教員・教師の有給取得率は何%?年休は平均約16日【200名独自調査】|厚労省データと比較
教員・教師の有給(年休)取得率は、分母の取り方で大きく変わります。現職・元教員200名への独自調査では、年休の平均取得日数は約16日。繰越を含む保有日数(最大40日)に対する消化率なら約40%です。一方、文部科学省の調査(2021年実績)を厚生労働省と同じ「繰越を除く付与日数」で計算すると小学校68.0%・中学校53.5%(Re-Career算出)。年休が取りづらい3つの構造的理由と、今日から試せる取り方まで解説します。
「先生は夏休みがあっていいよね」——そう言われるたびに、ちょっともやっとする先生は多いのではないでしょうか。では年次有給休暇(年休)を、先生方は実際にどれだけ取れているのか。公的データを分母までさかのぼって見ていくと、「思ったより取れている面」と「やっぱり取りづらい面」の両方が見えてきました。
この記事の著者
新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役
公立中学校で11年、私立高校で1年、あわせて12年、英語教員として勤務。教員時代に感じた「このままでいいのか」という想いを原点に、教員専門のキャリア支援会社を設立。延べ1,000名以上の教員のキャリア相談に対応。
📋 目次
📊 本記事について
Re-Careerが令和7年度に現職・元教員約200名を対象に実施したInstagramアンケート結果と、厚生労働省・文部科学省の公的データを組み合わせた独自分析記事です。
本記事では、Re-Careerが約200名の現職・元教員を対象に実施した独自アンケートの結果と、一般会社員との比較データをもとに、教員の年休取得の実態を詳しく解説します。
「取れた日数だけ見ると普通に見えるかもしれないけど、ほとんど子どもの看護休暇が足りなくなった分の延長なんです。自分のための休みなんて、取れていない。」
——30代・小学校教員(独自調査コメントより)
「特別な理由がなくても、普通に有給を取りたいです。体調不良でもないのに休むなんて…という空気がしんどい。」
——20代・中学校教員(独自調査コメントより)
【独自調査】令和7年度 教員の年休取得日数の実態
Re-Careerは令和7年度末に、Instagram のアンケート機能を使って約200名の現職・元教員に「令和7年度に年休を何日取得しましたか?」と調査しました。
本調査はRe-Career株式会社代表取締役 新川紗世の公式Instagramフォロワー(現職・元教員中心)を対象としているため、全教員の実態とは誤差がある可能性があります。参考値としてご覧ください。
| 取得日数 | 割合(約200名) |
|---|---|
| 0〜5日 | 9% |
| 6〜15日 | 39% |
| 16〜25日 | 41% |
| 26〜40日 | 11% |

最も多かったのは「16〜25日」(41%)でしたが、「6〜15日」も39%と僅差。0〜15日以下しか取れなかった先生は合計48%と、約半数に上ります。
推計平均取得日数は約16日。公立教員は繰越分を含めて最大40日を保有していることが多いため、保有日数40日に対する消化率に換算すると約40%です(Re-Career算出)。ただし、厚生労働省が公表している「取得率」は繰越を除いた新規付与日数を分母にした数字で、この約40%とは分母が違います。並べて引き算はできません。
💡 補足:公立教員の年休制度
年20日が付与され、前年の未取得分を翌年に最大20日繰り越して最大保有日数40日、という運用が広く行われています。ただし年休は地方公務員法第24条第5項により条例で定めるため、起算日も繰越の扱いも自治体によって異なります(東京都の学校職員は「学校職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例」第15条で「一会計年度ごとの休暇とし、その日数は、一会計年度において、二十日」=4月起算)。また文部科学省の調査では、付与された日数を「40日」と答えた教員は小学校59.7%・中学校61.4%で、約3割は40日未満でした。
教員の年休取得率 vs 一般会社員の有給取得率|分母を揃えて比べる
厚生労働省の最新データ(2024年実績)
厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」(2025年12月19日公表)によると、民間企業(常用労働者30人以上・パートタイム労働者を除く)の年次有給休暇の取得率は66.9%(付与18.1日・取得12.1日)で、1984年以降で最も高い水準です。前回調査(2023年実績)は65.3%(付与16.9日・取得11.0日)でした。
比べる前に:厚労省の「取得率」の分母に繰越は入っていない
同調査の第5表には、こう注記されています。「『付与日数』は、繰越日数を除く」「『取得率』は、取得日数計/付与日数計×100(%)である」。つまり厚生労働省の取得率は、その年に新しく付与された日数だけを分母にした数字です。前年からの繰越分は入っていません。
一方、先ほどの教員の約40%は繰越を含む保有日数(最大40日)を分母にしています。分母の定義が違うので、この2つをそのまま引き算することはできません。比べるなら、教員側も「繰越を除く新規付与」で計算し直す必要があります。
分母を揃えた比較表(ともに2021年実績)
| 比較項目 | 教員(文科省・2021年実績) | 一般労働者(厚労省・2021年実績) |
|---|---|---|
| 平均取得日数 | 小学校 13.6日/中学校 10.7日 | 10.3日 |
| 付与日数(繰越を除く) | 20日(条例に基づく標準) | 17.6日 |
| 取得率(繰越を除く付与対比) | 小学校 68.0%/中学校 53.5% | 58.3% |
| 〔参考〕一般労働者の最新値(2024年実績) | 付与18.1日・取得12.1日・取得率66.9% | |
※教員の取得日数は文部科学省「教員勤務実態調査(令和4年度)確定値」p.34(実績は令和3年1月〜12月)。付与20日は東京都「学校職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例」第15条など、多くの自治体で標準とされている日数です。取得率はこの2つからRe-Careerが算出した参考値で、文部科学省が公表している数値ではありません。一般労働者は厚生労働省「令和4年就労条件総合調査」(2021年実績)および「令和7年就労条件総合調査」(2024年実績)。なお文部科学省の集計は「昨年の教員としての勤務が1年に満たない者」と回答した者を除いていますが、厚生労働省の調査にはそうした除外の注記がありません。母集団の作り方が完全には揃っていない点にご留意ください。
同じ物差しで並べると、小学校教員は68.0%で、同じ年の一般労働者58.3%を上回ります。一般労働者の最新値(2024年実績・66.9%)と比べても上回ります。取得日数で見ても、小学校13.6日は同年の一般労働者10.3日より多い数字です。
ただし中学校教員は53.5%で、同じ年の一般労働者を4.8ポイント下回ります。取得日数では10.7日と同年の一般労働者(10.3日)をわずかに上回るものの、率で見ると届いていません。部活動指導の負担が取得を妨げている一因と考えられます。
一方、繰越を含めた保有日数(最大40日)を分母にすると、消化率は小学校34%・中学校27%まで下がります(いずれもRe-Career算出)。同じ取得日数でも数字がこれだけ動くのは、分母の取り方が違うからです。教員の年休の問題は「率が一般より低い」ことよりも、使いきれない残日数が毎年積み上がっていくところに表れています。「取ろうと思えば取れるはずなのに、取りづらい」という現場の実感がどこから来るのかは、このあとの章で見ていきます。
文部科学省データで見る教員の年休取得状況

