教員の子育てと仕事の両立が難しい3つの理由|30〜50代女性教員のリアルと使える制度・選択肢【元教員監修】

新川紗世 Re-Career代表

この記事の著者

新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役

元公立中学校英語教員(10年以上)。教員時代に病休を経験し退職。その後、教員専門のキャリア支援会社を設立。著書『「やめたいかも」と一度でも思ったら読む 教員の転職思考法』。スタッフ全員が元教員のプロフェッショナル集団として、延べ1,000名以上のキャリア支援に携わる。

「教員という仕事をしながら、子育てをちゃんとできるのだろうか」

朝7時前に出勤、夜9時近くに退勤、土日も部活・行事。教員の働き方は、子育て中の親にとって極めて両立しにくい構造になっています。本記事を検索した教員の多くが、「もう限界かもしれない」「両立できない自分はダメなのか」と感じている方かもしれません。

結論からお伝えすると、教員の子育てと仕事の両立がしんどいのは、あなたが弱いからではなく「教員という仕事の構造」がそもそも両立に向いていないから。Re-Career独自調査(元教員107名)では、退職理由の3位に「家庭との両立」(45%)がランクイン。女性教員に限れば58.7%と過半数を超え、両立困難が退職判断の中心にあります。

この記事では、教員の子育てと仕事の両立が難しい構造的理由、30〜50代女性教員のリアルな悩み、両立するための具体的工夫、限界を感じたときの選択肢まで、元公立中学校教員でキャリア支援1,000名以上の私が解説します。

⏱️ 30秒でわかる結論

教員の子育てと仕事の両立は構造的に困難。「自分が弱い」のではなく仕事の問題。

現実退職理由3位「家庭との両立」女性教員58.7%

構造長時間労働+土日行事+持ち帰り業務の三重苦

工夫朝活/家事外注/夫婦タスク再分担/職場の制度活用

限界時休職/配置転換/時短/非常勤/転職の5選択肢

なぜ教員の子育てと仕事の両立は難しいのか|3つの構造的理由

両立困難の構造

「自分が頑張れば両立できる」と思っていた教員が、現実にぶつかる3つの構造的理由を整理します。

① 「定時退勤」が物理的に不可能

教員の業務は授業準備・成績処理・行事運営・保護者対応・部活動・校務分掌で、定時(17時頃)には絶対に終わらない構造。保育園のお迎えに間に合わせるには「持ち帰り業務」が必須になり、夜の家事育児後に深夜まで仕事という生活に。

② 土日も学校・部活・行事で家にいない

運動会・参観日・宿泊行事・部活動の大会・引率──土日も学校に行く日が圧倒的に多い。子どもの行事に参加できない、家族で過ごす時間が取れない、という「家にいない親」状態が常態化します。

③ 子どもの急な体調不良に対応しにくい

教員は「自分の代わりがいない」仕事。担任が休むと自習対応・他の教員への負担が発生するため、子どもの発熱で休むことに極めて強い罪悪感が生まれます。「休みたいけど休めない」のジレンマで体力的・精神的に消耗していきます。

「子どもが熱を出した日、夫が休んでくれた。でも夫の方が罪悪感少なく休めるんだ、と気づいて、教員という仕事の不自由さを痛感した。」
——38歳・小学校教諭・女性(Re-Career相談より要約)

Re-Career独自調査|女性教員の58.7%が「家庭との両立困難」で退職

調査データ

Re-Careerが2026年に実施した独自調査(全国30都道府県・元教員107名)の結果は、教員の両立困難の深刻さを数字で示しています。

退職理由クロス分析

  • 退職理由「家庭との両立」全体:45%
  • 女性教員に限定すると58.7%(過半数)
  • 男性教員でも「家庭との両立」:30%台

女性教員の退職理由TOP3はすべて働き方関連(長時間労働68.3%・仕事量63.5%・家庭両立58.7%)。「子育てと仕事の両立」が物理的に困難で、退職を選ぶケースが多いことが見えます。

退職検討期間は1年以上が55.1%

「家庭との両立で限界」と感じてから実際に退職するまで、1年以上悩む人が55.1%、3年以上も21.5%。「子どもが小学校に上がるまで」「下の子が幼稚園に入るまで」と区切りを待ち続けるケースが多いのが教員の特徴です。

