教員から事務職への転職|ワークライフバランスを重視する選択肢
教員から事務職への転職は、ワークライフバランスを重視する人に向く選択肢のひとつ。元教員+キャリア支援者が、年収の水準を公的な統計で確かめる方法、教員のスキルが活きる事務職の種類、公立の学校事務の採用のしくみ、教員経験の伝え方まで解説します。
「教員の仕事は好きだけど、この働き方はもう限界」「プライベートの時間がほしい」——そう感じている教員の方に、一つの選択肢としてご紹介したいのが事務職への転職です。
この記事の著者
新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役
公立中学校で11年、私立高校で1年、あわせて12年、英語教員として勤務。教員時代に感じた「このままでいいのか」という想いを原点に、教員専門のキャリア支援会社を設立。延べ1,000名以上の教員のキャリア相談に対応。
📋 目次
事務職は「定時で帰れる」「土日が休み」「残業が少ない」というイメージがありますが、実際のところはどうなのでしょうか。教員のスキルは事務職で通用するのか、年収はどう変わるのか、そもそもどんな種類の事務職があるのか——この記事では、教員から事務職への転職について、リアルな情報と具体的な戦略をお伝えします。
転職するかどうかはさておき、「自分にはこういう選択肢もあるんだ」と知っておくことは、今の仕事に対する気持ちにもプラスに働くはずです。
教員から事務職へ転職するメリット

ワークライフバランスの改善
事務職の最大の魅力は、労働時間の予測可能性です。多くの事務職では、始業・終業時間が明確です。厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」では、総合事務員の残業(超過実労働時間)は月平均9時間でした(従業員10人以上の企業・全年齢の平均)。教員のように「部活で土日がつぶれる」「持ち帰り仕事で深夜まで作業する」ということは、基本的にありません。
私自身も教員時代、「今日は何時に帰れるか分からない」という不確実さがストレスでした。帰宅時間が読めないと、習い事も食事の準備も友人との約束も、すべてが後回しになります。「定時に帰れる」ことの価値は、経験してみないと分からないものです。
精神的な負担の軽減
教員の仕事は、感情労働の連続です。生徒の問題行動への対応、保護者からのクレーム、同僚との関係——常に「人」と向き合い続ける精神的負荷は非常に高いものがあります。事務職では、対人ストレスがゼロになるわけではありませんが、教員ほどの感情的な消耗は少ない傾向があります。
「教員時代は毎朝『今日は何が起きるだろう』と不安でした。事務職に転職して、『今日やるべきことが明確で、それをこなせばいい』という安心感がこんなに心地よいとは思いませんでした」
——Iさん(30代・元小学校教員→メーカー一般事務)
スキルの汎用性が高まる
事務職で身につくPCスキル(Excel、Word、PowerPoint)、経理知識、ビジネスメールのスキルは、どの業界でも通用する汎用スキルです。教員としての専門性に加えて、ビジネスの基礎スキルを身につけることで、将来のキャリアの選択肢がさらに広がります。
教員のスキルが活きる事務職の種類

一般事務・営業事務
データ入力、書類作成、電話対応、来客対応など、オフィスワークの基本となる業務です。教員の事務処理能力(成績処理、通知表作成、各種報告書)は、一般事務の業務にそのまま転用できます。特に営業事務は、営業チームのサポート役としてコミュニケーション力が求められるため、教員の強みが活きやすいポジションです。
学校事務・教育委員会事務
教育現場に近い環境で事務の仕事がしたい方には、学校事務職員や教育委員会の事務職という選択肢があります。教育業界の知識がそのまま活かせるため、「全く新しい業界に飛び込む」不安は少ない選択肢です。ただ、公立の学校事務や教育委員会の事務は自治体の職員としての採用になるため、採用試験を受けるのが基本で、受験できる年齢や経験者向けの募集があるかどうかは自治体ごとに違います。受けたい自治体の募集要項を先に確かめてください。
人事・採用担当
教員の「人を育てる」スキルは、企業の人事部門で高く評価されます。採用面接、新人研修の企画・運営、社員の評価制度の運営——これらは教員の日常業務(面談、授業設計、成績評価)と構造的に似ています。教育研修を重視する企業では、教員経験者を積極的に採用しているケースもあります。
総務・庶務
会社全体の運営を裏方からサポートする総務の仕事は、学校での校務分掌の経験が直接活きます。行事の企画運営、備品管理、安全管理、社内イベントの調整——学校でやっていたことの延長線上にある業務が多く、比較的スムーズに適応できるでしょう。
経理・会計アシスタント
数字に抵抗がない方には、経理・会計の分野もおすすめです。簿記3級程度の資格を取得しておけば、未経験からでも事務アシスタントとして採用されるチャンスがあります。経理スキルは専門性が高く、一度身につければ長く安定して働けるという魅力があります。
気になる年収と働き方のリアル

