教員から大学職員への転職|仕事内容・年収・応募方法を徹底解説
この記事の著者
新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役
元公立中学校英語教員(10年以上)。教員時代に病休を経験し退職。その後、教員専門のキャリア支援会社を設立。著書『「やめたいかも」と一度でも思ったら読む 教員の転職思考法』。スタッフ全員が元教員のプロフェッショナル集団として、延べ1000名以上のキャリア支援に携わる。
教員から大学職員への転職|仕事内容・年収・応募方法を徹底解説
「教育の世界に関わり続けたい。でも、教壇に立つのは辛くなった」。そんな教員の方にとって、大学職員は非常に魅力的な転職先の一つです。
大学職員は教育機関での仕事であるため、教員経験との親和性が高く、教員時代に培ったスキルを幅広く活かすことができます。加えて、安定した労働環境、福利厚生の充実、土日休みの確保など、教員が抱えがちな不満を解消できるポイントも多い職種です。
この記事では、大学職員の仕事内容から年収、応募ルート、選考対策まで、教員からの転職に特化した情報をお届けします。
大学職員の仕事内容|何をする仕事なのか
大学職員の業務は非常に多岐にわたります。一般的に「事務職員」と呼ばれますが、単なる事務作業だけではなく、大学運営の根幹に関わる重要な仕事です。
主な部署と業務内容
- 教務課:授業時間割の編成、成績管理、シラバス管理、教員との連携、カリキュラム改編の企画
- 学生課(学生支援):奨学金の管理、課外活動の支援、学生相談、ハラスメント相談窓口の運営
- 就職・キャリア支援課:就職ガイダンスの企画・運営、求人情報の管理、企業との連携、キャリア相談
- 入試課:入学試験の企画・運営、広報活動、オープンキャンパスの実施、高校訪問
- 総務・人事課:教職員の採用・労務管理、大学の組織運営、規程の整備
- 研究支援課:科研費をはじめとする外部資金の申請支援、研究倫理の管理、産学連携
- 国際交流課:留学プログラムの運営、海外大学との協定締結、留学生の受入支援
- 広報課:大学のブランディング、SNS運用、受験生向け広報、メディア対応
- 情報システム課:学内のIT環境の管理、eラーニングシステムの運用
大学職員の1日の流れ(例:教務課の場合)
- 8:30 出勤、メール確認
- 9:00 教員からの問い合わせ対応
- 10:00 次年度カリキュラム編成の打ち合わせ
- 12:00 昼休み(しっかり1時間取れることが多い)
- 13:00 成績データの処理・確認
- 14:00 学生からの履修相談対応
- 15:30 委員会資料の作成
- 17:00 退勤
「大学職員の魅力は、「教育の発展に貢献する」というやりがいと、「ワークライフバランスの確保」を両立できる点にあります。教員から転職された方は特にその違いを実感されています。」
——大学職員採用担当者

教員経験が活きるポイント
直接的に活かせるスキル
- 教育現場の理解:大学教員との連携において、教育の現場感覚を持っていることは大きな強み
- 学生対応力:多様な学生に対応してきた経験は、学生支援業務で即戦力になる
- コミュニケーション力:保護者対応で鍛えられた折衝力は、大学でのステークホルダー対応に活きる
- 文書作成力:指導案、報告書、紀要などの文書作成経験は事務職での基盤になる
- プレゼンテーション力:授業で培った「わかりやすく伝える力」は、説明会やガイダンスで重宝される
特に活かせる配属先
- 入試課:高校教員であれば、受験生の心理や高校側のニーズを熟知している
- 教務課:カリキュラムや授業運営の知識が直接活きる
- キャリア支援課:進路指導の経験がそのまま活かせる
- 学生支援課:生徒指導や教育相談の経験が学生対応に直結する
年収比較|教員と大学職員の収入はどう変わるか
国立大学法人の場合
国立大学法人職員の平均年収は約600万円前後とされています。ただし、これは全年齢平均であり、中途採用で30代の場合は400万〜500万円台からスタートするケースが多いです。
- 初年度:350万〜450万円(前職の経験年数により異なる)
- 5年後:450万〜550万円
- 10年後:550万〜650万円
- 管理職:700万〜900万円
私立大学の場合
私立大学の年収は大学の規模や経営状況により大きく異なりますが、有名私立大学では国立大学を上回る待遇のところも少なくありません。
