教員を一度辞めても、もう一度先生に戻れる?免許の確認・講師登録・カムバック採用と私立の道【元教員が解説】

辞めても先生に戻れる?免許の確認・講師登録・カムバック採用と私立の道

教員を一度辞めても、もう一度先生に戻る道はあります。戻り方は講師登録、採用試験の受け直し、私立学校への応募の3つで、どれを選ぶ場合も最初に教員免許が今も有効かを確かめます。元教員向けのカムバック採用までを、条文と自治体の要項で確かめました。

「一度辞めたら、もう学校には戻れないのでは」「出戻りなんて気まずい」。そう感じて、調べる手が止まっている方もいるかもしれません。実際には、講師として学校に戻る道も、辞めた先生を対象にした採用試験の区分も、自治体ごとに用意されています。

私は、辞めることも、続けることも、戻ることも、どれも否定しません。この記事では、戻る道を「手順」として並べます。選ぶのは、読み終えたあなたです。

新川紗世 Re-Career代表

この記事の著者

新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役

公立中学校で11年、私立高校で1年、あわせて12年、英語教員として勤務。教員時代に病休を経験し退職。その後、教員専門のキャリア支援会社を設立。著書『「やめたいかも」と一度でも思ったら読む 教員の転職思考法』。スタッフ全員が元教員のキャリア支援会社を率い、自身も延べ1,000名以上のキャリア支援に携わる。

⏱️ 30秒でわかる結論

一度辞めた教員が先生に戻る道は3つ。どの道でも、最初に免許の状態を確かめる

まず免許2022年7月1日時点で有効だった免許は期限なし(臨時免許状を除く)。それ以前に期限を迎えた人は、新旧の区分と期限の日の在職状況で「有効(休眠)」か「失効」かが分かれる

講師登録常勤講師・非常勤講師として戻る入口。窓口は自治体ごとに違い、登録しても必ず任用されるとは限らない

採用試験元教員向けの区分がある自治体も。東京都のカムバック採用、横浜市のリスタート特別選考などは第一次試験(選考)が免除

私立学校私立も教員免許が必要。採用は学校法人ごと

お金給与も退職手当も自治体の条例で決まる。前歴の加算や通算の扱いは、採用される自治体に確認

一度辞めた教員でも、もう一度先生に戻れる|結論と3つの道

いくつもの方向を指す矢印(先生に戻る3つの道のイメージ)

先に結論をお伝えします。教員を一度辞めた方でも、もう一度学校の先生になる道はあります。戻るかどうかを左右するのは、辞めたという事実そのものよりも、教員免許の状態と、応募する先の受験資格(年齢・経験年数・退職した時期など)です。

戻り方は大きく3つあり、その前に全員に共通の確認がひとつあります。まず全体を表で見てください。

順番 内容 最初にすること
確認 教員免許が今も有効かを確かめる 免許状の授与年月日と、更新制の期限の日にどう働いていたかを確かめる
道① 講師として戻る(常勤講師・非常勤講師) 働きたい自治体の講師登録の窓口を探す
道② 採用試験を受け直して正規の教員に戻る 受けたい自治体の実施要項で、元教員向けの区分があるかを見る
道③ 私立学校の先生として戻る 働きたい学校の募集要項を見る

3つの道は、どれかひとつに決める必要はありません。たとえば「講師として働きながら、翌年の採用試験を受ける」という組み合わせもあります。

この記事は「戻るべき」と背中を押すためのものではありません。戻らずに、教員免許を学校の外で活かす道もあります(教員免許を活かせる教員以外の仕事15選)。いまの仕事を続けるのも、学校に戻るのも、どちらも選べる状態にしておくことが大切だと思います。

先生に戻る前に|教員免許が今も有効かを確かめる(更新制廃止後の扱い)

免許の確認事項を付箋で整理するイメージ

学校に戻るには、学校の種類を問わず教員免許が必要です。教育職員免許法 第3条第1項は「教育職員は、この法律により授与する各相当の免許状を有する者でなければならない」と定めていて、講師も含まれます(第2条第1項・第3条第2項)。

教員免許更新制は、2022年7月1日に廃止(発展的解消)されました(文部科学省「教員免許更新制」)。辞めた時期と免許を受けた時期によって扱いが変わるので、順番に見ていきます。