関連:調査02 教員の退職検討期間55.1%が「1年以上」

両立しんどい瞬間ベスト5|30〜50代女性教員のリアル

しんどい瞬間

Re-Careerに寄せられる相談から、教員ママが「両立が一番しんどい」と感じる瞬間TOP5を整理します。

1位|朝のバタバタタイム(5:30〜8:00)

自分の身支度・朝食・子どもの準備・保育園送り・出勤を、わずか2時間半で全て完了させる朝。「子どもにイライラしてしまう自分」に自己嫌悪する瞬間も。

2位|保育園/学校からの「お迎え電話」

「お子さん、熱が38度です」の電話が職員室にかかってくる瞬間。授業中なら抜けられない、休んでも代替教員がいない──板挟みでパニックになる。

3位|夜の家事育児後に持ち帰り仕事

子どもを寝かしつけた後、深夜まで採点・授業準備。「自分の時間がゼロ」状態が何ヶ月も続き、心身が限界に。

4位|土日の行事・部活で家族時間が取れない

運動会の準備で土曜出勤、部活引率で日曜出勤。子どもから「ママは仕事ばっかり」と言われる瞬間。

5位|子どもの行事に参加できない

子どもの運動会・参観日・卒園式が、自分の学校の行事と重なる日。仕事優先せざるを得ない罪悪感が積み重なります。

「運動会で子どもの「ママー!」が聞こえなかった日のことが、何年経っても忘れられない。あの瞬間に「もう辞める」と決めた。」
——40代・元小学校教諭・女性(Re-Career相談より要約)

両立するための具体的工夫7選

工夫7選

「両立を諦めずに頑張りたい」教員に向けて、実践している人が多い工夫7つを紹介します。

① 早朝集中タイム(4時起き勉強・採点)

子どもが寝ている朝4-6時に「自分時間+持ち帰り仕事」を済ます教員は多数。深夜の持ち帰り仕事より、朝集中の方が効率が良い。

② 家事の徹底外注化

食洗機・乾燥機付き洗濯機・ロボット掃除機・ミールキット・家事代行など、「お金で時間を買う」発想。週5,000〜15,000円の投資で人生が変わる。

③ 夫婦のタスク再分担(料理・送り迎え・休む役割)

「教員のあなたが休みにくい」前提で、夫が休む・送り迎えする・夕食を作るなどの再分担。「これまでの分担」を一度白紙にして話し合う。

④ 保育園の延長保育・ファミサポをフル活用

「延長保育は子どもがかわいそう」と思いがちですが、「短時間で機嫌よく接する」方が子どもにもプラスという考え方も。罪悪感を持ちすぎないこと。

⑤ 部活顧問の見直し・主顧問外しの相談

育児期は「主顧問→副顧問」「土日対応を分担」などの調整を管理職に相談。「お願いする勇気」が両立の鍵。

⑥ 校務分掌の軽減を希望する

年度始めの希望調査で、育児中であることを明示して校務分掌の軽減を希望。管理職が配慮してくれる学校もあります。

⑦ 「完璧主義」を捨てる

授業も家事も子育ても、「80点で良い」と決める。「全部100点でやろう」とすると物理的に破綻します。

校種別|小中高の両立リアル

校種別の両立

同じ「教員ママ」でも、勤務する校種によって両立の難しさが異なります。

小学校教員ママの両立|「学級担任」の重さ

小学校教員は「学級担任ほぼ100%」の構造。担任が休むと自分のクラスが回らない、保護者対応の濃さ、行事の多さ──子育てとの両立が一番厳しい校種と言われます。一方で、部活動の負担は中学・高校より軽い。

