教員の退職代行サービスは使える?|公立・私立別の注意点と費用
この記事の著者
新川紗世(あらかわ・さよ)|Re-Career株式会社 代表取締役
元公立中学校英語教員(10年以上)。教員時代に病休を経験し退職。その後、教員専門のキャリア支援会社を設立。著書『「やめたいかも」と一度でも思ったら読む 教員の転職思考法』。スタッフ全員が元教員のプロフェッショナル集団として、延べ1000名以上のキャリア支援に携わる。
教員の退職代行サービスは使える?|公立・私立別の注意点と費用を元教員が徹底解説
近年、退職代行サービスの利用者が急増しています。テレビやSNSでも頻繁に取り上げられるようになり、「自分も使えるのだろうか」と気になっている教員の方も多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、教員でも退職代行サービスを利用することは可能です。ただし、公立教員と私立教員では利用できるサービスの種類が大きく異なります。
特に公立学校の教員は地方公務員という身分のため、一般的な退職代行サービスでは対応できないケースがほとんどです。知らずに依頼してしまうと、費用を払ったのに退職が進まないという事態にもなりかねません。
この記事では、元公立中学校教員として10年以上の勤務経験があり、現在は教員専門のキャリア支援を行っている筆者が、教員の退職代行について公立・私立別の注意点、費用の目安、そして退職代行を使わずに辞める方法まで、包括的に解説します。
「辞めたいけど言い出せない」「退職を伝えたら引き止められて困っている」という方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
退職代行サービスとは?|基本的な仕組みを理解しよう
退職代行サービスの仕組み
退職代行サービスとは、本人に代わって勤務先に退職の意思を伝えてくれるサービスです。依頼者は会社(学校)と直接やり取りすることなく、退職手続きを進めることができます。
基本的な流れは以下のとおりです。
- サービス提供者に相談・申し込みをする(LINE・電話・メールなど)
- 退職に関する情報(氏名、勤務先、退職希望日など)を共有する
- サービス提供者が勤務先へ退職の意思を連絡する
- 退職届や必要書類のやり取りを郵送で行う
- 退職完了
多くの場合、依頼した日から出勤する必要はなくなります。有給休暇の消化や退職届の提出なども、サービス提供者を通じて進めることが可能です。
退職代行サービスの3つの種類
退職代行サービスには、運営元によって大きく3つの種類があります。この違いを理解することが、教員にとっては非常に重要です。
1. 一般企業(民間業者)が運営するサービス
退職の意思を「伝達」することが主な業務です。法律上、交渉ごとを行うことはできません。費用は比較的安価ですが、対応できる範囲に限界があります。
2. 労働組合が運営するサービス
労働組合には団体交渉権があるため、退職日の調整や有給休暇の取得交渉なども行えます。一般企業よりも対応範囲が広いのが特徴です。
3. 弁護士が運営するサービス
法律のプロである弁護士が対応するため、退職交渉、未払い賃金の請求、損害賠償への対応など、あらゆる法的問題に対処できます。費用は最も高くなりますが、対応力も最も高いサービスです。
退職代行のメリット・デメリット
メリット
- 上司や管理職と直接話す必要がない
- 即日対応で、翌日から出勤しなくてよいケースが多い
- 精神的な負担が大幅に軽減される
- 引き止めに合わずに退職できる
- 退職届の書き方や手続きもサポートしてもらえる
デメリット
- 費用がかかる(2万円から10万円程度)
- 同僚や管理職との人間関係が完全に途切れる可能性がある
- サービスの種類を間違えると、退職が成立しないリスクがある
- 引き継ぎが不十分になることがある
- 教育委員会や学校側に悪い印象を持たれる場合がある

公立教員が退職代行を使う場合の注意点|弁護士への依頼が必須な理由
公立学校の教員が退職代行を検討する際、最も重要なのは「一般の退職代行サービスでは対応できない」という点です。これは教員の身分に関わる法律上の問題があるためです。
公立教員は「地方公務員」であることの意味
