「お金が一番大事」だと思っていた20年目の教員が、本当の価値観に気づいて動き出した話

しいちゃんさん(新潟県・44歳・小学校16年・特別支援学校4年・現役続行中)

新潟県で小学校16年・特別支援学校4年、計20年近く教員を続けてきた しいちゃんさん(44歳)。教員免許は親に勧められて取り、特別支援の実習での出会いが人生の方向を決めた。没入するタイプで、スノボに向かう車の中で学級だよりを書いていたほどだった。子育てが始まってから仕事と家庭の両立に苦しみ、歪みは家庭内の人間関係にまで及んだ。「どうせやめられない」と思いながらもんもんと続けていたところにSSと出会い、自分の本当の価値観が「お金」ではなく「自由・楽しさ・安心できる人との時間」だったと気づいた。今、新しい一歩を踏み出している。

特別支援の実習との出会いが、教員人生を決めた

新川: 教員を目指したきっかけを教えてもらえますか?

しいちゃんさん: 私は小さい頃から教員を目指していたわけではなくて、英語が好きで大学に行って、教員免許が取れるなら取っておきなさいと親に言われてとりあえず取り始めたというタイプです。きっかけになったのは教育実習で、特別支援学校に実習に行った時に、脳性麻痺のお子さんに初めて出会ったんです。喋ったり体を動かしたりが自分の意思でできない子が、お水が飲みたいの?と聞くと瞬きで返事をしてくれる。それまで知っていた世界とは別の世界で生きている子どもたちに出会って、この子たちのそばで仕事ができるってすごく価値があると感じたのが、本当のきっかけです。

新川: 通常学級と特別支援学校、両方経験されてきたんですよね。

しいちゃんさん: そうです。最初は通常の小学校で、その後特別支援学校に勤務しています。子どもたちが集団の中で1年かけて変わっていく姿や、保護者の方から感謝される瞬間に、この仕事の醍醐味を感じてきました。

「瞬きで返事をしてくれるお子さんに出会って、この仕事には価値があると感じた。それが私の本当のきっかけです」

スノボに向かう車で学級だよりを書いていた——没入の日々

新川: 子育てが始まる前の働き方はどんな感じでしたか?

しいちゃんさん: 平日も土日も夜9時まで残ったり、土日も授業準備に当てたりして、すごい勢いで働いていました。スノボに向かう車の中で学級だよりを書くくらい、フル稼働していたんです。没入するタイプなので、それで何とか回っていました。

新川: 子育てが始まってから変わったんですね。

しいちゃんさん: 入る余地がないのに無理やり入れる感じになってしまって。子どもと一緒にいても授業のことを考えたり、次の行事どうしようかなと考えたりしていて。お出かけした先でも、あ、ここ校外学習に使えるかも、なんて考えてしまって、我が子に集中して遊んであげられていないと感じていました。どこかに行っても誰かに見られているかもしれない、先生らしくいなきゃという感覚がどんどん自分を苦しめていきました。

「スノボに向かう車の中で学級だよりを書いていた。でも子育てが始まって、そのやり方がもう通じなくなりました」

「自分の能力が低いから」——自己否定に向かった時期

新川: 一番しんどかったのはどんな時期でしたか?

しいちゃんさん: やってもやっても足りない、やるほどどんどん苦しくなるという状態で、それを自分の能力が低いから、向いていないんじゃないかと思い始めた時が一番辛かったと思います。育休中も、男性の同期の先生が現場でスキルを磨いていていいなと羨ましくなるくらい、休んでいることへの焦りを感じていました。

新川: 歪みは仕事だけにとどまりませんでしたか?

しいちゃんさん: 家庭内の人間関係もうまくいかなくなってきて、それで悩み始めて色々な講座を受けたりスキルを取ったりしていたんですが、それを仕事として生かしたいという気持ちもあって。でも次のステップにどうやって行けばいいのか分からないまま、ずるずるとやっていた時にSSと出会いました。

「やってもやっても足りない。その原因を、自分の能力の低さだと思い始めた時が、一番辛かったです」

SSとの出会い——「どうせやめられない」から「選択肢がある」へ

新川: SSを知ったきっかけと、受けようと思った理由を教えてもらえますか?