年収は下がる?上がる?
年収がどう変わるかは、人によって大きく違います。まず、公的な統計で水準を確かめておきましょう。総務省「令和7年 地方公務員給与の実態」によると、公立の小・中学校(幼稚園を含む)教育職の平均給与月額は424,411円(給料月額と諸手当の合計。2025年4月1日時点の全年齢の平均)、期末手当・勤勉手当は支給された職員1人当たり年1,853,603円(2024年度の実績)です。この統計には教員の年齢別の給与の数字はなく、給料表も自治体ごとに違います。
事務職の側は、厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」で、30〜34歳の総合事務員(従業員10人以上の企業)の、毎月きまって支給される給与が344,900円、年間の賞与などが1,087,500円です。ただし同じ30〜34歳でも、従業員1,000人以上の企業では403,300円と1,524,600円、10〜99人の企業では277,600円と627,900円と、会社の規模で大きく変わります。
これらはすでにその仕事をしている人の平均で、転職したときに提示される額とは別物です。また、教員の数字は全年齢の平均、事務職の数字は年齢階級別の平均で、集計の対象がそろっていないため、そのまま差し引きして比べることはできません。未経験で事務職に移ると、最初の年収が下がることもあります。応募する求人の条件を、いまの給与明細と並べて比べてみてください。
年収だけでなく、残業代の有無、福利厚生、通勤時間、休日の質を総合的に考えると、人によっては「時給に換算すると事務職の方が高い」ということもあります。教員の実質的な時給を計算してみると、意外な結果になることがあります。
「年収は50万円ほど下がりましたが、残業がほぼゼロになって、土日も完全に自由になりました。年収の差は、取り戻せる自由な時間の価値を考えたら全く気になりません」
——Jさん(30代・元中学校教員→IT企業営業事務)
事務職未経験でも大丈夫?
「事務経験がないけど大丈夫?」という不安は多くの方が持ちますが、教員は実は事務処理のプロです。成績一覧表の作成、指導要録の記入、出席簿の管理、各種報告書の提出——これらはすべて事務業務です。「事務未経験」と思い込んでいるだけで、実際にはかなりの事務スキルを持っているのです。
事務職への転職を成功させるポイント

PCスキルを可視化する
MOS(Microsoft Office Specialist)資格の取得をおすすめします。特にExcelは事務職の必須スキルです。VLOOKUP、ピボットテーブル、IF関数あたりを使いこなせれば、多くの事務職で即戦力として評価されます。資格がなくても、「Excelで成績管理表を作成・運用していた」という具体的な経験は十分なアピールになります。
「教員のスキル」を事務職の言葉に翻訳する
面接では、教員の経験を事務職で求められるスキルに置き換えて伝えましょう。
- 成績処理 → データ管理・集計スキル
- 保護者対応 → クレーム対応・顧客折衝経験
- 学年行事の運営 → プロジェクト管理・調整能力
- 通知表・指導要録の作成 → 正確な書類作成能力
- 会議資料の作成 → プレゼンテーション資料作成スキル
転職エージェントを活用する
事務職は人気が高く、応募倍率が高い職種です。厚生労働省「一般職業紹介状況(令和7年12月分及び令和7年分)」では、2025年12月の一般事務従事者の有効求人倍率(常用・パートを除く)は0.33倍で、職業全体の1.26倍を大きく下回っています(ハローワークを通した求人・求職の数字です)。特に未経験からの転職では、転職エージェントに応募書類を見てもらうと、教員の経験を事務職の言葉に直す手助けになります。教員からの転職に理解がある、あるいは教育業界出身者が多いエージェントを選ぶと、スキルの翻訳を一緒に考えてくれます。
まとめ
教員から事務職への転職は、ワークライフバランスを重視したい方にとって有力な選択肢です。年収面では下がる可能性がありますが、労働時間の短縮や精神的な負担の軽減、スキルの汎用性の向上といったメリットがあります。
大切なのは、「事務職に逃げる」のではなく、「自分の生活と仕事のバランスを自分で選ぶ」という積極的な姿勢で転職に臨むこと。教員として培ったスキルは、事務職の現場でも必ず力になります。
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