公立学校の教員は地方公務員です。民間企業の従業員とは法律上の立場が根本的に異なります。
民間企業の場合、民法第627条により「退職届を提出すれば2週間後に退職できる」という規定があります。しかし、公立教員の退職は任命権者(都道府県教育委員会や市区町村教育委員会)の承認が必要です。
つまり、退職届を一方的に提出しても、それだけでは退職が成立しないのです。任命権者との間で退職に関する合意形成が必要となるケースがほとんどです。
一般の退職代行では対応できない理由
一般企業が運営する退職代行サービスは、あくまで「退職の意思を伝える」ことしかできません。これは弁護士法第72条(非弁行為の禁止)によるものです。
「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。」
——弁護士法第72条
公立教員の退職手続きでは、教育委員会との交渉や条件面の調整が発生する場合があります。これらは「法律事務」に該当するため、弁護士資格を持たない業者が行うと違法(非弁行為)になる可能性があります。
また、労働組合が運営する退職代行サービスも、公立教員の場合は注意が必要です。公立学校の教員は地方公務員法により、労働組合法が適用されません。そのため、民間の労働組合が持つ団体交渉権が公立教員の退職交渉には使えないのです。
公立教員は弁護士の退職代行一択
以上の理由から、公立教員が退職代行を利用する場合は、弁護士が運営するサービスを選ぶことが必須です。
弁護士であれば以下のような対応が可能です。
- 教育委員会への退職交渉の代理
- 退職日や条件面の調整
- 未消化の年次休暇の取得交渉
- 退職に関する法的トラブルへの対応
- 退職手当に関する確認や交渉
費用は5万円から10万円程度と高めですが、法的に問題のない形で確実に退職を進められるという安心感は大きいでしょう。
公立教員が退職代行を使う際のチェックリスト
- 必ず弁護士が運営するサービスを選んでいるか
- 公務員の退職代行の実績があるサービスか
- 教育委員会への対応経験があるか
- 退職手当や共済組合の手続きについても相談できるか
- 料金体系が明確で、追加料金の有無がはっきりしているか
私立教員が退職代行を使う場合|選択肢は広い
私立学校の教員は公立教員とは異なり、民間企業の従業員と同じ立場です。労働基準法が適用されるため、退職代行サービスの選択肢は比較的広くなります。
私立教員が利用できる退職代行の種類
1. 一般企業(民間業者)運営のサービス
退職の意思を学校側に伝えてもらうだけで十分な場合は、一般企業運営のサービスでも対応可能です。費用は2万円から5万円程度と比較的リーズナブルです。ただし、学校側と条件交渉が必要な場合には対応できません。
2. 労働組合運営のサービス
私立教員は労働組合法の適用を受けるため、労働組合が運営する退職代行サービスを利用できます。団体交渉権を背景に、退職日の調整や有給消化の交渉も可能です。費用は2万円から3万円程度で、コストパフォーマンスに優れています。
3. 弁護士運営のサービス
退職金の未払い問題や損害賠償を請求されるリスクがある場合などは、弁護士運営のサービスが安心です。特に、契約期間の途中で退職する場合や、学校側とトラブルになりそうなケースでは弁護士への依頼をおすすめします。
私立教員が注意すべきポイント
私立教員の場合でも、以下の点には注意が必要です。
- 雇用契約の内容を確認する:契約期間の定めがある場合、中途解約には「やむを得ない事由」が必要となることがある
- 就業規則を確認する:退職の申し出期限が「3か月前まで」など、一般的な2週間より長く設定されている場合がある
- 年度途中の退職:学期の途中での退職は、生徒への影響が大きいため学校側の反発が強くなりやすい
- 退職金規程の確認:自己都合退職の場合の退職金計算方法を事前に確認しておく
退職代行の費用比較|種類別の相場と注意点
教員が退職代行を利用する場合の費用を、種類別にまとめました。
弁護士運営の退職代行|費用相場:5万円から10万円
- 初回相談:無料のところが多い
- 基本料金:5万円から10万円程度
- 成功報酬:退職金や未払い賃金の回収がある場合、回収額の一部が成功報酬となることがある
