教員の休職から復職か転職か|休んでいる間に考えたいキャリアの選択肢
この記事の著者
新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役
元公立中学校英語教員(10年以上)。教員時代に感じた「このままでいいのか」という想いを原点に、教員専門のキャリア支援会社を設立。延べ500名以上の教員のキャリア相談に対応。
教員の休職中は、心身の回復が最優先。でも、少し気持ちに余裕が出てきたとき、「復職するか、転職するか」という大きな決断が待っています。
この記事では、休職中の教員が冷静にキャリアの選択肢を考えるためのヒントをお伝えします。焦る必要はありません。あなたのペースで、一歩ずつ考えていきましょう。
休職中に考えるべきこと・考えなくていいこと

今は考えなくていいこと
- 「自分はダメな教員だ」という自己否定
- 「周りにどう思われているか」という他者評価
- 「すぐに結論を出さなければ」という焦り
少しずつ考えたいこと
- 「何が自分を追い詰めていたのか」の振り返り
- 「教員の仕事のどの部分が好きで、どの部分がつらかったか」の整理
- 「今後の人生で大切にしたいもの」の優先順位
私がキャリア支援をする中で、休職中の方に必ずお伝えするのは「今は回復に専念してください。キャリアのことは、心が元気になってから考えましょう」ということです。
「休職して1ヶ月は何も考えられませんでした。2ヶ月目くらいから少しずつ「これからどうしよう」と考え始めて、3ヶ月目にキャリアカウンセリングを受けました。焦らなくてよかったと思います。」
——Aさん(30代・元中学校教員)
復職を選ぶ場合のポイント

復職の条件を確認する
復職する場合、以下の点を管理職や教育委員会と確認しましょう。
- 配置先:元の学校に戻るのか、異動になるのか
- 業務量の調整:復帰直後は負荷を軽減してもらえるか
- サポート体制:メンターや相談相手は確保されているか
- 段階的復帰:いきなりフルタイムではなく、徐々に勤務時間を増やせるか
「環境が変われば大丈夫」は要注意
休職の原因が特定の上司や同僚との人間関係にある場合、異動で環境が変われば問題が解決することもあります。しかし、教員の仕事そのもの(長時間労働、多忙さ、責任の重さ)に限界を感じている場合は、環境を変えても根本的な解決にならないことがあります。
「何が原因だったのか」を正確に見極めることが、復職後の再発防止につながります。
転職を選ぶ場合のポイント

休職中の転職活動は可能?
法的には、休職中に転職活動をすることに問題はありません。ただし、心身が十分に回復していない状態での転職活動は、体に負担がかかります。
おすすめは、まず自己分析と情報収集だけを進め、実際の応募は体調が安定してからという進め方です。
面接で「休職経験」をどう伝える?
休職経験を隠す必要はありませんが、伝え方には工夫が必要です。
NG:「メンタルを壊して休職しました」(ネガティブな印象を与える)
OK:「自分のキャリアを見つめ直す期間として休職し、その中で○○の分野に挑戦したいという想いが明確になりました」(前向きな動機に変換)
「休職中にRe-Careerのセミナーに参加して、「教員以外の選択肢もあるんだ」と初めて知りました。自分に合った働き方を考える余裕が、休職したからこそ生まれたと思います。結果的に、教育系のNPOに転職して、今はとても充実しています。」
——Bさん(40代・元高校教員→教育系NPO)
「復職でも転職でもない」第三の選択肢

復職か転職かの二択に悩む方に、もう一つの選択肢をお伝えします。
①非常勤講師として復帰する
フルタイムの正規教員ではなく、非常勤講師として働く選択肢です。授業だけに専念でき、部活動や校務分掌の負担が大幅に軽減されます。
②教育関連の別職種に移る
教育委員会の指導主事、教育センターの相談員、教科書会社の編集者など、「教育に関わりながら教壇には立たない」仕事もあります。
③しばらく休む
「すぐに次を決めなければ」と焦る必要はありません。退職金や失業保険を活用しながら、じっくり自分のペースで次のステップを考える時間を取ることも、立派な選択です。
大切なのは、「復職か転職か」の二択に縛られないこと。あなたのキャリアには、もっと多くの選択肢があります。
休職中の過ごし方のヒント
休職中は「何もしていない自分」に罪悪感を感じることがあります。でも、休むことは治療の一部です。以下のような過ごし方を参考にしてください。
- 最初の1ヶ月:とにかく休む。睡眠、散歩、好きなことだけをする。「生産的でなければ」という思い込みを手放す
- 2ヶ月目:少しずつ外出の頻度を増やす。図書館、カフェ、公園など、学校以外の場所で過ごす
- 3ヶ月目〜:気持ちに余裕が出てきたら、キャリアについて考え始める。本を読む、セミナーに参加するなど
大切なのは、回復には個人差があるということ。周りのペースに合わせる必要はありません。「今の自分に必要なこと」を最優先にしてください。
私がキャリア支援で関わった方の中にも、休職期間を「人生を見つめ直すためのギフト」と捉えて、復職後に以前よりも生き生きと働けるようになった方がたくさんいます。休職は「終わり」ではなく、新しいスタートの準備期間です。
復職のタイミングの見極め方
「いつ復帰すればいいのか」も難しい判断です。以下のサインが出てきたら、復職を考えるタイミングかもしれません。
- 朝、自然に目が覚めるようになった
- 外出する気力が出てきた
- 「何かしたい」という意欲が少しずつ芽生えてきた
- 学校や仕事のことを考えても、以前ほど苦しくない
ただし、「まだ少し不安がある」程度なら、もう少し休養を続けることをおすすめします。完全に回復してから戻る方が、再発のリスクを大幅に下げられます。主治医やカウンセラーと相談しながら、無理のないタイミングで決めましょう。
副業スタート時の「やってはいけない」3つ
副業を始めるとき、多くの方が最初に失敗しやすいポイントがあります。
1つ目は、本業の就業規則を確認しないまま動くこと。最近は副業OKの会社が増えていますが、競合企業での副業や情報漏洩リスクのある業務は禁止されていることも。必ず就業規則を確認してから動きましょう。
2つ目は、単価を安く設定しすぎること。「実績がないから」と時給1,000円で請け負ってしまうと、あとで単価を上げるのが難しくなります。最初から相場の7〜8割を目安に設定するのがおすすめ。
3つ目は、契約書を交わさずに始めること。知り合いからの依頼ほど、口約束のまま進めてしまいがちですが、トラブルの原因になります。簡易な業務委託契約書のテンプレートでいいので、必ず書面を交わしましょう。
「最初の副業で契約書なしで進めて、納品後に報酬が減額されたのは苦い思い出です。」
——31歳・男性/Webデザイナー
副業が「本業の質」を上げる現象
副業を始めた相談者の多くが口にするのが「本業での仕事の質が上がった」という変化。外の世界で通用するスキルレベルを知ることで、本業での当たり前を見直せるようになる。また、複数の仕事を掛け持つことで、時間管理や優先順位づけが自然と上達します。副業は収入源の分散だけでなく、本業のパフォーマンスを上げる装置でもあるんです。
まとめ
休職は「終わり」ではなく、「立ち止まって考える時間」です。復職か転職か、あるいは第三の道か——答えは一つではありません。
焦って決断する必要はありません。心身が回復してから、自分にとってベストな選択肢を、自分のペースで見つけていく。それが、長い目で見たときに最も良い結果につながります。
一人で抱え込まず、信頼できる人や専門家に相談しながら、ゆっくり歩んでいきましょう。
