教員の有給(年休)取得率は何%?【独自調査200名】一般会社員との比較でわかる現場の実態

教員の有給(年休)取得率は何%?独自調査200名
新川紗世 Re-Career代表

この記事の著者

新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役

元公立中学校英語教員(10年以上)。教員時代に感じた「このままでいいのか」という想いを原点に、教員専門のキャリア支援会社を設立。延べ500名以上の教員のキャリア相談に対応。

📊 本記事について
Re-Careerが令和7年度に現職・元教員約200名を対象に実施したInstagramアンケート結果と、厚生労働省・文部科学省の公的データを組み合わせた独自分析記事です。

「先生は夏休みがあっていいよね」——そう言われるたびに、ちょっともやっとする先生は多いのではないでしょうか。確かに夏季休業はありますが、年次有給休暇(年休)の取得率となると、実態はまったく異なります。

本記事では、Re-Careerが約200名の現職・元教員を対象に実施した独自アンケートの結果と、一般会社員との比較データをもとに、教員の年休取得の実態を詳しく解説します。

「取れた日数だけ見ると普通に見えるかもしれないけど、ほとんど子どもの看護休暇が足りなくなった分の延長なんです。自分のための休みなんて、取れていない。」
——30代・小学校教員(独自調査コメントより)

「特別な理由がなくても、普通に有給を取りたいです。体調不良でもないのに休むなんて…という空気がしんどい。」
——20代・中学校教員(独自調査コメントより)

【独自調査】令和7年度 教員の年休取得日数の実態

Re-Careerは令和7年度末に、Instagram のアンケート機能を使って約200名の現職・元教員に「令和7年度に年休を何日取得しましたか?」と調査しました。

※調査方法について
本調査はRe-Career株式会社代表取締役 新川紗世の公式Instagramフォロワー(現職・元教員中心)を対象としているため、全教員の実態とは誤差がある可能性があります。参考値としてご覧ください。
取得日数 割合(約200名)
0〜5日 9%
6〜15日 39%
16〜25日 41%
26〜40日 11%
教員の年休取得日数分布(独自調査200名)

最も多かったのは「16〜25日」(41%)でしたが、「6〜15日」も39%と僅差。0〜15日以下しか取れなかった先生は合計48%と、約半数に上ります。

推計平均取得日数は約16日。公立教員の年休付与日数は繰越分を含めて最大40日ですので、取得率に換算すると約40%です。

💡 補足:公立教員の年休制度
毎年1月1日に20日付与され、前年度の未取得分は翌年に最大20日繰り越し可能。最大保有日数は40日。

教員の年休取得率 vs 一般会社員の有給取得率

厚生労働省の最新データ(2023年実績)

厚生労働省「就労条件総合調査」(2024年12月発表)によると、民間企業の一般労働者の有給休暇取得率は65.3%(付与16.9日・取得11.0日)。1984年以降の過去最高を記録しています。

政府は「2025年までに取得率70%」を目標に掲げており、民間企業では年々改善が進んでいます。

教員 vs 一般会社員 比較表

比較項目 教員(独自調査) 一般会社員(厚労省)
付与日数 最大40日 平均16.9日
推計取得日数 約16日 11.0日
取得率(付与対比) 約40% 65.3%
−25ポイント(教員が低い)
教員vs一般会社員 有給取得率比較

取得日数の絶対値だけ見ると教員の方が多く見えますが、付与日数に対する取得率では、教員は一般会社員より25ポイント低い実態があります。「先生は休みが多い」というイメージは、付与日数の多さによる錯覚といえるかもしれません。

文部科学省データで見る教員の年休取得状況

文部科学省「教員勤務実態調査(令和4年度)」でも、年休取得の実態が明らかになっています。

学校種 平均取得日数 取得率(40日対比) 前回調査比
小学校 13.6日 約34% ↑(前回11.6日)
中学校 10.7日 約27% ↑(前回8.8日)

改善傾向にはあるものの、取得率は27〜34%と依然として低い水準です。特に中学校は、部活動指導の負担が取得を妨げている一因と考えられます。

なぜ教員は年休を取れないのか?3つの構造的理由

① 代替教員の確保が難しい

担任が休むと授業が成立しないリスクがあります。臨時講師の確保が年々難しくなるなか、「誰かが穴を埋めなければ」という心理が年休申請を妨げています。

特に専科教員(理科・音楽・家庭科など)や特別支援学級の担任は、代替となる人材がさらに限られ、「自分が休むと授業が崩れる」という責任感から年休取得を諦める傾向があります。

② 「夏休み=教員も休み」という誤解

夏季休業中も研修・授業準備・部活指導などで出勤する教員が多く、長期休業が「実質の有給消化」になっているわけではありません。年休はあくまで授業日に申請して取得するものです。