- 大規模有名私大:初年度から年収500万円以上、管理職で1,000万円超のケースも
- 中規模私大:国立大学と同等〜やや上回る水準
- 小規模私大:国立大学を下回る場合もあり、経営状況の確認が必要
教員との比較
公立学校教員の年収(30代後半、主任教諭クラス)は約550万〜650万円程度です。大学職員への転職では、初年度は年収が下がるケースが多いですが、私立大学によっては同等以上の待遇を得られる場合もあります。
年収以外のメリットとして以下の点が挙げられます。
- 残業の少なさ:教員と比較して、大幅に労働時間が短くなるケースが多い
- 土日祝日の休み:部活動や休日出勤がなくなる
- 有給休暇の取得しやすさ:教員よりも計画的に休みを取りやすい環境
- 精神的負荷の軽減:生徒指導や保護者対応のストレスから解放される

応募ルート|大学職員になるための3つの方法
ルート1:公募(大学の採用サイト・求人サイト)
最も一般的な応募方法です。各大学の公式サイトや転職サイトに求人が掲載されます。
- 国立大学法人:国立大学法人等職員採用試験(統一試験)を経るルートと、各大学独自の中途採用があります
- 私立大学:各大学が独自に採用活動を行い、大学の採用ページや転職サイトに掲載されます
- 注意点:人気大学は競争率が高く、10倍〜50倍以上になることもあります
主な求人掲載先は以下のとおりです。
- 各大学の公式採用ページ
- JREC-IN Portal(研究者・大学職員向け求人サイト)
- マイナビ転職、リクナビNEXT、dodaなどの大手転職サイト
- 大学行政管理学会の求人情報
ルート2:転職エージェントの活用
非公開求人を多く持つ転職エージェントを活用する方法です。
- メリット:非公開求人にアクセスできる、書類添削・面接対策のサポートがある
- おすすめのエージェント:大学・教育機関に強いエージェントや、総合型エージェントの教育業界担当
- 注意点:エージェントによって取扱い大学が異なるため、複数のエージェントに登録するのが効果的
ルート3:知人・関係者からの紹介
大学教員や現職の大学職員からの紹介で採用に至るケースもあります。
- メリット:選考が比較的スムーズに進むことがある
- ポイント:大学関係の研修会や勉強会に参加して人脈を作る、教員時代の大学の先生とのつながりを活用する
「大学職員の採用では「なぜ教員を辞めてまで大学職員を志望するのか」が必ず問われます。ネガティブな退職理由ではなく、教育への思いを「教壇の上」から「教育の仕組みづくり」へ発展させたいというストーリーが説得力を持ちます。」
——大学職員の採用に詳しい人事コンサルタント
選考対策|教員から大学職員になるためのポイント
書類選考のポイント
- 志望動機の書き方:「教育の現場から教育の基盤づくりへ」というキャリアの発展ストーリーを描く
- 自己PRのポイント:教員経験で培った具体的なスキルと、それが大学職員としてどう活かせるかを結びつける
- 職務経歴書の工夫:教員の業務を「企画」「運営」「マネジメント」「折衝」などのビジネス用語に翻訳する
面接でよく聞かれる質問と対策
- 「なぜ教員を辞めるのか」:ネガティブな理由は避け、キャリアの発展として語る
- 「大学職員の仕事をどう理解しているか」:具体的な業務内容を調べた上で、自分の貢献イメージを語る
- 「教員から事務職への転換に抵抗はないか」:裏方の仕事にやりがいを感じる具体例を用意する
- 「高等教育の課題をどう考えるか」:少子化、国際化、DXなど、大学が直面する課題への見解を持つ
選考で差がつくポイント
- 大学業界の知識:志望大学の中期計画や教育方針を事前に研究する
- 高等教育政策への理解:文部科学省の高等教育政策、大学改革の動向を把握する
- ITスキル:Excel、Word、PowerPointの実務レベルのスキルは必須
- 語学力:国際交流や留学生対応が増えているため、英語力があれば大きなアドバンテージ

筆者からのメッセージ
Re-Careerに相談に来られる教員の中で、大学職員を希望される方は非常に多くいらっしゃいます。その理由を聞くと、「教育に関わり続けたい」「でも今の働き方は限界」という二つの思いが共存しています。
大学職員は、その両方の思いに応えられる職種です。教壇に立つわけではありませんが、教育の質を支え、学生の成長を裏から支える。それは、形を変えた「教育者」としての生き方です。
