やめたいとよく思う。でもやめる勇気もない…その「どっちつかず」を抱えたまま、15年続けてきた話

あかりさん(京都府・30代後半・中学校15年目・現役続行中)

京都府の公立中学校で15年間教えている あかりさん(30代後半)。特に教員になりたかったわけではなく、周りの流れに乗りながら教職大学院を経て教壇に立った。よかれと思ってした指導が保護者に伝わらない、理不尽な対応を強いられる——そんな経験が積み重なるたびに「やめたいな」という気持ちが浮かんでくる。でもやめる勇気もなかった。SSを受けたのは、急に決断するためではなく、「どうやっているんだろう」と知りたかったから。今も教壇に立ちながら、自分の強みと好きなことを少しずつ言語化している。

特別な動機はなかった——流れの中で教壇に立つまで

新川: 教員を目指したきっかけを教えてもらえますか?

あかりさん: 特にこれというきっかけはなくて、大学生の時に就職しようか採用試験を受けようかという感じで。出身も田舎であまり就職口もなかったし、周りの友達も採用試験を受ける人がいたので、自分もどうしようかなというくらいの気持ちで最初はその方向に向かいました。

新川: 大学院に進まれたんですよね。

あかりさん: 採用試験に自信がなくて、知っている先輩が行っていた大学院に入ってから採用試験を受けようと思って。最終的には教育を目指している人たちと一緒に勉強しました。最初の学部は普通の文学部で、そんなに強い動機があったわけではないんですが、国語は好きだったし、教えることも嫌いじゃなかったのでその流れで進んでいきました。

「特にこれというきっかけはなかった。でも国語は好きだったし、教えることも嫌いじゃなかったので、その流れで進みました」

国語を教えることの楽しさと、積み重なる理不尽

新川: 15年働いてきて、この仕事をやっていて良かったと感じる瞬間はどんな時ですか?

あかりさん: 国語を教えること自体はすごく楽しいし、授業を考えるのも好きです。あと子どもと関わって成長したなと思える瞬間や、可愛いなと思える瞬間はたくさんあって、そういうのは他の仕事にはなかなかないことだと思っています。

新川: しんどかったことはどんなことでしたか?

あかりさん: よかれと思ってした指導がうまく伝わらなかったり、そういうつもりで言ったわけじゃないのにこちらの意図と違った受け取られ方をしたりということがあまりにも多くて。保護者の方に対応する中でこちらがほぼ悪くならないといけないような状況も出てきて、それがやっぱり負担でした。仕事量が多いのはこなせば終わるんですが、そういう対応で理不尽なことを言われた時の方が、じわじわとしんどいです。

「仕事量が多いのはこなせば終わる。でも理不尽に悪者にされるような感覚の方が、じわじわとしんどかったです」

「やめたい」はよく浮かぶ。でも「やめる勇気」もなかった

新川: やめたいという気持ちはどんな時に浮かびましたか?

あかりさん: 何のために仕事してるんだろうと思う瞬間はよく来ます。向いていないのかなとも思いましたし、うまく保護者や生徒と関われる先生もいるのに、自分はそういうのが下手だなとずっと感じてきていて。やめたいなという気持ちにはよくなります。

新川: でもやめてこなかった理由はどんなことでしたか?

あかりさん: やめたいけど、やめて何かをしたいと思うほどこれがやりたいというものが分からないし、他の職業をやったことがないから転職して一般企業でやっていけるのかという見通しが持てなかったのが理由です。あと、公務員としてある程度身分が保証されているし、収入もある程度ある。それを捨ててまでやめたいのかなというのが、どうしてもあって。

「やめたいけど、やめて何がしたいかも分からない。その「どっちつかず」がずっと続いていました」

SSとの出会い——急に決断するためではなく、知りたかった

新川: SSを知ったきっかけと、受けようと思った理由を教えてもらえますか?

あかりさん: インスタやSNSで教員向けの発信を見ていた時に見つけて、新川さんの経歴や、思いを見て”めっちゃ一緒や”と思って。LINEを登録しておいて、本当に動きたいってなった時に受けてみようかなと思っていたんですが、積み重なることがあって受けてみることにしました。

新川: その時、どんな気持ちで申し込みましたか?