- 対応範囲:退職交渉、条件調整、法的トラブル対応すべてに対応可能
- 公立教員はこのタイプ一択
労働組合運営の退職代行|費用相場:2万円から3万円
- 基本料金:2万円から3万円程度
- 組合加入費:サービス料金に含まれていることが多い
- 対応範囲:退職の意思伝達に加え、団体交渉権による条件交渉も可能
- 私立教員にとってはコストパフォーマンスが高い選択肢
一般企業運営の退職代行|費用相場:2万円から5万円
- 基本料金:2万円から5万円程度
- 対応範囲:退職の意思伝達のみ(交渉は不可)
- 注意点:交渉が必要になった場合は対応できないため、追加で弁護士への依頼が必要になる可能性がある
- 私立教員で、単に伝えてもらうだけでよい場合に限定
費用を選ぶ際のポイント
退職代行の費用は安ければよいというものではありません。特に教員の場合、以下の点を考慮して選びましょう。
- 公立教員は費用よりも「弁護士であること」を最優先にする
- 追加料金の有無を必ず確認する(相談無料でも、交渉が発生すると別途費用がかかるケースがある)
- 全額返金保証の有無を確認する
- 退職後のアフターサポート(離職票の受け取りなど)が含まれているか確認する

退職代行を使わずに辞める方法|円満退職のための5つのステップ
退職代行は便利なサービスですが、可能であれば自分の意思で退職を伝えることにも大きなメリットがあります。ここでは、円満退職に向けた具体的なステップをご紹介します。
ステップ1:退職の意思を固める
まず大切なのは、自分自身の退職の意思をしっかり固めることです。「辞めたい気持ち」と「辞める決意」は異なります。退職後のキャリアプランや生活設計もある程度見通しを立てた上で、退職の意思を固めましょう。
ステップ2:退職時期を計画する
教員にとって理想的な退職時期は年度末(3月末)です。年度途中でどうしても辞めなければならない場合は、学期の切れ目を意識すると学校側の負担を軽減できます。
- 退職届の提出目安:遅くとも退職希望日の1か月から2か月前まで
- 公立教員の場合:自治体の規定を確認する(多くの場合、年度末退職は12月頃までに意思表示が求められる)
- 私立教員の場合:就業規則で定められた期限を確認する
ステップ3:校長(管理職)との面談
退職の意思が固まったら、まず直属の管理職(多くの場合は校長)に面談を申し込みます。
面談のコツ
- 事前にアポイントを取り、落ち着いて話せる時間を確保する
- 「相談」ではなく「報告」として伝える(「辞めようか迷っている」ではなく「退職を決意しました」と明確に伝える)
- 退職理由は簡潔に。詳しく説明しすぎると引き止めの材料にされることがある
- 感謝の気持ちは伝えつつも、意思は揺るがさない
- 引き継ぎに協力する姿勢を示す
ステップ4:退職届の提出と手続き
面談で退職の意思を伝えた後、正式に退職届を提出します。
- 公立教員:教育委員会所定の様式がある場合が多い
- 私立教員:学校の就業規則に従った形式で提出する
- 退職届は「退職願」ではなく「退職届」を提出する(退職願は撤回される可能性がある)
ステップ5:引き継ぎと退職準備
退職が決まったら、後任の教員への引き継ぎをしっかり行いましょう。
- 担当クラスの生徒情報の整理
- 担当教科の授業計画や教材の引き継ぎ
- 校務分掌の引き継ぎ書類の作成
- 保護者への連絡が必要な場合は学校と相談の上で対応
- 私物の整理と返却物の確認
「退職は「逃げ」ではなく「選択」です。自分の人生の舵を自分で取ることに、罪悪感を持つ必要はありません。大切なのは、次に進むための準備をきちんとすること。」
——新川紗世(Re-Career株式会社代表)
どんな人に退職代行が向いているか|利用を検討すべき3つのケース
退職代行サービスは、すべての人に必要なわけではありません。しかし、以下のようなケースでは、退職代行の利用を積極的に検討してよいと考えています。
ケース1:パワハラを受けていて直接言い出せない
管理職や同僚からパワハラを受けている場合、退職の意思を直接伝えることが精神的に困難なことがあります。パワハラをしてくる相手に「辞めます」と言うこと自体が、大きなストレスとなるのは当然です。