しいちゃんさん: FacebookでSSプログラムを見つけて、自分の価値観や強みを見つけられるんだと思って。教員を20年近く続けてきて、自分の成長や伸びに悩んでいたり、この生活でいいのかなと悩んでいた時に出会いました。個別相談でさよさんとお話しして、すごく信頼できる人だなと思って迷わず申し込みました。

新川: 受ける前と後で、一番大きく変わったことは何ですか?

しいちゃんさん: 受ける前は、教員をやめるという選択肢があまりにも怖すぎて、周りに誰もいないから「どうせやめられない」という気持ちの方が大きかったんです。でもSSプログラムの中で、教員をやめた後に別の仕事に転職された方に実際に出会って、あ、こういう生き方をしている人が本当にいるんだと分かって、私にもその選択肢があるんだと思えたのが一番大きな変化でした。

「「どうせやめられない」と思っていた。でも実際にやめた先生に出会って、私にもその選択肢があると気づきました」

価値観ワークの衝撃——本当に大事なのはお金じゃなかった

新川: プログラムで印象に残っていることはありますか?

しいちゃんさん: コーチングで話しているうちに、自分の本当の内側の声が自然と出てきて、意識していなかった自分の望みや願望が口から出てきてそこで初めて自覚する、という経験がすごく印象的でした。コーチングってすごいなと思いました。

新川: 価値観のワークで気づいたことも大きかったと聞きました。

しいちゃんさん: 私はお金ブロックがすごく強いと思っていて、お金がきちんと稼げることに価値がある、きちんとした生き方に価値があると思っていたんです。でもワークの質問にたくさん答えていくうちに、私って自由とか楽しいとか笑いとか、自分が安心できる人と一緒に仕事をしたり生活したりすることに価値があるんだなというのが見えてきて。自分の価値観はお金じゃなかったんだという気づきが、すごく大きかったです。

「お金が一番大事だと思っていた。でも実は、自由・楽しさ・安心できる人との時間が私の本当の価値観でした」

失敗してもやる方に価値がある——新しい一歩へ

新川: 今はどんな動きをされていますか?

しいちゃんさん: SSをやっている中で、自分が学んできたことを使って別の働き方にチャレンジしたいという気持ちが湧いてきて、行動に移すことができました。今は新しい仕事をするための学びを受講したり、SNSで発信を始めたりして、一歩歩み出している状態です。

新川: 行動できるようになった理由はどんなところにあると思いますか?

しいちゃんさん: このままあと20年同じ状態を続けることになるんだなと思ったら、失敗してもやる方に価値があるという風に思えてきたんです。自信は全然ないんですが、やらないと変わらないという感覚が強くなりました。あと書き出してみると、1年前に望んでいたことがすごく叶っているなというものが結構あって、自分では変わっていないように感じていたけど、実は変わっていたんだなと気づきました。

「失敗してもやる方に価値がある。このままあと20年同じ状態が続くくらいなら、やってみようと思えました」

もんもんとしている先生へ

新川: 長年動けずにもんもんとしている先生たちへ、一言いただけますか?

しいちゃんさん: まず、自分の「嫌だな」という気持ちを大事に受け止めてあげてほしいです。その嫌だなの裏に、自分が本当に何をしたいかのヒントがあると思います。ネガティブな感情って悪いものじゃなくて、自分をすごく大事に守ってくれるものなので。教員をやめたいという気持ちも、みんながやっていないからやっちゃいけないではなくて、言ってもいいし、やってみてもいい。もんもんとしている先生たちに、それを伝えたいです。

「「嫌だな」という気持ちの裏に、自分が本当にしたいことのヒントがあります。その感情を、大事に受け止めてあげてください」

編集後記

しいちゃんさんのインタビューで一番印象的だったのは、「スノボに向かう車の中で学級だよりを書いていた」というエピソードだ。没入するタイプということが、この一言でありありと伝わってくる。その没入が子育てと出会った時に、どうにもならないパンクを起こしていたのだろう。

「お金が一番大事だと思っていた」という価値観の誤解が解けた瞬間の話も印象的だった。自由・楽しさ・安心できる人との時間。それが本当の価値観だと分かった時、20年間の苦しさの一部が腑に落ちたのかもしれない。

「失敗してもやる方に価値がある」という言葉は、自信がないけれど動いていることの正直な表れだと思う。書き出してみると1年前に望んでいたことが叶っていた、という気づきがとても清々しかった。新しい一歩を踏み出している しいちゃんさんのこれからを、応援している。

取材・文:新川(Re-Career株式会社 代表取締役)


Re-Career代表 新川紗世
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