2022年7月1日時点で有効だった免許状は、期限なし

2022年7月1日の時点で有効だった普通免許状・特別免許状(休眠状態のものを含む)は、手続きなしで有効期間の定めがないものになりました(令和4年法律第40号附則第3条ほか)。臨時免許状は除きます。

つまり、2022年7月1日より後に退職した方で、その時点で有効な普通免許状を持っていた方は、免許について新たな手続きは要りません。

2022年6月30日以前に期限を迎えた方は、4つに分かれる

更新制があった時代に期限の日を迎えた方は、「新免許状か旧免許状か」と「期限の日に教員として働いていたか」で扱いが分かれます。文部科学省「令和4年7月1日以降の教員免許状の扱いについて」の表をもとに整理すると、次のとおりです。

免許状の区分 期限の日に教員として働いていた 期限の日に働いていなかった
旧免許状(2009年3月31日以前に初めて授与) 失効 休眠 → 2022年7月1日以降、手続きなしで期限のない免許状に
新免許状(2009年4月1日以降に初めて授与) 失効 失効

ここでいう「期限の日」は、更新などの手続きをした場合は、その証明書に書かれた新しい期限の日です。在職中に更新(修了確認)の手続きを済ませていれば、期限は先に延びています。

「働いていた」には、講師や、産休・育休・休職中だった方のほか、教育委員会の指導主事なども含まれます。また、期限の日に退職した場合、定年退職や任期満了での退職は「働いていた」側、自己都合退職や勧奨退職は「働いていなかった」側として扱われます(同資料の補足説明)。講師として任期の満了日に辞めた方は、この点を確かめてください。

旧免許状を持っている方が2009年4月1日以降に別の免許状を取った場合、あとから取った免許状も旧免許状として扱われます(同資料の注1)。

失効していたら、都道府県教育委員会に再授与を申請する

失効していても、都道府県の教育委員会に再授与を申請すれば、有効期限のない免許状を受け取れます(ごく一部の例外を除く)。大学に入り直して単位を取り直すのではなく、学力に関する証明書(出身大学などで取得した単位の証明)などの書類をそろえて申請する手続きです。

必要な書類・手数料・受付期間は都道府県によって違います。申請はどの都道府県にもできますが、書類の省略などを受けるには、その免許状を授与した都道府県の教育委員会に申請します(文部科学省「免許状授与手続窓口一覧」)。

自分の免許状がどれに当たるか分からない、免許状そのものが見当たらない、という場合は、授与を受けた都道府県の教育委員会で「授与証明書」を取ると確かめられます。

新旧の区分と期限の日を確かめる順番

・免許状に書かれた授与年月日を見る(2009年3月31日以前か、4月1日以降か)
・旧免許状なら、生年月日で割り振られた修了確認期限の日を確かめる。新免許状なら、免許状に書かれた有効期間の満了日を見る
・その日に、講師を含めて教員として在職していたか(休職・産休・育休中を含む)を思い出す
・分からなければ、授与を受けた都道府県の教育委員会に問い合わせる

講師登録から先生に戻る|常勤講師・非常勤講師・育休代替

学校の校舎

いちばん早く学校に戻れる可能性があるのは、講師として働く道です。公立学校の講師は、法律上おおむね次の任用に分かれます。

立場 任用のしくみ 任期
常勤講師(欠員の補充など) 臨時的任用(地方公務員法 第22条の3) 6月以内。更新は1回まで
育児休業の代替 地方公務員の育児休業等に関する法律 第6条による任期付採用または臨時的任用 育児休業の期間を上限に決まる(臨時的任用の場合は1年まで)
非常勤講師 主に会計年度任用職員(地方公務員法 第22条の2第1項第1号) その会計年度の末日までの範囲

常勤の講師は、担任や校務分掌も持つことがあります。たとえば東京都教育委員会「令和8年度採用 東京都公立学校臨時的任用教員・時間講師採用候補者選考実施要項」は、臨時的任用教員について「勤務時間や職務内容は正規教員と同様で、授業を行うだけでなく学級担任や校務分掌も担当します」と書いています。いきなりフルタイムに戻るのが不安な方は、授業だけを受け持つ非常勤講師から始める、という選び方もあります。