このような場合、退職代行を利用することで自分の身を守りながら退職手続きを進めることができます。パワハラの証拠がある場合は、弁護士の退職代行に依頼することで、損害賠償請求も視野に入れた対応が可能です。
ケース2:精神的・身体的に限界を感じている
うつ症状や適応障害、慢性的な体調不良など、心身に不調をきたしている場合は、退職代行の利用を検討しましょう。
「あと少しだけ頑張ろう」と無理を続けた結果、長期間の療養が必要になるケースは少なくありません。筆者自身も教員時代に病休を経験しており、限界を超えてしまう前に行動することの重要性を身をもって知っています。
心身の健康は、どんなキャリアよりも大切です。自分を守るために退職代行を使うことは、賢明な判断のひとつです。
ケース3:引き止めが強く退職が進まない
退職の意思を伝えたにもかかわらず、「年度末まで待ってほしい」「後任が見つかるまで」と繰り返し引き止められるケースもあります。
教育現場は慢性的な人手不足であり、学校側が退職を認めたくない気持ちも理解できます。しかし、退職は労働者の権利です。何度伝えても退職手続きが進まない場合は、第三者を介入させることで状況が動くことがあります。
「退職代行を使うことに後ろめたさを感じる方が多いですが、退職する権利はすべての労働者に認められたものです。自分の心と体を守ることを最優先に考えてください。」
——教員の労働問題に詳しい弁護士の見解

筆者からのメッセージ|退職代行を使うことは恥ではない
最後に、教員専門のキャリア支援に携わる者として、率直なメッセージをお伝えしたいと思います。
退職代行を使うことは、決して恥ずかしいことではありません。
教員という仕事は、子どもたちの未来に関わるやりがいのある仕事です。しかし同時に、心身への負担が非常に大きい仕事でもあります。長時間労働、保護者対応、校内の人間関係、そして増え続ける業務。そのような環境の中で、退職を切り出すこと自体が大きなハードルになっているのは、十分に理解できます。
私自身、公立中学校で10年以上教壇に立ち、最終的には病休を経て退職しました。あの時の自分に声をかけるなら、「もっと早く、自分の心と体を優先してほしかった」と言いたいです。
退職代行を利用することで、心の負担を軽くして次のステップに進めるのであれば、それは立派な選択です。
ただ、ひとつだけお伝えしたいことがあります。もし可能であれば、自分の言葉で退職の意思を伝えられると、次のキャリアにも良い影響があるということです。
転職活動では、前職の退職理由は必ず聞かれます。自分の意思で退職を決断し、きちんと伝えたという経験は、「主体的にキャリアを考えている人」という印象につながります。円満に退職できれば、前職の同僚が新しい仕事の縁をつないでくれることもあります。
もちろん、それが難しい状況だからこそ退職代行を検討しているのだと思います。その場合は、迷わず利用してください。自分の心身を守ることが、何より大切です。
「教員を辞めることは、教育を捨てることではありません。教壇を離れても、教員として培った経験やスキルは、必ず次のキャリアで活きてきます。まずは自分自身を大切にしてください。」
——新川紗世『「やめたいかも」と一度でも思ったら読む 教員の転職思考法』より
まとめ|教員の退職代行は「正しい選択肢」を知ることが大切
この記事のポイントを整理します。
- 教員でも退職代行サービスは利用できる
- 公立教員は地方公務員法の関係で、弁護士運営の退職代行一択(費用:5万円から10万円)
- 私立教員は一般業者・労働組合運営・弁護士運営のいずれも利用可能
- 費用は種類によって2万円から10万円と幅がある
- 可能であれば、自分の言葉で退職を伝える円満退職がベスト
- パワハラ・精神的限界・強い引き止めがある場合は、退職代行の利用を積極的に検討すべき
- 退職代行を使うことは恥ではない。心身を守ることが最優先
退職を考えている教員の方にとって最も大切なのは、自分の状況に合った「正しい選択肢」を知ることです。退職代行を使うにしても使わないにしても、納得のいく形で次の一歩を踏み出してほしいと心から願っています。
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