの道

本が並ぶ棚

教員免許を持っていない塾講師の方が学校で教える法律上の主な道は、次の5つです。どれも「塾講師なら使える」という特別な枠ではありません。要件をそのまま書きますので、ご自身に当てはまるものを探してください。

道 どんな仕組みか 根拠
① 大学で単位を修得する 大学・短期大学などの教職課程で必要な単位を修得し、普通免許状を受ける 教育職員免許法 第5条第1項
② 教員資格認定試験 試験に合格し、都道府県教育委員会に申請して普通免許状を受ける(令和8年度は幼稚園・小学校・高等学校〈情報〉) 同法 第16条
③ 特別免許状 学校で任命・雇用しようとする者の推薦に基づく教育職員検定に合格した人に授与。授与した都道府県内でのみ有効 同法 第5条第2項・第3項、第9条第2項
④ 臨時免許状 普通免許状を持つ人を採用できない場合に限り、教育職員検定に合格した人に授与する「助教諭」の免許状。原則3年間、授与した都道府県内でのみ有効 同法 第4条第4項、第5条第5項、第9条第3項
⑤ 特別非常勤講師 教科の領域の一部などを担当する非常勤講師に、免許状を持たない人を充てられる。任命・雇用する側が届け出る 同法 第3条の2

① 大学で単位を修得する

もっとも一般的な道です。大学・短期大学などの教職課程で必要な単位を修得すると、普通免許状を受けられます(教育職員免許法 第5条第1項)。文部科学省「教員免許状を取得できる大学」の一覧で、校種・教科ごとに取得できる大学を確認できます。同じページは、一種免許状を大学卒業程度、二種免許状を短期大学卒業程度としています。

中学校や高校の数学・英語など、塾で教えている教科の免許を取りたい方は、基本的にこの道になります。

② 教員資格認定試験

大学で単位を取る代わりに、試験に合格して普通免許状を受ける道です(同法 第16条)。文部科学省「令和8年度の教員資格認定試験について」によると、令和8年度に実施されたのは幼稚園・小学校・高等学校(情報)の3種類です。中学校の試験はありません。

教職員支援機構の受験案内によると、小学校教員資格認定試験に合格した人は、都道府県教育委員会に申請すると小学校教諭の二種免許状が授与されます。令和8年度の受験資格は、高等学校を卒業した人など(大学に入学する資格を有する人)で平成18年4月1日までに生まれた人で、受験できる年齢に上限はありません。令和8年度の日程は、第1次試験が5月10日、第2次試験が9月5日、合格発表が9月25日でした。

高等学校(情報)は、応用情報技術者試験・高度試験・情報処理安全確保支援士試験・技術士試験(情報工学部門など)のいずれかに合格していることなどが受験資格で、合格すると高等学校教諭(情報)の一種免許状が授与されます。

③ 特別免許状

特別免許状は、教育職員検定に合格した人に授与されます(同法 第5条第2項)。この検定は、担当する教科に関する専門的な知識経験または技能を持ち、社会的信望があり、教員の職務に必要な熱意と識見を持っている人について、教育職員に任命し、または雇用しようとする者が、学校教育の効果的な実施に特に必要があると認める場合に行う推薦に基づいて行われます(同条第3項)。

つまり、自分で「特別免許状をください」と申し込む仕組みではなく、採用する側(教育委員会や学校法人)の推薦が前提です。特別免許状は、授与した都道府県の中でだけ効力があります(第9条第2項)。

④ 臨時免許状

臨時免許状は「助教諭」の免許状で(同法 第4条第4項)、普通免許状を有する者を採用することができない場合に限り、教育職員検定に合格した人に授与されます(第5条第5項)。授与したときから3年間、授与した都道府県の中でだけ効力があります(第9条第3項)。相当の期間にわたり普通免許状を持つ人を採用できない場合に限り、都道府県の教育委員会規則で有効期間を6年とすることもできます(附則第6項)。

たとえば東京都教育委員会「令和8年度採用 東京都公立学校臨時的任用教員・時間講師採用候補者選考実施要項」は、学校が助教諭として採用を希望した場合に、名簿登載者が臨時免許状を取る手続きを行うとしています。あわせて、臨時免許状は「授与が可能な校種・教科は限られます」「他道府県発行の助教諭免許状(臨時免許状)は東京都では無効」と注意しています。自分で先に取っておく免許ではない、と考えておくのが安全です。