中学校教員ママの両立|「部活動」の重さ

中学校教員の最大の負担は部活動。土日・祝日の練習・大会・引率で家にいない週末が多発。「土曜の部活で子どもの運動会に行けない」が典型パターン。

高校教員ママの両立|「進路指導」と「専門教科」の重さ

高校は受験指導・進路指導の責任が重い。3年生の担任になると土日も生徒の小論文・面接対応で時間が取られます。一方、小中より授業準備の効率化はしやすい傾向。

特別支援学校教員ママの両立|「専門性」と「個別対応」

特別支援は個別対応・専門知識が求められる分、業務内容が高度。一方で「定時退勤しやすい」「行事は規模が小さい」など、両立しやすい面もあります。

夫婦共働き|「教員×他職業」と「教員×教員」の違い

夫婦の組み合わせ

共働き世帯の中で、夫婦の職業組み合わせによって両立難易度が大きく変わります。

教員×他職業(民間サラリーマンなど)の組み合わせ

夫が民間で、妻が教員のパターンが多い。夫の方が休みを取りやすい傾向があるので、子どもの急病・行事は夫担当に。教員特有の「休めない」事情を夫が理解してくれるかが鍵。

教員×教員(夫婦両方教員)の組み合わせ

夫婦両方教員だと、両方とも休みにくい。さらに転勤・異動も2人分発生する。一方で「教員業務の理解者」が家にいることはメリット。家事育児の分担で揉めにくい傾向も。

教員×公務員(教員以外)の組み合わせ

夫が公務員(自治体・警察・消防など)と妻が教員。両方とも安定だが、両方とも休みにくい。互いの仕事の重さを理解しやすいメリットあり。

両立できている教員ママの3つの共通点

両立できている人の共通点

Re-Careerに相談に来る「両立できている教員ママ」の3つの共通点を整理します。

共通点①|「完璧主義」を捨てている

授業も家事も子育ても、「80点で良い」と決めている。「全部100点」を求めない潔さが両立の鍵。

共通点②|「夫婦のチーム化」ができている

「家事育児は2人の仕事」と認識して、夫婦で対等にタスクを分担。「家事は妻の仕事」前提だと両立は破綻する。

共通点③|「使える制度・サービス」をフル活用

育休・時短・部分休業の制度活用+家事代行・ファミサポ・延長保育・ミールキットなど「お金で時間を買う」発想。罪悪感なく活用。

「「子どもにかわいそう」と思って延長保育を躊躇していたけど、思い切って使ったら自分の機嫌が良くなって、家庭の空気が一気に良くなった。」
——36歳・小学校教諭・女性(Re-Career相談より要約)

使える制度|公立教員の子育てサポート制度フル活用

使える制度

「使える制度を知らないだけで損している」教員は多い。代表的な制度を整理します。

① 育児休業(最長子3歳まで)

公立教員の育休は最長3歳まで取得可能。育児休業給付金(休業前給与の50-67%)も支給されます。「1年で復帰」が当たり前と思わず、自分のペースで判断を。

② 育児短時間勤務(子小学校入学前まで)

1日4時間/5時間/6時間など柔軟な短時間勤務が選択可能。給与は時間比例だが、復帰直後の負担軽減に有効。

③ 部分休業(子小学校3年生まで)

1日のうち2時間まで部分的に休業できる制度。「お迎えのために夕方早退」が可能に。

④ 育児短時間勤務後の段階復帰

「いきなり常勤フルタイム」ではなく、育休→時短→部分休業→常勤と段階的に復帰するパターンも。

⑤ 介護休業との組み合わせ

親の介護が必要な場合、介護休業(93日)+育児休業を組み合わせて使うことも。

💡 制度活用のコツ

  • 年度始めの希望調査で「育児中」を必ず明示する
  • 管理職と早めに面談して制度活用の意向を伝える
  • 同じ職場の経験者(先輩ママ教員)に体験談を聞く
  • 組合・教育委員会にも相談ルートがある
  • 「制度を使うのは権利」と認識して遠慮しない

制度はあっても「使いにくい空気」があるのが教員職場の特徴。先例を作る勇気が後輩を救います。

限界を感じたときの5つの選択肢

5つの選択肢

両立の工夫を全部やっても「もう無理」と感じたら、選択肢を整理する段階。教員を辞めずに環境を変える選択も含めて5つあります。

選択肢①|休職(最大3年)

心身の限界なら病気休暇90日+休職3年の制度を活用。「逃げ」ではなく「立て直しの時間」として考える。

選択肢②|配置転換(担任→専科/少人数指導)

担任業務が中心の負担なら、専科教員・少人数指導教員への異動希望を出す。同じ学校でも環境が変わる。

選択肢③|異動(学校を変える)