ただし、大学職員への転職には戦略が必要です。人気職種であるがゆえに競争率は高く、「教員経験があるから」というだけでは通用しません。教員としての経験を大学職員の文脈でどう語るか、その「翻訳力」が合否を分けます。
私たちRe-Careerでは、延べ1,000名以上の教員のキャリア支援に携わる中で、大学職員への転職を成功させた方の事例を多数蓄積しています。あなたの経験を最大限に活かせる志望動機の作り方、面接対策をサポートします。
国立大学職員 vs 私立大学職員|どこが違うのか
大学職員といっても、国立大学と私立大学では待遇・仕事内容・キャリアパスが大きく異なります。教員から転職を考える際、自分に合うのはどちらかを見極めることが重要です。
国立大学職員の特徴
国立大学法人の職員は、「公務員に近い安定性」が特徴です。給与は国家公務員に準じる体系で、年功序列の傾向が強く残っています。福利厚生は手厚く、長く働きたい人に向いています。一方で、給与の上限はある程度決まっており、急激な昇給は期待できません。
採用ルートは「国立大学法人等職員採用試験」という統一試験を受ける必要があり、年齢制限や試験対策が必要です。教員からの転職の場合、30代までが現実的なタイムリミットと言えます。
私立大学職員の特徴
私立大学は、各大学が独自に採用を行うため、学校によって待遇に大きな差があります。一般的に大規模私立大学(早慶、MARCH、関関同立など)は給与水準が高く、福利厚生も充実しています。一方、地方の中小私立大学では給与が公立教員より下がるケースもあります。
採用は中途採用が活発で、教員経験者を歓迎する大学も多くあります。「教育現場を知っている人材」として評価されやすいのが特徴です。
大学職員のリアルな1日
「大学職員」と一口に言っても、配属先によって仕事内容はまったく異なります。代表的な3つの部署のリアルな1日を紹介します。
教務課職員のある1日
朝8時半に出勤、メール確認と当日の窓口対応の準備。午前中は学生からの履修相談や成績照会対応。午後は教員との打ち合わせ、シラバス管理、次学期の時間割調整。17時頃に退勤。繁忙期(履修登録時期、成績処理時期)以外は残業がほぼないのが特徴です。
入試課職員のある1日
朝9時出勤、出願データの管理、高校訪問の準備、説明会の運営など。秋〜冬の入試シーズンは土日出勤や夜間業務もありますが、その分閑散期はゆったり働けます。「営業的な動きと事務的な動きの両方」がある仕事です。
研究支援課職員のある1日
研究費の申請サポート、補助金の管理、研究者の事務対応。専門的な書類仕事が多く、語学力(英語)を求められる場面もあります。「黒子として研究を支える」やりがいを感じる人に向いています。
面接でよく聞かれる質問と回答例
Q. なぜ教員から大学職員への転職を考えたのですか?
NG回答:「学校現場が辛くて辞めたいからです」
OK回答:「教育現場で生徒の成長を支えてきた経験を、より広い視点で支援する側に回りたいと考えました。大学職員という立場で、学生のキャリア形成や学修環境を支える仕事に魅力を感じています。」
Q. 教員経験はどのように活きると思いますか?
OK回答:「学生対応において、相手の状況を察して対応する力は教員時代に鍛えられました。また、複数の業務を並行して進めるマルチタスク能力、保護者対応で培った困難な相手とのコミュニケーション力も、大学職員の業務で活かせると考えています。」
教員から大学職員へ転職した3事例
「公立中学校で英語を10年教えていました。大学の国際交流課に転職して、留学生サポートと海外協定校との連絡業務をしています。教員時代より残業は激減し、英語力も活かせて、毎日が充実しています。」
——元中学校教員(30代女性)
「私立高校で数学を教えていましたが、大規模私立大学の教務課に転職しました。年収は教員時代より50万円ほど下がりましたが、土日が完全に自分の時間になったので、後悔はありません。」
——元高校教員(40代男性)
「特別支援学校の経験を活かして、大学の障害学生支援室に転職しました。これまでの経験がそのまま専門性として評価され、年収も少し上がりました。『教員でなくても教育に関われる』ことを実感しています。」
——元特別支援学校教員(30代女性)
よくある質問(Q&A)
Q1. 何歳まで大学職員に転職できますか?