⑤ 特別非常勤講師

教科の領域の一部などの教授や実習を担当する非常勤講師には、免許状を持たない人を充てることができます(同法 第3条の2第1項)。この場合、任命・雇用する側が、都道府県の教育委員会に届け出ます(同条第2項)。専門分野の一部を教える、という関わり方です。

東京都には「免許を取りながら受ける」選考もある

東京都教育委員会「令和8年度東京都公立学校教員採用候補者選考(9年度採用)実施要綱」の特例選考⑥(社会人経験者)は、昭和41年4月2日以降に生まれ、令和11年4月1日までに必要な免許状の取得を目指す人も受験できます。その場合、免許取得にかかる期間について、採用候補者名簿の登載期間を延ばすことができます。免許のない塾講師の方にとっては、大学での単位修得と組み合わせて考えられる選択肢です。要件は年度ごとに変わる可能性があるので、受験する年度の要綱で確認してください。

塾講師から異業種への転職先|教える経験を活かせる仕事

プレゼンテーションをする人

学校ではなく、教育業界やそれ以外の企業へ移る道もあります。塾で「教える」「伝える」「保護者や生徒と向き合う」経験を積んできた方には、次のような仕事が近い場所にあります。

・教材・問題集の制作や編集:出版社や教材会社で、単元の構成や問題づくり、解説の執筆に関わる仕事。どこでつまずくかを知っている経験が生きる
・EdTech企業:学習アプリやオンライン学習サービスのコンテンツ制作、利用者の学習を支えるカスタマーサクセス、学校・塾向けの営業など
・教育系企業:通信教育、模試、学習サービスなどを運営する企業での企画・運営・営業
・企業の研修講師・人材育成:社会人向けの研修の講師や、社内の人材育成の担当。人前で分かりやすく話し、理解度を確かめながら進める力が生きる
・塾・予備校の運営側:教室長、本部での講師の採用・育成、カリキュラムづくりなど。「教える側」から「教える人を支える側」へ移る道
・教育の外の仕事:営業、人事、事務、カスタマーサポートなど。面談や生徒募集の経験は、相手の話を聞いて提案する仕事につながる

教育業界の業界ごとの特徴は教育業界への転職完全ガイド|EdTech・教材出版・研修会社の8業界と教員経験の活かし方に、EdTech企業の職種と選考の流れは教員からEdTech(エドテック)企業に転職する方法に詳しくまとめています。どちらも教員向けに書いた記事ですが、塾講師の方にもそのまま当てはまる部分が多いはずです。教員免許をお持ちの方は、教員免許を活かせる教員以外の仕事15選も参考になると思います。

年収の比較は、この記事では書いていません。塾講師と各職種の収入を同じ条件で比べた公的な統計が見当たらないためです。応募先の求人票に書かれた条件(給与の内訳、勤務時間、休日)で、いまの条件と並べて比べてください。

「学校の先生がやっている仕事は本当に尊いと思いますし、その世界にいられたことを転職した今でも誇りに思っています。これからは学校の外側から、先生方のサポートをしていきたいです。」
——30代・中学校・教諭で退職(現在は教育業界の民間企業で正社員)・男性(元教員キャリア実態調査2026)

教える現場を離れても、教育に関わる道はたくさんあります。「教える」そのものにこだわるのか、「教育に関わる」ことにこだわるのか、「教える経験を生かして別の分野へ行く」のかを、先に決めておくと、応募先を絞りやすくなります。

塾講師の転職が「難しい」「できない」と感じる理由と、経験の伝え方

悩む人のイラスト

「塾講師 転職できない」「塾講師 転職 難しい」と調べる方もいます。そう感じる理由には、次のようなものがあると思います。

・夜や土日が中心の勤務で、平日の日中に面接や説明会の時間をとりにくい
・成果が「合格実績」「成績アップ」で語られていて、他の業界の言葉になっていない
・「教える仕事しか知らない」と、自分の経験を小さく見積もってしまう

