「悩むのに疲れた」13年間の教員生活、ここ数年で募った違和感——転職へ踏み出すまでの話

亮さん(徳島県・36歳・公立中学校1年・小学校12年・転職活動へ向かう)
徳島県で小学校12年・中学校1年、計13年間教壇に立ってきた 亮さん(36歳)。中学時代の面白い担任の先生に憧れて教員を目指した。感謝されることにやりがいを感じ、授業の準備が好きで突き詰めてきた。教育委員会に2年出向し、定時上がりの生活で「こういう働き方もあるんだ」と気づいた。現場に戻ると子育てで準備時間が取れなくなり、こなすだけの日々に満足感を失っていった。「悩むのに疲れた」という言葉と共に、転職への一歩を踏み出そうとしている。
面白い先生への憧れ——高校生の時に浮かんだ記憶
新川: 教員を目指したきっかけを教えてもらえますか?
亮: 中学校の時の担任の先生が面白い先生で、面白い授業をしてくれたり面白いテストを作ってくれたりして、部活も熱心にしてくれていたんです。それが残っていて、高校生の時に進路を決めなきゃいけなくなった時に、ふとその先生が出てきて、あ、先生を目指してみようかなと思いました。それからは教員になるという思いしかなかったですね。
新川: 13年間続けてきて、やりがいを感じていたのはどんな時でしたか?
亮: 子どもや保護者、先生方から感謝されることがやっぱりすごくモチベーションになっていました。学級経営がうまくいって「先生のおかげで伸びてきた」とか「先生がいるから来ているんだよ」みたいなことを言われると、それが嬉しくてもっと頑張ろうという気持ちで続けてきた感じです。今も働きながら、あの中学の先生みたいな面白い先生でいたいなという気持ちは出てきます。
「中学の時の先生みたいな、面白い先生でいたい。それが13年間の根っこにありました」
教育委員会の2年間——「こういう働き方もあるんだ」
新川: 教育委員会に出向されていた時期があるんですよね。
亮: 年々現場がしんどくなってきていたので、正直2年間あると聞いた時はちょっと嬉しかったんです。市教委の研究員という役柄で、学校に入った端末のサポートや研修の仕事でした。裁量が自分にあって、定時上がりができる職場だったので、プライベートにも趣味にも時間が取れて心の余裕もあって。そういう生活をしてみて、こういう働き方もあるんだなと感じました。
新川: ただ、やりがいの面では違いを感じましたか?
亮: 担任として感謝されてきたことが全部なくなったので、やりがいを完全に失ったというところがあって。何のために自分は働いているんだろうという気持ちになりました。仕事内容のやりがいは現場の方が感じるけれど、働き方のバランスは委員会の方が良かったという感じで、両方を経験して見えてきたものがありました。
「委員会でやりがいを失った。でも「こういう働き方もある」という気づきは、大きな財産になりました」
現場に戻って——準備できなくなった日々の中で
新川: 現場に戻ってきた時はどんな気持ちでしたか?
亮: 最初は戻れるぞという気持ちの方が強かったんですが、子どもを持つ前は家でも授業の準備ができていたのが、育児でそれができなくなっていて。授業の準備が好きで突き詰めてきたタイプなんですが、十分に準備できないままぶっつけでやって帰るという日々を繰り返すうちに、これ面白くないなという感覚になってきました。
新川: 子どもとの関係でも変化を感じましたか?
亮: 昔ほど子どもたちと親密になれなくなってきた感覚があって。余裕がなかったんだろうなと思います。外から見ればよく頑張っているよと言ってくれる人もいるんですが、自分の中では全然満足感がなくて、ただこなしているだけみたいな日々でした。そこからやめることがちらつき始めました。
「準備が好きで突き詰めてきたのに、準備できない日々が続いた。こなしているだけという感覚が、じわじわ積み重なっていきました」
SSとの出会い——元先生のコーチに話を聞いてもらいたかった

新川: SSを知ったきっかけと、受けようと思った理由を教えてください。
亮: 教員転職というキーワードで調べていて見つけました。コーチングしてくれる方が元先生という点が一番大きかったです。先生をされていた方が次どんなキャリアを歩まれているのかも気になっていたし、自分のことを分かってくれるコーチがいるだろうなと思って受けてみようと。転職したいけど難しいなというモヤモヤがずっとあったので、何か整理できればという気持ちでした。
価値観ワークが変えた——「これが自分なんだ」
新川: プログラムで一番印象に残っていることは何ですか?
亮: 価値観のワークで自分の価値観をピラミッド化した時に、ちょっと腹落ちする感覚があって。ああ、自分はこういう人間なんだと分かった瞬間に、その後の選択がそれを基準にして考えられるようになりました。自信を持って選びやすくなって、人生が少し軽くなった感じがありました。
新川: 仕事の向き合い方にも変化はありましたか?
亮: 自分が突き詰めていくタイプだということが客観的に分かったので、転職という一つのゴールを決めてそこに向けて手を抜けるようになったというか、割り切れるようになりました。こういう価値観だからあの時嫌だったんだとか、感謝されることで動けていた自分なんだというのも腑に落ちてきました。
「価値観ワークで、「自分はこういう人間なんだ」と腑に落ちた。その後の選択が、ずっとしやすくなりました」
「悩むのに疲れた」——転職へ向かう決断
新川: 今は転職に向けてほぼ気持ちが固まっているんですよね。
亮: はい。悩むのに疲れた、という感じです。とにかくもうやってみよう、やってみないと分からないという気持ちです。転職活動が成功するかどうかは別として、1歩踏み出してみることはできるわけなので。今は現場の仕事も続けながら、次に向けて動いています。
新川: 受けていなかったら今頃どんな気持ちでいたと思いますか?
亮: 勝手に追い込まれて、いい未来は見えていなかったかなと思います。ちょっとゾッとしますね。ずっと足踏みしながら同じ場所にいたのかなという感じがします。今は転職に向けての不安はそんなになくて、やってみようという気持ちです。
新川: ご家族には話されましたか?
亮: 一応話していて、お金はちゃんと入れてくれという感じで(笑)。基本的には応援してくれていると思います。
「悩むのに疲れた。やってみないと分からないから、1歩踏み出してみることにしました」
未来に希望が持てなくなった先生へ
新川: 家族もいて変えづらいと感じている30代の先生たちへ、一言いただけますか?
亮: このキャリアの中でこういう葛藤はみんなありがちなんじゃないかなと思います。一回立ち止まっていろんな可能性を探してみることはいいんじゃないかと伝えたいです。転職活動をしてみることは誰でもできることなので、1歩踏み出して何かしてみるといいよというのは言いたいですね。
「1回立ち止まって、いろんな可能性を探してみていい。1歩踏み出してみることは、誰でもできます」
編集後記
亮さんのインタビューで印象的だったのは、「悩むのに疲れた」という言葉だ。ネガティブな意味ではなく、長い時間をかけて十分に悩み切ったから、もう行くしかないという清々しさがその言葉には込められていた。
教育委員会の2年間というエピソードも面白かった。やりがいは失ったけれど、「こういう働き方もある」という視野を得た。あの2年間があったから、転職後のイメージが具体的に持てるのかもしれない。
価値観ワークで「感謝されることで動いてきた自分」と「突き詰めていくタイプの自分」が言語化された時、13年間の行動のパターンが一本の線でつながったのだろう。次のステージで、その強みがどう花開くのかが楽しみだ。
取材・文:新川(Re-Career株式会社 代表取締役)
