教員からEdTech企業に転職する方法|教育×テクノロジーで新たなキャリアを
この記事の著者
新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役
元公立中学校英語教員(10年以上)。教員時代に病休を経験し退職。その後、教員専門のキャリア支援会社を設立。著書『「やめたいかも」と一度でも思ったら読む 教員の転職思考法』。スタッフ全員が元教員のプロフェッショナル集団として、延べ1000名以上のキャリア支援に携わる。
—
教員からEdTech企業に転職する方法|教育×テクノロジーで新たなキャリアを
「教育に関わり続けたいけれど、教壇に立ち続けるのは難しい」。そんな方が今、注目しているのがEdTech(エドテック)業界への転職です。
EdTechとは「Education(教育)」と「Technology(テクノロジー)」を掛け合わせた造語で、テクノロジーの力で教育の課題を解決するサービスやプロダクトを提供する業界を指します。
この業界では、教育現場のリアルを知る元教員の人材が強く求められています。この記事では、教員からEdTech企業に転職する方法を、職種別の仕事内容から必要なスキル、実際の転職事例まで詳しく解説します。
—
EdTech市場の成長と教員経験者のニーズ
日本のEdTech市場は急速に拡大しています。GIGAスクール構想による一人一台端末の普及、コロナ禍を経たオンライン学習の定着、そして少子化に伴う教育の質への投資増加が、市場成長を後押ししています。
この成長市場において、EdTech企業が最も必要としているのが「教育現場を知る人材」です。その理由は明確です。
- 教員がユーザーとなるプロダクトは、教員の業務フローを理解している人でなければ設計できない
- 学校への導入・定着支援には、教員との信頼関係構築が不可欠
- 教育コンテンツの質を担保するには、教育課程や発達段階の知識が必要
- 学校現場の課題をプロダクトに反映するには、現場経験が最大の武器になる
「EdTech企業の採用担当者からよく聞くのは「プログラミングができる人はいるが、教育現場の課題を本当に理解している人が圧倒的に足りない」という声です。教員経験は、この業界では希少価値の高いスキルセットなのです。」
——Re-Career EdTech転職支援の現場から
—

EdTech企業で教員経験が活きる職種
プロダクトマネージャー(PM)
プロダクトの方向性を決め、開発チームとビジネスチームの間に立って製品を形にしていく役割です。
教員経験の活かし方
- 授業で感じた「こんな機能があれば」という現場ニーズをプロダクトに反映できる
- 学習指導要領や教育課程の知識に基づいた機能設計ができる
- 教員ユーザーの行動パターンを肌感覚で理解している
- 指導案作成で培った「目標→手段→評価」の設計思考が活きる
未経験からPMを目指す場合は、まずカスタマーサクセスやコンテンツ開発からスタートし、プロダクト理解を深めてからPMに移行するキャリアパスが現実的です。
カスタマーサクセス
EdTechプロダクトを導入した学校や教育機関に対し、活用定着を支援する役割です。教員からEdTechへの転職で最も入りやすい職種の一つです。
教員経験の活かし方
- 教員の忙しさや年間スケジュールを理解した上で導入計画を提案できる
- 「教員目線」で活用方法を伝えられるため、信頼を得やすい
- ICT活用に苦手意識のある教員へのサポート方法を熟知している
- 学校という組織の意思決定プロセスを理解している
コンテンツ開発
学習アプリの問題作成、オンライン教材の企画・制作、動画授業の監修など、教育コンテンツを作る役割です。
教員経験の活かし方
- 学習指導要領に沿ったコンテンツを正確に作成できる
- 生徒のつまずきポイントを知っているため、効果的な教材設計ができる
- 教科の専門知識を活かした質の高いコンテンツが作れる
- 授業で使えるコンテンツかどうかを現場感覚で判断できる
教材開発の経験がなくても、日々の授業で作成してきたプリントやスライドは、コンテンツ開発力の証明になります。
営業(スクールセールス)
学校や教育委員会に対して、EdTechプロダクトの提案・導入を進める営業職です。
教員経験の活かし方
- 教員や管理職と同じ言語で話ができる
- 学校の予算編成時期や意思決定フローを知っている
- 教育課題に対する深い理解があるため、説得力のある提案ができる
- 教員ネットワークを活かした信頼関係の構築ができる
営業未経験でも、教員時代の保護者面談や地域連携での対外的なコミュニケーション経験は、営業活動の基盤として十分に通用します。
—
EdTech転職に必要なスキルと準備
必須で身につけたいスキル
- ITリテラシーの基礎:ビジネスツール(Slack、Google Workspace、Notionなど)の操作に慣れておく
- データ分析の基礎:Excelやスプレッドシートでのデータ集計、グラフ作成ができるレベル
- ビジネスコミュニケーション:メール、チャット、プレゼン資料作成のビジネスマナー
あると差がつくスキル
- プログラミングの基礎知識(HTML/CSS、Pythonなど)
- UI/UXデザインへの理解
- マーケティングの基礎知識
- 英語力(グローバルなEdTechツールの情報収集に役立つ)
転職準備の具体的ステップ
- ステップ1:EdTech業界の情報収集。主要企業のサービスを実際に使ってみる
- ステップ2:教員経験の棚卸し。ICT活用や校務改善の実績を言語化する
- ステップ3:基礎スキルの習得。オンライン講座でITリテラシーを底上げする
- ステップ4:EdTech関連のイベントやコミュニティに参加して業界理解を深める
- ステップ5:職務経歴書の作成。教員経験をEdTech企業向けにリフレーミングする
—