文部科学省「教員勤務実態調査(令和4年度)確定値」でも、年休取得の実態が明らかになっています。ただしこの調査が公表しているのは「取得日数」だけで、取得率は公表されていません(137ページの本文を通して「取得率」「年次有給」という語は使われていません)。下の表の消化率は、保有上限の40日を分母としてRe-Careerが算出した参考値です。また、この取得日数は令和3年(2021年)1月〜12月の実績です。
| 学校種 | 平均取得日数 | 保有40日に対する消化率(Re-Career算出) | 前回調査比 |
|---|---|---|---|
| 小学校 | 13.6日 | 約34% | ↑(前回11.6日) |
| 中学校 | 10.7日 | 約27% | ↑(前回8.8日) |
取得日数は小学校で11.6日→13.6日、中学校で8.8日→10.7日と改善しています。ただし保有日数(最大40日)に対する消化率で見ると27〜34%にとどまります。新しく付与される20日で見ても、小学校で約6日、中学校で約9日が毎年使われないまま残る計算です。前の章のとおり、繰越を除く付与20日を分母にすれば小学校68.0%・中学校53.5%で、中学校は同じ年の一般労働者(58.3%)を下回ります。
なぜ教員は年休を取れないのか?3つの構造的理由

① 代替教員の確保が難しい
担任が休むと授業が成立しないリスクがあります。臨時講師の確保が年々難しくなるなか、「誰かが穴を埋めなければ」という心理が年休申請を妨げています。
特に専科教員(理科・音楽・家庭科など)や特別支援学級の担任は、代替となる人材がさらに限られ、「自分が休むと授業が崩れる」という責任感から年休取得を諦める傾向があります。
② 「夏休み=教員も休み」という誤解
夏季休業中も研修・授業準備・部活指導などで出勤する教員が多く、長期休業が「実質の有給消化」になっているわけではありません。年休はあくまで授業日に申請して取得するものです。
また、夏季休業中に取得できる「夏季特別休暇(自治体により5日程度)」は、年休とは別の制度で、こちらも完全に消化できていない教員が少なくありません。
③ 職場文化・心理的プレッシャー
「取りたくても取れる雰囲気じゃない」という声は現場でよく聞かれます。特に若手教員は、管理職や先輩の目を気にして申請をためらいがちです。
「校長から直接「取るな」と言われたことはないけど、「他の先生も取ってないから」という空気が一番しんどかった。」
——20代・小学校教員(独自調査回答より)
有給取得は労働者の権利であり、理由を説明する義務もありません。しかし、学校という閉鎖的な職場では、同調圧力が個人の権利行使を妨げるケースが多いのが実情です。
年休が取れないことが引き起こす3つのリスク