講師登録の窓口は、自治体ごとに違う

公立学校で講師として働く入口が、教育委員会の「講師登録」(名簿への登載)です。窓口は全国で統一されていません。都道府県の教育委員会が受け付けるところ、市区町村の教育委員会が受け付けるところ、東京都のように名簿に載るための選考を行うところがあります。

登録すれば必ず声がかかる、というものでもありません。東京都の同じ要項には、「欠員が生じる時期・校種・教科等の状況により、名簿登載者であっても必ず採用されるとは限りません」とあります。登録したあとも、連絡のつく電話番号やメールアドレスを保っておくことが大切です。

当社(Re-Career株式会社)が運営する学校ではたらく(講師登録・会計年度任用職員の窓口まとめ)では、各自治体の公式ページで確認できた講師登録・会計年度任用職員の窓口を、都道府県・市区町村ごとにまとめています。住んでいる地域で「どこに申し込めばいいか」を探すときに使ってください。

塾講師から学校の先生へ移る方の道は、塾講師からの転職先|学校の先生になる道(講師登録・特別選考)で詳しく書いています。

講師から正規の教員をめざすとき

地方公務員法 第22条の3第5項は、「臨時的任用は、正式任用に際して、いかなる優先権をも与えるものではない」と定めています。講師として働いたことで、自動的に正規の教員になれるわけではありません。

一方で、講師の経験を採用試験の区分に組み込んでいる自治体があります。東京都教育委員会「令和8年度東京都公立学校教員採用候補者選考(9年度採用)実施要綱」の特例選考④は、令和5年4月1日から令和8年3月31日までの3年間に、国公立学校で常勤の臨時的任用教員等として12か月以上勤務した人が対象で、第一次選考の教職教養が免除されます。さらに、特例選考④と⑤の3で受ける人のうち、令和8年7月1日現在、東京都の公立学校で期限付任用教員または産休・育業代替教員として任用されている人には、一定の得点が加点されます。

講師の働き方や、正規の教員になるか転職するかの考え方は、臨時的任用教員(臨任)のキャリア戦略|正規登用 or 転職?でも詳しく書いています。

「辞めることが逃げではない。選択の一つに過ぎない。」
——20代・中学校・教諭で退職(現在の主な仕事は非常勤講師・臨時的任用)・男性(元教員キャリア実態調査2026)

教員採用試験を受け直す|元教員向けのカムバック採用・特別選考の実例

面接のイメージ

正規の教員として戻りたい場合は、採用試験(選考)を受け直します。多くの方が気になるのは、「一度辞めた人でも、試験は一からなのか」だと思います。答えは、自治体と区分によって違います。

全国の状況(文部科学省の集計)

文部科学省「令和7年度(令和6年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況等のポイント」によると、教職経験を加味した「特別の選考」は、68の自治体(都道府県・政令指定都市など)すべてで実施されています(令和7年度採用の選考)。「特別の選考」には、一部の試験の免除、加点、特別免許状を活用した選考などが含まれます。

ただし、この「教職経験」の区分には、現職の教員向けのものや講師経験者向けのものも含まれます。辞めた先生を対象にした区分があるかどうか、あるならどんな条件かは、自治体ごとの実施要項を見ないと分かりません。ここでは、実際の要項を3つ紹介します。

例1:東京都(令和8年度実施・9年度採用)

東京都教育委員会「令和8年度東京都公立学校教員採用候補者選考(9年度採用)実施要綱」には、教員経験のある人向けの区分がいくつかあります。辞めた先生に関係するのは次の4つです。

区分 主な要件(要綱の記載) 試験
特例選考① 国公立学校における正規任用教員経験者 国公立学校(東京都教育委員会の発令による職を除く)の正規任用教員として、令和8年3月31日までに3年以上の勤務経験(休職期間を含まない) 第一次選考の教職教養を免除
特例選考② 東京都公立学校における正規任用教員経験者 東京都公立学校の正規任用教員として3年以上の勤務経験があり、令和8年4月1日現在、在職していない 第一次選考の教職教養を免除
特例選考③ カムバック採用 東京都公立学校の正規任用教員として3年以上の勤務経験があり、平成29年3月31日以降に退職。勤務時と同じ校種等・教科で受験。令和8年4月1日現在、在職していない 第一次選考を免除(面接と、一部教科の実技)
キャリア採用選考 国公私立学校で正規任用教員の勤務経験が8年以上、令和9年3月31日現在で満30歳以上 主任教諭として採用する選考。区分ごとの試験に加えてキャリア論文

