教員夫婦のキャリア設計|片方が転職するときに考えること
この記事の著者
新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役
元公立中学校英語教員(10年以上)。教員時代に感じた「このままでいいのか」という想いを原点に、教員専門のキャリア支援会社を設立。延べ500名以上の教員のキャリア相談に対応。
「夫婦で教員をしているけれど、このままでは家庭が回らない」「自分が転職したいけれど、パートナーにどう切り出せばいいか分からない」——教員夫婦は、キャリアの悩みが「個人の問題」で済まないという特有の難しさを抱えています。
Re-Careerのキャリア相談でも、教員夫婦からのご相談は非常に多いです。共働きで二人とも長時間労働、土日は部活動、平日の家事育児は綱渡り——「二人とも教員」だからこそ見えない出口があります。
この記事では、教員夫婦がキャリアを設計する際のポイントと、片方が転職する場合の具体的な考え方をお伝えします。辞めるか辞めないかの結論を急ぐ必要はありません。まずは「二人で選択肢を知る」ことから始めましょう。
教員夫婦が直面するキャリアの課題

「二人とも忙しい」という構造問題
教員夫婦の最大の課題は、二人とも帰宅時間が読めないことです。朝は二人とも7時前に出勤し、夜は19〜20時に帰宅。子どもがいる場合、保育園の送り迎え、夕食の準備、宿題のサポート——すべてが時間との戦いになります。
私が教員時代に感じていたのは、「夫婦で教員をしていると、お互いの大変さが分かるから理解し合える反面、お互いに余裕がないから助け合えない」というジレンマでした。
異動のリスク
公立教員の場合、異動は避けられません。夫婦で同じエリアに住んでいても、片方が遠方の学校に異動になれば、通勤時間が大幅に増え、生活バランスが崩れます。子どもの学校や保育園の送迎との兼ね合いも、異動のたびに問題になります。
「夫婦ともに教員で、子どもが生まれてから本当に大変でした。夫は部活の顧問で土日も不在、私は時短勤務だけど持ち帰り仕事が毎晩。『どちらかが転職しないと、家庭が壊れる』と夫婦で話し合いました」
——Mさん(30代・教員夫婦、妻が転職を検討中)
収入の安定 vs. 生活の質
教員夫婦は世帯年収が高い傾向があります(30代で合計900〜1,100万円程度)。この安定した収入は住宅ローンや子どもの教育費の計画に直結するため、「片方が辞めたら収入が大幅に下がるのでは」という不安が、転職をためらう大きな理由になります。
「片方が転職する」という選択肢の考え方

どちらが転職する?判断の3つの軸
教員夫婦のどちらが転職するかを考えるとき、以下の3つの軸が参考になります。
1. 教員への想いの強さ:「どちらがより教壇に立ち続けたいか」。教員の仕事に強い使命感を持っている方が教員を続け、もう一方が転職する方が、家族全体の満足度は高くなります。
2. 転職市場での優位性:保有資格、専門教科、年齢によって転職のしやすさは異なります。英語教員やIT系のスキルを持つ方は、比較的転職がしやすい傾向があります。
3. 育児・家事の分担:転職後にどちらが家事育児のメイン担当になるかも重要です。テレワークが可能な転職先であれば、家事育児との両立がしやすくなります。
シミュレーションしてみよう:世帯収入の変化
片方が転職した場合の世帯収入をシミュレーションしてみましょう。
例:夫婦ともに30代教員(世帯年収1,000万円)→ 片方が事務職に転職(350万円)の場合
- 世帯年収: 1,000万円 → 850万円(▲150万円)
- 月の手取り差: 約▲10万円
- 一方で、残業代がなくなる代わりに保育料・外食費・時短グッズ費が削減できるケースも
年収だけ見ると大きな減少に感じますが、「時間の余裕が生まれることで削減できるコスト」を考慮すると、実質的な影響はもう少し小さくなることが多いです。
転職しなくても改善できること
転職は最終手段ではありません。まずは現状の中でできる改善策を検討しましょう。
- 部活動の顧問を外れる交渉をする(管理職への相談)
- 時短勤務を活用する(育児中であれば利用可能)
- 同じ地域への異動希望を出す(通勤時間の短縮)
- 家事代行サービスやミールキットを活用する
教員夫婦のキャリア設計で大切な3つのこと

1. 定期的に「キャリア会議」を開く
月に1回でもいいので、夫婦でキャリアについて話す時間を設けましょう。「最近の仕事はどう?」「来年度はどうしたい?」「5年後にどうなっていたい?」——普段忙しいからこそ、意識的に時間を確保することが大切です。
カフェでゆっくり話す、子どもが寝た後にリビングで話す——場所はどこでも構いません。大切なのは、お互いのキャリアを「二人の問題」として共有することです。
2. 「どちらかが犠牲になる」ではなく「チームとして最適化する」
片方が転職することは、「犠牲」ではなく「チームとしての戦略的な役割分担」です。サッカーで全員がフォワードでは試合にならないように、家庭というチームの中で、それぞれが最も力を発揮できるポジションを選ぶという発想が大切です。
「私が転職してフルリモートの仕事に就いたことで、家族の時間が劇的に増えました。夫は教員を続けていますが、私が家庭のベースを支えることで、夫も安心して仕事に集中できるようになりました。『犠牲』じゃなくて『役割分担』だと思っています」
——Nさん(30代・元小学校教員→リモート事務職)
3. 第三者に相談する
夫婦だけで話し合うと、感情的になったり、堂々巡りになったりすることがあります。キャリアコンサルタントやFP(ファイナンシャルプランナー)など、第三者の専門家に相談することで、客観的な視点を得られます。
Re-Careerでも教員夫婦のキャリア相談を多くお受けしています。「二人の状況を総合的に見て、最適な選択肢を一緒に考える」——そんなサポートが必要なときは、ぜひお気軽にご相談ください。
まとめ
教員夫婦のキャリア設計は、「二人で一つのチーム」として考えることが大切です。片方が転職することも、二人とも教員を続けることも、どちらも正解。大切なのは、お互いの気持ちを共有し、選択肢を知った上で、二人で納得のいく道を選ぶことです。
「辞めるか辞めないか」ではなく、「私たちの家族にとって最適な選択は何か」——その問いに向き合うことが、教員夫婦のキャリア設計の第一歩です。