1つ目は、勤務のすき間で進められる準備(経験の棚卸し、応募書類づくり、オンラインの説明会)から始めると動きやすくなります。2つ目と3つ目は、経験の言い換えでかなり変わります。塾での経験は、たとえば次のように置き換えられます。

塾での経験 応募先に伝わる言い方 つながりやすい仕事
授業・教材の準備 相手の理解度に合わせて説明の順番を組み立て、伝わったかを確かめながら進める 研修講師、教材制作、EdTechのコンテンツ制作
保護者面談・進路相談 相手の不安や希望を聞き取り、選択肢を示して意思決定を支える 営業、カスタマーサクセス、キャリア支援、人事
生徒募集・体験授業 問い合わせから体験、入会までの流れをつくり、数字を見ながら改善する 教育サービスの営業・マーケティング
教室運営・講師の採用や育成 目標の数字を管理し、人を採用・育成してチームで成果を出す マネジメント、人事、店舗・拠点の運営

ポイントは、「何人を合格させたか」だけでなく、そのために何を考え、どう動いたかを言葉にすることです。学校の先生を目指す場合も同じで、面接では「塾での指導経験を、学校の授業や学級づくりにどう生かすか」を聞かれることになるはずです。

学校へ移る場合は、塾との違い(授業以外の仕事の比重、集団の中の一人ひとりを見る視点、評価のしかた)をどう受け止めているかも、自分の言葉で話せるようにしておくと安心です。

「自分の人生や居場所を自分で決める権利と力は全員がもっていると思います。」
——50代以上・義務教育学校・副校長で退職(その後、正規教員として復帰)・女性(元教員キャリア実態調査2026)

塾講師からの転職を決める前に確かめたい5つのこと

計画を立てるイメージ

最後に、塾講師から次の道へ進む前に確かめておきたいことを5つにまとめます。

1. 教員免許の種類と、今も有効か

学校を目指すなら、まず免許状の校種・教科と有効性です。分からなければ、授与を受けた都道府県の教育委員会で授与証明書を取ると確かめられます。

2. 年齢の条件

教員採用試験の年齢の条件は自治体ごとに違います。文部科学省の集計(令和5年度(令和4年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施方法のポイント)では、68県市のうち「制限なし」が53県市でした(「制限なし」は4月1日時点で満59歳以下が対象)。東京都のように、一般選考と特例選考で生まれ年の条件が違う自治体もあります。「年齢制限は全国でなくなった」とは言えないので、受けたい自治体の要項で確かめてください。

3. 講師登録の窓口と、採用試験の時期

講師登録の窓口・受付期間、採用試験の出願期間は自治体ごとに違います。講師登録は学校ではたらく(講師登録・会計年度任用職員の窓口まとめ)で、特別選考の区分と締切は学校ではたらく「教員採用試験の特別選考 自治体一覧」で探せます。

4. お金:公立学校の先生の給与は条例で決まる

公立学校の教員の給与は、教育公務員特例法 第13条により、それぞれの自治体の条例で定めます。つまり、全国一律の金額はありません。

採用前の経験が初任給に反映されることもあります。東京都教育委員会「令和8年度東京都公立学校教員採用候補者選考(9年度採用)実施要綱」は、給与について「高等学校卒業以降に有用な経験がある場合は、一定の基準により加算されます」と書いています。ただし、どんな経験がどれだけ加算されるかの基準は、要綱には書かれていません。塾での勤務がどう扱われるかは、採用される自治体に確認してください。

異業種へ移る場合は、前の章で書いたとおり、求人票の条件で比べるのが確実です。どちらの道でも、転職の前後で収入が途切れる期間があるかどうかは、先に見積もっておくと安心です。

5. 「塾に残る」も含めて選ぶ

ここまで読んで、「やっぱり塾で教えるのが好きだ」と感じた方もいるかもしれません。それも大切な発見です。学校へ移る、教育業界の別の仕事へ移る、教育の外へ出る、塾に残る。どれを選んでも、選んだ理由を自分の言葉で説明できれば、その選択はあなたにとっての正解だと思います。