カムバック採用は「勤務時と同一の校種等・教科(科目等)」でしか受けられず、要綱のQ&Aには「募集が無い場合には受験できません」とあります。また、ここで紹介した特例選考①〜③を受けられるのは、昭和40年4月2日以降に生まれた人です。

東京都のカムバック採用の案内には、合格後、希望者が任用前に学び直せる「任用前専門性向上講座」(令和7年度の実施例:講義90分×2コマ、模擬授業90分×2コマ)も紹介されています。

例2:横浜市「リスタート特別選考」(令和8年度実施)

横浜市「令和8年度実施 横浜市公立学校教員採用候補者選考試験【夏実施】受験案内」の特別選考⑦(リスタート特別選考)は、令和8年3月31日以前に横浜市公立学校の正規の教諭などとして正式採用になり、そのあと平成28年4月1日から令和8年3月31日までの間に退職した方が対象です。条件付採用のまま退職した方と、免職となった方は除かれます。

第一次試験は免除されます。ただし、適性検査の受検と、第一次試験の日に行われる論文試験(第二次試験の一部)は必要です。

例3:大阪府「離職者再採用」

大阪府は、本試験とは別に「令和9年度 大阪府公立学校教職員採用選考テスト受験案内【離職者再採用】」を出しています。大阪府教育委員会の採用選考テストに合格して任命された教職員で、4年以上の実務経験(臨時的任用・会計年度任用などの期間や、休職・停職期間を除く)があり、受験申込日の前日から数えて退職後2年以上たっていることなどが条件です。定年で退職した方は対象外です。

選考は、面接考査と、在職していた期間の勤務実績で行われます。退職後6年以上たった校長・教員は、模擬授業が加わります。

3つを比べて分かること

同じ「元教員向け」でも、東京都と横浜市は「ある日付以降に退職した人」、大阪府は「退職してから2年以上たった人」が対象で、退職時期の条件の向きが違います。勤務年数の条件も、東京都のカムバック採用は3年以上、大阪府は4年以上、横浜市は正式採用になっていることで、そろっていません。

しかも、要項は毎年度つくり直されます。紹介した内容は、どれも上に書いた年度のものです。受けるときは、必ずその年度の実施要項で確かめてください。

ほかの自治体の区分は、学校ではたらく「教員採用試験の特別選考 自治体一覧」で、各教育委員会の実施要項をもとに区分ごとに整理しています。「カムバック」の区分をもつ自治体を探すときに使ってください。

年齢の条件

受験できる年齢も自治体ごとに違います。文部科学省「令和5年度(令和4年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施方法のポイント」によると、68県市のうち、年齢の「制限なし」は53県市でした(「制限なし」は満59歳以下が対象)。東京都の令和8年度実施の選考では、一般選考が昭和62年4月2日以降、特例選考が昭和40年4月2日以降(特例選考⑦を除く)に生まれた人が対象です。大阪府の離職者再採用は令和9年4月1日時点で定年の年齢(63歳)に達していないことが条件です。

私立学校の先生として戻る

本が並ぶ棚

公立に限らず、私立学校の先生として戻る道もあります。私立学校の先生にも、公立と同じく教員免許が必要です(教育職員免許法 第2条第1項・第3条)。

私立学校の採用は、学校法人ごとに行われます。応募の方法、時期、条件は、それぞれの学校の募集要項で確かめます。

都道府県の私学団体が、応募の窓口を用意していることがある

たとえば東京都では、一般財団法人 東京私立中学高等学校協会が、「私学教員適性検査」を令和5年8月27日の実施で終了し、令和6年9月から「東京私学教職員エントリーシステム」(無料)を始めています。このような仕組みは都道府県ごとに違うので、働きたい地域の私学団体のページも見てみてください。