年休が取りきれないことは、単なる「休暇の問題」にとどまりません。
- 身体的疲弊の蓄積・免疫低下——休息不足による体調不良、風邪をひきやすくなる
- 精神的消耗・バーンアウト——燃え尽き症候群、抑うつ状態への発展
- モチベーション低下・離職意向の高まり——「このままでは続けられない」という感覚
文部科学省「令和6年度公立学校教職員の人事行政状況調査」では、精神疾患による病気休職者は7,087人(全教育職員の0.77%)。前年度(令和5年度)の7,119人から32人減ったものの、令和2年度の5,203人と比べると高い水準が続いています。20代では、精神疾患による病気休職者と1か月以上の病気休暇取得者を合わせて3,384人(20代の教育職員の2.21%=約45人に1人)にのぼります。
「少し疲れたくらいで休むのは申し訳ない」という感覚が、限界まで追い詰められる遠因になることもあります。ぜひ関連記事「教員の燃え尽き症候群(バーンアウト)」「教員のメンタルヘルスセルフケア」もあわせてご覧ください。
教員が年休を取るためにできること

計画的な年休取得のコツ
いきなり連続取得は難しくても、以下のステップで少しずつ取得率を上げることができます。
- 学期の早い段階で「取得計画」を立てる——「〇月〇日は予定がある」と先に決めておく
- 半日単位・時間単位の取得を活用——病院・役所・子どもの行事などで柔軟に使う
- 授業の少ない日を狙う——水曜午後、行事後の振替日など
- 同僚と共有する——「お互いに休める雰囲気」を作る
働き方そのものを見直すきっかけにも
年休が取れない状態が長く続く場合、それは個人の努力だけでは解決できないサインかもしれません。異動希望を出す、副業や転職を検討する、休職制度を活用する——選択肢を知っておくことが大切です。
関連記事:
・教員の働き方改革の現状と課題
・教員のストレスの原因と対処法
・教員の休職制度を徹底解説
よくある質問(FAQ)

Q. 教員は年休を取る際に理由を書く必要がありますか?
A. 法律上、年休取得の理由を会社(自治体)に告げる義務はありません。労働基準法第39条で認められた労働者の権利です。ただし、学校では運用上「行事」「私用」など簡単に記載することが一般的です。
Q. 時季変更権で年休を拒否されることはありますか?
A. 管理職には「事業の正常な運営を妨げる場合」に限り時季変更権がありますが、単に代替要員がいないという理由だけでは認められません。拒否された場合は、教育委員会や労働組合に相談するのも一つの方法です。
Q. 産休・育休中の年休はどうなりますか?
A. 産休・育休を取っていること自体を理由に、年休が付与されなくなるわけではありません。労働基準法第39条第10項は、産前産後の休業期間と育児休業をした期間について「これを出勤したものとみなす」と定めています。ただし休業中は勤務を要しないため、その期間に年休を「取得」することはできません。付与される日数や繰越の扱いは自治体の条例・規則で決まるため、復帰前に事務担当に確認しましょう。
年休が取りづらい空気が、特定の人からの圧力に由来している場合もあります。教員のパワハラ相談窓口10選|校長・教育委員会・外部窓口をご覧ください。
まとめ:年休が取りづらいのは「個人の問題」ではない
今回の独自調査・公的データから見えてきたことをまとめます。
- 教員の年休の平均取得日数は、独自調査で約16日、文部科学省調査で小学校13.6日・中学校10.7日(2021年実績)
- 厚生労働省と同じ物差し(繰越を除く付与20日)で計算すると小学校68.0%・中学校53.5%。同じ年の一般労働者58.3%と比べると、小学校は上回り、中学校は下回る
- 繰越を含む保有日数(最大40日)に対する消化率では27〜34%にとどまり、使いきれない残日数が積み上がっている
- 改善傾向にはあるが、構造的な問題が依然として残っている
- 取れないのは「個人の努力不足」ではなく「職場・制度・文化の問題」
「自分だけが取れていないのかな」と感じていた先生も、データを見れば現場全体の構造的問題だということがわかります。まずは現状を数字で把握し、自分を責めるのをやめることから始めましょう。
その上で、「今の職場で改善を働きかける」「異動・転職を検討する」「休職制度を活用する」——自分に合った選択肢を考えていければ十分です。
📚 出典・参考資料
- 厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」(2025年12月19日公表/2024年実績)
- 厚生労働省「令和6年就労条件総合調査」(2024年12月25日公表/2023年実績)
- 厚生労働省「令和4年就労条件総合調査」(2022年10月28日公表/2021年実績・付与17.6日・取得10.3日・取得率58.3%)
- 文部科学省「教員勤務実態調査(令和4年度)確定値」(2024年4月公表)p.34・p.54
- e-Gov法令検索「地方公務員法」第24条第5項/東京都「学校職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例」第15条
- 文部科学省「令和6年度公立学校教職員の人事行政状況調査」
- Re-Career株式会社 独自アンケート(令和7年度、約200名、Instagramストーリーズ)
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