教員からEdTech企業への転職事例
事例1:中学校理科教員 → EdTech企業のコンテンツ開発
教員歴8年。授業で自作の実験動画教材を作っていた経験が評価され、学習アプリのコンテンツ開発チームに採用されました。年収は教員時代と同程度でスタートし、2年目に昇給。リモートワークが週3日可能になり、ワークライフバランスが大幅に改善しました。
事例2:小学校教員 → EdTech企業のカスタマーサクセス
教員歴12年。GIGAスクール構想でICT推進担当を務めた経験が決め手となり、学校向けSaaSのカスタマーサクセスに転職。現在は教育委員会への導入支援をリードし、マネージャーに昇進しています。
事例3:高校英語教員 → EdTech企業の営業
教員歴6年。英語力とコミュニケーション力を武器に、海外のEdTechツールを日本の学校に提案する営業職に転職。教員時代には経験できなかったビジネスの世界で、教育への貢献の形を広げています。
—
EdTech企業への転職でよくある不安と回答
「ITの知識がほとんどないけれど大丈夫?」
多くのEdTech企業は、ITスキルよりも教育現場の知見を重視して採用しています。ITスキルは入社後に学べますが、教育現場の経験は代替が効きません。ただし、基本的なPCスキルやビジネスツールの操作は転職前に身につけておくと安心です。
「年収は下がる?」
職種や企業規模によって異なりますが、教員と同程度からスタートし、成果次第で教員時代を上回るケースも珍しくありません。特にPM職やマネジメント職に成長した場合、教員時代の年収を大きく超える可能性があります。
「教員に戻れなくなるのでは?」
教員免許は一度取得すれば失効しません(更新制度は2022年に廃止されています)。EdTechでの経験を持って教壇に戻る選択肢は常に残されています。
「EdTechへの転職は「教育を捨てる」ことではなく「教育への関わり方を変える」ことです。テクノロジーの力を借りれば、一つの教室では届かなかった何千人、何万人の学びに貢献できる可能性が生まれます。」
——Re-Career キャリアカウンセリング事例より
—

筆者メッセージ
教員からEdTech企業への転職を支援していて強く感じるのは、教員経験の「市場価値」を正しく認識できていない方が多いということです。
皆さんが毎日当たり前にやってきたこと、つまり30人以上の生徒に分かりやすく説明し、一人ひとりの理解度に合わせてフォローし、カリキュラムを設計し、保護者や同僚と連携して教育目標を達成する。これらはすべて、EdTech企業が喉から手が出るほど欲しいスキルです。
教育とテクノロジーの融合は、これからの教育を変える大きな流れです。その最前線に立つ選択肢が、皆さんの前にはあります。
—
まとめ
EdTech業界は成長を続けており、教育現場を知る元教員の採用ニーズは高まる一方です。PM、カスタマーサクセス、コンテンツ開発、営業など、教員経験が直接活きる職種は多数あります。
ITスキルへの不安は、基礎的な準備と「学ぶ姿勢」で十分にカバーできます。教育への情熱はそのままに、テクノロジーの力で教育に貢献する新たなキャリアを考えてみませんか。