私立で積んだ経験は、公立の選考で扱われることもある

逆の方向の話もあります。前の章で紹介した東京都のキャリア採用選考は、「東京都公立学校を含む国公私立学校において正規任用教員の勤務経験が8年以上」が条件で、私立学校での正規の勤務も数えられます。文部科学省の集計でも、採用者の内訳でいう「教職経験者」は、国公私立学校の教員だった人とされています。

私自身、教員としての最初の1年は私立高校の非常勤講師で、その後、公立中学校の教諭として11年間英語を教えました。公立と私立は採用のしくみがまったく別なので、両方を並べて比べてみると、戻り方の選択肢が広がると思います。

先生に戻ったときの給料・退職手当・条件付採用

年収のイメージ

戻ることを考えるとき、お金と身分の扱いは避けて通れません。ここは自治体ごとの差が大きいので、「全国でいくら」とは書けません。書けるのは、決まり方と、自治体が公表している例です。

給料は自治体の条例で決まり、前の経験が加算されることがある

公立学校の教員の給与は、教育公務員特例法 第13条により、それぞれの自治体の条例で定めます。

採用前の経験を初任給にどう反映するかも、自治体の基準によります。たとえば横浜市「教員の給与と休暇」は、令和8年1月現在の条例等による初任給の目安(小学校・中学校・義務教育学校・高等学校の給与月額)を、次のように公表しています。

採用前の経歴 給与月額の目安
大学新卒 約327,000円
大卒後に国公立・私立学校等で5年間の教員経験を経て採用 約365,000円
大卒後に国公立・私立学校等で20年間の教員経験を経て採用 約445,000円

ここでいう給与月額は、給料・教職調整額・義務教育等教員特別手当・地域手当などの合計です。注意したいのは、横浜市が「既卒の場合の給与モデルは、大学新卒で浪人や留年、無職期間等、空白期間がない場合で算出しています」と書いている点です。一度辞めて間が空いている方は、この表と同じ額にはならない可能性があります。

東京都教育委員会「令和8年度東京都公立学校教員採用候補者選考(9年度採用)実施要綱」も、給与について「高等学校卒業以降に有用な経験がある場合は、一定の基準により加算されます」と書いていますが、その基準(どの経験をどれだけ加算するか)は要綱には書かれていません。教員を辞めてから別の仕事をしていた期間がどう扱われるかは、採用される自治体に確認してください。

退職手当の勤続期間がどう数えられるかも、条例しだい

退職手当の額と支給方法も、自治体の条例で定めます(地方自治法 第204条)。東京都の同じ要綱には、「国立大学法人及び他の道府県での教職員在職期間は、東京都の退職手当の算定に通算しません」とあります。

前に勤めていた期間が、戻ったあとの退職手当の計算に入るかどうかは、この記事では一律に書けません。前回の退職で退職手当を受け取っているかどうかも伝えたうえで、採用される自治体の担当課に確かめてください。

採用されると、条件付採用の期間から始まる

地方公務員の採用は、すべて条件付のものとされ、小学校・中学校・高校などの教諭や講師の場合、その期間は1年です(地方公務員法 第22条、教育公務員特例法 第12条第1項。養護教諭・栄養教諭や、幼稚園の教諭などは6か月)。一度辞めてから採用試験を受け直して採用された場合も「採用」に当たるので、この期間から始まります。

また東京都の要綱には、「採用時の年齢により昇任選考の一部を受験できないことがあります」ともあります。管理職をめざすかどうかも含めて考えたい方は、この点も確かめておくと安心です。

元教員107名のうち、学校に戻った人は何人?