また、夏季休業中に取得できる「夏季特別休暇(自治体により5日程度)」は、年休とは別の制度で、こちらも完全に消化できていない教員が少なくありません。

③ 職場文化・心理的プレッシャー

「取りたくても取れる雰囲気じゃない」という声は現場でよく聞かれます。特に若手教員は、管理職や先輩の目を気にして申請をためらいがちです。

「校長から直接「取るな」と言われたことはないけど、「他の先生も取ってないから」という空気が一番しんどかった。」
——20代・小学校教員(独自調査回答より)

有給取得は労働者の権利であり、理由を説明する義務もありません。しかし、学校という閉鎖的な職場では、同調圧力が個人の権利行使を妨げるケースが多いのが実情です。

年休が取れないことが引き起こす3つのリスク

年休取得率の低さは、単なる「休暇の問題」にとどまりません。

  • 身体的疲弊の蓄積・免疫低下——休息不足による体調不良、風邪をひきやすくなる
  • 精神的消耗・バーンアウト——燃え尽き症候群、抑うつ状態への発展
  • モチベーション低下・離職意向の高まり——「このままでは続けられない」という感覚

文部科学省「令和5年度公立学校教職員の人事行政状況調査」では、精神疾患による病気休職者が7,119人と過去最多を更新。20代教員の50人に1人が1か月以上の病気休暇を取得しているというデータもあります。

「少し疲れたくらいで休むのは申し訳ない」という感覚が、限界まで追い詰められる遠因になることもあります。ぜひ関連記事「教員の燃え尽き症候群(バーンアウト)」「教員のメンタルヘルスセルフケア」もあわせてご覧ください。

教員が年休を取るためにできること

計画的な年休取得のコツ

いきなり連続取得は難しくても、以下のステップで少しずつ取得率を上げることができます。

  • 学期の早い段階で「取得計画」を立てる——「〇月〇日は予定がある」と先に決めておく
  • 半日単位・時間単位の取得を活用——病院・役所・子どもの行事などで柔軟に使う
  • 授業の少ない日を狙う——水曜午後、行事後の振替日など
  • 同僚と共有する——「お互いに休める雰囲気」を作る

働き方そのものを見直すきっかけにも

年休が取れない状態が長く続く場合、それは個人の努力だけでは解決できないサインかもしれません。異動希望を出す、副業や転職を検討する、休職制度を活用する——選択肢を知っておくことが大切です。

関連記事:
教員の働き方改革の現状と課題
教員のストレスの原因と対処法
教員の休職制度を徹底解説

よくある質問(FAQ)

Q. 教員は年休を取る際に理由を書く必要がありますか?

A. 法律上、年休取得の理由を会社(自治体)に告げる義務はありません。労働基準法第39条で認められた労働者の権利です。ただし、学校では運用上「行事」「私用」など簡単に記載することが一般的です。

Q. 時季変更権で年休を拒否されることはありますか?

A. 管理職には「事業の正常な運営を妨げる場合」に限り時季変更権がありますが、単に代替要員がいないという理由だけでは認められません。拒否された場合は、教育委員会や労働組合に相談するのも一つの方法です。

Q. 産休・育休中の年休はどうなりますか?

A. 産休・育休中は年休の「時効消滅」が止まる自治体もありますが、原則として付与はされません。復帰年度に20日付与される形が一般的です。自治体ごとに規定が異なるため、事務担当に確認しましょう。

まとめ:年休取得率の低さは「個人の問題」ではない

今回の独自調査・公的データから見えてきたことをまとめます。

  • 教員の年休取得率は、独自調査では約40%、文部科学省データでは27〜34%
  • 一般会社員(65.3%)と比較すると25〜38ポイント低い
  • 改善傾向にはあるが、構造的な問題が依然として残っている
  • 取れないのは「個人の努力不足」ではなく「職場・制度・文化の問題

「自分だけが取れていないのかな」と感じていた先生も、データを見れば現場全体の構造的問題だということがわかります。まずは現状を数字で把握し、自分を責めるのをやめることから始めましょう。

その上で、「今の職場で改善を働きかける」「異動・転職を検討する」「休職制度を活用する」——自分に合った選択肢を考えていければ十分です。


📚 出典・参考資料

  • 厚生労働省「令和6年就労条件総合調査」(2024年12月発表)
  • 文部科学省「教員勤務実態調査(令和4年度)確定値」(2024年4月公表)
  • 文部科学省「令和5年度公立学校教職員の人事行政状況調査」
  • Re-Career株式会社 独自アンケート(令和7年度、約200名、Instagramストーリーズ)

Re-Career代表 新川紗世
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