あかりさん: 急に思い切って決断しようというより、実際にやめた人たちがどうやっているんだろうというのを知りたかったし、もし本当にやめるにしてもそんな急にはできないから、準備になればいいかなという感じでした。やめた先輩たちの話を聞けたり実際どうされているかを勉強できる機会があればいいなと思って受けてみようという感じです。

プログラムで見えてきたもの——強みと、未来のプラン

新川: プログラムで特に印象に残っていることは何ですか?

あかりさん: 今のことだけじゃなくて、過去のことを振り返りながらその中から自分の強みや良さ、やりたいことを見つけていくというプロセスがすごく良かったです。あとコーチングの中で、5年後10年後どうなっていたいかということを何度か聞いてもらえたことで、先を考えるきっかけになりました。

新川: 先を考えることで、何か変わりましたか?

あかりさん: 例えばもうちょっと先、10何年か後に退職したとして、貯金も貯まってきていたら非常勤でも自分の生活だけ稼げればいいという働き方もあるな、とか。今の働き方だけじゃなく、もう少し先のプランも考えるようになりました。それが今すぐ生かされているかといったら正直まだわからないところもあるんですが、考えること自体は身についた感じがします。

新川: 自分の強みが見えてきたことで、今の仕事への向き合い方に変化はありましたか?

あかりさん: 授業を計画したり段取りを立てたりするのは、しんどいと思う人もいると思うんですが、自分は意外と嫌じゃないなというのに気づいて。こういうのは結構得意なのかもしれないなとアンテナが立つようになりました。自分の仕事の中にある好きなこと・得意なことに気づくようになったのは変化だと思っています。

「授業の計画や段取りを立てるのが意外と嫌じゃない。自分の仕事の中にある得意なことに気づくようになりました」

今の気持ち——とりあえず今年1年を

新川: 今はどんな気持ちで日々仕事に向き合っていますか?

あかりさん: 今の学校は2年目で、わりと落ち着いてまあまあうまくやれている感じはあります。めちゃくちゃこの仕事で頑張っていこうという気持ちが増えたわけでもないし、かといってやめたいという気持ちが強まったわけでもなくて。もうほんまに毎日とりあえずこの1年を、みたいな感じが今の正直な気持ちです。

新川: 5年後・10年後のことはたまに思い出しますか?

あかりさん: たまに思い出します。プログラムをやる中で、自分の強みというか、この仕事の中でこれは好きなこと・得意なことだなというのが少し見えたので、そういうのはちょっとたまに思い出したりします。いざ何か動くってなった時のヒントになればいいなとは思っています。

「今は毎日「とりあえずこの1年を」という感じ。でもいざ動く時のために、自分の強みを少しずつ育てています」

同じ気持ちの先生へ

新川: やめたいけど動けないという先生たちへ、一言いただけますか?

あかりさん: 日々やっている業務や指導の中に、自分のできることや得意なこと、逆に苦手なことも含めて、ちゃんとあると思います。それをプログラムを通じて言語化したり、客観的に見てもらえることで、自分のキャリアや生き方に生かせると思います。今やっていることの中にもいいことがあるから、自分を振り返る時間を取るのはすごくいいなと思うし、取ることで見えてくるものがあると思います。

「日々の仕事の中に、自分の得意なことはちゃんとある。振り返る時間を取ることで、見えてくるものがあります」

編集後記

あかりさんのインタビューで印象的だったのは、その正直さだ。やめたいとよく思う。でもやめる勇気もない。向いていないかもしれない。そういうことを、包み隠さず語ってくれた。決断したとか変わったという話ではなく、「どっちつかず」のまま生きているリアルがそこにあった。

でもそのリアルの中で、少しずつ何かが育っていた。授業の計画や段取りが意外と嫌じゃないという気づき。10年後に非常勤という働き方もあるかもしれないという視野。「いざ動く時のヒントにしたい」という言葉は、まだ動いていない人の言葉だけど、それでも確かに前を向いていた。

SSを受けた理由が「急に決断するためではなく、知りたかったから」というのも印象的だった。そういう入り方が、実は一番長く続く変化につながるのかもしれない。

取材・文:新川(Re-Career株式会社 代表取締役)


Re-Career代表 新川紗世
元教員が運営するキャリア支援

お金もキャリアも、自分で選ぶ。
そのために、選択肢を一緒に見ていきませんか?

Re-Careerは元教員が立ち上げた、教員専門のキャリア支援サービスです。
「辞める/続ける/変える」どの選択でも、お金とキャリアの両面で伴走します。