データのイメージ

Re-Careerは、2026年2月〜5月に、元教員107名に記名式の「元教員キャリア実態調査2026」を行いました(調査の全体は元教員107名のリアル【元教員キャリア実態調査2026】にまとめています)。この調査の回答から、学校に戻った人が何人いたのかを、選択肢の回答を1件ずつ見て数えました。

質問と回答 人数(107名中)
現在の主な仕事が「正規教員として復帰」 4名
退職後に経験した働き方(複数回答)に「正規教員復帰」がある 4名
上の2つのどちらかに当たる 5名
現在の主な仕事が「非常勤講師・臨時的任用」 8名
退職後に経験した働き方(複数回答)に「非常勤講師・臨時的任用」がある 22名
「正規教員」「非常勤講師・臨時的任用」のどれかに当たる 26名

つまり、107名のうち26名が、退職したあとに正規の教員か講師として働いたことがある、と答えています。ただし、読み方には注意が要ります。この調査は「元教員」に向けたもので、学校に戻って今は自分を元教員だと思っていない方は、そもそも答えていない可能性があります。また、選択肢の「非常勤講師・臨時的任用」は、学校の種類を限定していません。

正規の教員に戻った5名が、教員を辞めたことをどう振り返っているかも見てみました。「後悔していない」1名、「どちらとも言えない」1名、「少し後悔」2名、「後悔」1名です。5名では傾向は言えませんが、戻った人の受け止め方もひとつではないことが分かります。

「なにをしたくて教員になったのか、そこを思い出して働いてほしいです。それでも辛い、不安があるなら転職も有りな選択肢です。」
——30代・中学校・教諭で退職(その後、正規教員として復帰)・男性(元教員キャリア実態調査2026)

「自分の人生や居場所を自分で決める権利と力は全員がもっていると思います。」
——50代以上・義務教育学校・副校長で退職(その後、正規教員として復帰)・女性(元教員キャリア実態調査2026)

「一度外の世界を見た方が、授業や生徒へのアプローチが変わります!」
——40代・高等学校・教諭で退職(退職後に非常勤講師・臨時的任用を経験)・男性(元教員キャリア実態調査2026)

「辞めたら戻れない」「出戻りは気まずい」と感じたら|決める前の確認リスト

悩む人のイラスト

「教員 辞めたら 戻れない」「教員 出戻り」と検索する方の多くは、制度より先に、気持ちの面で迷っているのだと思います。

「戻れない」は、制度の上では当てはまらないことが多い

ここまで見てきたとおり、免許が有効(または再授与を受けられる)で、応募先の受験資格を満たしていれば、講師登録にも採用試験にも応募できます。自治体によっては、辞めた先生を名指しした区分まであります。この記事で見た法律や要項には、結婚・育児・介護・転職などの理由で自分から辞めたことだけを理由に応募できなくなる、という決まりはありませんでした。

ただし、条件を満たしていても、講師の声がかかるか、試験に合格するかは別の話です。「戻れる道がある」と「必ず戻れる」は違う、ということも、正直にお伝えしておきます。

「出戻りは気まずい」と感じたら

気まずさを感じるのは、自然なことだと思います。そのうえで、学校の外で働いた時間は、空白ではなく経験です。先ほど紹介した声のように、「一度外の世界を見た」ことが、授業や子どもへの向き合い方に生きることもあります。

私自身は2020年に退職して独立し、学校には戻っていません。それでも、戻る選択をした方を否定する理由はひとつもないと思っています。辞めたあとの生き方については教員を辞めた後の幸せな人生、キャリア全体の考え方は教員のキャリアプラン完全ガイドにも書いています。

決める前に確かめたい7つのこと

・教員免許の授与年月日と、新免許状か旧免許状か
・更新制の期限の日に、講師を含めて教員として働いていたか(失効していれば再授与の申請)
・働きたい自治体の講師登録の窓口と、登録の方法
・受けたい自治体の実施要項に、元教員向けの区分があるか。あれば、退職時期・勤務年数・校種と教科の条件
・年齢の条件(自治体・区分ごとに違う)
・給料の前歴加算と、退職手当の勤続期間の扱い(採用される自治体に確認)
・私立学校も視野に入れるか(募集は学校法人ごと)

講師登録の窓口は学校ではたらく(講師登録・会計年度任用職員の窓口まとめ)で、元教員向けの区分を含む特別選考は学校ではたらく「教員採用試験の特別選考 自治体一覧」で探せます。

よくある質問

Q. 一度辞めた教員でも、もう一度教員になれますか?

A. なれる道はあります。講師として戻る、採用試験を受け直して正規の教員に戻る、私立学校に応募する、の3つです。どの道でも教員免許が必要なので、まず免許が今も有効かを確かめてください。講師登録の窓口や採用試験の受験資格は自治体ごとに違います。