よくある質問

Q. 塾講師の経験は、教員採用試験で有利になりますか?

A. 自治体と選考区分によって違います。文部科学省の集計では、教職経験を加味した特別の選考は68自治体すべてで、民間企業等勤務経験を加味した特別の選考は60自治体で実施されています。ただし、同じ資料が採用者の内訳を集計するときの「教職経験者」は国公私立学校の教員であった者とされていて、学習塾での勤務はこれに当たりません。特別の選考で塾での勤務がどう扱われるかは、自治体ごとの実施要項で確かめる必要があります。東京都の特例選考⑥(社会人経験者)は民間企業等での通算2年以上の勤務経験が条件ですが、第一次選考の内容は一般選考と同じです。

Q. 教員免許がなくても、学校で教えることはできますか?

A. 教育職員免許法には、免許状を持たない人が学校で教える仕組みとして、特別免許状(採用する側の推薦に基づく教育職員検定)、臨時免許状(普通免許状を持つ人を採用できない場合に限る助教諭の免許状)、特別非常勤講師(教科の領域の一部などを担当する非常勤講師)があります。どれも本人の申し込みだけで使えるものではなく、学校や教育委員会の側の必要と手続きが前提です。

Q. 昔、大学で取った教員免許はまだ使えますか?

A. 2022年7月1日の時点で有効だった普通免許状・特別免許状(休眠状態のものを含む)は、手続きなしで有効期間の定めがないものになりました。2009年4月1日以降に初めて授与された免許状で、有効期間の満了日が2022年6月30日以前だった場合は失効しています。それより前に授与された免許状でも、2022年6月30日以前の期限の日に講師などとして学校に在職していて、更新の手続きをしていなかった場合は失効しています。どちらも、授与を受けた都道府県の教育委員会に再授与を申請できます。分からないときは授与証明書で確かめられます。

Q. 何歳まで教員採用試験を受けられますか?

A. 自治体ごとに違います。文部科学省の集計(令和5年度採用分)では、68県市のうち「制限なし」が53県市でした(満59歳以下が対象)。東京都の令和8年度実施の選考では、一般選考が昭和62年4月2日以降、特例選考が昭和40年4月2日以降(特例選考⑦を除く)に生まれた人を対象にしています。受けたい自治体の実施要項で確認してください。

Q. 教員資格認定試験で、中学校の免許は取れますか?

A. 令和8年度に実施された教員資格認定試験は、幼稚園・小学校・高等学校(情報)の3種類で、中学校の試験はありませんでした。中学校の免許を取るには、大学・短期大学などの教職課程で必要な単位を修得するのが基本の道です。

Q. 塾講師から私立学校の先生になれますか?

A. 私立学校の先生にも、公立と同じく教員免許が必要です(教育職員免許法 第2条・第3条)。採用は学校法人ごとに行われるので、応募の方法や条件は各学校の募集要項で確認してください。

Q. 講師登録はどこでできますか?

A. 自治体によって、都道府県の教育委員会、市区町村の教育委員会など窓口が違います。東京都のように、名簿に載るための選考を行う自治体もあります。Re-Careerが運営する「学校ではたらく」(gakko.re-career.net)で、各自治体の公式ページで確認できた窓口を探せます。

まとめ

・塾講師・予備校講師の転職先は「学校の先生になる道」と「異業種」の大きく2つ。学校を目指すなら、まず教員免許の有無を確かめる
・学校の先生には教員免許が必要(教育職員免許法 第3条)。公立・私立を問わない。塾講師は同法の対象外
・免許がある人は、講師登録(常勤講師=臨時的任用、非常勤講師=会計年度任用職員が多い)から始めるか、教員採用試験を受ける。窓口は自治体ごとに違う
・特別選考は自治体・区分ごとに中身が違う。東京都では、学校での講師経験が条件の特例選考④は教職教養が免除、社会人経験者の特例選考⑥は一般選考と同じ試験
・免許がない人の道は、大学で単位を修得・教員資格認定試験・特別免許状・臨時免許状・特別非常勤講師の5つ。どれも「塾講師なら使える」枠ではない
・異業種なら、教材制作・EdTech・教育系企業・研修講師など。塾での経験を応募先の言葉に置き換える
・塾に残るのも含めて、選んだ理由を自分の言葉で説明できる道を選ぶ




Re-Career代表 新川紗世
元教員が運営するキャリア支援

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