国立大学は試験の年齢制限があり、おおむね30代前半までが現実的です。私立大学は中途採用が活発で、40代でも教員経験者を採用するケースがあります。ただし管理職経験など「+α」が求められることが多いです。
Q2. 給料は教員より下がりますか?
大学・規模・経験年数によります。大規模私立大学なら同等以上、中小私立や国立なら同等か少し下がることが多いです。ただし「残業時間」「休日数」「精神的負担」を考慮すると、トータルでの満足度は上がる方が多数派です。
Q3. 教員免許は活かせますか?
直接的に必須ではありませんが、「教育現場の事情を理解している人材」として高く評価されます。特に教職課程を持つ大学では、教員経験者を積極的に採用する傾向があります。
Q4. 採用試験の対策はどうすればいいですか?
国立大学は統一試験対策の参考書が市販されています。私立大学は大学ごとの独自選考が多く、面接重視の傾向です。志望大学の建学の精神や教育方針を事前に研究しておくことが必須です。
大学職員の長期キャリアパス
大学職員は転職の「ゴール」ではなく、その先のキャリアもしっかり設計できる仕事です。長期的な視点で、5年後・10年後のキャリアパスを考えてみましょう。
5年後|中堅職員として複数部署を経験
多くの大学では、3〜5年で異動があります。教務課→入試課→学生支援課のように複数の部署を経験することで、大学全体を理解する中堅職員として育っていきます。この経験が後のキャリアの基盤になります。
10年後|課長補佐・主任クラスへ
10年程度の経験を積むと、課長補佐や主任クラスのポジションを任されるようになります。年収も上がり、専門性が深まるとともに、後輩の指導役としての役割も増えていきます。
15〜20年後|課長・部長クラスへ
順調に進めば、課長や部長クラスの管理職ポジションも見えてきます。大学運営の中核を担う立場として、教学改革や学生支援の方針づくりに関わる仕事も増えていきます。
転職活動の具体ステップ
大学職員への転職活動は、一般企業と少し異なる進め方が必要です。教員から転職する場合の具体ステップを紹介します。
① 志望大学のリサーチ:建学の精神、教育方針、特色ある取り組みを必ず把握する。
② 求人情報のチェック:大学職員専門の求人サイト(大学職員ネットワークなど)を定期的に確認する。
③ エントリーシートの準備:教員経験を「学生支援に活かせる強み」として翻訳する。
④ 面接対策:志望動機は「なぜこの大学か」を必ず深く準備する。
⑤ 内定後の対応:年度途中の場合、現職との退職時期調整が重要。
大学職員に向いている教員の特徴
「教員から大学職員」は相性の良い転職ですが、すべての教員に合うわけではありません。以下の特徴に当てはまる方は、特に向いている可能性が高いです。
① 事務作業が苦にならない:大学職員はバックオフィス業務が中心です。書類整理、データ管理、書面でのコミュニケーションが苦にならない方に向いています。
② 組織の中でチームプレーができる:学校では自分のクラス中心の動き方ですが、大学職員は部署全体のチームプレーが求められます。周囲と協調して動ける方ほど適応が早いです。
③ 学生との距離感を保てる:教員時代のように生徒と密に関わるのではなく、「支援する側」として一歩引いた距離感が求められます。この切り替えができる方は、ストレスなく働けます。
まとめ|教育の世界で新しい役割を見つける
大学職員は、教員経験を活かしながら、より安定した働き方を実現できる魅力的な転職先です。ただし、競争率の高さと選考の独自性を理解し、しっかりとした準備が必要です。
- 大学職員の仕事は多岐にわたり、教員経験が活きる部署が多い
- 年収は初年度やや下がるケースもあるが、労働環境の改善メリットは大きい
- 応募は公募・エージェント・紹介の3ルートがある
- 選考では「教員→大学職員」のキャリアストーリーを説得力を持って語ることが重要
- 大学業界の知識と高等教育政策への理解が差別化ポイント