Q. 教員を辞めたあとも、教員免許は有効ですか?

A. 2022年7月1日の時点で有効だった普通免許状・特別免許状(休眠状態のものを含む)は、手続きなしで有効期間の定めがないものになりました。それより前に期限を迎えた場合、2009年3月31日以前に初めて授与された免許状(旧免許状)で期限の日に教員として働いていなかった方は「休眠」の扱いで、手続きなしで使えます。旧免許状で期限の日に在職していて更新の手続きをしていなかった方と、2009年4月1日以降に初めて授与された免許状(新免許状)で満了日が2022年6月30日以前だった方は失効していますが、都道府県の教育委員会に再授与を申請できます。

Q. 前に勤めていた自治体の採用試験を受けると、試験は免除されますか?

A. 自治体と区分によって違います。たとえば東京都のカムバック採用(令和8年度実施・特例選考③)は、東京都公立学校の正規任用教員として3年以上勤め、平成29年3月31日以降に退職した人などが対象で、第一次選考が免除されます。横浜市のリスタート特別選考(令和8年度実施)も第一次試験が免除されます(適性検査と論文は必要)。大阪府の離職者再採用は、退職後2年以上たっていることなどが条件で、面接考査と在職中の勤務実績で選考されます。条件は毎年度の実施要項で確認してください。

Q. 講師として働けば、正規の教員になれますか?

A. 自動的にはなれません。地方公務員法 第22条の3第5項は、臨時的任用が正式任用で優先権を与えるものではないと定めています。ただし、東京都の特例選考④のように、一定期間の講師経験がある人の試験の一部を免除したり、加点したりする自治体があります。

Q. 戻ったら、給料は新卒と同じになりますか?

A. 公立学校の教員の給与は自治体の条例で決まり、採用前の経験が加算されることがあります。横浜市は、大卒後に国公立・私立学校等で5年間の教員経験を経て採用された場合の給与月額の目安を約365,000円(大学新卒は約327,000円。令和8年1月現在)と公表していますが、空白期間がない場合で算出したものです。辞めていた期間がどう扱われるかは、採用される自治体に確認してください。

Q. 何歳まで採用試験を受けられますか?

A. 自治体ごとに違います。文部科学省の集計(令和5年度採用分)では、68県市のうち「制限なし」が53県市でした(満59歳以下が対象)。東京都の令和8年度実施の選考では、一般選考が昭和62年4月2日以降、特例選考が昭和40年4月2日以降(特例選考⑦を除く)に生まれた人、大阪府の離職者再採用は令和9年4月1日時点で定年の年齢(63歳)に達していない人が対象です。

Q. 講師登録はどこでできますか?

A. 自治体によって、都道府県の教育委員会、市区町村の教育委員会など窓口が違います。東京都のように名簿に載るための選考を行う自治体もあります。Re-Careerが運営する「学校ではたらく」(gakko.re-career.net)で、各自治体の公式ページで確認できた窓口を探せます。

まとめ

・教員を一度辞めても、先生に戻る道はある。戻り方は講師登録・採用試験の受け直し・私立学校への応募の3つ
・最初に教員免許の状態を確かめる。2022年7月1日時点で有効だった免許は期限なし(臨時免許状を除く)。それ以前に期限を迎えた人は、新旧の区分と期限の日の在職状況で「休眠(有効)」か「失効」かが分かれ、失効していれば再授与を申請できる
・講師は、常勤講師(臨時的任用)・育休代替・非常勤講師(主に会計年度任用職員)に分かれる。窓口は自治体ごとに違い、登録しても必ず任用されるとは限らない
・採用試験は自治体と区分しだい。東京都のカムバック採用、横浜市のリスタート特別選考、大阪府の離職者再採用のように、辞めた先生向けの区分をもつ自治体もあるが、退職時期や勤務年数の条件はそろっていない
・私立学校にも教員免許が必要で、採用は学校法人ごと
・給料・退職手当は自治体の条例で決まる。前歴の加算、勤続期間の通算、年齢の条件は、採用される自治体の要項で確かめる
・戻るのも、戻らずに外で働き続けるのも、どちらも選べる。条件を確かめてから決めればいい




Re-Career代表 新川紗世
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