「今の学校の文化が両立に厳しい」場合、別の学校への異動希望を出す。校長の方針・職員室の空気で大きく変わる。

選択肢④|非常勤・時短勤務への切替

常勤を辞めて非常勤講師・時短勤務に切り替えるパターン。給与は下がるが、時間と精神的余裕は大幅増。

選択肢⑤|転職(教員以外の道)

教育業界(EdTech・教材・学習塾)/民間企業/公務員行政職など、「教員以外でも教育に関われる」道は意外と多い。

関連:教員からの転職先おすすめ15選

両立しんどい時期を乗り越えた教員の実例3つ

乗り越えた実例

Re-Careerに相談に来た教員ママの中で、両立しんどい時期を乗り越えた実例を紹介します(個人特定を避けるため一部内容を改変)。

実例①|34歳・小学校教諭・夫の転職で両立可能に

夫が「妻の教員業務の重さ」を理解して、勤務時間が柔軟な民間企業に転職。子どもの送り迎えと急病対応を夫が担当することで、妻は教員を続けられるように。

実例②|38歳・中学校教諭・部活主顧問外しで持続可能に

校長と面談して部活の主顧問→副顧問へ変更。土日対応も他の顧問と分担。「子どもとの土日が戻った」ことで両立が一気に楽になった。

実例③|41歳・小学校教諭・非常勤切替で時間と自分を取り戻す

常勤を辞めて週3日の非常勤講師に切り替え。給与は教員時代の60%だが、自分の時間と子どもとの時間が大幅に増加。「これが本来の生活」と本人。

「辞めるか続けるか」の決め方|3つの問い

3つの問い

両立に限界を感じたとき、「辞めるか続けるか」を決めるための3つの問いです。

問い①|今の働き方で5年後の自分・家族はどうなっている?

5年後の家族の姿(子どもの年齢・夫婦関係・自分の健康)を想像して、今の働き方を続けた場合のリアルを描く。

問い②|「辞めない選択肢」を全部試したか?

休職・配置転換・異動・時短・非常勤など、「辞めない選択肢」を全部試したかを確認。試した上での退職判断なら後悔しにくい。

問い③|「自分の収入なし」でも家計は成り立つか?

退職する場合、3〜6ヶ月の生活費+転職活動期間の経済バッファがあるか確認。「お金で焦って次の仕事を選ぶ」と失敗しやすい。

「退職する前に休職を1年取った。回復して見えたのは、「自分は教員を辞めたい」というよりも「この働き方ができない」だった。だから転職した。」
——38歳・元小学校教諭・女性(Re-Career相談より要約)

両立で限界を感じている教員へ|大切な3つのメッセージ

メッセージ

① 「あなたが弱い」のではなく「仕事の構造」の問題

退職理由の3位に「家庭との両立」が入る現実は、多くの教員ママが同じ壁にぶつかっている証拠。「自分が頑張りが足りない」と責めないでください。

② 「制度を使うのは罪悪感を感じる必要ない」

育休・時短・部分休業は権利です。「みんなに迷惑をかける」と思って遠慮する必要はありません。あなたが使えば、次の世代の教員も使いやすくなります。

③ 「辞めるが正解じゃないが、辞めることも選択肢」

続けるための工夫を全部試した上で、それでも限界なら退職も正当な選択肢です。「子どもとの時間を取り戻すために辞める」のは、決して「逃げ」ではありません。

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まとめ|両立は構造の問題、自分を責めずに選択肢を持つ

教員の子育てと仕事の両立は、「自分が弱い」のではなく「教員という仕事の構造」が両立しにくいのが本質。退職理由の3位に「家庭との両立」が入り、女性教員に限れば過半数超え──これは個人ではなく社会の問題です。

本記事のポイント:

  • 退職理由「家庭との両立」女性教員58.7%が証明する構造的困難
  • 両立の工夫7選(早朝活用・家事外注・夫婦再分担・制度活用など)
  • 公立教員の制度(育休3年・時短・部分休業)をフル活用
  • 限界時は5つの選択肢(休職/配置転換/異動/非常勤/転職)
  • 「辞めるか続けるか」は3つの問いで整理

「両立できない自分」を責める必要はありません。Re-Careerは、続ける・休む・辞めるのどの選択でも、当事者目線で伴走します。


Re-Career代表 新川紗世
元教員が運営するキャリア支援

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